それはそれとしてあと何話かなぁ五話くらいで終わりかな? 突っ走っていくので最後までお付き合いください。
滑らかに、星明りのもとダンスを踊るように戯れる。
「ンゴォォォォォォォォ‼」
汚い叫び声を出すAIだがその戦闘技術は最高峰、常人なら使いこなすどころか通常の操縦すらもできないであろう複数腕を使いこなして襲い掛かる。しかし時折り星の明かりに照らされるレイヴンには届かない。
戦闘から学習してドリルだけでなく刀や薙刀にランス、さらには様々な銃を持ちだして攻撃する。しかしそのどれもが先読みされているかのように、攻撃した時には既にその場所にいない。闇に溶け込んだ渡鴉の残像を追いかけるのみ。なのに相手は的確に攻撃を差し込んでくる。
「それ強いから禁止ンゴ!」
「弱い相手にだけイキるネットの悪いとこばっかり学んでんな」
腕を数本切り落とされてもまた新たに生えてくるY、出て来た時からそうだが小物感がぬぐえない。
「こうなったらホモを取り込んでさらに強くなるンゴ!」
「いや強くはなんねぇよ?」
「これを見てもそう言えるンゴかねぇ?」
腕の一本から映し出されたのは空中ディスプレイ、そこにはIS学園で奮闘する専用機持ちたちの姿があった。
最初は余裕があったが少しずつ押されていく姿、表情は変わらないが、心ばかり春明の黒刀を握る力が強くなる。
「ンゴゴゴゴ! こっちは余裕で勝てそうンゴねぇ!」
汚く笑うAIに春明は何も返さない。それは信頼でもあり、目の前のYがウザイとか言う理由ではない。
「ワイは頭がいいので気付いてるンゴ。ここでの戦闘情報も向こうへフィードバックしているのには、気付いていることに気が付いているンゴねぇ。以前味方を鍛えるためにワザと強い敵と戦わせていたのもワイは知ってるンゴ」
不敵な笑み、もちろん表情は見えないがおそらくそんな表情で、Yは春明を見る。
「今回もそのつもりなのがバレバレンゴねぇ」
明らかに余裕があった春明に冷や汗が流れた。
「……………織斑先生」
「ダメだ、何かしらの機能でISを操縦者事操っている。ここで出ても味方を減らして敵を増やすことにしかならない」
感情を抑えて行われる会話に聞いていた他の教員も口を強く噛みしめる。今すぐ出て助けに行きたい。そう考えている者ばかりだが、出てはいけないと残っている理性が押しとどめる。
何より一番でていきたそうな千冬が腕を組みながらも服が破れそうなくらい握りしめいているのを知っている。
暮桜には白式と同じくISを一撃で仕留められる零落白夜が搭載されているが、その本質はタイマン戦。数の前では有効にならない。それこそ指示を出すリーダー機などがいればすぐさま飛び出しているがそれも見つかっていない。
「コイツらどんどん強くなってる!」
今までは一振りで三機くらいなら倒せていたものの、今では一機を倒すのに複数で連携して余裕がある、それくらいになっていた。
最初の余裕もとっくに消えて、ほぼ全力の戦闘となっているIS学園のメンバー、お互いをカバーできるように連携を組み、戦闘継続を伸ばすために控えと交代している。
三度目となる再出撃にエネルギーこそ潤沢なものの、搭乗者たちの精神はすり減っていた。
「うわっ!?」
シャルにこれまでの戦闘ではありないほどの大きなダメージが入る、その攻撃をしてきたISを見てラウラが驚く。
「アリーシャ・ジョセスターフ!?」
かつて第二回モンド・グロッソの優勝者がその搭乗機であるテンペストと共に現れた。表情はうつろで意思はないようにも見える、この時は知らなかったが春明たちの相手をしたダリルとフォルテと同じようにYによって操られている。
一瞬気を取られた瞬間にラウラに複数のキメラが取りつく、頭部の口に当たる部分からコードを伸ばし、ラウラの首元に張り付いた。
「ぐっ、アアッ!?」
悲鳴をあげながら、ISごと身体が痙攣ししばらくするとぐったりと力が抜けた。顔が起きるとそこには光がなく、焦点の合わない目で前を見るラウラ。手を前に伸ばすと、セシリアに向けて攻撃した。
「セシリアっ!」
「シャルさん!?」
気が付けなかったセシリアをシャルが庇い墜落していく、またもやキメラが群がりラウラと同じようにケーブルを差し込もうとした。
「させませんわっ!」
ブルー・ティアーズの偏光射撃によって散らされる、こともなく別のキメラが盾となってセシリアの攻撃を防いだ。
「なっ!? ラウラさん!?」
また生まれた隙にラウラが取りつき、セシリアの動きを封じる。ライフルを消して新たに取り出したナイフで攻撃するも簡単に抑えられ、関節を極められると目の前のキメラが群がる。
出かけた悲鳴を飲み込んで誘導ミサイルを射出するが、それも躱されて取りつかれた。
「お、おねぇちゃん」
「大丈夫よ! 簪ちゃんには近づけさせない!」
背中を合わせてどうにかやり過ごしている更識姉妹、大技を撃てるが故に積極的に狙われている簪を、汎用のきく楯無がカバーする。学園内でも上位の技量を持つが故に耐えていたが、それも数の暴力を前に憔悴していた。
「ひ、ひぃ」
「声出す暇があれば脳と身体を動かしなさい」
駆り出されたカナダの国家代表候補生であるティナ・ハミルトンは、ラファールに乗ってルームメイトの鈴と戦っていた。ほかの生徒よりも経験はあるものの、初の実戦ということで動きは固く、鈴がアシストにまわって何とかという形だった。
「わ、わたしは下がるから他のところに」
「その暇があればいいんだけどねっ!」
どこか似通った動きをするキメラが故にカバーをする余裕があった鈴だが、ティナを逃がすには手が足りない。故に現状維持が精一杯であった。
普段はいない癖に、最近は部屋で寝ているクラスメイトの背中を見て覚悟を決める。何度聞いてもいつも通りという割には、ついさっきまでどこか元気のなかったルームメイトを助けようと声を出す。
「これ終わったら! 篠崎君とのこと聞くからね!」
「好きだけどほかに聞きたいことある?」
「それ詳しくっ!」
予想外の答えにさらにやる気が満ちるティナ、どうせ聞きたいことなんてこれでしょうと先読みされたことは気が付いていない。めんどくさいし帰って来たアイツに丸投げしようと考えながらやる気を出したクラスメイトのフォローに向かった。
「セイッ!」
「はぁっ‼」
近距離組で一緒にいる一夏と箒、遠距離攻撃は箒の装甲で防ぎ近づいたキメラから切り捨てる。作業とかしているが、それでも気の抜けない状態に汗がしたたり落ちる。
「知ってるか一夏! わたしは昔、お前のことが好きだったんだ!」
「初耳だよ! ずっと春明に惚れてると思ってたからなっ!」
「そうだろうな! 久しぶりに出会ったらホモになってて驚いたが!」
「春明がかっこよすぎるんだ! 惚れても仕方ないだろ!」
「まったくだ!」
もはや深夜テンションに近いノリで話しながら動いている。疲れていても動きはさらに洗練され、もはやゾーン状態である。この会話はもちろん司令部に聞かれているが、それを突っ込む余裕はどこにもない。
「だとしたら俺たちは恋のライバルだな!」
「なんで好きな人を男と取り合わなければいけないんだ!」
「じゃあ女になればいいか!?」
「勝ち目がなくなるからやめろ‼」
脳は働かず、身体に染みついた動きが脊髄のみを通して表にでる。阿吽の呼吸といえるその二人にキメラは策を使った。
「ラウラ⁉」
「セシリア‼ シャル‼」
操られている仲間を前に、動きが鈍る。迫りくるキメラを切り捨てようとして間に、セシリアが割り込んだ。手を止める一夏にキメラが取りつこうとして、
「箒っ⁉」
紅椿が白式を蹴り飛ばした。紅椿に群がっていくキメラ、隙間から微笑んでいる箒を見て一夏の心に陰り出す。
「あ、ああっ!」
呻くような声が聞こえ、キメラが離れると光の消えた瞳の箒。自分のミスを 咤しようとして止める。春明に教わった通り大きくゆっくりと呼吸するがそれで落ち着けるほど、一夏は年を取っていなかった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ‼」
いろいろな感情を叫び声に変えて再びキメラの群れに飛び込んでいった。
零落白夜で切り捨ててもその倍の数がすぐさま取り囲む、そして真っ白なISを、真っ黒なキメラが覆いつくした。
握られていた千冬の手がほどけていく。
最近洗脳の良さに気が付いてきました。いろいろなパターンはありますが、ハイライトが消えて物言わぬ人形派です、洗脳する時ちょっと煽情的な声が出るといいですね。エッチぃのだと常識変換がいいですけど。エッチな場合とそうでない場合で好みが変わるの誰かわかって。
性癖といえばエッチなことを想像しますが、本来は自分のさがのクセ(よく鼻の頭を掻くとか)、らしいので正確に使うなら性的フェチズムの方が的確らしいですね。本来の意味から別の使い方になるのも言葉の面白さですが、普段使っている言葉の意味を調べてみるのも楽しいものです。
これからは性癖という言葉を聞くたびに本来の意味って少し違うんだよなぁってこの小説で学んだことを思い出してください。
豆知識も学べるホモ小説でした。呪いとか言ってはいけない。
感想誤字報告高評価いつもありがとうございます。いつの間にか七十話を超えていました。ほぼ毎日更新してたので一年の六分の一をこの小説に関わって来たんですね最悪です。