魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
明日から頑張る。
あーちゃん先輩は無事、生徒会長となることができた。無事、と言っても選挙で姉さんがぶちギレちゃったり、面白…おかしな投票がされたりしたが。当選から一ヶ月は経つというのに未だに七草真由美を会長と呼ぶ人がいるあたり、まだ浸透はしていない様だ。頑張れ、あーちゃん会長。
四葉真夜との交渉により危険はとりあえずなくなったとはいえ、問題が残った。平河小春が論文コンペの出場を辞退してしまったのだ。自分が危機的状況で後輩を売ったことを悔やんでいるらしい。気落ちしてしまいとても論文コンペには出れそうにないのだ。ちーちゃんの話だとあまり学校にも登校していないらしい。結果、原作通り(原作より早い少し早いが)論文コンペには代役として兄さんがメンバーに加わった。
ぼくの引き起こした原作改変は結局、物語の大筋を覆すには至らなかったのである。ただ良かったことがあるとすれば─
「司波達也を恨んでも仕方ないでしょ。今回のことは好奇心で踏み込んだ姉さんと姉さんを襲った連中が悪い。姉さんには怪我はなかったし、今は自分を責めているけど…きっと立ち直ってくれるわ」
─ちーちゃんが兄さんに復讐しようとは思っていなさそうなことだ。元々、ぼくが動こうと思った根本の部分は達成されたのだ。
「それに…貴方のこと、少しは信じているから。貴方のお兄さんも少しだけ信じてあげる」
それにプイッと顔を背けながら、そんなことを言ってもらえたのだ。デレないツンデレだと思われたちーちゃんがデレたのである。
この台詞の後にトーラス・シルバーがフルカスタマイズした特化型CAD『シルバー・ホーン』をねだられたけどきっと照れ隠しだよね!
◆
「うう、やっぱり私には生徒会長とか向いていなかったんですよ」
「そんなことないですよ!あーちゃん会長」
「じゃあどうしてそのあーちゃん会長という呼び方が校内で浸透しているのですか!?」
「そっそれだけ親しまれているということですよ!」
「親しまれ過ぎです!アメちゃん食べる?って私は高校生ですよ!」
「ぼくは食べたいですけど、アメちゃん」
あーちゃん先輩があーちゃん会長にクラスアップしてからというものの週一くらいで愚痴を聞かされている。といってもカフェで楽しくお喋りするといった感じだが。あーちゃん会長的にぼくは誘いやすいそうだ。
「はあ、どうしたら前会長のようになれるでしょうか」
「なる必要はありませんよ」
前会長、七草真由美は尊敬される良い生徒会長だったのかもしれない。でもそれを真似する必要はない。中条あずさとして学校をどうしたいか、どうするべきか、考えて動けば評価は後から付いてくる。あーちゃん会長は意外と優秀なのだ。
「意外とは余計です!…でもそうですね、私は会長…いえ真由美さんの様にはなれません。けど!私は私らしく生徒会長として頑張ります!」
グッと両手を握りしめてそう宣言するあーちゃん会長。盛り上がっているところ申し訳ないのだが一つ言わせてもらうと。
「あーちゃん会長、恥ずかしいんで座ってください」
「…はい」
椅子を倒して立ち上がったりするものだから他のお客さんから大分注目を集めていたのだ。あーちゃん会長は顔を真っ赤にしてゆっくりと席に座った。
会長の威厳とかは一生出せそうにない。
◆
あーちゃん会長とカフェでお喋りし家に帰ると珍しく母さんが帰宅していた。この時間に帰っていることは滅多にないというのに。
「レリック?」
「そう、
手渡された宝石箱に入っていたのは赤味を帯びた半透明の玉。
「私が行くよりも貴方が行った方が話が上手くいくと思うの。詳細はこの書類に書いてあるから、一緒に渡してね」
大変な物を預かってしまった。これアレやん。持ってると襲われる奴じゃん。
いや、ポジティブに考えよう。これをぼくが届ければ母さんは襲われないのだ。
ぼくはビビりながらも兄さんと姉さんの住む家へと向かった。もちろん完全装備で、だ。
次話から横浜争乱編です。九校戦ほど長くならないかなと思います。
あーちゃんが会長職を終えた七草真由美を何て呼んでいるのか、分からなかったので真由美先輩にしておきました。
さて、明日も0時に投稿します。