しょーがないなー、ほれ! 新鮮なホモだ! 好きなだけむさぼるがいい!
あと鈴の人気高すぎ。なんでや、かわいそうだからかわいいのか。
「フランスから来ましたシャルル・デュノアです! 皆さんよろしくお願いします」
突然出てきた容姿端麗な三人目の男性操縦者に教室は大混乱。喜ぶ声もあれば男性操縦者であることに驚く声も、新刊がーとか言ってるのは知らん。触れたくない。
「あの、篠崎さんは何か知ってますか?」
「いやなんも知らん」
ひっそりと話しかけてきたセシリアに返事をする。ぶっちゃけISなんて未知でしかないものだし、たまたま乗れる男がいなかった、なんてことでも全然あり得る。
「まぁ十中八九どっかのスパイだろ」
タイミングよく男性操縦者が見つかり、たまたまIS学園に転校できる、そこには運良く同い年の他の男性操縦者がいましたと。
いや無理だろ。男装させて同い年のやつをスパイ、ハニトラで送り込んだっていう方が信憑性高いわ。
「それなら気をつけなければ」
「そうだな、アイツがホモなのか見極めないといけない」
「………………」
セシリアは呆れた顔をするが大事なことだ、俺がどれだけホモから逃げてきたと思う。あいつらは巧妙に隠れ、惑わし、近寄ってくる。
「昔、逆ナンされてついて行ったらホモが待ち構えていた。運良く逃げ切れたが巧妙な罠だった」
「………………」
なんか視線からヒシヒシと「貴方バカなのでは?」と言われてる気がするがきっと気のせいだ。ちなみに何度か引っかかってる。くそ、ホモのくせになんて頭の良い作戦をたてやがる!
「席はそこで部屋は篠崎、同部屋だ。放課後案内しろ」
「一夏、俺と部屋交換しようぜ」
何言いやがるんだこの売れ残り教師は! まだホモの可能性は残っている! なら! ホモと同部屋にするには最適解だろうが!
「え、春明の部屋を使って良いのか‼︎ あ、でもそうしたら箒と同部屋になるのか⁉︎」
「私は構わんぞ」
「う、春明の布団! でも箒と同室なら春明に魔の手が‼︎ くっ、俺はなんて優柔不断なんだ‼︎ 俺は! 弱い‼︎」
「やかましい、部屋の交換など許可はせん。あきらめろ篠崎」
「あんたそれでも血の通った人間か‼︎」
「え、えーっとよろしくね?」
好き勝手に話しても時間は進む。
チャイムが鳴る直前に「これ以上騒ぐと放課後に特殊訓練を受けてもらうぞ」という脅迫で騒ぎは静まった。
仕方がないので授業の準備のために移動、現在は更衣室の前だ。
「そういやあいさつしてなかったな、織斑一夏だ。よろしくなシャルル、いやデュノア?」
「シャルルでいいよ、よろしくね一夏」
「それであの、もう一人の」
「春明だろ? 一緒に着替えるのが嫌だって、ISスーツを服の下に着てんだ。服もカバンに詰め込んで持ち運んでるしよ」
なんか更衣室から聞こえるがすべての原因はお前なんだよなぁ。というかホモと二人きりで着替えるとでも??? 服だって残してたら何されるかわかったもんじゃないし、持ち運ぶに決まってんだよなぁ。
普段なら置いていくんだが、今日はダメだ。確認しないといけないことがある。
「それでな、春明がってあれ? 今日は先に行ってないんだな」
「新入りがいるのにそんなことするわけないだろ」
「俺の時は最初からおいていかれた気が」
気のせいでもなければ残当。逆になぜ待ってもらえると思った。
「え、あ、じゃあ僕のために?」
「な! 春明は優しいんだぜシャルル!」
「こいつうざかったら殴ってもいいぞ」
「あ、あはは」
苦笑いで済ませるとは優しい奴だな。こんなホモ適当にあしらってもその日のうちに回復するから雑に扱えばいいものを。
そんな話をして今日の授業はアリーナでやるらしい。
たどり着けば一組だけでなく二組もいた。鈴が目立つんだよなぁ、まわりに比べていろいろと小さいし。うわ睨んできた、こわ。
「今日は授業の前に軽くデモンストレーションを見てもらうセシリア、それと凰!」
呼ばれて前に立つ二人。悲しいことに個人差が際立ち涙を隠せない。
俺が世の中の不公平を嘆いているとセシリアが挙手した。
「あの~織斑先生、見本になるのは構わないのですがちょっと問題がありまして」
「? どうした、ISは整備中か?」
「いえ、鈴さんなのですが」
「調子でも悪いのか凰」
「………………なんか、うまい事IS操縦できなくて」
「原因は?」
「………………………………………………失恋」
「………………下がっていいぞ」
普段なら流すか一喝するのだが、思うところであったのか素直に受け入れる千冬さん。
えー鈴はあの日以来調子を崩したままなのだ。五反田食堂の料理を食べてホモの事実を受け入れて多少は回復したのだが、まぁなんだ。いくら代表候補生といえど学生であることには変わりない。なんなら背も昔と同じく変わらない。
たまにセシリアと訓練できるくらいには回復したのだが、いまだにホモを見るとため息が出るのだとか。脳破壊のダメージは深刻である。やはりNTRは悪い文明。
「代わりに………………篠崎」
「うーっす」
ちゃんと返事をしろと叩かれる。しゃーない、教師の姿より織斑千冬のだらしない姿を見続けてきた弊害である。自業自得なので俺は悪くない。
「そして内容だが」
どこからか響く山田先生の悲鳴。振り返ればコントロールを失ったのか暴走しており、そのままホモへと突っ込んでいった。が、無事受け止める。以前なら受け止めきれずに潰れただろうが、対鈴戦のために特訓しておりそれなりにISの操縦技術は上達している。潰れりゃ良かったが山田先生に押し倒されるのはムカつくので悩ましいところだ。
「二人の相手は山田先生だ」
「えっ!?」
驚くセシリアに、ほかの生徒もそれは大丈夫なのかと訝しむ。まー普段の態度見てたらな、仕方ないけど。
「セシリア、俺が突っ込むから動かずに援護で」
「え!? 篠崎さん!?」
黒鳥を纏って浮かび上がる。
さーて、
「もしかして、篠崎君一人ですか?」
「まさか、尊敬してる山田先生相手になめた真似はしませんよ」
「………織斑先生にはしてませんか?」
「あれはほら、親しみってやつです」
「ふふ、態度が悪い生徒には少しお説教しないとですね」
放課後の教室で一対一とかダメですかね。
生徒たちは目を剥いていた。
「ラファールの説明を、と思ったが後にするか。全員ちゃんと見ておけよ」
普段とは違い静かに、そして真面目に見つめる生徒に千冬は指示を出すが誰も聞いていない。いや聞こえてはいるが、返事をする暇がない。
それほどまでに苛烈な戦いを繰り広げていた。
「やりますね!」
「当然! セシリア‼」
「っ!」
篠崎が山田を追い、隙があるか指示が飛べばセシリアがレーザーを打ち込む。典型的な犬を使った獲物を追い込む猟だ。ただ、本来なら指導権は飼い主にあるはずだが今回は逆転している。
「やはりわたしもっ!」
「いや動かずにそのまま圧をかけ続けてくれ、っと。下手に連携するより、山田先生の警戒を分散させたい」
「くっ、………分かりました」
「頼んだぜ」
二振りの黒刀を持って追いかける黒鳥。山田の乗っているISは量産機であるラファールを改造したもの、本家よりスペックは高いものの、専用機である黒鳥、ブルー・ティアーズには及ばない。
だが、
「また逃がしたっ」
「ふふ、これでも先生なのでそう簡単にはいきませんよ?」
近づいて切る、躱した山田に追い打ちをかけようとするが、手持ちの武器で攻撃され距離をとらされる。しかもちゃんとセシリアの方に意識は向けており、背後からの攻撃であっても避ける。
学生たち唯一の弱点、経験を武器に熟練者と呼べる山田は元国家代表候補生なのだ。
息が合うようになってきたセシリアと篠崎の連携、それすらも読み取り両手に持った機関銃を片手で篠崎、片手でセシリアへと狙いをつける。同時に迎え撃つ形で山田へ黒刀と向ける篠崎。
山田が引き金を引くと、カチン、と音が鳴った。
「ふふふ、負けちゃいました」
「二対一でお互い無傷、こっちの負けですよ」
「弾切れしちゃいましたし、このままやればわたしが負けちゃいますよ」
「それが本当なら、ですけどね」
篠崎の視線の先にはセシリアに向いた機関銃。そちらはまだ、引き金は引かれていなかった。
もし仮に引いて、弾が残っていたら、この戦い初のダメージはセシリアが追うことになっただろう。二対一で先制ダメージをもらう、それだけで戦えないことは無いが、勝てるとも思えない。
「でも、篠崎君も今回遠距離武器は使ってませんよね?」
微笑む山田はまっすぐと篠崎を見据える。黒鳥は別に黒刀二刀流というわけでもなく、さまざまな武器が使える。操縦者である篠崎が使い慣れているというだけで、遠距離や中距離の銃系統も装備しているのだ。
無言でなんのことやらととぼけた顔をするが山田は変わらず笑顔である。
「そこまで! 全員降りてこい」
そして終わりを告げる千冬の指示に従って武器をしまうのであった。
いやーつえぇなー山田先生、やっぱ即席の連携じゃだめかー。もっとつっこんでも良かったかもしれないが、それだとセシリアの援護を受けられないし、最悪カウンターとセシリアの誤射があるかもだし、あー反省点多すぎ。
黒鳥をしまいながら頭の中で反省していると、近くに寄ってきたセシリアに声をかけられた。
「篠崎さん………山田先生のことはご存じでした?」
「ん、あーいろんな情報調べてた時に見つけた。あの人国家代表候補だった」
「それだけであの警戒を?」
「そりゃ同年代で日本の国家代表ってあのちっふーだぞ? いなかったら国家代表なんじゃね?」
「あ!」
いつの間にか近くに来ていた他の生徒も驚く。私生活のだらしないあの人でも一応世界チャンピオンなんだよなぁ、それがいたからなれなかっただけで恐らく実力は国家代表レベル。それ以外は山田先生の圧勝だけど。
「わたしは………お役に立てませんでした?」
「もしかして足手まといとか思ってる? そんなわけねぇよ、山田先生強いの知ってたからセシリアには控えててほしかったんだよ。二人して突っ込むと多分いいようにあしらわれて自滅、か、まとめて料理されたんじゃね?」
使ってなかったけどたぶんグレネードとか持ってただろうしなー、全然だわ。
「ありがとうございます、精進しますわ」
なんかいい顔してるな、ペットはあきらめたけど養ってくれるだけでもいいからがんばってくれ。
向こうじゃ山田先生囲まれてんなーやっぱ強いとかっこいいよな、山田先生はかわいくて強い、あと胸がデカい、なので最強。
「り、鈴ー!」
「あん?」
なんかホモが騒いでる。見れば鈴が地面に埋まるくらいにへこんでいる。
「初心者だと思って練習見てあげようか、とか言ったのに、アタシより後に始めたのになんであそこまで動けるのよ………」
「は、春明! どうしよう鈴が落ち込んだ‼」
もしかして思っていたよりも俺がIS動かせてたから落ち込んでる? つっても聞かれなかったしなぁ、別に気にすることないだろうけどふむ。
近寄って鈴の肩に手をのせる、絶望した表情で見上げてくる鈴に向かって、
「雑魚乙」
俺は笑顔で言ってやった。
その後涙を流しながら暴れる鈴を一夏が抑え、離れた位置で煽り続けたら千冬さんに殴られた。
男装少女「僕の登場回なのに出番がなかった!?」
え、ホモが出てこないって?
その気になってたお前の姿はお笑いだったぜ! ヒャッハー‼
真面目に言うとなんか書いてたら山田先生回(あとついでの鈴脳破壊)になっちゃった。普段おとぼけな人が実は結構強い(最強ではないけどぜんぜん頼りになるくらい、最強ではないってのがポイント)ってのが好きなのでね。許して。
次回こそはシャル回です。期待は砕くもの、ハードルはくぐるもの、そんな志をもって続けたいと思います。
※ 前回の話で個人的目標だった一話につき感想十件超えが達成できました、ありがとうございます。感想や評価、励みになりますのでよければこれからもお願いします。
※誤字報告いつもありがとうございます