IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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一週間程度の間でもお久しぶりな感じがします。
ちょっと遅くなりましたが箒編です。

他の話ものんびり投稿していこうと思います。


完結後のif話
√箒


『たすけてください』

 

 久しぶりのメールは簡素に完結しており、同時に全身全霊を込められていた。

 

 

 

 少女には夢があった。

 

 幼いころから実家が経営している剣術道場を引き継ぎ、好きな相手と共に経営をしていくということ。ささやかで在りながらほほえましい夢は、実の姉によって困難な道になってしまった。家族とは離れ離れ、転校に次ぐ転校でろくに友達もできず自分に原因があるとはいえ腫物扱い。唯一できていた剣も憂さ晴らしに振るってしまい、自己嫌悪でさらに落ち込んでいく負の連鎖。

 

 希望が芽生えたのは中三の冬、好いていた幼馴染が自分と同じ学校に入学するというニュース。会えるという喜びと今の自分では会えないという反発する気持ちを胸に過ごしていると、もう一人の幼馴染も同じ学校になった。少しだけ笑い、肩の力が抜けた自分を待っていたのはホモになった片思いの相手だった。

 

 それからはいろんな事件に巻き込まれたり新しい扉を開けたりと波乱万丈な学園生活だった。バカバカしい、騒々しい、それでも顔見知りがいて仲良くなれた友人がいて幸せには違いなかった。

 

 自分の気持ちがハッキリと分かってからは、恋に翻弄されるどこにでもいる少女のようで、もどかしくも温かくたまに刺激的な毎日を過ごした。ある日、その思いを向ける相手は消えてしまったが。

 

 一度地の底まで落ち込んだ、しかし発破をかけられ復活すると生きていると知ることができて喜んだ。だがその喜びもむなしく、また消えてしまった。

 

 だが二度目、慣れてしまったのか友人たちとはどこに隠れた、どこの女のもとのいるのかを考えあった。結局卒業するまで行方は分からず、姉から連絡先だけが送られてきたのだ。誰も連絡することはなく、それぞれが自分の道を進み、また機会があれば出会えると信じて学園を卒業した。

 

 ISの関係で苦労はしたものの、無事自分の実家に戻ることができた。政府からのお詫びとして実家の清掃やリフォームをしてもらい。念願の篠ノ之流剣術道場を再開したのだ。問題はここからだった。

 

 もちろん準備はしていた、経営にあたっての必要な資格であったり知識であったりを勉強していたのだが現実はそう上手くはいかない。アレが足りないコレができない、酒が飲めるようになったばかりの年齢の少女では難しいものばかりであった。IS学園でできた伝手を辿って助けてもらったり、逆に助けに行ったり、充実はしていた。むしろし過ぎた。

 

 絶望して喚いたりはしなかったものの、かつての幼馴染の姉にして姉弟子がなぜ酒を飲むのかを理解した。両親は隠居して遠くで仲良くやっている、親戚の叔母はたまに顔を見にきては手料理を振舞ってくれる。人の手料理とはこんなにも暖かいのかと涙が出た。入門してくれた生徒たちに剣を教えるのは楽しかったが、楽しいだけでできるのは子供時代だけなのだと大人になった。

 

「せんせー結婚しないの?」

 

 純粋な瞳にとどめを刺された。

 

 忙しくてそれどころではない、言い訳に見えるが事実なのだ。慣れない経営と保護者との付き合いや連絡、各種手続きにお金の管理など目まぐるしく忙しい日々に忙殺された。叔母がいなかったら酒とカップラーメンの日々だったかもしれない。そう気が付いた時に、持っていた端末のあて先が目に映った。

 

 普段ならこんな姿を見せられないと意気込んだだろうが、日々の苦労を話しているたまに来る叔母や両親にいい相手見つけて共同ですれば? と視線で返されていた箒はやさぐれていた。燃え尽きかけていたともいう。

 

 ポチポチと人差し指だけで入力されたひらがなだけの文章を送信する。空き缶に残ったビールを飲み干して床に就く。次の日には送ったメールのことなど忘れていた。

 

 そして数日後。

 

 今日は珍しく夕方から少年の部があるだけで何もない日だった。のんびり過ごすかと部屋着でミカンを摘まんでいる時にチャイムが鳴った。

 

 何か注文していたものがあっただろうか、それとも親が何か送ってきてくれたのだろうか、そう考えて玄関に行き、サンダルを履いてドアを開ける。

 

「はい、篠ノ之ですが」

 

 立っていたのは同年代の男、見覚えがないのにどこか懐かしい雰囲気を持つ青年だった。誰だろう、入門希望者だろうか? そう考えていた時に、先に口を開いたのは青年だった。

 

「よぉ箒、美人になったな」

 

 

 

 

 

 

 気が付けば夕方で、遠くで烏が鳴いている。昼寝をしていたのかぼんやりとした頭のまま時計を見ると、少年の部の開始時間を過ぎていた。お腹にかけられていたタオルケットを跳ね飛ばし、急いで練習用の道着に着替える。すでに生徒たちの声が聞こえている道場の扉を開く。

 

「すまない! 遅くなっ…………」

 

 謝罪の言葉は途中で途切れた。

 

「せんせーおれも二刀流したい!」

「おー箒が良いって言ったらな、ほら並べよ。次なにすんだ」

「次はねー素振りするんだよー!」

「ほいほい、じゃあいつも通り並んでくれ」

 

 きゃいきゃいといつもよりはしゃいでいる子供たち、その中心に木刀を二本持って道着を着ている昼間の青年。最後の記憶よりも大人っぽく、男らしくなった顔つきに誰なのかと自然に言葉が零れた。

 

「はる…………あ……き…………?」

「お、起きたか。ほら先生来たぞちゃんとしろよー」

「せんせいきたー」

「ねぼうしたの? ダメだよねぼうしたらー」

「しのののせんせー、あたらしいせんせーみたいに二刀流してみたーい!」

 

 子供らしく自由に好き勝手な発言にいつも通り笑いながら諫めたりできない、視線はずっとたった一人に向かっていた。トテトテと進み、木刀も手から零れ落ちる。顔からも零れ落ちたなにかも無視して、まっすぐに向かっていくと、

 

「ばか者っ! どこで、いやなにを…………うっぅ」

 

 言いたいことが山ほどあったが、それらはすべて言葉ではなく感情のままに吐き出された。

 

 

 

 

 

「おーい、いい加減出て来いよ」

「うるさい! うるさい! うるさい!」

 

 子供たちの練習が終わった後、箒は押し入れに引きこもった。呆れながらも春明は声をかける。原因はお前だと箒は言わなかった。少なからず原因はこっちにもあると自覚していたからだ。

 

「別に泣いたとこ見られたくらい別に良いだろ、子供らもいい子ばっかだったし」

「お前は知らないだろうが、あれはおもしろいおもちゃを見つけた時の顔だ! 明日には学校中で広まってうちの門下生でもない子にすら広まるのだぞ! 迎えに来た保護者にも伝わるから次の練習の時には根掘り葉掘り聞かれるし! 近所でうわさになるから買い物に行けば近所のおばさま達に捕まるのだ!」

 

 箒は有名人である。もともと近所でも知られていた篠ノ之道場の娘であるし、IS関係で悪目立ちもした。数年たってほとぼりも冷めたが、今でも知っている高齢者などはいる。そうでなくても剣術道場を一人で切り盛りしている美人師範など噂の種にしかならない。それ目当てで通いに来る青年の部の大人たちもいなくはない。幸い道場の評判もあって近所に受け入れられているが、これまで以上に注目の的になるだろう。

 

「箒ちゃん、春明君が来たって聞いたけど、あらお久しぶり」

「お久しぶりです、お元気でしたか?」

「元気よ。そっちは」

 

 マジマジと春明の顔を見ると、驚きながらも笑顔になった。

 

「あらあらあら! いい男になったじゃないのぉ! どう? 彼女とかいないの〜?」

「いないですよ」

「本当か?」

 

 扉が開いた。天照大神もびっくりな速度で天岩戸が開いた。

 

「つもる話もあるでしょうけど。さ、ご飯にしましょう」

 

 そのまま始まった小規模な飲み会。張り切って出される料理に、少し高い酒が出されて三人は楽しんだ。

 

 

 

「うぅ、頭が痛い」

 

 ズキズキと痛む頭を押さえながら箒が目を覚ます。壁に掛けられた時計の時刻は昼前、少し寝すぎたと思いながら体を起こした。水を飲もうと台所に行けば、冷めたおにぎりとみそ汁。用意してくれたであろう叔母に感謝をしながら水を飲み、レンジで温めた遅い朝食を食べた。

 

 ようやく覚醒してきた頭で今日のするべきことを考えて、伸びをする。

 

「箒、この道場の帳簿とかデータあれば欲しいんだが」

「ぶぎゃ⁉」

 

 なんか乙女とは思えない声が出た。

 

 それもそのはずキャミにパンツというどこに出しても恥ずかしい、思いっきりだらしない乙女として見られたくない格好なのだ。

 

「お、朝飯食ったのか」

「い、いただいた、もしや春明が作ったのか⁉」

「そりゃおばさん昨日の夜帰ったし。というかここの帳簿とか確認したいんだけど」

 

 記憶がない。というか朝食の用意に仕事をしてもらっている、対して自分は二日酔いで昼間で寝て用意された食事を食べる。認めたくないがニートのようだと思ってしまった。

 

「ほれほれさっさと教えろ」

 

 落ち込む暇ももらえず促されるままに必要書類などを見せていく。どこで学んだのかテキパキと書類をさばき、練習の時には見本の手伝いに子どもの相手など、文句どころか教えることもなく馴染む始末。所用で居ないときなど「はるあきせんせーどこー?」と聞かれるほどになった。

 

「いやこれでいいのか?」

 

 春明が来て一ヶ月、風呂にのんびりと浸かっていた箒はそう思った。幸せである。間違いなく幸せである。これまで湯が暖かいと感じる暇もないほど疲弊していた時とは大違いである。

 

 春明は普通に有能であった。ほんとうなら書類関係だけ任せて、稽古は自分が専門で教える、いや現在もそうなのだが。家事も自分でこなそう、たまに手伝ってくれたら嬉しいくらいだったのがほぼ任せっぱなしである。というかどこで学んだのか料理が上手い。最近は減っていた体重が、以前より超えないか不安になるほどに。このままでは行けない、甘えっぱなしではいけないと決意する。

 

「おーい、バスタオル置いておくぞ」

「すまない」

 

 扉越しの会話だがすでに慣れたもの。

 

 浴室から出ると丁寧に畳まれたバスタオルで体を拭く。着替え終わると良い匂いに誘われて台所に向かう。机の上には暖かい料理が並んでいた。

 

「「いただきます」」

 

 手を合わせて美味しい料理に舌鼓を打つ。食べ終わると缶ビールとツマミが出されてテレビを見ながら飲む。洗い物を終えた春明がレモン酎ハイを用意して飲み始めた。テレビでは流行りの芸人が食べ歩きをしている。特に好きと言うわけでもないが、美味しそうだな、食べてみたいなとのんびりとした時間が過ぎる。

 

「いや待て」

「どうした?」

 

 ここで気がついた。

 

「ビールのおかわりか? 毎晩飲むなら一缶でやめとけよ」

「むぅ、もう少し呑んでもじゃなくてだな!」

 

 いつも通りの返事に渋ってしまうがそうじゃない。家事を任せて自分は食べて飲むだけ、これでは立場は逆ではないか。時代錯誤と言われるかもしれないがそれはそれ。箒は自分でお酌する方になりたかった。現実はされる方だったが。

 

「わたしも家事を手伝わせろ!」

「いうて俺居候みたいなもんだし、家賃変わりだと思えば良いんじゃね?」

「そうではない! そうではないのだ…………」

 

 尻すぼみになっていく箒の言葉。言いたいことがあるのだが言葉にできない。上手くまとめることができない。

 

「そりゃ酔ってるからだな」

「一缶で酔ったうちに入るものか」

「お前言ってることだいぶやばいぞ」

 

 ちなみ箒は酔うのが早いが、飲み続けられるタイプである。記憶もたまにとぶ。厄介なタイプである。

 

 どう言葉にするか考えるためにひと口飲む。

 

「なぜ酒は飲むと減るのだ」

「変な酔い方したなぁ」

 

 考えるためにひと口飲む。

 

「なぜお酌するのではなくされているのだ」

「久しぶりにあったら酒浸り寸前なくらい呑んでたからだな」

 

 考えるためにひと口飲む。

 

「なぜ春明の料理は暖かくて美味いのだ」

「そりゃ料理してきたから、ってその感想が出るのだいぶヤバかったな」

 

 考えるためにひと口飲む。

 

「…………なぜきたのだ」

 

 音が消える。

 

 つきっぱなしのテレビの音もどこか遠く、たまに吹く風が普段より大きく聞こえる。

 

 どれだけ時間が経ったのだろうか、春明が顔を逸らしてテレビの音量にも負けるくらいの大きさで呟いた。

 

「…………メール」

 

 その言葉を理解するのにかかったのは何秒か、いや何時間か。酒に浸った頭がその言葉を理解すると、缶ビールを持って立ち上がった。

 

 困惑する春明を無視して隣に座り込み、肩を抱く。

 

「おまっ! えわっ! むかしっからそういうところだっ‼︎」

「何言ってんだこの酔っ払い」

 

 残ったビールを一気に飲み、息を吐く。思わずうわっと顔を顰めるが箒は気にしない。

 

「こまったんだ! わけのわからん紙にずっとなまえをかいてわたしは本当にしのののほうきなのかと!」

「ゲシュタルト崩壊してんな」

「きんじょのおばちゃんも! 門下生のほごしゃにも! こんなわかいむすめがひとりっきりで! というかおでなんどもみられた‼︎」

「まぁだろうな」

「夢だった! 夢だったがくるしかった!」

「分かったから机を叩くな」

「からだがじゃない! こころだ、こころがやせた!」

「病院行けよ」

「なんにもなくて泣きそうだった!」

「マジで病院いけ」

「でもおまえがきた」

 

 肩を組んだまま揺れたり机を叩いたり、上を見て下を見て、暴れていないだけマシだがそれでも隣にいた春明はジェットコースターのように身体を揺すぶられた。間違いなく酔っ払って俯いていた箒が顔をあげた。

 

 その目には自分が映っている。気がつけば何も見えない。

 

「んっ」

「んん⁉︎」

 

 カチカチと音が鳴る乱暴なものだった。

 

「…………かんしゃだ」

「……おまえなぁ」

 

 レモンとビールと、他にもいろいろな味が交わった。纏めていた髪がふさりとほどけ、顔にかかる。膝立ちで、座っている相手を上から見下ろす。普段は自分よりも背が高いが、珍しい光景に酒が欲しくなった。

 

「しゃけ」

「は?」

「しゃけのむ」

 

 さっきまで酒の味がしていた場所に、もっと味わおうと口をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

「急で申し訳ありませんが、師範の都合により本日の練習はありません。……こんなもんか」

 

 欠伸をしながら端末を触り、グループへ一斉に送信する。あと連絡するとこは、っと考えていると隣が動き出した。

 

「…………ころしてくれ」

 

 謎の呻き声をあげながら布団の中で悶えるナニカ。ため息をつくとビクッと動いた。

 

「……今日は休みって連絡しておいた」

 

 またもビクッと跳ね上がるナニカ。少しづつ捲れていくと、慌ただしく動く目がチラリと覗く。あーうー、と声にならない呻き声が出るとまた潜っていく。

 

「…………邪魔なら出ていく」

 

 布団の中でさっきよりも大きく跳ねた。

 

「いらんもん迎えて道場の邪魔になるってなら出ていく、そこまでしている気はない」

 

 動かずにじっと布団の中で言葉を考えている。

 

「書類だけならデータのやり取りで済むし、食事はまぁ、ストレスなければ普通にできるだろ。そうなると俺がいなくても」

 

 そこで言葉が途切れた。布団の中で手を握るナニカがいた。

 

「いて……ほしい」

 

 蚊の鳴くようなか細い声、だがハッキリと相手に届いた。

 

「責任とか、じゃなくて、その……………」

 

 どう言葉にするか考えている。普段は直線的なのに肝心なところでは腰がひけてしまう、昔からのクセだ。それを知っているからこそ、ゆっくりと待った。

 

「はしたない娘だが…………もらってくれると、うれ、ありがたい」

 

 ヘタレにしては充分な勇気だろう。布団の中で握る手が強くなる。その少し震えている手を優しく握り返した。

 

「後で返せって言われても返さねぇからな」

「! それは、つまり」

 

 ようやく顔が出てきた。乱れながらも朝日に照らされて輝く髪を丁寧に退けて顔を近づける。

 

「もらってやるよ」

 

 思わず布団から飛び出て抱きつきにいく。思わず泣いてしまうほどの笑顔で自分の幸せを抱きしめる。いろいろと言いたいことがあったが、とりあえず抱きしめ返して落ち着くまで待つ。

 

 こうして、剣道少女は夢を叶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 この後来訪した叔母の声に慌てて服を着て迎えた。箒は完璧に誤魔化せたと思っていたが、乱れた服、ひょこひょことした歩き方、無意識なのか注意されるまで離れない様子を見て鯛を買おうと決心した。

 

 その後、箒が白無垢を被るまで気がついたことは秘密にしており、参加した保護者や生徒からもすぐにバレたと言われた。

 

 ちゃんと報告するまでバレていないと思っていた花嫁は、紅白でめでたいと揶揄われながらも幸せな顔をしていた。




はい、ということで箒エンドでした。


遅くなった原因はこちらです。
剣道少女は夢をみる の箒が堕天使に背中を押されるシーンです(
【挿絵表示】
)


話自体はできてるんですけどねーイラスト描いたりデッキ考えたりのんびりしてました。またオリジナルか二次の小説も投稿したいので時間が足りないですハイ。


活動報告にて案募集です! ヒロイン登場順で√書くけど書き終えた後でも案頂いたら書くのでお好きにどうぞ!→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333722&uid=235477

お次は英国少女の予定(変更の可能性あり)
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