トップバッター脳破壊の少女はどうなるのでしょうか、やはり脳破壊オチだろうな、うん。
篠ノ之箒は篠崎春明と幼なじみである。
出会った頃はよく分からないおかしなやつだと思っていたが、時が経つと普通のおかしなやつだと気がついた。もう一人の幼なじみ織斑一夏は生真面目で何事にも熱心に取り組み、危ない時には駆けつけるヒーローのようであった。
幼い少女がどちらに惚れるかなど明白である。そして時が経って再会した今、少女の心は、
「なんというか、本当に試合形式だと弱いのだな」
「やかましい」
箒と春明は学園の武道場にいた。木刀を構え、袴姿で打ち合う。もちろん当てたりはしないし、うっかり当てるほど下手でもない二人は汗を流す程度の軽い打ち合い程度にとどめていた。それでも初心者からすれば充分早いが。
「だいたい五十やって十くらいか? もっと勝てそうなものだがな」
経験者同士であるが故の勝敗の把握、カンコンと木刀を鳴らしながら入ればそこで終了。最初からである。そんな勝負は箒の勝率八割程度で収まった。
「前も言ったけど俺はあらゆる手数で補ってんだよ、それが制限かけられるとキツい」
フリースタイルこそが春明の武器。何でもありの中持ち得る技術と知識を最大に活かせる勝負なら圧倒的に強い。つまり逆のルールが決まっている勝負なら純粋な技量や経験が高い方が勝つ。箒などは全国制覇もしたことがあるのだ。剣の分野においては学園で勝てるものなど楯無か千冬くらいだろう。
「はぁー少し休むか」
「ふふ、そうだな」
隅に置いていたスポドリを飲みながらタオルで汗を拭く。隣に座りながら春明のその様子を、タオルで汗を拭きながら箒はこっそりと見る。
合宿の時に一夏が教えてくれた過去の話。学園で再会してからバカなことをしながらも頼りになる幼なじみの姿。そのどれもが思い返しては胸の中で熱を持つ。たまに脳に刺激も来るがそれはそれ。
「二刀もいいが一刀の練習もしてみないか?」
「バカヤロウ、二刀流はカッコいいんだよ」
「その理由でここまで来れたなら、それも一種の才能だな」
「箒こそ二刀流練習しろよ、まだ使えてないだろ」
「うっ、やはり身についた動きがあってだな」
何気ない話に花を咲かせる。意味もない、オチもない、思いつくがままのくだらない話が道場に響き渡る。
人がおらず、気温も高くないが、箒は温まっていた。
「ふはぁ〜、ねむ」
そんな時に春明は程よい運動の影響か眠くなり、大あくびをしてしまう。まだ話し足りないが、誘った立場である箒はここで昼寝をすると言いだしても止められない。せっかく二人きりであるのだから、もっと何かできないか考えた時、箒に名案が浮かんだ。
「そ、その、寝るのなら貸そうか?」
「なにを?」
少し早口になった箒に聞き返す。枕でもあるのかと思ったが、ここは道場、そんなものはない。練習用の袴を入れる袋を枕にするかと考えた時、箒は自分の太ももを叩いた。
「わ、わたしの、その、膝なら貸すのだが」
徐々に尻すぼみになっていく箒。顔も少しづつ俯いていき、視線も春明の顔から自分の膝になっていく。はしたないとか思われたらどうしよう、と赤い顔で悩んでいると、突然春明の顔が現れた。
「⁈」
「なんで驚くんだよ、誘ったのそっちだろ」
太ももに感じる重みとさっきまで運動していたために高くなっている体温。脳が理解すればするほど顔が赤く、心臓の音がうるさくなり、冷ましていたはずの体温が上がっていく。
「うぅ…………」
両手で顔を隠し、早まったと反省する気持ちと嬉しさでニヤけた口をバレないようにする。しばらくそのままで時間が経った。普段ならうるさいはずの春明が静かなことに気がついて、こっそりと指の隙間から覗く。
すぅー、すぅー、と一定のリズムで目を瞑ったまま呼吸をする幼なじみがいた。あまりの寝つきの良さに驚くが、思い返してみれば昔から寝るのは早かった。一夏と騒いでうるさいと注意しても聞く耳は持たない。そのくせに寝るのは一番早いと迷惑でしかない。
「昔から変わらず子どもっぽいな、お前は」
起きてる時とは違い純粋な顔で寝る幼なじみの髪を触る。汗をかいた後にちゃんと拭かなかったのか、少し乾燥して固くなっている。そういえば自分も汗をかいていた、汗臭くないかと慌てたが膝に乗っている春明のせいで動けない。
あきらめて想い人の寝顔を観察することにした。そういえばじっくりと見るのは初めてかもしれない。昔よりも男らしくなった幼なじみの顔のパーツをゆっくりと眺める。そして知らず知らずに指が頬を撫で、なぞっていくうちに口へとたどり着いた。
「…………」
ここで箒の中に天使と悪魔が生まれる。いけ、触ってしまえと誘惑する悪魔。それに対して指は良くない、こちらも口で行くべきだと反論する天使。堕天していた。
さっきまで話していただろう。将来は道場を復興したいが、経理も考えないといけないのに箒の頭では無理だと、なら春明がしてくれと返せば対価を払えばと言っていたではないか。つまり道場を再興し、ともに運営していくのだ。師範が自分で旦那は経理、ともに弟子を育てて、料理を食べ、背中を流す。夜になれば一緒の布団で寝るだろう。その時に払う対価の前払いであり予行演習であり、悪い事はない。全て堕天使が語った。悪魔は恐れ慄いたが、すぐに賛同し始めた。
葛藤する心、背中を押す悪魔と堕天使。この状況を打破するいいアイデアはないかと、掘り起こされる過去の記憶。そこに映し出されたナターシャと春明のキスシーン。脳が破壊された。
死んだ顔の箒が意識を取り戻した時、指は春明の唇をなぞっていた。無意識でその指を口元に持ってきて、そのままリップのように撫でる。
自分のしたことに脳の許容量を超えた箒は、そのまま夕方になり探しに来た一夏に起こされるまで幸せそうに眠っていた。
それ以降、たまに自分の指で唇をなぞる箒がいたという。
短いけどキリがいいのでこの辺で
こんな風なのヒロイン全員書きます、書きます! なんで書く前ならリクエスト入るかもなんで活動報告へどうぞ。間に合わなくても今後に活かされるかもです。
感想、誤字報告高評価ありがとうございます。ノンケイチャコラ書いたのでホモではないです。けどホモ要素ないとタイトル詐欺言われそうでビビってます。