魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
誤字脱字が多そうで心配。
日曜日、東京某所とあるホテルの一室。
ぼくは眠い目を擦りながら水波ちゃんに今日の成果を報告する。
「色々情報を集めて分かったのは最近騒がれてる吸血鬼は『パラサイト』とかいう魔性で、USNA軍から脱走した魔法師だってこと。いやーさすがスターズ、ハッキングするの大変だったよ」
「無茶してますね」
水波ちゃんが呆れたという顔でため息混じりに言う。
「それでリーナがなんでこっちにいるのか分かった。リーナはたぶん脱走兵を追って日本に来たんだ。USNA軍で偉い立場になったって前に聞いたしね」
「どうするんですか?四葉にパラサイトにUSNA軍、問題は山積みですが」
「さてどうしましょうか」
ぼくは考えをまとめるべく取り合えず四葉での出来事から思い出すことにした。
◆
大き目の武家屋敷調伝統家屋。それが門の外から見た四葉本家最初の印象。普通の家と比べると確かに広いしお屋敷と表現しても違和感がない。でもマッキーの家に比べると随分こじんまりとしていてしょぼい。魔王城みたいなのを期待していたぼくとしては拍子抜けもいいところだ。
「まあ、死の気配は魔王城と大差ないかもね」
重厚な作りの門から敷地内に入ると同時に体が重くなったと錯覚してしまうような重く冷たい空気がずっしりとのしかかった。
論文コンペから一週間後、兄と姉が呼び出されたがぼくは特になかったので安心してあーたんと遊びに出掛け晴れて婚約した日からさらに一週間。お互いになんだか恥ずかしくてこの一週間まともに話すこともなかったが来週からはイチャイチャしてやる!と気合いを入れていたところに四葉からの出頭命令が来た。当然、無視しようとしたわけだが父さんと話し合った結果行くことにした。無視したことを理由にちょっかいを出されるよりは大人しく応じた方が良いだろうという判断だ。今回の出頭命令は主に顔見せの意味合いが強く危険はないだろうし。とはいえ相手は四葉、護衛として沙世さんが付いている。もちろん水波ちゃんも一緒だ。
『謁見室』と通称されているらしい大応接室に通される。実際に四葉真夜と顔を合わせるのは初めてだ。画面越しでも相当の女王感であったが本物はもっとすごいのだろう。跪ずきなさい!とか言うんだろうか。馬鹿なことを考えていたからか、後ろに立つ水波ちゃんから冷たい視線が浴びせられているのが分かる。止めて、緊張を少しでも解すために必要なことだから。
少しだけ待っていると初老の執事さんと共に四葉真夜は表れた。形だけの挨拶をして会話をする。内容としては達也さん、深雪さんとは仲良く出来ていますかとか、横浜でのことは大変でしたねとかだ。
「澪さんが艦隊に?」
「ええ、参謀長より五輪家に出動要請があり、五輪家はこれを受けたようです」
近々愛媛の本家に帰ってしまうという話だったがこれと関係があるのかもしれない。沙世さんが必要になるくらい大変だったみたいだし。
「それにしても、水波ちゃんは
「申し訳ございません、油断しました」
「全く、使えないわね」
「…気絶させたのはぼくだよ。水波ちゃんからそういう報告があったはずだよね?」
「あらそうだったかしら?」
そろそろ歳ですね、とは口が裂けても言えない。物理的に裂けてしまうかもしれないからだ。いくら水波ちゃんを無駄に傷つけるような言動にキレかかって敬語が崩れていたとしても、それくらいの理性はある。
「水波ちゃんみたいな可愛い娘にそんなことするなんて酷いわね、どうしてそんなことしたのかしら?」
「さあ、忘れてしまいました。水波ちゃんが可愛かったからじゃないですかね」
適当に返す。ぼくが気絶させたのは当然、魔法を見られないようにするためであり、それは四葉真夜も分かっているはずなのだ、真面目に答える意味はないし答えてもこちらが不利になるだけだ。これから来るであろう本命の質問に。
「そう、なら呂剛虎を無傷で屠った白い仮面の不審者を知っているかしら」
「直接は見てませんが、話には聞きましたよ」
不審者じゃない、ヒーローだ!と頭で考えながら冷静に返す。実際、姉さんから変装したぼくのことは聞いているし、直接
とはいえ、四葉真夜はぼくがその白い仮面の奴だと半分以上確信しているだろう。でなければそもそもこんな質問は出てこない。
「水波ちゃんは実際に見ていたそうだけど、何か気がついたことはある?」
「……呂剛虎の攻撃を軽々とかわす程体術に優れており、情報強化を一瞬で破る程の魔法力を持っていました」
「他には?」
「……特には」
「そう、やはり駄目ね。貴女は失敗作かもしれないわ」
えっと、これはそろそろキレていいのかな?いや四葉真夜の目的がぼくを怒らせその実力を見ることだというのは分かってる。分かっているんだけどね、うん。でも水波ちゃんはもう知り合いでもなく友人でもないそれ以上のものになりつつあるんだよね、ぼくの中で。それをボロクソ言われればさ、怒りたくなるよね。まあ我慢するけど。所詮物忘れが酷くなってきたババアの戯れ言だし?独身拗らせちゃった若づくりババアの戯れ言だし?取り合えずババアだし!
「親の教育が悪かったのかしら、まあもう死んでるのだからどうこう言えるわけではないのだけど」
水波ちゃんの両親が亡くなっているという衝撃の事実とそれを馬鹿にしたように言うババアにそろそろぼくは限界を迎えそうだった。
我慢するんだ、ぼく。耐えろ、ぼく。
「まあ、親の教育というのはそう関係がないのかもしれないけど。だって雪花さんは優秀だものね、両親はサイオン量しか取り柄のないボンクラと、どこにでもいる凡庸な女だというのに」
あっ無理や。
「ちょっと黙ってくれるかな、殺しちゃうよ?」
「…出来るかしら?」
乱暴にドアが開けられ沢山の執事が入ってくる。真っ黒の執事服がまるでゴキブリのようだ。
「死にたくない人はお帰りを。死にたい人は─さようなら」
いくつもの魔法がぼくを襲った。
二話か三話続きます。
とにかく雪花くんが暴れるのでお楽しみに。
さて、明日も0時に投稿します。