流石に三話投稿は無茶すぎた、次からは一話づつやっていきます
夜の旅館。学生は心浮き立ち教師は見回りに疲れ、次の日に支障を出すのが決まっている日。
そして学生たち、若い子どものお泊まりに付き物なのが、
「で、春明に惚れているのは誰だ、ん?」
恋バナである。
言い出しっぺは酒を飲んでいる中身はおっさんな教師だが。ちなみに本人は、恋人いない歴イコール年齢のそろそろ結婚相手に焦り出すべきでこんなことをしている場合ではないのでは? とは誰も突っ込まない。命は惜しいのだ。
なぜこんなことになったのかというと、食事と風呂が終わり、何故か春明の部屋に向かうヒロインズ。バッタリと部屋の前で出くわしてようやく気がつく。もはや習慣である。
部屋の主も温泉に行っているために不在、どうしようかと考えた時、
「あれ? みんなどうしたんだ?」
隣の部屋に入るホモと出くわした。せっかくなのでと部屋に誘われ、ジュースを渡される、この時に帰っておけばよかったと後悔して、
「ほら、ん、誰からでも、あ、いいぞ。そこ、それとも、あ゛ーきく、こちらから指名するか、ゔぁーそこそこ」
そして冒頭に至る。汚い声は弟にマッサージをさせている姉の声である。酷い姉だ。
いろいろと言いたいことはあるがとりあえず誰か口を開いて欲しいと視線を交わすヒロインズ。
「俺は昔から「お前はいい、ちゃんと揉め」…………」
ホモは撃沈した。別に全員知ってるし、聞きたいこともない。
視線で牽制しあうヒロインズ。早く誰かこの酔っ払いのツマミになれと。横目に映る机に広がった空き缶を見て逃げたい気持ちがさらに強くなる。
「…………そもそも思ったのだが春明に惚れているものはいるのか?」
ふと箒が声を漏らした。言われてみれば? という顔になっていくが、その中で一人だけ顔を逸らすものがいた。
「シャ〜ル〜」
「ヒィ⁉︎」
悪どい顔をした鈴がシャルの肩を組む。おもしろいものを見つけたという顔だ。ぼっち温泉を楽しんでいるものがよくする顔でもある。
「え、み、みんな?」
助けを求めるも顔を逸らされる。味方はいなかった。
「一番手はデュノアか、話してみろ」
そのまま部屋の主に認定された。肩と顔を落とすと、顔を赤くしながら口を開く。
「……さいしょは、なんか変な人だと思ってたんだけど、気さくに話しかけてくれて」
そこで顔をあげると興味津々と言った視線が全員からむけられている。注目を浴びて恥ずかしさが全身いっぱいになると茹った顔で叫び出した。
「ボクの抱える問題全部解決して寂しかったのに一緒に遊んで寝てくれて‼︎ ここまでされて惚れない方が無理でしょ‼︎」
勢いのまま部屋の隅に行き頭を抱えて丸くなった。うっすら見える耳が赤く、あのあたりだけ温度が高い。
いいものが聞けたと満足気な千冬が次に顔を向けたのはラウラだった。
「きょ、教官、わたしは以前話したので」
「コイツらは聞いてないぞ」
そしてさっきまでシャルに向けられていた視線がラウラに集中する。
「…………っ! ならわたしだけでなく教官のことも「ジュースでも飲んでろ」わふっ!」
しかしラウラ、これを道連れにする形で防ぐ。
「そういえばラウラさんはあの事件以降、推しという感情があるらしいですが」
「うむ、春明にはいろいろと救われてな、この感情が何なのか考えたが知り合いのいう『推し』という感情が一番だと気がついたのだ」
「……じゃあなんで恥ずかしがったのよ」
「その、なんというか、きっかけやどんなものなのかを話そうとすると緊張してしまってな」
頬に朱が差し込み出すラウラ、見ていた全員がそれもうアレじゃん、と思ったが口に出すことはなかった。
「わたくしもそうですねぇ、一度ペットとしてオルコット家に迎え入れようとしたのですが、断られてしまい、それくらいですかねぇ。今でも望まれるなら良いのですが」
ちょっと毛色が変わったなと思いきや事実なので誰も何も言わない。なお、その心が家族が増えるのは嬉しい、という思いなのは誰も気がつかない。
「他の男ならどうすんのよ?」
「春明さん以外はちょっと、鈴さんは何かないのですか?「そうだよ鈴が一番おかしい」復帰するの早いですわね」
セシリアが話をふると即座に食いついてくるシャル。男女の距離感を誤解させた本人であり、一番のライバルと思っている。
「なんかティナも、同室の子なんだけど、しょっちゅう聞いてくるわね。一緒に寝て服借りて身支度手伝わせるくらいで、別におかしいとこないでしょ?」
「うん、そこだね」
真顔で突っ込まれても心当たりがない。確かに出会った頃はそれなりに男女の意識はしていたが、再会する前からお互いに気にしなくて良いと思っている。いまさら裸を見ても見られてもどうしろというのだ。
「う〜ん、昔は一夏に惚れてたけど今こんなので何か思うこともないし、将来は中華料理メインの飲食店したいからそこで雇う予定ってくらい? 寝床とご飯用意したらついてくるでしょアイツ」
サラッと将来設計に組み込まれている。しかもわりかしありそうなので、シャルは冷や汗をかいた。やはり貰ったアドバイスの通り、穴を開けるべきか考えていると、
「そういや昔、箒は春明と一緒に道場したいって言ってたよな」
思いがけない爆弾が落ちてきた。
「はっ⁉︎ 一夏それは‼︎」
「ほう、私も聞いたことがないなそれは」
ここぞとばかりに食いつくブリュンヒルデ、先程までま、まぁ、最終的には自分の元に来るだろう、来るよな? と内心で不安になっていた者とは思えない態度である。
「〜〜〜〜っ、昔、本当に昔のことだ‼︎ 二刀流を頑張っていたから、その、父が、わたしは一刀流を、春明が二刀流を教えて…………継いでくれたらいいと、小さかったからよく分からず良いと思って、春明を、誘った…………」
声とともに体も小さくなっていく箒。長い髪が顔を隠し、その表情は外から見えないが、
「確か、箒さんのご実家が道場をやってらしたんですわよね」
「ともに家業を継ぐか」
「えっ、それって」
「婿入りね」
鈴のストレートな言葉が箒に刺さる。そのまま横に倒れて顔を隠す。
「いっそ殺してくれ…………」
「何よ、あんた一番かわいい話持ってたじゃない」
「まだありそうだね、一夏他にはないの?」
「えーっと確か夏祭りで、迷子になった箒を春明が見つけて手をひいて帰ってきたことが」
「クラリッサに勧められた少女漫画でそのようなシーンがあったな」
幼なじみという立場から出てくる幼い頃の思い出。盛り上がっていく中でコロセと呟く機械になった箒。そして、え、そんな思い出私にはないのに、というかツマミがてらに聞いたら惚れてるやつ結構いるな、真耶も最近差し入れとかISの模擬戦相手とか距離が縮んで下の名前呼びになってるし、と内心冷や汗をかいていた飲んだくれがいた。話は夜遅くまで盛り上がり、次の日は寝坊して慌てて準備をしたのであった。
ちなみに同時刻の春明の部屋では、春明のお酌をしてくれという言葉から謎のノンアル飲み会が始まっていた。
「ホント頼むんで写真消してください」
「ふふ、そうですねぇ、せっかくのカッコいい写真ですし、待ち受けにして千冬にも送りましょうか」
「何で仲良いんですか……」
お酌をされている方が頭を下げる不思議な状態、さっきちょっとカッコつけた時に撮られた写真が人質となり春明は項垂れていた。
「千冬とは数年前に事前調査で泊まった時に仲良くなってね、今年は男を連れていくから部屋を特別に用意してくれって言われてビックリしたけど、まさか車酔いしてるなんてね」
「ちくしょうそれもあったか」
弱みも握られ対人戦も職業と年の功で丸め込まれ、春明はなすすべなくおもちゃにされていた。
のだが、
「えーもうめっちゃ若いし肌もハリがいいし食べちゃいたい」
「女将さんもキレイでしょ」
「違うのよ! もうお化粧品とか使わないと誤魔化せないの、何か使ってたりする?」
「んーシャルが置いていった化粧水とか? よく忘れるけど」
「それだけですむでしょ! それがすごいのよ、というかシャルって女の子? 置いて行ったってなに? 泊まってるの? おばさんその辺りすごく気になるわ」
珍しい若い男の子相手で女将が暴走、おばちゃん絡みをしていた。春明は基本人と話すのは好きなので問題なく対処、最終的には若さに嫉妬した女将が敷いてあった春明の布団で不貞寝、どうしようもないので春明も混ざって寝たのだ。なお雰囲気に酔ってはいたが酒は飲んでいない。ちょっとテンションが上がっちゃっただけである。
起きた時、やっちゃった⁉︎ と焦ったが服も相手もそんな様子はなかったのでとりあえず口止めを約束。サボりがバレないよう、と誤解した春明に助けられた。お礼代わりに本来ならメニューになかったジュースを追加、それに気がついた春明はひと息で飲んで遅刻が確定しながら歩いて出る。
そして見つけた天災ウサギに飛び掛かるのであった。
急遽追加された女将さんシーン、名前あるそうですが別にいいかとそのままです。
さーてようやく次回ゲロ登場した天災の出番です。ご期待はしなくて大丈夫です。