IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 マドカも織斑なのであんなもん。逆にこんなのしか作れなかった連中アホすぎる。

 さーて今回から、ハガレンでいうvsプライド編あたりになります。これまでのキャラとかホーエンハイムの実力の一端、エドの内心の驚きなど好きな場面が多いです。


ブリュンヒルデの記憶

 織斑千冬にとって篠崎春明は家族であり、将来の相手である。

 

 

 

 出会いは最悪だった。

 

「おい束、このクソガキを引き取れというのは何の冗談だ」

「そんなこと言わないでよちーちゃん!」

 

 束とケンカをした時に現れた子ども、割り込んでくる度胸と身体能力は気になるが、それ以外は特に気にならない。それどころか、

 

「俺は一人で生きてけるってのおばさん」

 

 この態度。出会った時から生意気で自分の弟を見習ってほしい。生まれも育ちも気にはなるが、今は自分たちのことで精一杯。子ども一人を預かる余裕はない。

 

「まぁまぁ! お金とか書類とかなら束さんがちょいちょいっとやっておくからあとは住むところなんだよね!」

「それもそっちでどうにかしろ」

「別にいらねっての」

 

 かわいげがない、口が悪い、悪いところしか見つからない程度には最悪だった。結局、織斑家に近い安いアパートに住むことになった。いやだが見知った子どもを放置するわけにもいかず、たまに顔を出すことにした。

 

「ひまか?」

「帰れ」

「放っておけ」

 

 そう言われても相手は子ども、拳を出すわけにもいかずギロリと睨むしかなかった。その程度気にする相手ではなかったが。

 

 ある日扉を開けると、布団でもなんでもないところで倒れていた。

 

「⁉︎ おい、どうした⁉︎」

 

 さすがに慌てて近寄るが呼吸はしているし脈も正常、出会った時からの隈もそのまま、そのまま?

 

 部屋を見渡す、狭くて色々なガラクタが置かれている部屋で布団が敷かれているスペースはない。

 

「クソッ!」

 

 学校で、バイトで、弟が大事で、そんなもの全て言い訳にしかならない。たとえ生意気で嫌っていようと子どもだ、気がつかなかったのは自分の責任である。

 

「……ん?」

 

 自責の念に駆られていると春明は目を覚ました。キョロキョロと周りを見て、自分を覗き込む千冬を見ると、また目を閉じた。

 

「おい! 大丈夫なのか⁉︎」

「うるせぇなぁ、どこで寝てもいいだろ」

「寝るなら布団を」

「いらねぇ、そんなもん使うなら別のことする」

 

 苛立っている春明に無理やり聞き出せば普段はずっと起きっぱなしで、たまに意識失うから目が覚めるまでそのままでいるらしい。

 

「外にいる時は気絶できなかったけど、ここなら平気だしな」

 

 同年代と比べて痩せて少し臭う身体。この時に何を思ったのか千冬は今でも思い出せない。気がつけば家に連れて帰り、シャワーを浴びせ、布団へ放り込んだ。家にいた一夏は驚いたが滅多に見ない姉の真剣な表情に驚きながらも自分の服を用意した。

 

 放り込まれてもブスッとした顔の春明を見て、千冬は同じ布団に潜り込むと優しく抱きしめる。騒ぐ力は残っていなかったからなのか、それとも別の理由なのか、この日春明は初めてぐっすりと寝ることができた。

 

 翌朝から元気に悪態をつく春明と千冬の姿を見てまた新鮮なものを見たと驚く一夏。すごいとも思った一夏はすぐに春明に懐き、春明も上手い料理を用意する一夏を嫌うことはなかった。それどころかどこでどう金を増やしたのか、織斑家に生活費を入れご飯が豪勢になる。千冬も余裕ができて家にいる時間が増えたが、これは偶然だったのかもしれない。

 

 小学校では篠ノ之道場へ通い、一夏と箒と鍛錬する姿をよく見ていた。出会った頃の生意気さはなくなり、いや生意気さは消えないが呑気にサボったり昼寝をするようになっていた。一夏や箒も注意するので自分の仕事はなくなったかと安心と少しの寂しさが千冬にはあった。

 

 そして親友に誘われて起きた「白騎士事件」。

 

 腹がたっていたのはあっているだろうが、そこに隠れていた悲しみを見抜けたのは付き合いの長さだろうか。気づけてしまった千冬が断ることはなかった。

 

 その日は普段より遅く帰った。一夏はもう寝ており、安堵したのを覚えている。

 

「よぉ、おかえり〜」

 

 だからこそ気が抜けていた千冬が春明に気がつくことはなかった。スタンドライトで手元を照らし、こっちを見ることなくマンガを読んでいた。別に珍しい光景じゃない。織斑家に入り浸っているし夜更かしして一夏が注意する様子だって日常だ。

 

 跳ねた心拍を無理やり押さえつけて、春明を睨みつける。

 

「まだ起きてたのか、子どもはさっさと寝ろ」

「夜遊びするにはちっふーだって子どもじゃね」

 

 ムカつく。

 

 生意気盛りだ。何が分かる、何を知っている、何ができる。そんな暴言が出そうになり堪えきれたのは年上としての意地ではなく、姉としての意地だった。もし怒鳴れば一夏も起きる。兄弟のように過ごしてきた相手を姉が怒鳴るなどそんな姿を見せたくない。

 

「フン」

 

 いつも通り鼻を鳴らしてシャワーを浴びようと服を脱ぐ。一夏にはちゃんとした場所で着替えろと言われるがズボラな千冬が聞き入れたことはない。

 

 来客も春明や箒くらいだ。見られて困る相手もいない。

 

「バカなことしたな」

 

 ビクッと肩が震える。それは誰もが気づかない程度の震え。服を脱ぎ下着になったまま千冬は止まった。

 

「…………なんのことだ」

 

 強がりだった、虚勢だった。

 

「タダでさえモテないのが一生独身コースだな」

「やかましい」

 

 本気なのか慰めなのか、どちらとも言えない普段と同じ言葉。

 

「まぁアレだ、相手いなくて干物になってたら拾ってやるよ」

 

 生意気だ。

 

 そんなことをしてもらわなくても私はモテるし、結婚だってできる。ただ女性にモテやすいだけだ。そんなことを言う暇があれば自分の将来を考えろ。

 

 普段ならここまで言えた。言えたはずだった。

 

「…………約束だぞ」

 

 寝転んでマンガを読む春明の隣に寝転ぶ千冬。邪魔だったのかモゾモゾと動いて横に逃げる。空いたスペースに入って布団を被る。顔も隠して自分よりも小さい拾ってきた子どもに縋るように抱きしめる。

 

 いつの間にか大きくなっていた春明の体温を感じながら、千冬は暗くなった部屋でシャワーも浴びることなく眠りについた。

 

 

 

「千冬姉‼︎ 春明がっ‼︎」

「分かっている‼︎ 今すぐ迎えがいくから大人しくしていろっ‼︎」

 

 時が飛んで千冬はドイツにいた。ISの世界最強を決める大会の最中に起きた誘拐事件。

 

 どこだどこだどこにいる。

 

「春明ッ‼︎」

 

 ホテルから出た直後の一夏と春明が攫われた。

 

 それを知った千冬は大会の日程を全て蹴飛ばして捜索に向かった。ドイツの警察、IS部隊、「モンド・グロッソ」の運営など全力を尽くして捜索を行うが見つからない。

 

 誘拐が発覚して分かったのは相手がテロリストということ、それも春明に逃がされた一夏の言葉によってだ。時折り街中で戦闘が起きてそこへ向かうがテロリストと思われる一味がいるだけ。春明がどうにかしたのだろう。生きている情報にはなるが、未だ渦中にいるという事実でもある。

 

 結局一日経って、春明は元のホテルへ歩いて戻ってきた。顔や服に擦り傷や軽い火傷の跡などがありすぐに病院へ搬送された。

 

「キレイなねーちゃんとアイス食ってた、ホテルに帰るのは道に迷った」

 

 その言葉に殴りつけようかと思ったが、振り上げられた手はそのまま春明の背中に回された。

 

 さすがにバツが悪かったのか、ポリポリと頭をかいて千冬の背中に手をまわす。

 

「無事で、よがった」

「……悪かったって」

 

 涙声の千冬に珍しい春明の謝罪の声、本気だからこそ出てきた言葉だった。

 

「約束がっ、あるだろうっ」

「…………そんなガキのころなんて覚えてねぇよ」

「バカものがっ」

 

 少し苦しいくらいの抱擁に文句も言わず、受け入れる。ドクターがノックするまで続いたこの時間は、春明にとって忘れたいものとなった。

 

 初代ブリュンヒルデの弱い姿は春明しか見ていない。

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在、目を覚ますと春明の寝顔がある。記憶よりも逞しく男らしくなっている。つい手で顔を撫でると、春明が目を覚ました。

 

「おはよう、千冬」

 

 春明の手で顔が撫でられる。くすぐったくも暖かくつい自分からこすりつける。数分くらい続けて、ようやく布団から起き上がる。

 

 春明は朝食の支度、自分はコーヒーをいれる。これがいつものルーティンだ。テレビをつけて机に座ると、隣に朝食を持って春明が隣に座る。食事をする音とテレビの音だけが部屋に広がるこの時間が千冬は好きだった。

 

 いってきますのハグをして、仕事をして帰る。たまには自分が料理をしようと冷蔵庫の中身を確認する。生姜焼きでも作るかと思い、キャベツを買ってくるよう連絡する。

 

 準備をしているとお土産を持って帰るという通知に機嫌よく鼻歌を歌う。

 

 扉が開く音がして、迎えに行くと何やら大きな荷物を持った春明がいた。プレゼントでも買ってきたのか、そう考えるが今日は特別な日ではない。首を傾げると、春明はにこやかに笑う。

 

「話があるんだ」

 

 箱を開けると、光があたりを包み、眩しくて目を瞑った千冬が再び目を開くと、

 

 

 

 かつての愛機、暮桜に乗った春明がいた。

 

「は?」

「俺はこれから、宇宙に行く。そのために暮桜が協力してくれる」

「いや、え?」

「あぁ、ちゃんとキャベツは買ってくるから」

 

 何が何だか分からないまま宇宙へ飛び出す春明。自分も飛びあがろうとするが、宇宙空間なので手足をバタバタさせるしかできない。

 

「じゃあな千冬! 俺はこの先暮桜と一生を過ごすんだ‼︎」

 

 謎の宣言をして飛び立っていく春明、暮桜がドヤ顔をしていたのがなぜか伝わった。

 

 

 

 ────せんせ、織斑先生!」

「……ん?」

 

 揺さぶられた千冬が目を覚ますと新幹線のなか、隣には山田が座っている。

 

「もうすぐ京都ですよ、そろそろ生徒たちに呼びかけませんと」

「……あぁ、そうだな」

「なにかうなされていましたけど大丈夫ですか」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 まさか愛機にNTRされたなんて悪夢を後輩に言うわけにはいかない。席から立ち上がると、千冬は教師としての仕事を始めた。

 

 

 

  これからIS学園の修学旅行である。




 はい導入に見せかけたちっふー編でしたー!

 あ、途中の新婚生活モドキ以外は史実です。春明は忘れたいけど忘れてないし、千冬もそれ分かってるので自信満々です。ビビってはいるけど。春明は生まれ的に外部からの影響を受けやすいんですよね、温もりを教えたのはMの成功作なので予定調和と言えばそう。研究者的に教えたかったのはもっと野蛮な方ですけど。

 無事なのは分かっているけど心配はする、それを普段は表に出さないような千冬が泣いたので春明的にはだいぶ黒歴史です。どういう意味かは分かりませんがねー。

 はい、次から京都です。ここから原作知識ほぼゼロなのでオリジナルマシマシで行きます。何かあったら教えてください。


 感想、誤字報告高評価いつもありがとうございます。年内にはたたみたいと思ってます。たぶん、終わるはず。書きかけあるのでそっちも書きたいんですよね。活動報告にリクエスト書いてどうぞ、まだ受付中
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