前回で五十話を超えました。これからも頑張っていくのでよろしくお願いします。
織斑一夏にとって篠崎春明は愛する人物である。
他に特筆することはない。
「春明、結婚しよう」
「くたばれ」
中学で最後に出会った時から続けられる告白も、今では反射的に返せるようになった、嬉しくない。出来ることなら会うことなく過ごしたいのだが、今日は定期的な千冬さん室への来訪日だ。行かないと部屋に乗り込むと言われているので行くことにしている。
「で、急になんだよ」
「たまには千冬姉も労わろうと思ってな」
「労わるとこどこだよ」
「…………………………」
「無言になるな」
弟だろうが、さっさとあの姉どうにかしてやれ。
適当なつまみを用意するのが通例だが、部屋に何かあったっけか? 適当に探そうと部屋に戻ると、
「正確には違うが、こう言わせてもらおう。初めまして篠崎春明、いやダーリン」
「人違いです」
なんか部屋にミニマム千冬さんがいるんだけど。
「すまない、本当は修学旅行で出会う予定だったのだが我慢しきれなくてな」
「聞きたいことが増えすぎてるから待ってくれ」
自己紹介からしてくれ、情報量が多いと聞きたい質問を忘れてしまう。
「わたしはマドカ、織斑マドカ。春明の嫁だ」
「なんで疑問の答えで疑問が増えるんだよ」
嫁発言も織斑って名前も、どう考えてもやっかいごとしかねぇし、どこ案件だ? アホウサギか?
「スコールからは京都で襲撃をかけるからその時にと言われたのだが、急に現れても困るだろう。だから先に顔合わせをしておこうと思ってな」
「今現在困惑進行形だよ」
スコール、スコール、亡国企業関連か。ならアホウサギも関わってるだろうが、何にも言ってこなかったのはアレだな。困ってる俺を見たいとかそんな理由か、次あったらタイキックだな。
「とりあえずなんだ、茶でも飲むか?」
「む、それはありがたい。夫の気遣いを無下にしたくはないのでな、いただくとしよう」
とりあえずお茶を入れながら話を聞く、千冬さんやホモと同じく実験施設の生まれ。いろいろあって亡国企業に拾われて、オータムさんとスコールさんと共にいると。以前のキャノン・ボール・ファストにもいたらしい。
「それは知らんかったな、アイツらの相手してくれて感謝する」
「夫の頼みを聞くのも妻の勤めだ。気にしなくていい」
丁寧に両手でお茶を啜るマドカ。本当に千冬さんの妹? なのか?
「おーい春明、遅いけど何か手伝うことってミニマム千冬姉⁉︎」
悩んでいるところにホモが来た。うるさいが気持ちは分からなくもないので何も言わない。また鍵は変えておこう。
「え、え、え、もしかして千冬姉がアポトキシン飲んだとか⁉︎」
「やかましいぞ愚弟が、わたしはマドカ。春明の嫁だ」
「え、やっぱ千冬姉なのか……?」
どこでそう判断したんだよ。
「けど春明の嫁ってのは笑えねぇな、春明は俺と将来を共にするんだ」
「いやしないが?」
「私は生まれる前から春明と結婚することが決まっていたんだ。貴様みたいなぽっと出が何を言っている」
「決まってないし初耳だが?」
どうしようこの二人、とりあえず不審者がいるって先生方に報告した方がいいのか? ついでにホモも追い出してくれたらいいんだが。
「俺と春明は小さい頃から一緒に過ごして! 同じご飯を食べて風呂に入って一緒に寝たんだ‼︎ ドイツに行って攫われた時も! 身を挺して守ってくれた‼︎ どこぞのぽっと出の女に俺の愛は負けない‼︎」
「ご飯に風呂、同じ布団だと……!」
「そこ驚くのかよ」
出会い頭に嫁を名乗る割には弱いなオイ。なんでチラチラこっち見るんだよ。布団とかシャワー室見るんじゃねぇ。
「その……いずれはそういうこともあると思うのだが……まだ早いというか…………もうちょっと大きくなってからでもいいか?」
「なにをだ」
こいつも思春期かよ。
「春明の身体も見たことなくて嫁なんて呆れるぜ! どうせ中学時代の女子たちみたいに遠くから見るしかできなかったんだろ‼︎」
「うっ!」
「おい待て何のことだ、教えろ」
「変な虫が近寄らないよう春明との仲の良さをアピールしてたんだ‼︎ 春明、俺たちの仲の良さを見せつけてウヴォ‼︎」
もしかして俺のことを気になっていた女子がいたと? そして目の前で殴ったホモは俺をホモだとアピールして近寄らせなかったと?
判決、死刑。
「くっ! IS学園だと女子が多いし春明も片っ端から声をかけて大変だが、誰とも付き合わせないし結婚させない‼︎ 最後まで一緒にいるのは俺だぁ‼︎」
木刀を構えてジリジリにじりよる。口から血を流している目の前のホモを排除すべく、全身全霊をかけてこの任務を達成してみせる。
「おい待て、春明は女子に声をかけているのか?」
と思ったらマドカからストップがかけられた。
「そうだが?」
「私がいるのにか?」
「いやそれは知らんが、ホモから逃げるために結婚しようと思ってな」
まだ成功していないが、IS学園はほぼ女子校。まだ知り合っていない相手もいるのだ。可能性は残っている。
「大丈夫! 俺がいるぞ!」
「お前から逃げるためだボケ」
アホなことを言ってるホモ、やはり今のうちにしばいておくべきか。
「つまり……そこにいる愚弟、いやホモのせいで夫は浮気しようとしていると?」
「いや結婚してないだろ?」
言っちゃアレだがコイツもだいぶアホだな。
「ふ、ふふ、心配するな春明。このタイミングで来れたのも運命だ。なにせ嫁が来たのだ! 私という運命の相手がいるのだからもう心配することはない‼︎ お前の将来は安泰だっ‼︎」
「…………言われてみればそうか?」
「春っ⁉︎」
なんであれ、俺と結婚するというのだ。できるのなら自分の目標は達成できたと言えるだろう。
「アピールポイントは?」
「ふふ、心配するな。これでも花嫁修行はしている、そんな私の魅力はだな」
よほど自信があるのか、ひと息ついて溜めるとマドカは胸を張った。
「好きなだけ駄菓子を食べても怒らない、なんなら三食済ませてもいいぞ」
「「………………」」
あまりのことに絶句する俺とホモ、何を思ったのか顔がドヤ顔になっていく。なんかこの辺は千冬さんと似てるんだなぁと思った。
「ごめんなさい」
「⁉︎ 何がダメだったんだ⁉︎」
「なんかもう、なにもかも」
さっきまでの自信はどこへやら、慌て出して頭を抱えるマドカ。
「とりあえず今日はもう帰りな、また考えたらいいし」
「そうか……そうする」
しょぼんと肩を落として部屋から出るマドカの背中は哀愁が漂っていた。よほど自信があったのだろう、ただその方向がちょっとずれていただけで。
とりあえずこの後、遅れたお詫びのつまみを追加で買って千冬さんの部屋に向かった。すでに飲んでいたのか下着姿で「おそい」と言うと隣に座らせて持ってきたツマミを開けた。
ホモが文句を言いながらちゃんと料理を出してきたのでいつも通りの飲み会になった。
次の日、千冬さんにマドカのことを報告すると「なぜ昨日言わなかった」と怒られた。
マドカは家事ひと通りできます。生まれが生まれなのでお菓子は好きらしいです。ただアピールポイントにするべきではなかった。この後帰ってオータムに理由を話して笑われてます。
この辺からオリジナルストーリーとかになってくるので更新遅くなるかもです。読者であるホモはせっかちですがお待ちください。
ちょっと寒くなってきたので体調のあれこれもあるのでね、許して。
感想、誤字報告高評価いつもありがとうございます。作中で出したネタ触れられるの嬉しいです。活動報告にリクエスト書いてもらって大丈夫ですよー