IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 最後です、どうぞ。


WHY?

 現状確認、ひとつ、ラスボスを撃破。ふたつ、敵基地が爆発しそう。みっつ、語尾に星つけるおばはんキツイ。

 

『最後はいらなかったでしょ? なんで付け加えたかな???』

 

 通信先から何か聞こえるが無視して送られてきた情報を確認する。世界中から情報を集める目的であってなかなかのマシンだ。現在暴走してるが。

 

 爆破予測は、あー世界が滅びたりはしないけど州はちょっとマズいかもって感じだな。ハイパーセンサーで確認できる遠くの町も、爆破被害に直接あわなくても振動による地震でけっこうな被害が出るかもしれない。

 

「なので先に爆破させることで被害を抑える、ね」

 

 そのまま無造作に爆発させると被害がデカい、だから先に壊しておこうというわけだ。分かりやすいな。

 

「オータムやスコールたちは?」

『学園の子を担いで避難済み、ISの起動自体はできるから被害予測地域からは脱出できるよ』

「アメリカやナターシャへの連絡は?」

『福音の搭乗者には連絡してるけど国の方はしらな~い』

「上等」

 

 下手に連絡するとミサイル打ち込むとか脳筋な解決策しか出さないからな、あるかも、じゃなくてありました報告でいいだろう。ナターシャには迷惑かけるけど、こんど日本の観光案内でもして許してもらおう。

 

『……………渡鴉の装備でも破壊はできるよ』

 

 ほんの少し、いつもより元気のない声が届く。

 

 タワーが結構な大きさなので事前に破壊するなそこそこの火力がいる。それこそゴールデン・ドーンなら向いているが、現状エネルギーも少なく今は避難している。ほかに駆け付けることができるISもなく渡鴉の弱点である火力、それがいま必要なわけだが、

 

「アサルトアーマーならいけるだろ」

 

 ぶつくさ文句は言っていたが実際かなり強い。自傷ダメージもあるし搭乗者へのダメージもあるから今まで全力で使うことはなかったが、その気になれば一発で大抵の相手は倒せる。

 

「つーわけで、じゃあ『まって』なんだよ」

 

 余裕があるって言っても、昼寝するほどはねぇんだよ。さっさと行かせてくれ。

 

『予測は予測、だから実際はどうなるのかは分からない』

 

 天災と呼ばれた人物とは思えないほどの気弱な言葉、しらけるもんだ。

 

『避難警告を出せば被害は減るし国の力づくな解決策も「うるせぇ」…………』

 

 天災だろうとできないことはあるって知ってるんだよ。妹の気持ちを考えるとか、友人と結婚競争をするとか、俺に勝ち越すとか、誰にでもできることを思いつくのも苦手だとか。

 

『……………………勝ち逃げは許さないよ、バカアキ』

「当然」

 

 スラスターを噴かせて真っすぐに地下を目指す。Yが掘りぬいた穴をそのまま進み、途中に落とし物を拾いノイズ交じりの言葉を聞きながら円柱のタワーの真上から、穴の開いた中心に降り立つ。

 

 数字の羅列が広がっていく光景は人工的でありながら幻想的でもあった。残念なことに所々乱れて火花も散っているし、盛大に爆発させてもらうのだが。

 

「……………………なんかやり残したこと、うわたくさんあるなぁ」

 

 最後まで別の手段を考えているのだが、なぜか過去の思い出ばかり浮かんでくる。どれだけ浮かんできても解決策が思いつかないのはろくな人生じゃなかったからだろうか。

 

「しゃーない、勝負の時間だ」

 

 渡鴉のアサルトアーマーを全方位に向けて最大出力で放つ。相手は死ぬ。相手ってか機械だけど。

 

 ただ欠点としては渡鴉自身にもダメージが入るし、一定時間のステータスの低下、まぁオーバーヒートだな。あとここが地下ってこと。たぶん束が来るのにも時間はかかるし、適当なミサイルとかは使えても精度が怪しい。なんで地下に作ったんだよ、攻撃されないためか、充分に発揮できとるわ。加減しろバカ。

 

 まぁいいか。

 

 がんばったけど壊せませんでしたーってのが一番ダサいので、あらゆるリミッターを外して全てをアサルトアーマーへのエネルギーに変換する。警告が出るがすべて無視。あとは、ひと言、それだけで発動する。

 

 さて、勝負の時間だ。

 

 

 

 

 

 

「天才篠ノ之束の作った宇宙開発のためのマルチフォーム・スーツだ。宇宙活動を前提として操縦者を守るための機能てんこ盛り、この程度でやられると思うなよ」

 

 

 

 

 

 アサルト・アーマー・VOB、発動。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 整備室で珍しくミスすることなく動き回っていた本音は、帰ってくるIS操縦者たちのための準備をしていた。ISの点検のための機材と、操縦者を労わるための飲食物など、後で姉に普段からあれくらいしてほしいと言われる働きっぷりだった。

 

「…………しのきー?」

 

 そんな本音がふと手を止めた。頭をよぎったのは気になる男子のこと、自分はこんなにも乙女だったのかなぁ? と首をかしげてまた動き出す。不思議なことに同じタイミングで同じ人物のことを考えていたのはほかにもいたらしい。

 

 

 

 数分後、アメリカから亡国企業の本拠点と思われる場所が爆発したとIS学園に連絡が入った。

 

 数十分後、爆破範囲は広いがかろうじて人への被害は出ていないと報告。近場で元亡国企業のメンバー二名、そしてIS学園の生徒二名を銀の福音操縦者ナターシャが確保。軽傷で命の別状はない。

 

 さらに数十分後、現地に男性操縦者、篠崎春明がいたことが事情聴取で判明、IS部隊、軍隊を総動員して捜索を開始。

 

 約一時間後、篠崎春明の専用機である渡鴉と思わしきISの破片を発見。搭乗者は未だ不明。

 

 数日後、IS学園の教員ならびに各国の専用機持ちが来国、捜索に加わる。これを機に捜索範囲をさらに拡大。

 

 事件開始から一か月後、捜索を打ち切り。地元警察に捜索権限を移行し、軍は撤退。IS学園関係者も帰国。

 

 今もなお、地元警察や近隣の住民が捜索を続けている。

 

 

 

 これが五反田蘭が知った篠崎春明の最後の情報だった。

 

 泣くことしかできなかった自分を兄が慰め、IS学園に入学して探しに行く。それが蘭の決めた道だった。

 

「はやいなぁ、もう三年生かぁ」

 

 蘭の隣で友人が呟く。その言葉は感慨深くもあり、同時に将来への不安なども含まれていた。

 

「いいんじゃない? 確かIS整備で就職決まってるんでしょ?」

 

 友人はこの三年間で急速に発達した、ISによる宇宙進出を目指している会社の一つに就職が決まっている。きっかけはIS反乱事件と呼ばれるキメラの襲撃事件だ。

 

「ISコアにはそれぞれ人格があって、搭乗者のことを学び成長していく。ゆえに争いではなく平和活用、本来の目的である宇宙開発に向けて研究を進めていくっていってもねぇ」

 

 IS学園を襲撃したキメラの解析をした結果、製造主はISコアだった。そのISコアは世界征服の指示を受けており、進化した結果人を襲い学習してIS自身によるディストピア社会の創造を目指していたという。指示を出していた人物は見つかっていないが、ログを遡ると必要ないと追い出されたとか。

 

 ISの封印意見もあったが、的確な封印方法もなく、純粋に誰かを守ろうとした王理の存在もあって、世界はISをもとの目的である宇宙開発に向けて研究している。

 

 むろん未だ兵器としての研究もあるし、モンドグロッソも開催されているが、それでもたった三年前とは世界は大きく変わった。

 

「蘭だって日本の国家代表候補生になったんでしょ」

「けっこうギリギリだったけどね」

 

 そのため代表候補生などの枠がさらに狭くなり、実力と心構えをともに評価されるようになった。それでも目標のために努力し、狭き門を潜り抜けた蘭は実力者だと言える。

 

「なんか前任者の人に評価されたのは運が良かったけど」

 

 引退すると言っていた前任者との会談で、マスクドライバーの話になり、兄やその友人に釣られてみたことがある。サイスが好きだったというと高評価を受けたのだ。なぜなのかはよく分かっていない。ただこれで心置きなく引退できると喜んでいたのはよく分からない。やはり大変だったのだろうか。

 

「あーいいなぁ、国家代表候補ってもしかしたら織斑一夏さんとか出会えるかもでしょ? わたしもそっちにすれば良かったかなぁ」

 

 うらやましそうに言う友人に蘭は苦笑する。

 

 IS学園を卒業した後、一夏は世界IS宇宙連盟の宣伝部に就職。文字通りISの宇宙開発に携わる企業や政府の連盟であり、その顔役として参加したのだ。主な仕事は世界へのISの関わり方考え方の訴えなどの宣伝、そしてISを使ったテロなどがあった時の鎮圧といったもの。実力とルックス、その姿にひかれる女性は多い。しかしどんな誘い文句も「俺には心に決めた人がいるので」と断る真摯な姿にまた惹かれていくのだ。

 

 その実態を知っている蘭は苦笑いで友人の夢を壊さないでいる。憧れの相手はホモだよ、なんて言わない優しさはあるのだ。

 

 そう、自分が過去に好きになった相手が自分の好きな人を狙う恋敵になるとは思っていなかった。時間がたっても受け入れがたい事実に蘭は何度も頭を痛めた。

 

 学園に入学して知った思い人の爛れた生活に脳を破壊されると同時にうらやましいと呻いた自分は昔の存在、今はその人を探すために未来に向かって進むのだ。

 

「そういや蘭ってゆで卵好きだよね」

 

 歩きながら向かっていたのは学園の食堂、様々な国から入学する生徒のために国際的なメニューが多く並ぶ中で、蘭はよくゆで卵を頼んでいる。安くてかつ結構おいしいと密かに生徒たちの間で人気になっている。

 

「なんかおいしいんだよね、食べてみる?」

「んー、そうだねせっかくだし食べよっか」

 

 そんな会話をしながら料理を受け取り、食べて頬をほころばせる生徒を見て、食堂のおばちゃんが振り向いた。

 

「あんちゃんが作るゆで卵人気だよ! よかったねぇ」

「あざーっす、これだけは得意なんで」

 

 いまだ女子生徒しかいないはずのIS学園で、なぜか雇われている学園唯一の男性。てきぱきと無駄に精錬された動きでゆで卵の殻を向いていく。首元で黒色のネックレスと、それに通されているロケットが本人にしか分からない程度に輝く。

 

「あ、そりゃ俺のアピールポイントなんてこれが一番だからだよ」

 

 食堂の生徒の声や食器の音で彼の言葉は誰にも聞こえない。

 

「だからホモじゃねぇって、そりゃな」

 

 殻を剝き終わったゆで卵を小皿に並べて、鍋に水を入れる。

 

「IS学園でホモから逃げるために婚活するんだよ」

 

 傷の残った腕で、次のゆで卵を作るためガスコンロに火をつけた。




 くぅ疲、最後まで読んでいただいてありがとうございます。

 ハーレムですか? とか誰エンドですか? みたいな感想が来てましたが、最後はこうしよって決めてました。決めないヘタレとか言わないで。

 最後まで感想誤字報告高評価ありがとうございました。この言葉をかけるだけで最後まで書き続けて良かったと思います。

 この後はそれぞれの√とifなど好き勝手に書くので活動報告にて案募集です! ヒロイン登場順で√書くけど書き終えた後でも案頂いたら書くのでお好きにどうぞ!→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333722&uid=235477

 ではホモから解放されたので自作の準備しておきます。さらば!
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