魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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ついにきました第100話!記念すべき100話目は過去編。


雪花思考中③

四葉から脱出した後、しばらくは平和なものだった。そのおかげであーたんと一緒に初詣に行けたし。いや、うん。まさか晴れ着を着せられることになるとは思わなかったけど。水波ちゃんとあーたんがいつの間にか連携してたからね、不可避だったよ。水波ちゃんからは着ないと二人が婚約したのを司波兄妹にチクると脅され、あーたんからは可愛くお願いされてしまったらもう無理だよ。着たよ。

 

迷子になってしまいますから、とか言ってくっついてくるあーたん可愛すぎたね。でも何故かその後水波ちゃんの機嫌が悪くなって大変だったけど。

まあ本当に大変なのはこの後なんだけどね。

 

どうやら四葉は準備をしていただけみたいでそこからは襲撃の嵐。現れる刺客をちぎっては投げ、ちぎっては投げで、とても学校に行けるような状態ではなくなり逃亡生活がスタートした。水波ちゃんからあーたんとぼくが親しい仲だと報告されているはずだからあーたんは危険。というわけで沙世さんは現在あーたんの警護にまわっており、ぼくは水波ちゃんと二人でホテルを転々としていた。そんな中、吸血鬼やらUSNA軍やらと新たな問題も発生しこれからどうしましょうか、というのが今の状態なんだけど。

 

 

「取り合えず、四葉はなんとかなりそう。そのための仕込みは終わってるし」

 

「じゃあ、吸血鬼…パラサイトとUSNA軍はどうしますか?スルーする気はないみたいですし」

 

「うん、パラサイトは単純に興味があるし、USNA軍はリーナが関係しているみたいだからね、放置はしないよ」

 

 

USNA軍にハッキングをした時、さすがにアンジー・シリウスが含まれているからか人事データはとても閲覧出来なかったがパラサイトに関する情報は得られた。USNA軍もそこまでパラサイトについては分かっていなかったらしくあまり有益な情報はなかったが、だからこそ興味が沸くというものだ。

 

 

「リーナって人のこと私、幼馴染みで指輪をプレゼントしたということくらいしか知らないんですが」

 

「あれ?そうだったけ。まあリーナは水波ちゃんと同じで家族だけど…それ以上に恩人なんだ」

 

「恩人…ですか?」

 

 

きっとリーナがいなかったらぼくは何もかも分からないままどうでも良い人生を過ごしていたかもしれない。心に沈殿した気持ちの悪い感情を抱えたまま。

 

 

 

五歳の時。

 

シールズ家に来てからというものの何のやる気も起こらなかった。何をやっても楽しくないし、何を食べても美味しくない。だから何もやりたくなかった。寝て起きて寝て、なんで生きてるのかも分からないような生活だった。ただ胸の辺りが異常に苦しくて、時折冷たい涙が流れてくる、何かの病気なのかもしれないと思った。このまま死んでしまうのかもしれないと思った。それも良いかもしれないと思った。

 

 

「セッカ、また泣いてる」

 

 

笑顔が明るくてキラキラしてて星の輝きのようにも思える少女。何が楽しいのか毎日毎日ぼくのところにやって来る彼女、アンジェリーナ・シールズはぼくの涙を見て、そう言った。

 

 

「おなか痛いの?」

 

 

本当に心配そうに聞いてくる彼女にぼくは首を振った。別におなかは痛くない。痛いのは胸だ。

 

 

「なんだか胸が苦しいんだ、それに涙が止まらない」

 

 

彼女はうーん、と唸りながら考え、何かを閃いたのかパアッと顔を明るくしてぼくに抱きついた。

 

 

「きっと寂しいんだよ、家族と離れて。だから私がぎゅっとしてあげる。涙も拭いてあげる。貴方は一人じゃないのよって教えてあげる」

 

 

心に温かいものが流れ込んできて、沈殿した気持ちの悪い感情が流されていく。

 

 

「セッカはきっと優しいのね、だってこんなに温かいもの」

 

「…人間は大体温かいよ」

 

「心が、よ。こうしてぎゅっとしてると分かるの」

 

「……リーナも温かいよ…ぼくよりずっと…温かい」

 

 

ぼくの言葉にリーナはキョトンとした。

 

 

「リーナ?それって私のこと?」

 

「うん、アンジェリーナだからリーナ。アンジーより可愛いと思うんだ」

 

 

その時ぼくは自然と笑えていた。




リーナと雪花の過去その1。この二人にはまだまだ語られていない過去があるんです。


次話は『思考中』の前に戻ってその続きです。たぶん。

さて、明日も0時に投稿します。

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