魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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例のモブ崎くんも名前だけやっと登場。


十三束鋼は見た

十三束鋼は雪花という人物を噂でしか聞いたことがなかった。最初に聞いたのは入学してから一ヶ月程度が過ぎた頃、クラスの友達から。なんでも入学式から一度も学校に登校しておらず『幻の古葉』と言われている生徒がいるらしいという噂だ。たしかにクラスに在籍していて席もあるのに一度も学校に来ていない。『重い病気を患っているが魔法力がずば抜けている』やら『既に魔法師のライセンスを持っていて学校から授業を免除されている』など様々な予想が飛び交ったものだが、結局、彼は一学期間丸々学校に来なかった。

 

そんな本当に在籍しているのかも怪しい生徒を十三束が目撃したのは夏休みのことだった。目撃と言っても画面越しではあるが。夏休みに行われた九校戦の新人戦モノリス・コード、一年で同じ風紀委員である森崎駿が出場するということで応援すべくテレビで見ていたのだが、その試合中相手校の反則により一校メンバー全員が大怪我を負う事故が発生した。もちろん森崎もである。

そしてその代わりとして出場することになったのが、これまた十三束と同じ一年の風紀委員である司波達也だった。彼はエンジニアとして参加しているんじゃなかったの!?と驚く間もなく吉田幹比古の名前がコールされる。彼に至ってはそもそも九校戦のメンバーですらなく、しかも二科生。司波達也は色々と例外ではあるしエンジニアとして出場していたわけだからセーフとして彼はアリなのか!?と混乱へ落ちる間もなく、噂でしか聞いたことがなかった存在すら怪しい生徒の名前、古葉雪花の名前がコールされいよいよ十三束は限界を向かえそうだった。そしてそんな十三束を置き去りにして試合は始まってしまう。驚きの連続、魔法も戦術もCADもその一つ一つに驚かされた。そして彼らは十師族の一角である一条の次期当主『クリムゾン・プリンス』一条将輝の率いる三校すらも倒し見事優勝を果たしたのだ。

 

そんな九校戦のあった夏休みも終わり、今度は論文コンペが近づいてきた。十三束も九校共同会場警備隊として現地に赴くことになっており無関係というわけではなかった。その論文コンペが十三束と雪花を引き合わせた。

 

十三束は二学期から登校するようになった男なのか女なのかも分からないというより女の子であって欲しい不思議生物と関わるようなことはないだろうと思っていた。クラスも違えば部活や委員会が一緒なわけでもない。関わる機会はないだろうと。

 

 

「十三束にはしばらくの間、雪花くんを任せる。達也くんが論文コンペで忙しいからな」

 

 

『歩くトラブルメーカー』。トラブルに愛されているとしか思えないほどにトラブルを起こし、さらにはそのトラブルを放置したまま歩き回ることから雪花に付けられた二つ名。その雪花がトラブルを起こした際、風紀委員会からは達也が、生徒会からは(会頭となっても担当は変わらず)服部が、出向いて処理にあたるのが通例だったのだが、達也は急遽論文コンペのメンバーに選ばれそんなことをしている時間はない。そこで十三束が代わりとしてしばらくの間、雪花を任される形となったのだ。同じ一年の森崎でないのは性格的な問題である。雪花と森崎が衝突するのは目に見えていた。

 

そんなわけで雪花のお世話係となってしまった十三束はその日から何度も雪花と関わることとなる。そして雪花からトミーと呼ばれるようになった頃、十三束鋼は見た。

 

司波深雪にむぎゅむぎゅと抱き締められている雪花を。

 

 

十三束は見なかったことにした。自分は疲れているんだと言い聞かせて。

 

しかし十三束鋼はまた見てしまう。夏休みにあったとある一件以来やたらと絡んでくる明智英美と偶然出会い、無理矢理ショッピングタワーに連行されたあげく放置された日のこと。彼は見てしまった。

 

 

雪花と生徒会長である中条あずさが手を繋いで楽しそうに歩いているを。

 

 

微笑ましい、実に微笑ましいのだが、これはつまりそういうことなのだろう。いや、恋愛は自由だと思うし問題はないのだが……十三束の脳裏に深雪に抱きしめられる雪花の姿が過る。

 

─僕は見てはいけないものを見てしまったのかもしれない!?

 

どこからか戻ってきた明智英美からどうかしたの?と訊ねられるが答えるわけにはいかなかった。下手をすれば生徒会が修羅場と化すかもしれない秘密を知ってしまった…と十三束は思っているのだから。

 

 

十三束鋼の不運は続く。

 

 

それから数日して日曜日。週に一度しかない休みを満喫するべく都心へと出掛けた十三束鋼は見た。見てしまった。

 

雪花が知らない女の子と手を繋いで歩いているのを。

 

「私から離れないでください」やら「絶対に手を離さないでください」という女の子の声が断続的に聞こえてくる。女の子はかなり雪花に依存しているようで、「雪花様」と呼んでいる。

 

 

─帰ろう。

 

十三束鋼はその日、家で寝て過ごした。

 

 

『歩くトラブルメーカー』。彼は自分の知らないところで今日もトラブルを撒き散らしていた。そしてそれを放置したままどこへともなく歩き出す。

 

 

結局、十三束鋼は誤解したまま論文コンペ当日を迎えた。




ちょっと原作改変。
次話で十三束の誤解が加速する予定です。あの人やあの人も再登場です。

さて明日も0時に投稿します。

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