IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 主人公散々ラスボス扱いされて笑う。でもしょうがないよね、新登場=無双なんのにピンチになるとか限られた悪役しかできないもん。

 

 さて結末やいかに、今回で簪編閉幕です。


誰かのひーろー

 誰もが終わったと思った。

 

 初撃の「山嵐」とは違い、全弾が黒鳥に命中していた。心配するものはおらず、やりすぎたかと冷や汗をかいたのは簪だけだった。箒も一夏もやってやったと内心ガッツポーズを取っていた。

 

 だが、

 

「やってくれたな」

 

 人よりもロボットの姿に近くなった黒いISを纏った春明が、煙の中から現れた。

 

「興がのったぞ、楽しませてくれた礼に披露してやる。光栄に思うがいいこの姿を見たのは貴様で二人目だ」

 

 即席とはいえそれなりの連携プレー、会話もほぼ初めてでぶっつけ本番。簪に至っては会話をするだけで称賛されるべき状態なのに、それ以上をやってのけたのだ。

 

 その行動が春明の心に火を点けた、

 

 

 

「─────点火(イグニッション)

 

 渡鴉(レイヴン)が姿を現した。

 

 

 

 

 

「え、ピンチの時に変身するのはヒーロー側の約束、でも悪役がするのはそれはそれでありだけどちょっと強すぎるしカッコ良すぎるからもうちょっと抑えてほしいと思うんだけど生意気なこと言ってすいません」

 

 渡鴉を見た簪は早口で何かに謝っていた。

 

 普通のヒーローものならさっきので終わりではなかろうか? いくらなんでも強すぎないだろうか? というかその第二形態カッコいいので詳しく教えて欲しい。

 

「やったぜ簪!」

「成し遂げたぞ! 簪のおかげだ‼︎」

 

 そんな簪を一夏と箒が挟み込んだ。

 

「グエッ」

 

 決して年頃の女の子が出してはいけない蛙が潰れたような声が出たが、二人は気にしない。日頃、春明との訓練でボコボコにされた挙句奥の手である渡鴉を使ってもらえたことがなかったのだ。隠しはしているが使わないとは言っていない、そういうスタンスなので別に訓練でも使う。ただそこまで引き出すことができてないだけなのだ。

 

 なので遊び半分でのノリとはいえ、渡鴉を引き出せたので二人は喜んでいる。

 

 もっとも簪は知らないし、リア充挟まれた恐怖しか感じていない。立役者ではあるのだが。

 

「喜んでいる暇があるのか?」

 

 肩に現れたマシンガンの掃射をかろうじて避ける三人。

 

「え、な、にあれ」

「春明の奥の手! 基礎スペックがめっちゃ上がってる‼︎」

「あと切り札に雷を纏うぞ! 気をつけろ‼︎」

 

 そんなのすごくいいじゃん。

 

 簪の心に火がついた。何かと聞かれればこう答えるしかない、ロマンだと。

 

「さぁ足掻いてみせよ」

 

 空中からマシンガンとロングライフルを撃つだけ。だというのに先読みされ、頭を抑えられ飛ぶことすらままならない。

 

「このままだと何もできずに終わるぞ⁉︎」

「遠距離武器を使う暇が……!」

 

 焦る箒と一夏だが、ここで起死回生の一手を持つ者がいた。

 

「え、えいっ!」

 

 背後を向いた撃つ方向を変えた「山嵐」が渡鴉へ向けて発射される。が、それに気を取られることなく撃つ手を止めずに回避、やり過ごした。

 

「なに?」

 

 と、思ったがさらに追撃。時間差でありさっきまでとは違う方向からである。これにはたまらずマシンガンで迎撃、爆炎が届くことはなかった。

 

「そぉらっ‼︎」

 

 その隙に弾幕の嵐から抜け出た一夏が専用機の中でもトップの加速度を活かして不意打ち。あっけなく返されるも、箒も追撃し、撃つ暇を与えない。

 

「こざかしいハエどもが」

 

 同時に切り掛かってきた二人を両手で受け止めると、わざと力を抜く。一瞬だけだがより近くに寄った二人に笑みはなく、逆にしまったと、冷や汗が流れた。

 

「落ちろカトンボ‼︎」

「ぐっ‼︎」

「がっ⁉︎」

 

 渡鴉のアサルトアーマーによって体が痺れ、硬直する。一瞬の油断が命取りになるこの状況では致命的な隙になる。

 

「これで終わりだ」

 

 そしてその隙を逃すなんてことはしない。

 

 二人を仕留めようと腕を振り上げた、

 

 

 

 

 

 その後ろに打鉄弍式神雷が雷を纏って現れる。

 

「なん……だと……」

 

 驚愕のあまり目を大きく見開いて、後ろを見る春明。その視線の先には怖がりながらも固い決意を秘めた少女がいた。

 

「渡鴉のアサルトアーマーは強力だけど連発できない」

「…………!」

「教えたらすぐに簪がこの作戦を考えてくれたぜ!」

 

 単純な真っ向勝負で渡鴉に勝てるISは少ない。数の理はあれどそれを押し返せる技術。だが、弱点がないわけでもない。

 

 それがアサルトアーマーの発動直後、全方位攻撃だが連発はできず隙はデカい。

 

 そう聞いた簪の近距離二人によるアサルトアーマーの引き出し、それが上手くハマった。

 

「一つ超えて音が鳴り、十を数えて輝き渡り、百を迎えて夜を照らす、千も過ぎれば真昼の如く」

 

 この場で気がついたのは春明だけ。したり顔でニヤケそうになるが、気を引き締めて驚きの顔を維持する。

 

「拍手喝采!」

 

 打鉄弍式神雷の背後の設置された太鼓型放電機がビリビリと輝き出す。コレがどんな武器なのか、二人以外にも知る人が見れば分かるだろう。あのヒーローの最後の必殺技だと。

 

「万々万雷‼︎」

 

 あたり一面を雷が覆い尽くす。アサルトアーマーよりは弱いが持続時間が長く、範囲は広い。瞬間火力ではなく総合計で測るが一度くらえば痺れて動けず最後まで受け続ける傲慢とも言える神の雷。

 

 焦げて煙のあがった渡鴉がゆっくりと地面へ落ち、解除されて操縦者が現れる。その顔は満ち足りていた。

 

「宴もたけなわ、締めの柏手いただきました。これにて宴はしまいにござい」

 

 そして見下ろす少女もまた、子どものように無邪気な顔で笑っていた。

 

 

 

 さて、あと語り、もとい後日談である。

 

 見ていた観客からは歓声と拍手で大騒ぎになったのだが、いや待てコレタッグマッチじゃん。誰かが呟いてハッとした。

 

 状況だけ見ればパートナーが裏切って三対一である。気がついた簪は素早く棄権を宣言、一夏と箒の勝利になった。

 

 その後も順当にタッグマッチトーナメントは進み、優勝はシャル&ラウラペア。決勝の相手である鈴と同室のティナ? って子も量産機の打鉄で奮闘したがそれ以上に連携が上手かった。

 

 そして後始末に追われる先生方。あのISはなんだ⁉︎ 雷王じゃないのか⁉︎ と言った質問が多かったらしい。詳しくない先生が多かったのでまぁ、そもそも説明できない。知っていた山田先生が奮闘したが質問に答えたのかオタク話をしていたのかよく分からん。千冬さんは珍しく撃沈してた。そりゃそうか。

 

 八つ当たり気味に日本政府、もとい倉持研究所からの質問をずらして責任追及。バラす意見もあったが内部にいたマスクドライバー好きが反対。お詫びも兼ねて新しい装備と差し入れが送られてきた。いや、装備というかISで使う変身アイテムだろ。あとで借りよ。

 

 簪はクラスで何人かに話しかけられたらしい。全然喋れなかったとおちこんでいた。話す気はあるのな、いいことだけど。

 

 それから。連絡も話しかけにも来ないので、たまにこっちから部屋に出向いている。基本的に日曜の朝ばっかりだけど。というか日中見かけないし、見かけても逃げるので捕まえるのも一苦労だ。ほかの専用機持ちとはたまに話してる、話してるのか? 知らんが。

 

 そして今、日の当たる中庭のベンチで簪が隣に座っている。本当に座ってるだけで喋ってもいない。座ってたら隣にきた、端っこだけど。

 

 溶けそうだけど大丈夫なのか?

 

 まぁいいや、今夜は定例の労りパーティーだ。日本政府からは寿司と日本酒が送られてくる。最高だなおい。これまでの反省も活かして明日は休日いいことずくめだ。とりあえず先生にお酌しに行こ。

 

「あにょ‼︎」

「逃げねぇから落ち着け」

 

 突然の大声もかみかみな呂律も慣れた。

 

「えーあ〜……そ、そのですね」

 

 モジモジして赤くなったり青くなったりスライムみたいに溶けたり、程々に長い時間がたった。

 

「ヒーローだと思います!」

「過程がなんも分からん、最初から話せ」

 

 意を決して出た言葉はチンプンカンプンだった。

 

「ほ、本音が言ってました! 篠崎くんはすごいのに自分をヒーローとは思ってないって‼︎」

「おう」

 

 よく分からんがコレが言いたいことなら聞くしかない。

 

「ででででも、わたしは篠崎くんに助けてもらいました‼︎」

「……それは結果的にそうなっただけで」

「助けて! もらったので! わたしのヒーローは篠崎くんです‼︎」

 

 有無を言わせない強い意志を込めて言い切られた。

 

 どれだけ考えても俺はヒーローではないのだ、しかしそれを目の前の簪には言えなかった。

 

 変なことを言ったのかと混乱しだす簪を見て考える。言い訳も否定する言葉もいくらでも思いつく。ただそれを口に出すことはできないし、口に出しても負けると思った。

 

 頭をポリポリとかいて視線をずらす。

 

「…………今夜」

「あ、え、ひゃい!」

 

 別にとって食ったりはしないのだが、さっきまでの強気はどこいった。

 

「タッグマッチのお疲れ様パーティあるけど」

「あ、はい、自分は行かなくてもいいかなと思って」

「余興で雷王のOP演奏する予定だ」

「‼︎」

「…………まぁ聞きたかったら来たらいい」

「いきます! 絶対行きますっ‼︎」

 

 食いつきがすごい。ベンチから立ち上がってのんびりと歩く。後ろで百面相をしてるが行くか行かないか迷っているのだろう。どうせコッソリ来るだろうが。

 

 ポケットから端末を取り出す。

 

「あー今夜演奏するから手伝え、和太鼓と横笛、あ? 箒なら吹けるだろ、死んでもお前にはかさねぇ。……千冬さんには俺から言っとく、楯無にも働かせたら大丈夫だろ」

 

 負け犬が負け惜しみを言ったのでやるしかない。

 

 

 

 

 

「…………かーんちゃん」

「ホヒャァ⁉︎ ほ、本音⁉︎」

 

 ベンチの後ろでコッソリと隠れていた少女は友達を驚かすと、隣に座った。

 

「ど、どうしたの?」

「ん〜?」

 

 どこかいつもと違う雰囲気の友人に簪はビクビクしながら聞く。

 

「……かんちゃんはしのきーのこと好き?」

「!?!!???」

 

 突然の爆弾発言に簪が飛び上がる。千手観音にも見えるほどの慌てっぷりを手で表しながら、口早に答える。

 

「し、篠崎くんとは仲のいいと、とも、いやマスクドライバー仲間で、いやこれも恐れ多いような、ペット? ペットくらいがちょうどいいかもしれなくて間違ってもそんな羨ましい関係に至るとは当然そんなことはなく、あ、でも養ってくれるなら」

 

 間違ってもさっきまでのひーろーではないその姿に本音は思った言葉を飲み込む。人見知りで引きこもりな親友が異性と話すだけでなく好きな相手を見つけたのだ、羨ましいとは言えない。

 

 出会ったのも思ったのも先で、引き合わせたのも自分なのだから。

 

 こうなることは分かっていた。

 

「…………本音は?」

 

 いつの間にか落ち着いていた簪がおずおずと聞く。前ならこんな話できなかったのになぁ、と感慨深くもあるが親友の頼みだ、答えなければならない。

 

「ん〜内緒」

「そ、そんな⁉︎」

 

 自分は言ったのに、ともはや自爆しているが聞いているのは親友しかいない。そんな親友にすら秘密なのだ、あの日降ってきた天災から守ってくれたひーろーの背中は。




 実は告白かと思ってハラハラしていたのほほん少女。偶然いたので春明も気がついていません。夏前に遊びに誘われた時は内心バクバクしていました。


 そして主人公にちゃんと初黒星をつけた簪。仮にも元ネタはヒーローなのです。立ち上がる泥臭いヒーローもいいけどペンチメンタルみたいに本人だけが知らないヒーローもいいよね。


感想、誤字報告いつもありがとうございます。数に一喜一憂する世になりましたがそれでも最近、以前の話にもつくようになって嬉しいです。全部見てます。
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