ご注意ください。
「私は山田真耶と言います、それでは順番に自己紹介をお願いしますね~」
項垂れた頭の先からほんわかとした声が聞こえる。
頭を上げれば眼鏡をかけたいかにも穏やかで優しそうな教師。
だが注目すべきはそこじゃない。
少し動くだけで弾むその巨峰!
今までに出会ったことのある誰よりもデカいその双子山を、一秒たりとも見逃すことの無いように見つめ続ける。ゆさゆさと揺れる様子を見るだけで削られたSAN値が回復するものだ。
「では次の人お願いしますね」
揺れる巨峰だけでなく仕草も可愛らしい。今までに出会った女性は何故か強かな奴らばかりで、こんな小動物的な魅力を持つ女性もいなかった。よくよく考えて見ればここはほぼ女子高。
出会いも相手もより取り見取りなのでは!?
そんな考えが浮かんだが、それは甘い幻想だと次の瞬間に崩れ去った。
「はい、織斑一夏です。趣味は料理、好きな人、いや愛する人は
空気が凍った。
「………………………あの~今言った篠崎春明ってのは」
引きつった顔で一夏に聞く山田先生。もしかして~とチラチラこっちを見てくるが、違います。いやあってるけど違います先生。なのでそこ深掘りせずに進めてください。
そんな願いも届くことなく、元凶は満面の笑みで答えた。
「はい、そこにいる篠崎春明のことです。な! 春明!」
「「「「きゃああああああ!!!!!」」」」
空気が破裂するほどの大音量が教室で響いた。
「愛よ‼ 禁断にして純粋な愛よ‼」
「次に描く本の題材は決まったわね‼」
「そんなぁ‼ 是非とも近づきたかったのにもうすでに相手がいたなんて‼」
「ん? でも間に挟まれば逆ハーに?」
「薔薇の間に挟まる女子は極刑」
「ちくわ大明神」
「誰だいまの」
教室はてんやわんやの大騒ぎ。
普段なら耳を押さえるほどの歓声も、魂の抜けかけた自分には遠い遠い世界での出来事のように感じる。
だというのにムカつくほどのイケメンスマイルでこちらを見ている元凶も、顔を真っ赤にしてこちらを見ている山田先生、何故か絶望しているポニテ少女の顔がはっきりと見えた。
さっきまで見ていた巨峰によって回復したSAN値もゴリゴリと削れ、もはや発狂寸前といった時、教室のドアが開いた。
「うるさいぞ、何をはしゃいでいる」
再び静かになる教室。みんなの目線の先には元凶の姉であるブリュンヒルデこと織斑千冬。休日はサラリーマンのおっさんと同じでも、子供がはしゃぐくらいならお茶の子さいさい、片手で沈めることができる。仕事中は全IS乗りの憧れにしてカリスマ教師なのだ。
「「「「きゃああああああ!!!!!」」」」
やっぱそんなことないかも。
またうるさくなった教室は千冬さんによって鎮静された。
「まったく、私の教室にはこんなのばかり集まっているのか? 山田先生続きをお願いします」
「は、はいでは次の人」
さてこれはどうしたものか。
騒ぎに次ぐ騒ぎのおかげで一周回って冷静になってきた。
まず自分の目標としてはホモからの脱出だ。これが一番の理想であり、難関である。
IS学園は孤島にあり、逃げようとしてもそう簡単にはいかないだろう。ならば次はホモから狙われなくすればいい。そのためにはまず一夏の恋愛対象を俺から女にする。
………………………いや無理だな。あいつはモテるのにどれだけ告白されても動じなかった。
鈍感も大概にしろよと思ったのは数知れず、だが今思えばすでに対象は男だったのだろう。生粋のホモをノンケにするのは不可能に近い。
ではこちらが対処するしかない。
逃げる? いや無理だ、さっきも言ったがここは孤島。ミステリーなら殺人事件が起きる舞台、逃げ出すことはできない。
なら逆に考えよう、どうすればアイツは俺に来なくなるのかと。
ほかの生け贄を用意する。
しかしこれはさっきと同じ理由で不可能。
いや条件キツイな!? なんで女ばっかの場所で男から逃げることばっか考えてんだよ! 普通ならハーレムヤッホー‼ と喜ぶばかりだけで済むのに‼
………………………いや待てよ? 女ばかり?
そうだ、その手があったか………………………!
「え~っと次は、篠崎春明、くん」
「……はい」
山田先生に呼ばれゆっくりと立ち上がる。
教室の空気が心ばかり重く感じる。自分の一挙手一投足が観察され謎のプレッシャーを背負っているが、大丈夫。この天才的な閃きにより、俺はホモから逃げ出し、男のロマンであるハーレム生活を送るのだ!
「篠崎春明です、そこのホモとは何の縁もつながりもありません。女性限定で恋人、いや結婚相手を募集しています。よろしくお願いします」
フッ、言い切ってやったぜ。
自分でも分かるくらいのドヤ顔で席に着く。
ホモとは何の関係もなく、なおかつ自分の恋愛対象は女だと全体に伝える二段構え!
これで安心、はできないが一息ついて学園生活を、
「春明、緊張してるからって嘘をつくのは良くないぞ。約束したろ? 将来は俺と結婚するって」
「寝言は寝て言いやがれクソホモ野郎が‼」
何言ってやがんだコイツゥ!?
「いつそんな約束したっつうんだよ! あ゛!? 夢か!? 夢見てんなら海で溺れてそのまま寝過ごせ‼」
「何言ってるんだよ春明! 小さい頃から一緒に過ごして風呂も一緒、寝る時も一緒、ずっとこうして二人で過ごそうって約束したじゃないか‼」
「してねぇよ‼ ガキの頃から過ごしたってだけで自分の妄想に他人を巻き込むな!」
「そんな…………言ったじゃないか、俺たちは家族だって‼」
「そんなもん記憶にねぇよ」
「あれは俺たちが8歳の時、学校から帰って宿題を放り出して漫画を読んでた春明が、当時好きだったジャンガリコーンを食べながら「なんでそんなガキのころ覚えてんだよ‼ 気持ち悪いわ‼」
「春明のことなら何でも覚えてるからな、へへっ」
「褒めてねぇ‼」
結局千冬先生の出席簿攻撃によって鎮静された俺たちは休憩時間になるまで起きることはなかった。
「……ちょっといいか?」
「ん?」
声をかけられ起きると、目の前にはポニテ女子。どこか見覚えがあるが、いったいどこでだ?
「もしかして箒? 箒か?」
「………あぁ、そうだ久しぶりだな二人とも」
同じく起きてきた一夏の言葉で思い出した。昔、一夏に惚れていた哀れな被害者の一人にして幼なじみの篠ノ之箒だ。
「久しぶりだな箒! 元気だったか?」
「あぁ、うん。そうだな」
「ん? 顔色悪くないか? もしかして体調悪いなら保健室に、」
「相変わらず優しいな一夏は、いやホントに大丈夫なんだ。そのちょっと二人で話をしたくてな」
「ん? それなら春明も一緒に」
「一夏と二人で! 話がしたいんだがいいか!?」
「あ、あぁ、大丈夫だが」
顔面蒼白なのに急に力強くお願いする箒に気圧されながら一夏は教室を出て行った。
たった一人いなくなっただけなのに、なんだこの解放感は。
まるで新しいパンツをはいたばかりの正月元日の朝のよーな爽快感は………………………!
そんな晴れ晴れしい気持ちでいると、なにやらソワソワした空気を感じる。
見渡せば、どこか落ち着きのない女子がチラチラとこちらを見ている。目が合えばすぐにそらして口笛を吹く。私見てませんよーって、おい。見てただろ。バッチリ目があっただろ。
まぁいいさ。俺は一夏と違ってそんな鈍感じゃない。
俺と話してみたい、聞きたいことがある、でもちょっと言い出せない、こんなところだろう。
なら簡単だ、こっちから話を振ればいい。
席を立ち、相変わらずチラチラこちらを見ている女子たちに向けて手を広げた。
「聞きたいことあるなら何でも応えるよ」
一斉に動き出す女子たち。うん、ちょっと怖いな。
押しつぶされるのもいいが今回はちゃんと話すべきだ、そうなるとまず言っておくべきことは。
「先に言うけど俺はホモじゃないし、一夏と付き合う気も結婚する気もない」
その途端全員足を止めた。
おいコラ。
二次創作だとモッピーは一夏とくっつくことが多い。モッピー以外のヒロインはオリ主のハーレム、ヒロインになること多いのに。これはあれですね、余りもの同士お似合いなry