魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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サブタイトル考えるのが意外ときついことに最近気がついたり。


決意を胸に

雪花が『トーラス・シルバー』のトーラスとなってから初めて発売される新モデル、それが飛行魔法専用デバイスだった。トーラスとして初めて設計から全てを手掛けた作品である。

それをキラキラとした瞳で見つめ、いつまでも語り続けるのが中条あずさだった。こんなにも純粋に自分の作ったものを褒められたことが嬉しかった。きっかけはそんなものだったのかもしれない。

 

そしてそれが恋心に変わるまでそう時間はかからなかった。

 

 

 

 

ぼくがもっとも長い時間を過ごした女の子はまず間違いなくリーナだ。例えぼくが生まれたときから殆ど容姿が変わっていなかったとしても沙世さんを女の『子』とするには少々歳が……なっなななんでもないよ!うん、沙世さんはいつまでも若いよねって話だよ!

 

で、そんなリーナから言われたのが「セッカは女の子にはモテないわね、男の子にはモテモテかもしれないけど」という認めたくない残酷な現実だった。その後リーナが「ま、まあセッカには私がいるもんね!?だからモテなくても大丈夫だよ」と慰めてくれたものの、ぼくはすっかりブルーな気持ちになり、リーナの話を大して聞いていなかった。

今になって思うとあの時リーナはどうしたらモテるのかを教えてくれていたのではないだろうか?だとしたらぼくは適当に「そうだねー」とか「たしかにね」とかで聞き流すべきではなかったのかもしれない。まあその時はリーナの機嫌が妙に良くなったので良しとしたわけだが。

 

そんなぼくだからいざ女の子に告白する、となっても中々踏み出せない。そこでアドバイスを貰うことにした。まずは修次さん。あの渡辺摩利を彼女に持つ彼なら良いアドバイスをくれるに違いない。

 

そう思っていた時期がぼくにもありました。

 

剣で語れば分かってもらえるとか、本気でいけばなんとかなるなどの参考にならないアドバイスを多数頂いた。さらに振られたら妹を紹介してあげる、という縁起でもないことを言い出す始末。こいつは駄目だ、ぼくとは違う世界を生きていると判断したぼくは困った時のはんぞー先輩に相談することにした。

するとさすがはんぞー先輩。的確なアドバイスをくれた。どうやらあの『服部は女の子を百人侍らせたことがある』という噂は本当だったらしい。市原鈴音から聞いたときは嘘だと思ったものだが…流石ですはんぞー先輩!

最後に邦人さんに相談してみた。告白の、というよりも女の子と上手く付き合うためのノウハウみたいなものを教えてもらった。どうやら昔は結構遊んでいたらしい。後で沙世さんにチクろうと考えながらも、ためになる話を聞いた。

 

そして、今日。論文コンペを明日に控えた土曜日。

 

ぼくは告白する。

 

緊張し過ぎて吐きそうだ。体が思うように動かない。

 

前日に約束はしておいた。

いつものようにあーちゃん会長を教室へ迎えに行く。

 

 

「あーちゃん会長ー」

 

「あっ雪花くん。なんか顔色が悪い気がするのですが大丈夫ですか?」

 

「気のせいですよ」

 

「そうですか、なら良いのですが」

 

 

あーちゃん会長と二人で放課後に遊びに行くというのはもう何回もしているはずなのだ。それこそ十回は軽く行っているだろう。なのに今日は告白すると決めているからか全然違うもののように思えてくる。

 

 

「雪花くん聞いてますか?」

 

「聞いてますよ?えーっとどうして金平糖は美味しいのかって話でしたっけ?」

 

「違いますよ!明日は本番ですから体調が悪いようなら今日はこの辺にしておきませんか?って話ですっ!」

 

「ああ、そうでしたね」

 

あーちゃん会長に言われて二人でカフェに入ってもう三十分が経とうとしていることに気がついた。どうやら緊張しすぎてまともに会話も出来ていなかったらしい。

 

「本当に体調が悪いとかじゃないんで大丈夫です」

 

ふと、思った。明日、論文コンペの会場がある横浜は戦場となる。原作通りなら一校の生徒は誰一人として死ぬことはないが、それは原作通り(・・・・)ならの話だ。既にイレギュラーな事態が起きている以上何があっても不思議ではない。不安が広がった。そしてそれは、すぐに口から漏れた。

 

 

「あーちゃん会長、明日の論文コンペ一緒にサボりません?」

 

 

ぼくはただの応援であるため正確に言うならサボるのは生徒会長であるあーちゃん会長だけになるが。

 

 

「駄目ですよ、私は生徒会長なんですから。私なりに頑張るんです。そう教えてくれたのは雪花くんですよ?」

 

 

頭を撫でられる。

 

生徒会長になってから初のイベントということもあって張り切っているらしいあーちゃん会長は明日は頑張りますよー!と腕を振っている。

 

 

彼女が生徒会長として頑張ろうとしている。そしてそれをどこぞの馬の骨が邪魔しようとしている。

 

そうだ、彼女も明日の論文コンペに向けて頑張ってきたのだ。見えないところで頑張ってぼくにこっそり弱音を吐いて。

 

 

「あーちゃん会長、ぼくが間違っていました。やっぱり明日は行きましょう。一校の勇姿を見ないわけにはいきませんしね」

 

 

だから、ぼくが守ろう。彼女を害する全てから。

 

 

「それで、論文コンペが終わったら次の週にでも遊びに行きません?」

 

「良いですね、どこに行きます?」

 

 

そして、告白する。

だから今日のところは取り合えず告白は保留だ。

へたれたわけじゃない、戦略的撤退だ。

 

 

「遊園地とかどうです?ぼく行ったことなくて」

 

 

今日はこのまま、いつも通りのお茶会をしようと思う。

もう一度言うけどへたれたわけじゃない。




次話から論文コンペに入ると思います。論文コンペではあの二人も再登場するので、お楽しみに。

さて明日も0時に投稿します。


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