魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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会話重視ですが、今までで最長となりました。


雪花逃亡中

東京某所とあるホテルの一室にて。

 

 

「水波ちゃん、ぼく彼女いるじゃん」

 

「いますね、ちっこいのが」

 

「これってさ、浮気に入ると思う?」

 

「入りませんね」

 

「だよねー」

 

 

雪花はベッドの上で水波に膝枕されていた。その黒い髪を水波に撫でられ目を瞑っている。

 

 

「…水波ちゃんの恥ずかしい音声データを流すためにハッキングした時、気がついたんだよね。他にもハッキングしている奴がいることに、さ」

 

 

雪花がハッキングした時、ワンダーランドの監視カメラの映像を何者かが盗み見ていることに気がついた。そしてその犯人が四葉で自分を狙っているのだということにも。

 

 

「それで、あの指輪を?」

 

「うん、あーたんに何かあったらまずいからね。自然なタイミングで常にあーたんが身に付けそうなものを本人にも気がつかれないように渡すにはあのタイミングしかなかったから」

 

「本人には狙われるかもしれないこと、伝えた方が良いと思いますが。警戒しているのとしてないのでは対応が随分違うと思いますし」

 

「駄目だよ、あーたんがビビって泣きそうなのも可愛いけど、やっぱり笑顔が一番なんだから」

 

「ノロケですか、このロリコンが」

 

「あーたんは高校生だよ!」

 

 

ガバッと起き上がって反論するも、すっと水波に元の姿勢へ戻される。

そして頭を撫でられふにゃりと力が抜ける。

 

 

「大体その指輪の『赤い糸』も良く理解できないんですが」

 

「話したでしょ、ぼくの『幻想眼』で指輪の位置と、その持ち主に危険が迫っていないかが分かるって。まあ範囲は狭いし今までリーナの方は見えてなかったんだけど」

 

「ある日突然見えるようになった、と?ふぁんたじー・さいと(笑)で、ですか?」

 

 

幻想眼を小馬鹿にしたように感じたのは気のせいだ、と思うことにした雪花はそのまま話を進める。

 

 

「うん、ただその位置が動かないから常に持ち歩いてるわけじゃ無いんだろうけど」

 

「国内、それも近くにいるってことですか?」

 

「リーナが無くしてそれがたまたまこの辺に流れ着いたって可能性もないわけじゃないんだけど…見える感じ的にたぶんリーナなんだよなー」

 

「うわ、雪花様変態ですね」

 

「なんで!?というか水波ちゃんちょくちょく悪口挟んでくるよね!?息をするように毒吐くよね!?」

 

 

今度は起き上がるだけでなく距離をとって反論する。が、水波はふっと鼻で笑うと何事もなかったかのように話始めた。

 

 

「リーナさん怒るんじゃないですか、大事なものだったんですよね?」

 

「スルーですか…うん、リーナなら分かってくれる…かなー、なんか大泣きしてヘビィ・メタル・バースト乱射してきそうな気もするけど。あれヤバイんだよね。一回見たけど使う気にならないもん」

 

「私なら取り合えず殺しますけど」

 

「くりむー逃げて!この娘ヤバイよ!バイオレンスだよ!殺されちゃうよ!」

 

「なんでそこで真紅朗さんの名前が出てくるんですか?」

 

「…くりむー」

 

 

意中の相手に全く意識されていない友人に心の中で合掌する。中々会う機会もなければ、久々に会えるかもしれなかった論文コンペでも会うことが出来なかったのだから仲が伸展していないのも無理はないのかもしれない。真紅朗は性格的に自分から連絡するようなことは出来ないからだ。

 

 

「まあ、指輪のことは分かりましたけど、私たちはこんなにのんびりしてて良いんですか?」

 

「一応、四葉にあーたんに手を出さないよう言ってきたけど安心は出来ないし、近くで護衛したいところなんだけど、ぼくが近くにいることでより危険になる可能性も高いから、今は沙世さんに任せてる。下手にぼくらが動いて被害が拡大するより安心だ」

 

「葉山さん半殺しにしちゃいましたしね」

 

 

苦笑い気味に言う水波に雪花はうーん、と考えるが結局誰のことだか分からなかったらしく水波に質問する。

 

 

「それどの執事さん?あの時適当に何人かやったから覚えてないんだけど」

 

「うわー人間のクズですね」

 

「ストレートな悪口止めてくれるかな!?」

 

「ちび」

 

「怒るよ!?ねぇ!怒るよ!?」

 

「嫌がらせで当主様の下着を屋敷中にばらまくような人はクズだと思うんですが」

 

 

本気で蔑んだような眼で見られ、たじろいだ雪花は「あれはたまたま」とか「そんな気はなかった」とか冷や汗をだらだらと流しながら言い訳した後、それでも蔑むように見てくる水波にじゃあと言葉を返す。

 

 

「じゃあクズは良いよ認めるよ!でもチビは認めないよ!ぼくよりちっちゃい人だってたくさんいるよ!」

 

「…一校の男子で居たんですか?」

 

「……探せば居るよ!たぶん!きっと!」

 

「……ドちび」

 

 

ボソッと呟かれた一言に心を折られた雪花は体育座りで落ち込んでしまう。

 

 

「ぼくにもね、優しさって必要だと思うんだ。もっと甘やかされるべきだと思うんだ」

 

 

一通り落ち込んだ後、完全放置されていたというのに立ち直ったらしい雪花が酔っぱらいのように水波に絡み出す。

 

 

「大体水波ちゃん、敬語はデフォだとしても、雪花様は止めない?もうメイドじゃない(・・・・・・・・)んだし」

 

「じゃあ何て呼びます?」

 

 

面倒そうに水波が返す。

 

 

「お兄ちゃん一択で」

 

「黙れ変態」

 

「酷い!ちょっとふざけただけじゃん!八割本気だったけど!これくらい良いじゃん!」

 

 

涙目の雪花に水波は一言。

 

 

「おい、雪花」

 

「ぼくは逃亡犯か!いや四葉から逃亡中だけど!というかまさかの呼び捨て!?」

 

「ワガママですね、じゃあもうゴミで良いですよ」

 

「どの辺を譲歩したのかな!?じゃあの意味が分からないよ!あれ!?ぼく結構水波ちゃんのために頑張ったよね!?」

 

「余計なことしやがって」

 

「それツンデレだよね!?本音じゃないよね!?そうだよね!?」

 

「勘違いしないでよね!別にあんたのためじゃないんだからね!」

 

「何が!?」

 

 

逃亡中だというのに二人は結構楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば水波ちゃん、ぬいぐるみがないと寝られないんじゃなかったっけ?」

 

「無くても寝れますよ、あった方がいいだけで」

 

 

心外です、とばかりに顔を背けた水波であったが、すぐに雪花の方に向き直るとニヤリと笑う。

 

 

「まあ、今日はここにちょうど良いのがあるわけですが」

 

「ちょっと!流石にそれは…って強い!痛いよ!殺しにきてるよ!」

 

 

水波に抱きつかれたままベッドに押し倒された雪花はじたばたと抜け出そうとするが力の差は歴然。脱出は不可能だった。

 

 

「裸で寝た仲じゃないですか」

 

「なんか出る!出ちゃう!うぅ!女の子のパワーじゃないよ!」

 

「鍛えてますから」

 

「分かったから離してよ!体がギシギシいってるから!これヤバイ音だから!」

 

「一緒に寝てくれます?」

 

「もうぐっすり寝ちゃう!だから離して!このままだと永遠の眠りについちゃうよ!」

 

 

水波は力を緩め雪花を抱き締めるようにして寝ると布団を被せた。

 

 

「もうこれは完全にアウトだよ、あーたんに何て言えば良いんだ」

 

「問題ないですよ、私たちは兄妹(・・)、『家族』なんですから。ね、お兄ちゃん?」

 

 

甘えたように言う水波に雪花は何も言えなくなってしまう。水波の過去を四葉で知ってしまった雪花としては水波に家族とかいう話題を持ち出されると弱い。自分も家族と何年も離れて暮らしていたこともその要因だろう。

 

 

「あーずるい。水波ちゃんずるい」

 

「お兄ちゃーん」

 

止めとばかりに水波が涙目でお願いする。

 

 

「本当にずるい!!」

 

 

結局二人は一緒に寝た。

司波家の兄は基本的に妹には勝てないのだ。




色々伏線とか謎とかばらまきました。徐々に回収していきます。
実は色々やらかしまくってたんですね、雪花くん。


さて、明日も0時に投稿します。

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