シリアス続いたのでそろそろギャグにしたい。
部屋の空気は重かった。
集まれば何かしら話すメンバーが数人いるというのに、誰も口を開かず動きもしない。項垂れたり、天井を見上げたり、身体は健康だと診察されたが、明らかに不調だった。
思っていることはある、だが口には出せない。出す気力もない。それ故に積もり積もった思いが部屋に溜まり、深海のように澱んでいる。
「なんだこの空気は、おい窓を開けろ」
そこへ現れたのはマドカ、仮にも重要参考人なのだがその太々しい態度に誰も文句を言えず、自由に動き回っている。動かない専用機持ちを他所にカーテンを開けて窓を開ける。 すでに日は暮れており、涼しい風が室内に入ってきた。
「というか何を落ち込んでいる」
ホテルで用意された大部屋で空いていたソファにドカッと座ると、どこから取り出したのか、フライドチキンのイラストが書かれているお菓子を取り出してパリポリと食べ出した。
「篠崎春明がいなくなったことか? それとも助けに行けなかった非力さか?」
誰かの肩がピクリと動く、図星だった。今いるメンバーの中心人物とも言える春明がいなくなったこと、そして助けに行けなかった自分の弱さを全員が悔いていた。
「そんなものを気にしてどうする」
それを一刀された。
「お前たちが弱く、春明が強かった。あとはまぁ、運が悪かったとでも思っておけ」
「…………言わせておけば」
滅多に見せない怒りの感情を出した一夏が立ち上がる。動きはしないものの、他のメンバーも同じような顔をしていた。
「このっ「第一もっと気にすることがあるだろう」……どういうことだ?」
言い返そうとした一夏をマドカの言葉が遮る。考えても思いつかない。
「おそらく、ほぼ確実だが、篠崎春明に入れ込んでいたスコールが一緒だ。オータムもな」
「それがなんだってんだよ」
思わずぶっきらぼうになる言葉だが、マドカはやれやれと頭を振る。全員がイラッとした。口元に食べカスを付けたまま、真剣な表情でマドカが口を開いた。
「スコールが春明を食べるかもしれないぞ?」
ピシャァン! と全員の頭に雷が落ちた。忘れていたことだが、マドカの言う通りあの二人は春明と一緒にいる可能性が高い。そして今逃亡中であり邪魔者はいない、これすなわち、
「アクション映画ならベッドシーンが挟まる場面…………!」
一夏が答えを出す。
過去に自分を助けてくれた正義の味方、そして再び戦場で出会い対決する。そして組織の裏切りにあう敵役のヒロインと、それを庇う主人公が協力して組織と戦う。今回はないが、主人公陣営からも追われたら役満となる。
そして春明は普通の男子高校生、性欲とバカさを併せ持つ。普段なら断るか逃げるかしても変にノリが良すぎる春明なら…………!
「グワッ!」
いの一番に頭を抱える箒、流石にダメージが大きかった。それを皮切りに慌てだすヒドインズ、なおホモ込み。顔色が悪くなったり慌てたりスッと意識がとんでいく。
「ただいまー、って何この状況」
事情聴取を受けて帰ってきた鈴、扉を開けて迎えられたのは阿鼻叫喚の地獄。きっかけは呑気に駄菓子を食べている。
「ねぇどういうこと?」
唯一おかしくなかった簪に声をかける。思わずビクッと震えるが勇気を出して声を出した。
「く、曇らせかと思ったら脳破壊だった」
「ごめん、よくわかんない」
ぺしゃっと簪は溶けた。
「せんぱーい、入りますよー」
ノックして開けられた部屋に灯りはなかった。廊下から入る光と、窓からの月明かりだけが部屋に差し込み、ベッドに座り込む千冬を照らしていた。
少しだけ起こした顔は白く、月明かりに照らされて幻想的にも見える。この人お酒を飲んでいる時以外は本当に絵になるな、と思いながら部屋に入る。伝えることはない。どうせ調子に乗るだけだ。
「まや……」
小さく呟く千冬。少し乱れた髪に儚げな雰囲気は庇護欲を唆られ、同性であっても虜にする魅力を醸し出していた。この美女はいったい誰なのだろう。
「先輩、落ち込みましたか? 落ち込みましたね? では仕事をお願いします」
励ますでもなく慰めるでもなく仕事への誘い。休んだから働けというブラックすぎる発言、千冬は目を丸くした。
「ショックなのは分かります。小さい頃から暮らした家族同然で将来を誓い合った仲、若い燕すぎて光源氏みたいでドン引きですけど」
「真耶?」
追撃されていく口撃、少なくとも落ち込んでいる人物に向けるものではない。たとえ事実だとしても。
「マドカさん曰く、春明君を慕っている人達が一緒らしいです。このままだと先を越されますね。そうなると先輩を貰ってくれる宛てはなくなりますよ?」
「あの、山田先生?」
「酔った時いつも言ってましたよ、わたしには将来を誓った年下の子がいるんだ〜って。みんな酔っ払いの戯言だと思ってたら実在してて驚きました」
「え、そんなこと思われていたのか?」
「なのでさっさと仕事して取り返してください、さもなきゃ一生独身ですよ?」
悪意というか敵意がないと出てこない言葉の数々、さっきまでの落ち込んでいたショックもどこへやら、新たな衝撃を受けて落ち込む暇がなくなる。
「もしくは、わたしが貰っちゃいますよ」
笑顔である、しかし目は笑っていない。千冬も何度か見たことがある、獲物を狙う狩人の眼だ。
「あんなに良い子で何度も声をかけられて、気にしないわけないじゃないですか。教師と生徒じゃなかったらって何度も考えましたけど、先輩のこと考えたら別に良いかなって」
あ、コレ本心だと気がついた。そうなると落ち込んでいる暇はない。そう気がついた千冬、ベッドから立ち上がり部屋を出る。将来の相手に心配もだが、それ以上に強かな後輩に遅れをとるわけにはいかない。ここにきて千冬は一番のライバルを知った。
「……他にもいるのか?」
カツカツと廊下を歩きながら隣を歩く後輩に聞く。世界最強らしくない弱さを見せたのだ、いまさらこの程度なんでもない。
「さぁ、どうでしょう?」
不敵に笑う後輩に頼もしさと恐怖を感じながら歩き出す。帰ってきたら年も関係なく伝えるべきかと思案しながら。
「何だこの状況は」
そしてたどり着いたのは専用機持ちの控え室、落ち込んでいるかと思えば騒がしい。
「む、ようやく起きたのか千冬姉」
呑気にお菓子を食べながら話しかけてきたのはマドカ、何気に初めましてであり、自分そっくりな顔を見て何とも言えない気分になる千冬。
「たるんでいたのでな、火をつけてやった」
「……どうやって?」
「モタモタしていると先に取られるぞ、と」
何を、とは聞かなかった。というか聞けない、同じ方法で復活したのだから。何かをするべきだとは思っているが、何をしたら良いのかわからない。それ故の混乱だった。
分からないでもないが、それはそれとして教師なので指示を出す。
「やかましい、止まれ」
身体に染みついた動きが、乱れた行動を止めた。
「これより篠崎春明の捜索、救助を行う。そのためにも身体を休めろ、明日からしごいてやる」
「「「「「はいっ!」」」」」
軍隊ではない、学園の生徒と教師である。それはそれとして千冬の教え方は軍隊に近い。ISも扱うので仕方ないといえば仕方ない。
復活した千冬の号令で落ち着いたメンバーは改めて自分たちに出来ることを考えながら、休息の準備をする。この時、鈴はすでにベッドへ潜り込んでいる。うるさいのは放っておいて休もうとしていた。簪はコッソリ抜け出して部屋でマスクドライバーを見ていた。
できる者は自分のペースで進むのだ。
「待ってろよ春明、必ず助けに行くからなっ‼︎」
ホモは助けない方が春明の身のためである。
ごめん、曇らせはかけなかったよ……。
なんかええかなって、こんな感じで走りました。脳破壊も曇らせも同じようなもんやろ、ええか。
なんかノリに乗ってる時と乗ってない時でクオリティに差が出ていそうで怖い、その辺どうにかしないなぁともうこの頃。
感想、ご報告高評価いつもありがとうございます。この辺オリジナルなんでどう評価されるか不安なんでご自由にお書きください。