魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

80 / 157
やっと出せた雪花の異能。



幻想眼

雪花は沢山の死を目の当たりにすることで『死の記憶』を思い出す。

前世の自分が死ぬ瞬間、そして『死んでから転生するまでの記憶』を。魂だけの存在となって何もない白い空間を漂い、やがてどこへともなく吸い込まれた、『魂の記憶』。それを認知した瞬間、雪花に見える世界が変わった。全ての生物に共通して透明な霊体のようなものが見えるようになったのだ。それは魂。存在すらも曖昧なそれを雪花は視認できるようになった。そしてその副産物なのか、この世に存在する実体のない曖昧なものすらもその瞳で捉えることができるようになった。それは魔法式であったりサイオンであったり精霊であったり。

 

雪花はこれを『幻想眼(ファンタジー・サイト)』と名付けた。

 

 

当初、雪花はこの力をちょっとした手品みたいなもの大した力ではないと考えていた。しかしある時、雪花は気がついた。自分の異常な記憶力に。

 

意識して一度見れば、聞けば、触れば、それを忘れることはなかった。

何故なのか、ただ記憶力が良いというだけではないことは何となく分かった。『記憶している』という感覚とはどうも違う気がした。そしてその疑問は魔法師となることで解決した。

 

 

雪花は無意識下で情報を魂に刻んでいたのである。

魂だけとなっていた雪花にとっては当たり前の行動、人間が脳に記憶するのと同じくらい自然であり得ない程効率の良い記憶方法だった。

人間が脳に記憶するのはそこにそういう機能があるからで、別にそれよりもスペックの高い記憶媒体があればそちらを選ぶのは自然なことなのかもしれない。例えそれが魂などという曖昧なものであっても。

 

 

それに気がついたとき雪花は一つの裏技を思い付いた。

 

『ソウル・キャスト』

 

四葉家秘匿の技術であるフラッシュ・キャストを応用したことからそう名付けた。

 

フラッシュ・キャスト は、記憶領域に起動式をイメージ記憶として刻み付け、記憶領域から起動式を読み出し、起動式の展開、読み込み時間を省略する技術だ。

司波達也の場合、意識内の魔法演算領域という特異性から、記憶領域に魔法式をイメージ記憶として蓄えることで魔法式構築の時間すら省略する。

四葉が秘匿しているような技術であり、もちろん一魔法師が真似できるようなものではない。

 

雪花がやったのは記憶領域の代わりに魂に刻み蓄えるというやり方だ。故にソウル・キャスト。そんなソウル・キャストは達也同様魔法式構築の時間を省略できるだけでなく『直接目で見た魔法を何時でも使用できる』。

 

『幻想眼』で捉えた達也ですら知り得ないような魔法の情報までも魂に刻むことでそのまま魔法式として使用することが出来るのだ。

 

ただノーリスクというわけではない。

 

『ソウル・キャスト』は所詮裏技。

無理矢理の技術であり精神、特に魂に、CADで魔法を使うのとは比較にならないほど負担がかかる為、『もう一つの奥の手』程ではないが、使用には細心の注意が必要なのだ。『ソウル・キャスト』は諸刃の剣なのである。

 

 

『予言しよう。 君は私に一度も触れられずただの一撃で華々しく散るだろう』

 

 

故に雪花は魔法を一度しか使わないと決めた。一撃必殺をコンセプトに作った魔法にそれだけ自信があった。

 

 

そんな雪花に呂剛虎は無言で突きを繰り出した。

 

『幻想眼』を発動している雪花は気配や殺気といった見えないが感じる(・・・・・・・・)『存在が曖昧なもの』を捉えることで相手の動きや考えを読む。攻撃がどこに来るのか、どうやってくるのか、分かっていれば今の雪花でもかわせる。

 

 

『ははー当たらなければどうということはないわー!』

 

 

呂剛虎の突きを蹴りをその全てをかわす。スーツに仕込まれた身体能力を軽く三倍には引き上げてくれるであろうパワーアシスト機能がなければ分かっていてもかわせない程の猛攻であった。

 

 

『君の剛気功は確かに良いものだ。その武装によってさらに増幅されているみたいだし、君自身、世界屈指の近接戦闘魔法師と言われるだけのことはある』

 

 

当たらない。幾人もの人間を、何台もの兵器を、破壊し蹂躙してきた拳が、蹴りが、全て紙一重でかわされる。呂剛虎の繰り出すフェイントも、あえて作った隙にもかからない。

まるで全てを見透かしているように。

 

 

『だから、こう思いたまえ。─相手が悪かった、と』

 

 

ただ呂剛虎の猛攻をかわしていた雪花が右手を前に出した。その手は親指と人差し指だけを立てた銃の形。

 

 

『ばーん』

 

 

雪花の言葉と同時に呂剛虎の全身から血が吹き出す。

 

 

『名付けて『爆裂解散(クリムゾン・ディスパーション)』。地獄で自慢しなよ、君が犠牲者第一号だ』

 

 

 

仮面の下で、雪花はかつてないほど全力のドヤ顔をした。




ちなみに雪花くん、幻想眼発動中はちょっと傲慢になります。普段抑えているので発動した時の開放感、万能感からです。

さて、明日も0時に投稿します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。