簪編長くてホモ要素が少ないです、タイトル詐欺言わないでかわりにのほほん女子出すから。
タッグマッチというのに相方がいない、これはどうしたらいいものか。
とりあえず千冬さんへ連絡、順番を後の方へ回してもらうことになった。これで時間は稼げたので、どうするかを考えながら端末を触りながら歩き出す。
同日、更識簪は引きこもっていた。
ISも完成し、マスクドライバーを異性と一緒に見て晴れやかな気持ちだったが忘れていた。自分は人見知りの陰キャなのだと。
大勢が見ている中でISを操縦して戦う、そんなことできるわけがない。これまで専用機がなかったが故に気が付かなかったことだ。もっと早く気が付いていたら不参加だと言っておけた、言えるかはさておき。
更識家の次女であり、カッコいいと思って乗ったISには少しだけ、そうほんの少しだけ才能があった。けどそれも意味は無い。日本で生まれたのにロシアの国家代表と成れる姉がいたのだ。それだけじゃなく、それ以外のことでも姉には才能がある。
「あなたは無能のままでいて」
昔、姉に言われた言葉だ。これ幸いと簪は引きこもった、簪に野心も見返す度胸もないのである。
姉との比較? 昔から分かっているので今更何とも。
家の仕事? したくない、何なら働きたくない。
打鉄弐式? 後回にされたショックはあった。だが自由にいじれると聞いて喜んだ自分がいる。それどころかISの整備があるからと青春イベントから逃げられたのはラッキーだと思ってた。
ISも乗りたいかと言われたら乗るのは楽しい、だが代表候補生になるとは思って無かったというのが正直な気持ち。目立つし責任も重いし特訓の時間でマスクドライバーを見る時間が減ってしまう。
更識簪は典型的な内向的オタクである。向上心も反抗心もない。ただマスクドライバーの間違った情報に食いつきたくなるオタク心は人並み以上にある。他にあるものは唯一無二で大事な友達である本音と、謎に強化された打鉄弐式神雷とマスクドライバーグッズである。
欲しいものといえばマスクドライバーの新商品と、
「あ~かんちゃんみ~っけ」
「……………………本音」
ドアが開き、自分のたった一人の友達が顔を見せる。中に入るとドアを閉じ、部屋がモニターの明かりだけになる。簪がいたのはいつもの自室。整備室でもトイレなどでもなく、いつもと変わらない安定の地である。モニターではマスクドライバーから火花が散っている。
「も~いなくなったからみんな困ってたよ~」
プンプンと怒りを全身と顔で表すが本人の気質も相まってかわいくしかない。
「いくら人前に出るのが苦手だからって~急にいなくなるのは良くないよ~」
何も言い返せない正論に簪は被っていた布団を閉じた。モニターが見える程度に前は開けておく。本音は呆れた。
「……………………しのきーは、待ってるよ」
小さく呟かれた言葉に簪の肩がピクリと反応した。
「しのきーにかんちゃんのこと相談したのはわたしだけど、……怒ってる?」
フルフルと首が横に振られる。感謝こそすれど怒る理由など簪にはない、自分のことを思ってしてくれたと気が付いているからだ。
「……………どうしてそう思ったの?」
ここでようやく簪から言葉が出てきた。
「いつものかんちゃんなら、サボっても何も思わないでしょ。布団も被らず堂々と見てるよ。顔まで隠してるのは何か思うことがあったんだね」
いつもならもっと笑顔で見てるよ、そう言った本音は優しい笑顔で簪を見つめた。部屋に沈黙が訪れる。本音は知っている、いつもの逃げるための無言ではなく考えている無言だと。簪は優しいのだ、焦って変なことを言わないように考えて話す。脊髄反射で口から出るほうが多いが。
「……………篠崎くん、は、すごい」
うん、と本音は頷いた。
「わたしには、あんなに知り合いもいないし、行動力もない。すごいと思う。なんでわたしなんかに構うのかな? と思ったけど、本音が頼んでくれたんだなって思った」
たまたまわたしを見つけて惚れたから手伝ってくれたのかとも思ったけど、という呟きは口に出してないつもりだったが出ていた。バッチリ聞いていた本音は額に青筋を浮かばせた。友人といえど言って良いことと悪いことがある。
「一緒に夜通しマスクドライバーを見た時に話したんだけど「ねぇ見ただけ?」え、うん。たくさん見たよ。雷王から始まって風牙から最新のArtsまでたどり着いて今度のニチアサも一緒に見ようって言ってくれて「わたしも見る」ヒィ!? も、もちろんいいよ」
時折り差し込まれる本音の圧に簪はビビりながらも話す。要領をえない説明で脱線も多いので纏めると、
「かんちゃんはしのきーが羨ましいの?」
「…………………………」
それは無言の肯定だった。
篠崎が整備室に入るようになっても簪は最低限の会話、それも篠崎が間に入って話すことが多かった。おんぶにだっこだった。とてもありがたかった。楽であれば楽であればいい、そう思っていたのだが、
「……………まぶしかった」
自分のやりたい事があって、そのために手伝ってくれる人たちがいて、自分なんかを助けてくれて、これはもう、
「ヒーローだなって思った」
優秀である姉に劣等感はあれど飲み込むことはできた、だが出会ってすぐの篠崎へ対して生まれた不思議な気持ちは気が付いたらずっと心で燻ぶっていた。気が付けば目で追って、言いたい言葉を出せないでいた。この時ほど自分のコミュニケーション能力を憎んだこともなかった。
そんな時、一緒にマスクドライバーを見ていた時に篠崎に言われた。
「簪はヒーローになりたいのか?」
その言葉は今までのモヤモヤなど最初からなかったかのように心にストンとハマった。
「わたしも、ヒーローになりたかったんだ」
画面の向こうで誰かを助けるカッコいいヒーローになりたい、あと少しはチヤホヤされたい。
簪にとって篠崎はヒーローに見えた、だからそう、悔しかったのだ。わたしもそうなりたいと、悔しいので言わなかった。あと一緒にマスクドライバーを見てくれる人がいなくなるのは嫌だった。ミジンコだったので口に出す度胸もなかった。
「助けてくれたのに、悔しいから一緒にいたくないって言うのはいやだ」
だから逃げた。
簪はヒーローではないのだ。画面の向こうのように誰かを困らせる敵ではなく、自分を助けてくれたヒーローに勝ちたいなど、ヒーローではないのだ。今では本音の次に頼りになる一緒にいて欲しい相手だが、そんな相手に感謝ではなく悔しいと思うのも嫌なので逃げた。ホントはタッグマッチも篠崎が一緒なら出ても良いとは思った。でも頼りたくない、勝ちたい、でも一緒に出てほしい。そんな我がままを言えるほど高尚な人間ではないので、おずおずと部屋に引きこもった。
簪はヒーローにはなれなかった。
「だから、その、本音から「しのきーから伝言あるよ」ごめんって、え?」
もしや罵詈雑言が来るのだろうか、来るだろう、それだけのことをしたのだ、とりあえず自分の命を差し出して許されないだろうか、と一瞬でここまで考えた簪が溶けだしていくが本音は構わず伝えた。
「マスクドライバーごっこしようぜ、だって」
被っていた布団がずり落ちた。あっけにとられる簪の顔が出てくる。
「わたしもしのき~のことヒーローみたいだね~って言ったんだけどね~? しのき~は自分のことヒーローって思って無いんだよね~。できること、やりたいことをやってただけで結果的に助かっただけだって」
それならわたしは絶対に無理だ、口に出さず簪は思った。
「かんちゃんならできるよ」
間違いなく口に出していなかったのに目の前の友達は言ってくれた。
「いまね~しのき~はタッグマッチなのにひとりぼっちでこまってるんだって~。しのき~も分身はできないから助けてほしいんだって」
それは間違いなく自分のせいだ。それを助けてもマッチポンプにしかならない。
「ふっふ~みんなかんちゃんとしのき~がペアだと思ってたけどね~実はそもそも提出されていないのだよ~」
「え?」
普通に声が出た。さっきまでの神妙な空気などない素の声だった。
事実、篠崎と簪のペアは書類が提出されていない。千冬も話は聞いていたので既に提出されていたものだと思っていたが、本日順番を変えようとして組み合わせに割り振られた番号を確認して驚いた。なかったのである。簪は普通に知らなかったし篠崎はマスクドライバーを見ていて忘れていた。なんでもない普通にミスである。
「だけど二人が参加する予定でスケジュールは組まれてるから~このままだとしのき~はひとりぼっちで出場なんだよね~」
簪は震えた。周りが二人組を作っている中で一人でいるのだ。さらに最悪の手段である先生とのペアも今回はできない。その恐怖は想像するだけで簪にダメージを与えた。
「こまったな~どこかにたすけてくれるヒーローはいないかな~?」
わざとらしい、棒読みもすぎる演技である。
それでもヒーロー希望の少女にはちょうど良かった。ゆっくりとベッドからおりる。ノリで改良された元はクリスタルの指輪だった待機形態から、ベルトのバックルになった打鉄弍式神雷を用意する。
「にひひ~あ、これお守りね」
友達から渡されたお守りを持って少女は部屋を出た。
そして震えながら帰って来た。やっぱり怖いのである。
その後も少し出て素早く戻ってくるを繰り返していた。アリーナではタッグマッチが順当に進んでいる。
ホモよりこういうヒーローものとか書きたい。でもホモより見られるかと言うと難しい、うーむ作者の技量が試されるのである。
実際サブタイトルがホモ関係ないと閲覧やアレコレ下がるんですよね、やっぱホモしかいねぇなハーメルン。
感想、誤字報告いつもありがとうございます。作者はUSBメモリで返信するライダーの時に差し込みスロットを増やして三つ同時に使える妄想をしていました。今考えると多分爆発しそう。