魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
(仮)も今となってはタイトルの一部になったのです。
この心臓の鼓動が繋いだ手を通して雪花にも伝わっているのではないかとありえないことを考えては、繋いだ手を意識してしまい、顔を赤くする。
「楽しいですね、次はどっちに行きます?」
「そうですね…左に行ってみましょう。さっきは右に曲がりましたし」
緊張しているのは自分だけではないんだということに、あずさはいつもより少し固い雪花の言動から気がついた。
そこでふと、あずさは雪花の言葉を思い出した。
『そもそも二人で行きたかったのを邪魔されてるし。凄く楽しみにしてたのに』
水波に対して雪花の言った言葉。雪花は二人で行きたかったという。そしてそれを凄く楽しみにしていたという。それはどうしてなのか。単純に仲の良い先輩と初めての遊園地へ行くことを楽しみにしていたのか、それとも…。
「あーちゃん会長どうかしました?なんだか顔が赤いような気がするんですけど」
「いえっ!大丈夫ですよ!」
「なんかテンションもおかしいですし」
「そんなことありませんよ!私はいつもこんなテンションです!イエーイ!」
「…イエーイ?」
自分でも何を言っているのか分からない程に頭が混乱する。だというのに顔は赤いままなのはちゃんと分かるのだから、あずさはいつまで経ってもいつもの自分を取り戻せない。
「本当に熱があるんじゃないですか?」
が、混乱しているのはあずさだけではなかった。もしかして自分が水波を脅して走らせたりしたから体調が悪くなってしまったのでは、と考えた雪花も同じことだった。そして、雪花はいつもなら絶対にやれない行動を起こす。
「ふぇ!?」
自分の額をあずさの額に合わせた。
自分が熱を出したときに沙世が良くやる行動であり、額がちょうど良い位置にあったというのが主な理由だろう。
「熱はない、良かったー!」
あずさはついに限界を向かえてしまった。
「あーちゃん会長!?」
つまり、意識を失った。
◆
「会長、顔赤くしてる」
「雪花くんも大分緊張しているみたいだね、手と足が一緒に出てる」
里美スバルと明智英美は水波を十三束へと押し付け、雪花とあずさを尾行していた。
「あーでも私たち何やってるんだろ、折角の休日に他人のイチャラブを尾行して」
「確かに…でもこれ深雪が知ったらどうなるんだろうね。深雪、雪花君を猫可愛がりしていたし」
「あー今思うと九校戦の時、深雪が私の制服借りたの雪花君に着せるためだったのかも」
「いや、いくらなんでもそこまではしないだろ…とは言えないな。僕たちが雪花君に女装させようとしたときも嬉々として仲間に加わったしな」
スバルが苦笑いしながら答えると、何やら英美が興奮した様子で袖を引っ張ってくる。
「スバル!二人がキスしてる!」
スバルが英美の指差す方を見てみるとたしかに二人は重なっていた。さらにあずさの顔は遠目でも分かるほど真っ赤だ。
「これは流石に見てはいけないところを見てしまったんじゃ…」
「スクープだよスクープ!二人はやっぱり付き合ってたんだよ!」
「マスコットカップルか…和むな」
もし、幻想眼を使っていたのなら二人の視線に気がついただろう。しかし雪花は気絶したあずさに手一杯でそれどころではなかった。
どうしよう!と一通り慌てた後、あずさをベンチに寝かせて自分の膝に頭を置く。
「キャー!膝枕!膝枕してる!」
「雪花くんだと違和感がないな」
二人が尾行を止め、あずさに膝枕をした雪花も眠りにつくまで、後三十分。
◆
『人違いです』
あずさが雪花に初めて会った時、そう言われて簡単に信じてしまったのは雪花が女の子にしか見えなかったからである。その部屋には男の子が泊まっているということを知っていたのにも関わらず、だ。
まるで人形の様という使いふるされた表現がぴったりな容姿。声も中性的というよりは女の子寄りで、その容姿にぴったりなものだった。
それがどうだろう。
二人で出かけることを意識して、お洒落して、手を繋げばドキドキする。
いつの間にか雪花を男の子として意識していたのだ。
可愛いと思う。でもそれは同姓に向けた可愛いとは違う感情でもあった。
その感情がどこからくるものなのか、考えてみる。
考えて、考えて、その答えが分かったとき、あずさは閉じていた目を開いた。
「あっ起きました?寝顔可愛かったですよ?」
するとそこには、視界いっぱいに雪花の顔があって…さらに可愛いとか言われて…。
「雪花くん!結婚しましょう!?」
気がついたらそんなことを口走っていた。
あずさ、爆発。
次話でワンダーランド編は終了です。たぶん。
さて、明日も0時に投稿します。