魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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学校製という意味ではありません(笑)


メイド・イン・スクール

中学三年生、それも二学期からの転校ということもあって水波は注目を集めた。初めはその整った容姿で話題をさらい、次にその優秀な成績と運動能力でファンを増やし、最後にクールな性格で心を掴んだ。

クールビューティー、それがこの中学校での水波のキャラだった。

 

 

「うふふ、水波さんおはようございます」

 

「…おはようございます、泉美さん」

 

 

七草泉美。水波は彼女に自分のキャラを崩しかねない秘密を知られていた。テンションが普段以上に落ちる。

 

 

「あら、元気がないですわね、心配しなくても言いふらしたりはしませんわ。学校で私だけが知っている秘密って素敵じゃありません?」

 

「…そうですね」

 

「まあ、私もぬいぐるみだと思ってもっとフレンドリーに接して頂きたいですわ、みーちゃん?」

 

 

殴りたい、がそんなことをすれば七草的にも、秘密的にもまずいことになるのは分かっているので我慢する。

 

 

「ギャップがあって可愛いと思いますわよ?」

 

 

さわさわと肩や腹を触られるもいつものように振り払うようなことはしない。今の水波には耐えることしか出来なかった。例え泉美の顔が不自然に赤く、息切れしていても、だ。

そこに、救世主が現れる。泉美の双子の姉、香澄である。この学校で唯一、泉美を止められる女子生徒だった。

 

 

「香澄さん、これどうにかしてもらえませんか」

 

「ちょっと泉美ちゃん、水波さんが嫌がってるでしょ!ほら離れて!」

 

 

しかし、そんな香澄もクラスは別。当然、いつもいつも助けに入れるわけではない。

 

 

「次は体育ですわね、水波さん一緒に着替えに行きましょうか」

 

「遠慮します」

 

 

貴女みたいな危険人物と一緒に着替えなんて出来るかよ、という言葉を飲み込んでソフトに返す。

 

 

「ふふ、恥ずかしがって可愛いですわね、でもあんまり断られると傷つきますわ」

 

「そうですか」

 

「ええ、傷ついてクラスメイトに泣きついてしまうかもしれません…みーちゃんが仲良くしてくれない、と」

 

「泉美さん、行きましょうか。私と貴女の仲じゃないですか」

 

 

水波は笑顔で泉美の肩に手を置くとそのまま二人で更衣室に向かう。ついに桜井水波が七草泉美に落とされた。そんな噂がその日の放課後の内に広まった。

 

 

 

 

 

水波がぬいぐるみに話しかけるようになったのは両親を亡くしたころ。寂しさを紛らわせるために幼き日の水波が自然とやっていたことだった。みーちゃんというのはその頃の一人称だ。大人びているとはいえ中学生。両親もなくその代わりとなる存在もいなかった水波にとって、ぬいぐるみを集めて部屋をいっぱいにすることは家族の温かさを求めての行動だった。

 

 

「水波ちゃん、あの画像データってなんだったの?さすがに着替えとか盗撮せれてたら削除するように沙世さんに言っとくけど」

 

「……そういうのじゃないので」

 

 

水波がぬいぐるみを集めるのには単に可愛いものが好きだというのもある。そんな可愛いものが好きな水波の普段の服装は意外にもボーイッシュなものが多く、スカートを穿くのはメイド服や制服の時くらいだった。

それは単純に恥ずかしいからであったり、自分のキャラじゃない、と周囲からの視線を気にしているからだ。

実際、水波は結構な少女趣味だった。フリフリとした服は大好きだしゴスロリとかごてごてしたものも好きだった。結果、一人きりの部屋で着てみては鏡の前で悦に浸るのが趣味になっていた。それを盗撮されていたのである。水波にとって死んでも知られたくないことだった。それこそ、ゴスロリでぬいぐるみをぎゅっとしながら悦に浸っている自分、なんてものは特に。

 

 

「なら良いんだけどね」

 

 

実は雪花にゴスロリを着せてみたいと思っている水波。脳内で色々な服に着替えさせていたりする。

 

 

「じゃあ、ぼくもう寝るから。おやすみー」

 

「御休みなさいませ」

 

 

そんな雪花をこちらに引き入れる。それが今、水波に与えられた任務。沙世がいない今は絶好のチャンスだった。雪花はぬいぐるみ。そう思うようにして水波はすっかり雪花が眠った夜中、雪花の部屋に忍び込む。忍び込むと言っても朝起こす都合で部屋の合鍵を預かっている水波にとっては簡単なことだった。そしてそのまま雪花のベッドに潜り込む。

 

 

翌朝。

 

 

「ちょっ!?みみみ水波ちゃん!?なんでいるの!?というか裸!?何これ夢!?」

 

「昨日は激しかったですね…」

 

「別に何もなかったよっ!顔赤くするの止めてくれないかな!?」

 

 

シーツで体を隠し顔を赤くする水波に状況が分からず混乱する雪花。

そして水波が侵入した時、鍵が開けっ放しになっていたドアが開けられる。

 

「雪花、朝から何を騒いでいるの………私、仕事があるから」

 

「母さんちょっと!誤解だよ!?」

 

「私、今日は病院に行ってきますね、あなた」

 

「本当にこれ何!?新しい嫌がらせ!?」

 

 

水波の添い寝は沙世が帰ってくる日まで続いた。




次話から来訪者編、というわけでついに彼女が再登場です。
中々優遇していきますので、しばらくは彼女の独壇場となるでしょう。

さて、明日も0時に投稿します。

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