スコールあたりはまだバックボーンが出てないからと思うので今回で人気が出ることを期待します。
その日は世界最強を決める大会の決勝戦が行われる日だった。
親族、関係者として千冬に招待された一夏と春明はホテルに泊まっており、試合を見に行こうと出た時だった。
前にとまったバンが、スライドドアを開けたと思ったら手が伸びてあっという間に二人を引き込んだ。あまりの速さに気がつくものはおらず、いつも通りの日常が広がっていた。
「目標を確保、これより合流地点へ」
黒の目出し帽を被った男たちが無線を使って何やら話をしている。武器を持った男たちに挟まれた一夏は、恐怖にかられながらも隣に座らされている春明の様子を伺う。
俯いたまま表情は見えず、普段の騒がしさが微塵も見えない。俺がどうにかしないと、一夏が決意した時、春明が顔をあげた。
「へい……トイレ寄ってくれない……? うぷ」
真っ青な顔で頬を膨らませる春明が下手くそな英語でそう言った。
「は、春明ィ⁉︎」
「すまん、もう限界、うぷ」
「だから朝は程々にしておけって言ったのに‼︎」
「美味しかったからつい…………」
急にギャーギャーと騒ぎだす人質に誘拐犯たちも鬱陶しそうに見るが、理由を察して慌て出す。このままだと汚物まみれの車で過ごす羽目になる、さすがにテロリストもそれはゴメンだ。
仕方ないので窓を開けるかと言った雰囲気になった時、
「一夏、こいつらテロリストだ。さっきそう言ってた」
「え?」
「千冬さんによろしくな」
揺れた車の振動にあわせて大きく身体を揺らす、横にいた男の首に肘を入れ、反対側の席にいた男が銃口を向ける。下から持ち上げるように逸らすと、そのまま押し込んで持ち主のアゴに当たった。
「おりろっ‼︎」
いつにない真剣な顔に一夏は考える間もなくドアを開けて転がり下りた。動いている車から降りたため多少手足は擦っただろうが、このままいるよりは良いだろう。
一夏と反対側の扉を開けて降りようとすると、首に肘をもらった男が首を押さえながらも服を掴む。身体を捻って隙間を作ると、今度は顔に向けての頭突き、服を掴んでいた手は緩んだが、助手席と最後尾から銃口を向けられる。
腹ただしいと目出し帽で外国語だがそう伝わる表情でこちらを睨むが、
「ふっ」
春明は一瞬だけ口元を緩ませると、
「オボロッシャー!」
「ギャー!」
口元からキラキラが飛び出た。
精神や次元を越えたりすることはできないが、狭い車内であれば人の心を統一できるキラキラにテロリストたちは心を奪われ、春明はその隙に車の上に乗った。
全身で浴びる風に溜まりきったものを吐き出せた爽快感に浸っていたが、すぐに足元から叫び声が聞こえて横からモザイクのかかった男が這い出てくる。
よっと、軽い拍子で隣を走っていた車の上に飛び移りさらに別の車へ飛び移る。
信号機で車が止まると、運転者にゴメンと謝って走り出す。日本ならともかくここはドイツ、地理もわからず建物に逃げようにも後ろから追いかけてくる音が聞こえるので迂闊に入れない。
途中拾えた自転車にのって勘のままに曲がりだす。車と自転車のカーレースが始まり、ときおりテロリストの仲間らしき車が増えては曲がり角や春明の投げたものにタイヤを取られては減っていく。
何故か最終的にはヘリまで出てきた。人質とするために威嚇射撃程度にしか撃たれなかったのは運が良かったのだろう。しかし騒ぎがデカすぎる。
しのぶ気が微塵もない、というここまできたら諦めるべきだろう。
何度か邂逅したヘリに金髪の美女がいたのは何度か見ていた。目があったとは思う、だから情が湧いたというのはおかしいだろうか。
逃げに逃げてここはどこなのか、お金は使えるか、そう思いながらボロボロで全身濡れている春明は夜店のような場所でアイスを買った。びしょびしょのお札だったが許されたらしい。
「ほい」
差し出されたアイスをスコールはうけとった。
水に濡れていてもその美貌は変わらないが、所どころ破けたり煤けた服を見て声をかける男はいないだろう。
「ふぃー」
大きくため息をついて春明も隣に座った。
受け取ったアイスを眺めてスコールは口を開いた。
「何が目的……?」
自分は命、身柄を狙った犯罪者だ。春明の壊れた自転車から作られたチェーンの投げ縄がヘリのプロペラの根本に絡まって墜落した。かろうじて近場の川に飛び込めたが、爆発とそれなりの高さによって浴びた衝撃はスコールの意識を飛ばした。
そのまま放置していても誰も文句は言わなかっただろう。それどころか見つかった時になにをされてもおかしくなかった。だというのに隣に座る少年はヘリから飛び出した自分を空中で抱きしめて川に落ち、そのままこうして引き上げてくれた。
情報を得るためか、それでも自分の所属する組織は甘くない。失敗した自分を救出に、来そうな人物はいるが、おそらく見捨てられるか口封じだろう。
もしかして思春期の子どもだし、そういうことが目的か、だとしたら好きにしてもらって良いと思えるくらいにはスコールは焦燥していた。
「いやほら、アイス奢るって約束したし」
想像だにしていない言葉にスコール思わず顔をあげた。
春明が一人でいた時に確認のためにスコールは一度接触していた。慣れないドイツで道に迷っていた春明に道を教え、お礼をすると言っていたが、まさか、
「というかもう疲れて碌に頭もまわんねぇんだよ、なんでとか子どもじみた質問は勘弁してくれ」
ほら食べろ食べろと言われてひと口食べる。水で濡れていた身体だが、冷たくも温もりのある甘みが全身に周り身体にエネルギーが溢れる。
「やっぱ美人は笑ってる方がいいよな〜」
ばっ、と隣を見ればこちらを見て笑顔の春明、思わず顔を隠してしまう。耳や頬が熱を持つのが分かるが、それを誤魔化すようにアイスを食べすすめた。
空になった容器を見て、スコールはどうするか悩む。連絡、隠れ家、頭は動くが身体が動かない。疲労のせいか、それともいま食べた甘味が全身を巡る感覚に浸っていたいのか。
「あーあ、俺もなんか食いたかったな」
濡れてボロボロになったお札を見ながら静かに呟く春明。財布もなく適当にポケットへ突っ込んでいたお札はさっきのアイスで使える分はなくなった。
なぜ、とまた聞こうと思ったがスコールはさっき言われた言葉を思い出して口を閉じる。自分だって誰かを助けることはある。強者が弱者をどうしようと文句は言えない。世の中そういうものだ、今日は自分が弱者だった、それだけだ。
「よっし、帰るか。さすがにもう来ないだろ」
チラッとスコールを見ると軽くうなづく。ベンチから立ち上がって歩き出そうとした春明に、スコールは思わず顔をあげたが、なにを言いたいのか口は動かない。気がついた春明も立ち止まるが、時間がゆっくりと過ぎていく。
なに言おうとして焦って、頭がこんがらがり、さらに焦る。
「今度あったらアイス奢ってくれ」
頭に優しく手が置かれた。
軽く頭を撫でられると離れて立ち去ろうとした春明に、ようやく言いたいことがまとまった。
「また、会えるのかしら」
「…………いい子にしてたらな」
冗談めかしていう春明の言葉に、長い髪で隠れた顔の口元はほころんだ。
立ち去ってどれくらいの時間が経っただろうか、目の間に急ブレーキをかけて止まる車から慌てた女が飛び出してきた。
「スコール‼︎ 大丈夫か⁉︎ 連絡もつかなくて心配してたんだ‼︎」
オータムがスコールに抱きつき、身体の様子を伺う。
「えぇ、大丈夫よオータム」
心配した表情のオータムの頭を撫でて、ほころんだ表情を見てスコールは自分の心を確信した。
「帰りましょう、やるべき事があるわ」
「あぁもちろん‼︎ 思ってたより元気そうだな! 良かったぜ‼︎」
ベンチに置いていこうとしたアイスの容器を持って、オータムの車に乗り込む。オータムからの情報を聞きながらスコールは考える。自分の気持ちを、篠崎春明のことを。
ろくでもない人生で、今や身体の一部は機械となっている。それでも人としての頭が、心が理解してしまった。自分のしたいことが。
その思いが口に出る。
「…………お父様」
「ごめん、なに言ってるかよく分からん」
久しぶりにあった美女が謎の言葉を発して春明は困惑した。
はい、すさんだ心に年下異性からの甘やかしで落ちました。
ビックリすることに時系列的には束、千冬、箒、鈴音の次です。ホモはこの事件の後なんでホモより早いのです。ほら活動報告に希望シチュ書いてどうぞ。自分は全く思いつかんのでタスケテ
だって本家の赤い人イチャコラって白テンパとロボットじゃん、参考になんねぇよ
感想、誤字報告高評価いつもありがとうございます。戦闘シーン書くの楽しかったですが、これ止まらんと分かってサクッとしました。よくあるアクション洋画並みだったと思ってください。最後のシーンは最近流行りの映画ですね、お花あげられなかったね