魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
レオに見せ場がないことに気がついたりした。そして今後もなさそうなことにも。
『そこに隠れているハゲと女の子、出てきてくれないかな?』
「ありゃ~参ったな、君何者だい」
いつも通りの飄々とした顔であるもののたしかに驚いているらしい八雲が姿を現し、それに続く形で深雪も現れる。
『正義の味方』
突如現れた乱入者の答えに八雲は大きく肩をすくめる。達也の変わらない無表情からの視線が心なしか冷たくなった。
『そんな
「生憎とあまりアニメは見ない」
『それは残念、人生損してるね』
白いフルフェイスのヘルメットはシンプルなデザインで装飾の類いはなく、視界を確保するためのバイザー部分だけが薄い水色。スーツも白く所々に細かな金属部品が見え、それがただのスーツではなく何らかのギミックを積んだ特殊なものであることが予想できる。そのスーツの上から絵本に出てくる『魔法使い』が着ているような白いローブを着ており、何らかの加工が施されているのだろう、月に照らされキラキラとラメのようなものが光っている。
「…貴方、四人をどうしたの?」
何時まで経っても現れない仲間にリーナは正体不明の白い乱入者に問いかける。
『…四人?ああ、警察官のコスプレした四人ね。なんか銃向けてきたから気絶させてグルグルに縛って放置しといたよ』
自分を庇うように現れたとはいえ、乱入者は当然、自分の仲間ではない。しかしどうも達也達の仲間というわけでもなさそうだ。ならばこの変態は何なのか、と自分がかなり追い詰められているという現実を逃避するためというわけではないがリーナは考えを巡らせる。
『そんな警戒しないで、私は通りすがりの正義の味方。もう用事は済んだし帰るから』
「黙って帰らせると思うか?」
『たしかに君たちは手練れだけど、私と
飛行魔法で飛び去っていく白い仮面に達也は何もしなかった。深追いする意味もないし、乱入者の言う通り時間がない。達也以外の『吸血鬼』を追っているグループがこちらに駆けつけてくる可能性があるからだ。
「…リーナ、取引しないか?一対一の勝負だ。君が勝ったら今日のところは見逃すし俺が勝ったら訊かれた事に正直に答える。どうだ?」
達也の問いに苦慮したあげく条件を呑んだリーナに深雪が待ったをかけ、勝負はリーナと深雪で行うこととなった。
睨み合う、二人の美姫。
二人の類稀な美少女による、華麗なる決闘の幕が切って落とされようとしていた。
◆
東京某所とあるホテルの屋上。
「実に良い仕事だったよ、水波ちゃん」
『とんでもないことを私にさせますね、アンジー・シリウス、九重八雲、司波兄妹、化物の巣窟に放り込むとは』
「ごめんごめん、でもSOSがきたらすぐ助けられるよう準備はしてあったし沙世さんもついてたでしょ。おかげでわざわざ用事作って七草家にまで行ってアリバイを作れたし、今後多少は動きやすくなった」
ヘルメットを外した水波がねだるように上目遣いで雪花を見て言う。
「これはご褒美が必要ですね」
水波の瞳に不穏な気配を感じ取った雪花は距離をとる。が、じりじりと水波も近づいてきて壁際に追い込まれてしまう。
「その目は姉さんがぼくに女装させる時の目!いや、水波ちゃんまさかそんなことは…」
「前からゴスロリを着せてみたいと思っていたんですよー」
「ぼくは着ないからね!そう何度も何度も女装させられてたまるか!」
「そうですか……私頑張ったのに」
しょぼーんと落ち込みトボトボとした足取りで部屋に帰っていく水波。その様子を雪花はじっと見て、唸りながら葛藤し葛藤し…結果。
「…………………き、着るよ!良いよ着るよ!好きにすると良いよ!もう今日は無礼講だ!」
雪花は女装することを了承した。水波の悲しそうな背中を見ていられなかったのである。
雪花の言葉にパァと顔を明るくする水波。その顔を見てまあ女装くらい良いかという気になってくる雪花。
寒いから早く部屋に行こうか、と水波に一言声をかけて前を行く雪花を見て水波は薄く笑う。
計画通り、と。
変装時のスーツがグレードアップしています。
来訪者編は今までで一番の盛り上がりになる予定なので下準備がちょっと長いかもしれないです。
さて、明日も0時に投稿します。