実は連れ添って実家にあいさつ、仕事の手伝い、一度勝利済みというヒロイン。ホモがきっかけですがホモが原因で破談になってるのでホモが悪い。
セシリア・オルコットは篠崎春明の飼い主になりかけた。
理由はホモから逃げるためであり、成功しかけたのだが、セシリアの気遣いにより春明が断った。その後は仲の良い友人という関係である。
「よければお茶を飲みませんか?」
セシリアの誘いにのって春明が向かったのはセシリアの部屋。忘れられているかもしれないが、普段集まっているのは春明の部屋であり、それぞれにちゃんと自室がある。
セシリアもルームメイトがおり、ちゃんと自室で寝ているのだ。というか寮で異性の部屋に寝泊まりしているのがおかしいのだ。
セシリアの部屋にはいると、オシャレなテーブルとイスが用意されており、アフタヌーンティースタンドにはスコーンなどのお菓子が飾られている。
イスに座ると、セシリアが手際よく紅茶を淹れる。注がれたカップから紅茶のいい匂いが部屋に広がった。
お嬢様に入れさせていいのかと思わなくもないが、日本人である春明が気にすることはない。というかその辺を気にする前にもっと気にすることがある。たくさんある。
下品ではないが上品でもないお茶会とは名ばかりのただの雑談。
話して笑って飲んで食べて、貴族のお嬢様だが気にすることなく、遠い異国の地でできた友人とのひと時を楽しんだ。
「そういえば、ダンスは踊れるようになりましたか?」
「当然、学祭でも踊ったがいまだと完璧に踊れるぜ」
会話の中で出てきたのは以前春明がセシリアに誘われてイギリスに行った時のこと。セシリアの家でお世話になるかわりに仕事を手伝ったのだ。その時の一つにダンスパーティーの参加があった。
初めてのダンスに春明がギクシャク、笑われながらも最後まで踊りきった。悔しかったので練習したが。
「よかったら踊りませんか?」
差し伸ばされたセシリアの手を取って立ちあがる。
端末から動画再生サイトで選ばれた音楽が流れる。制服のまま、それほど狭くもない部屋で二人が手を取り踊る。豪華なパーティ会場でも、高級なドレスも演奏もない。ダンスパーティーというには足りないが、セシリアは満足していた。
「ふふ、これならいつでも誘っても大丈夫ですわね」
「当然」
笑ってイスに座るとセシリアはスコーンを齧った。春明も食べようとして手を伸ばして空を切る。みればすでになくなっており、チラリとセシリアをみる。セシリアも残りがあるか考えるが、自分の手元にしかない。
そっと手を伸ばすセシリア。
それはダンスのお誘いではなく、お礼。差し出されたお礼に躊躇いもなく食いつく春明。小さくなったスコーンを一口で頬張り、味わって飲み込む。
食べ終わった春明は残った紅茶をひと息で飲み干し、「ごちそうさま」と言って立ちあがった。
扉の前まで進んで振り返ると、すぐ後ろに立っていたセシリアと目が合う。
「今度は緑茶と饅頭用意してやるよ」
一方的な約束に笑顔でうなづくセシリアを見て、春明は部屋を出た。
自分のベッドに寝転ぶセシリア。制服のままであり、少なくともお嬢様のする姿ではない。
「はぁ〜」
枕に顔を埋めて大きく息をはく。ピリリと端末の音が鳴り、ビクリと肩が跳ねる。おずおずと手を伸ばして通話のボタンを押すと、
『もし情事の最中でしたら申し訳ないと思いましたが、出られたということは失敗したのですね』
「チェルシー⁉︎」
通話の相手は自分のメイドであるチェルシー、今回のお茶会を企画したものである。
セシリアに普段お世話になっている春明にお礼をしたいと相談を受けたチェルシー。とりあえずお茶でも誘えばいいのでは? と真っ当な意見を返したのだが、ここでセシリア痛恨のミスをする。
『それだけでいいのですか? って言われたのでアドバイスをしたのに、結局お茶会しかできないあたりヘタレですね』
「言わないでくださいまし!」
詳しく聞けばお世話になっているし、夏休みには仕事も手伝ってもらえた。もっとちゃんとしたお礼はないのか、と思ったが故なのだが付き合いの長いチェルシーはセシリアの本心を見抜く。
『特別になりたいとおっしゃったのはお嬢様でしょうに』
「言わせたのでしょう⁉︎」
いい感じに言葉を引き出されたセシリア。お礼はしたい、どうせならちゃんとしたい、二人きりがいい、ちょっといい感じになりたい、触れ合ったりしたい、一緒に寝たりしたい、それはもうアレですね。ベタ惚れですね。
『なんでしたっけ? 貴族として平民であってもお礼はちゃんとしたい、望まれるのならさらけ出してもいい、責任が嫌いであっても無下にはしないからそのまま家に迎い入れてもいいってそれが惚れてないなら何なんですか?』
「うぅ……」
『裸もほぼ見慣れているのに見せるのも触らせるのも恥ずかしいって貞操観念どうしたんですか? 処女拗らせました?』
「チェルシー‼︎」
春明の部屋に行けば裸でいることもある。男性とほぼ関わらなかったセシリアはそういうものなのかと学んでしまった。手を触るくらいなら問題もない。たまに部屋に泊まらせてもらっているが、大抵誰かがいるので二人きりではない。
では二人きりだと?
「じゃあチェルシーは異性と二人きりでとまっ、お茶したことはあるんですか⁉︎」
『たまにナンパされるのでお茶だけいただいてます。泊まることはないですが、逆になんで裸も見たことあるのにデートもしたことないんですか?』
撃沈するセシリア。気が付かない、いや気がつきたくなかったが自分の男性との付き合い方はだいぶおかしい。要するに友達付き合い、家族付き合いなら平気なのに恋人付き合いなら緊張するのだ。これは拗らせている。
『我が家に泊まった時も泊めることは平気なのに一緒のベッドで寝ませんでしたものね。てっきりそういう関係かと思って良い下着も用意しましたのに』
思い返せばかなりスケスケなものばかり用意されていた。夏のせいかと思ったがまさかの気遣いだったらしい。
『それで? 部屋に呼ぶ直前ではお茶を飲んでそのままベッドに誘うなんて簡単ですわ〜と高笑いしていたお嬢様はどちらですか? せっかくルームメイトの方にも一晩空けてもらったのに、予定通りお茶を飲んでそれで終わりですか? もう少しだけと引き伸ばしたり隣に座ったりしたんですか?』
「あーんはしましたわ‼︎」
『どこのおぼこですか』
自信満々に言ったがメイドは容赦がない。
せっかくシャワーも浴びて下着も用意しておいたのに、ダンスをしただけ? せっかくなら自分もいただきませんかくらい言えないのですか? シミュレーションなら首輪もつけてペットにできてた? 寝言は寝ておっしゃれ、しかも最後は何も言えず相手からお茶を誘われてニヤけていた? あーんの時に指が口に触れてドキドキした? 子どもでももう少しマトモなデートができますよ?
セシリアは泣いた。散々に言われて泣いた。ペットにしてくれとそもそも最初の関わりがおかしいのが問題だったが、家族が増える喜びを心の奥底で感じていたセシリアに異性との付き合いなど分からない。貴族としての見栄と虚勢が精一杯だ。
一晩中メイドにダメ出しをくらい、あまりに手ぬるいと自分が手を出すと言われて焦ったセシリアは気を引き締める。
次の日、セシリアはチェルシーのアドバイス通り直球で寝床に誘いに行く。頭の中でのイメージは完璧だ。
「よければ美味しい緑茶を教えてくれませんか?」
セシリア・オルコットは貴族のお嬢様にして、イギリスの国家代表候補であり、恋に翻弄される一人の少女なのだ。
この後またチェルシーに怒られてます。
恋心だけならラウラに次ぐよわよわでした。勝利条件を満たしているのに勝利宣言ができてないみたいな。作中でも言ってますが春明は責任という言葉が嫌いなだけでやり逃げとかはしません。やっちゃえば勝ちです。
いつ惚れたの? に関しては普通にクラス代表決定戦で戦った時です。自覚した時は不明。普通にいつでも迎え入れるようにしてたし気がついたら特別なことしたいと思ってたし、この辺まだお子ちゃまです。
いつも感想、誤字報告高評価ありがとうございます。ホモ出してないけどイチャコラは婚活だからタイトル詐欺じゃない言われて目から鱗でした。なんでもっと書きます。まだ出てないヒロインの希望シチュとかまだまだ活動報告で募集してます。