IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 メリークリスマス!

 サンタからのプレゼントです!


 書いてて思ったけど個別√ってそこまでイチャイチャしない問題、まぁ書きたくなったら書けばいいかってことで何故か一番人気となっていた鈴音です、どうぞ。


√鈴音

 ある町に新しく料理屋ができた。

 

 少し前から工事をしており、何ができるのかと楽しみにしていた近所の住人は開店と同時に暖簾をくぐる。

 

「いらっしゃい」

 

 普通の中華料理店のようなカウンターと座敷がいくつか、そして出迎えたのは小柄な二つ結びの女性だった。一瞬子供かと思ったが、そう見えたのは外見だけ。注文を聞き料理をして運ぶ姿に幼さはなく、立派な女性だった。

 

「チャーハンセットお待たせ」 

「おススメ? あんたたちみたいな食べ盛りなら大盛ラーメンでも食べなさい。でも家でもちゃんと食べるのよ」

「ありがと、また来てね!」

 

 明るく愛想のいい女主人が一人で切り盛りする料理店は、あっという間に町に溶け込んだ。昼には仕事中のサラリーマンや職人が、夕方には食べ盛りの学生が、夜は家族が、時には貸し切りで祝い事の場になったりと、繁盛していた。

 

「そういやリンちゃんよ、ここはバイトとか雇わねぇのかい」

 

 ある日、カウンターでラーメンを啜るツナギを着たおっちゃんが声をかける。昼を少し過ぎてピークも終わったころ、店内には遅めの昼を食べている三人程の客と洗い物をしている鈴音だけだ。

 

「んーそうねー」

 

 のんきな返事だが無駄な動きがない洗練された手つきで、どんどん食器を洗っては食洗器にかけている。身体は小さいというのに気が付けば仕事が終わっている。何度見ても手品みてぇだなとおっちゃんは心の中でつぶやいた。

 

「確かに忙しい時もあるけど、お客さんたちも待っててくれるし大丈夫かな」

 

 実際手が足りないときはある。しかしそれに文句を言う客はいないし、なんなら自ら料理を受け取りに来たり、ついでに運ぶこともある。そんな時には「なんでリンちゃんじゃないんだよー」と声が上がっては店内にいた客が笑う、暖かい店だった。

 

「いまは良くても疲れて身体を壊したりしちゃ元も子もないだろう? この町には学生だっているんだ、求人広告を出せばすぐ来るよ」

 

 少し離れた席で唐揚げ定食を食べていたサラリーマンも会話に加わる。常連、というほどではないが月に一回は来るほどこの店を気に入っている。そんな店が体調不良で休んだりつぶれたりしたら落ち込むほどに。

 

「な、そこのにいちゃんも言うように心配してんだよ」

 

 だよな、と顔を向ければ唐揚げを食べながらうなづくサラリーマン。

 

「あの、張り紙とかあれば誰かしら応募はしてくれると思いますし、そうでなくても無茶しないようにしてくださいね。ここの店好きなので」

 

 食べ終わった三十代の女性が会計をしながら話す。味もよく、相談事も聞いてくれる頼りになる姉御として女性客も多い。それほどまでに人気なのは味もそうだが、店主の人としての魅力だろう。なんかあったら言いなよ、自分じゃなくても誰かしら手を貸したりはしてくれますので声をかけてみてください、そういって店を出る二人を見送って幸せもんだなぁ、と噛みした。

 

 さ、これから夕方の仕込みだ、気合充分に包丁を取り出した。

 

 

 

「あ、あの、バイト募集するんですか?」

 

 夕方、日も暮れ始めたころ集団で来ていた学生の一人が声に出す。ガヤガヤと騒がしい店内だが不思議と響いた。

 

「んーそうねー募集したら? とは言われたけど今のところは大丈夫かしら」

 

 レジを操作しながらサラリと流す。変にそらしても真正面から受け取ってもこじれるかもしれないのだ。事実は事実として認めておくくらいがちょうどいい。

 

「よ、よかったら応募しようかな、って」

 

 少し緊張しながらも目的の言葉を伝える。

 

「ありがとね、まだ考えてるから決まったら応募して」

 

 目の前に置かれたラーメンとお礼の言葉、この二つを笑顔で貰った学生は焦ったようにラーメンを啜る。よほどお腹が空いていたのだろう、良い食べっぷりだと思いながら鈴音は厨房に戻った。

 

 一緒にいた友人に肘でつつかれながら湯気のあがるのラーメンを食べる学生の頬は赤くなっていた。そんな学生を横目で見ながら少し笑ってほかの客も料理を楽しんでいる。

 

「いらっしゃい」

 

 ガラリと扉が開いて入ってきたの長い髪を金髪に染めて、ジャラジャラとしたアクセサリーをつけているは二十代の若い男。ズカズカと歩いてカウンターに座る。

 

「注文は?」

「えーそうだねー、リンちゃんとか?」

 

 ニヤけた顔でふざけたことをいう男に店にいた客の額に青筋が浮かぶ。

 

「リンゴチャンプルね」

「いや待って何それ」

 

 何事もなく返事をして料理に取り掛かろうとする鈴音、思わず待ったをかけた金髪男。止めようとするもすでに料理にとりかかっている。あっという間に作られたのはゴーヤチャンプルにデザートのリンゴ、普通だった。

 

 名前からしてリンゴが混ざった何かが出てくるのではないかとビビっていた金髪男は安堵の息を漏らした。周りでうかがっていた客はコッソリ笑った。

 

「ねーりんちゃんもさ、たまには息抜きとかしない?」

「してるわよ」

「なにしてるの?」

「料理」

「いつもとかわらんじゃんよー」

 

 ゴーヤチャンプルを食べながら声をかける金髪男、口を開くたびに店内の気温があがっているのだがそのことに気が付くことなく話を続ける。

 

「おい、あまり邪魔すんなよ」

「えー、楽しくお話してるだけだし別に問題ないでしょ」

 

 近くにいた客が注意するもそのまま続け、

 

「ほらさ、お店ひとりだと寂しくない? 俺も手伝おっか、彼氏として」

 

 バカげたことを言いだした。

 流石に見逃せないと何人かが立ち上がる。理由は特筆するほどでもない、思いやりやらなんやらだ。そこまでして何も気が付かない金髪男に鈴音は、

 

「アタシ付き合うのひとりしかいないから」

「……………………へ?」

 

 店の時間が止まった。

 

 金髪男だけでなく、止めようと立ち上がった客も立ち上がらなかった客も、全員が止まり店の角に置かれているテレビだけが動く。あと鈴音の調理する手も止まらない。

 

「だからありがとね。いつかいい子に出会えたらその子に言ってあげて」

「え、あ、そう、そうする」

 

 ぽけっーっとしたまま会計を済ませて店を出る金髪男、立ち上がった客も腰を下ろして食事の続きをする。のだが味がよく分からない。さっきのひと言がずっと頭に残って、いや理解ができず処理もできないまま残っている。そしてしばらく静かに食事をしていたが、

 

「す、すいません!」

 

 一人の女性客が声を上げた。

 

「はーい」

「その人ってどんな人なんですか⁉」

 

 こやつ聞きおった。聞きやがった。気になるけど聞きたくないんだけど、いや確かに聞きたいけども。そんな客たちの心の声、聞きたくない理由? 不明である。少なくともその女性客は気になるし聞きたいのだ。動かない男性客も食事の手が止まって耳に意識が集中している。なんなら身体が傾いている。

 

「どんな、う~ん」

 

 珍しく調理の手が止まり考え込む鈴音、その光景になおさら興味と耳をふさぎたい気持ちが湧きあがある。女性客はワクワクしている。男性客はソワソワしている。年下? 年上? 優しい? 頭がいい? 筋肉がある? どんな点が気になったのか、自分に近い要素がないだろうか、なんて思っているのかは分からないが。

 

 何故が緊張している客が多いなかで鈴音が考えて出した答えは、

 

「バカ?」

 

 簡潔なひと言。店内全ての視線が集まっているがそれに気が付かず動き出す手、 小気味よいリズムで食材をカットしている。再び静かになる店内、しばらくたって店の扉が開いた。

 

「ちわーって何この空気、なんでこんな静かなの?」

 

 よく来る常連の一人が店内の異質な空気に戸惑った。視線を向けられた店長は首を傾げた。ぞろぞろと立ち上がって会計を始めるお客たち、なぜか顔をうつむかせながら店を出て行った。元気なのは女性客だけである。

 

 来店したばかりの客が再び鈴音と目を合わせても首を傾げることしかできなかった。

 

 

 

 その日からたまに女性客から質問が飛ぶようになった。それは若いOLだったり五十くらいのマダム集団だったりするが、内容は総じて鈴音の相手について。いつから知り合ったの? いまどこにいるの? 写真とかないの? 付き合ってたの? 何でもかんでも根掘り葉掘り聞き出そうとする。鈴音も流したり答えたりしていたがある日聞かれたのは、

 

「最後に会ったのはいつですか?」

 

 別になんでもない普通の疑問だ。隣にいる友人や離れた席にいる客も耳だけは傾けていた。

 

「んーとね」

 

 洗い物をする手を止めて宙を見る。これだけ真剣に考えているということはどんな話が出てくるのだろう、そう期待してワクワクしていたのだが、

 

 

 

「アイツが事故、にあってからそれっきりね」

 

 空気が凍った。

 

 カチャカチャと食器の音だけが店に響き、誰も食事の手を進めない。思ってもいない爆弾に身動きが取れない。これまで聞いた話を振り返ると、学生の頃からの知り合い。友人たちとも一緒に大勢で遊んでいた。そして一人で飲食店を経営できる能力と人を惹きつける魅力がある、にもかかわらず独り身。その学生の頃から思っている相手以外と付き合う気はなく、連絡も取っていない。学生の頃に店を持つという夢は語っており誘おうかとも思っていたが、事故にあってからそれっきり、ということは、

 

「…………………………すいませんでした、聞いたらダメなこと聞いちゃって」

「え、別にいいけど隠すもんでもないし」

 

 いつも通りのあっさりとした態度、それがまた聞いた客の心に重くのしかかる。ひと言も発することなく食事をすると、もう来ないようにしようと決めて店を出た。

 

「また来てね」

 

 その言葉に涙が出そうになる。少しだけ頭を下げると、肩を落として一緒に来た友人と無言で歩く。

 

「…………………………また行こうね、きっと行かない方が気にすると思うから」

「う゛ん」

 

 少し鼻声になった返事をして肩にもたれながら二人は歩いて行った。

 

 その日から鈴音に質問はされなくなった。バイトの募集についても聞かれなくなった。元通り、といえば元通りだが金髪男が「あの、サーセンでした」などと謝り騒ごうとした客を止めたりといった謎の行動があったりしたが、鈴音はいい子だなーくらいにしか思わなかった。

 

 

 

 そんな日常が続いたある日、台風が町を襲った。

 

 昼間は風が強い程度だったが、雨が徐々に強くなり夕方には夜じゃないのかというほどの暗さ、客もいなかったので鈴音も早々に店を閉めて床に就いた。風が鳴り、雨がガラスを打ち付ける音を聞きながら手を伸ばすと空を掴む。なんどか繰り返し、手を伸ばすと端末を掴んだ。

 

 翌日も大雨が降っており店は閉まっていた。外もたまに車が通る程度で出歩く人はいない。だというのにどこからか現れた人影が、閉店中の掛札があるのにも関わらず扉を開けて中に入っていった。

 

 

 

 台風も過ぎて青空が広がる昼間、その日もいつも通り店は開店していた。いつもの常連客があちこちに残る水たまりをよけながら店に来ると、

 

「いらっしゃーい」

 

 なんか店先で掃除をしている男がいる。

 

 腰に巻いているエプロンには店の名前が入っており、鈴音がつけているものと同じものだ。箒とちりとりを持って落ち葉などを集めている。

 

 軽く頭を下げて店に入る。中ではいつものように小さな体で手際よく動く店主がいた。

 

「ラーメンセットお願い」

「あいよー」

 

 いつも通りのやりとり、席に着きテレビを見ながら待つとほかの客も入ってきた。なかにもいつかの金髪男や学生もいる。

 

「あれ? 今日は休み?」

「創立記念日で休みですよ」

「なのに昼間っからくるってデートとかしないのかい?」

「いやまぁ」

 

 顔なじみとなっている客同士で話が盛り上がる。厨房では中華鍋を振るう音やタイマーが鳴りそれに伴い食欲をあおる良い匂いもしてくる。

 

「おわった」

 

 ガラガラと扉が開いて入ってきたのは外で掃除をしていた男、そのまま店の裏にほうきを片付けて手を洗うと、

 

「五番と二番」

「あいあい」

 

 カウンターに置かれた料理を運んだ。

 

「ラーメンセットお待ちどう、こちらは天津飯ですね」

「ありがと、いただきます」

 

 受け取って割り箸を割ると食べ始める。いつも通りの思いが込められたおいしい料理、順番に運ばれる料理を全員が味わっていた。また扉が開き新しい客が来る。

 

「「いらっしゃーい」」

「一人ですけど空いてます…………」

 

 いつぞやの女性客だった、店内の開いている席を探そうとして一点に目が行く。向けられたのはピッチャーの水を入れ替えていたエプロンをつけている男。

 

「どちら様ですかー⁉」

 

 思わず大声が出た。店にいた客も顔をあげると指をさされた男を見て驚き始めた。

 

「だ、だれだ⁉」

「え、あ、バイトの人? でも雇わないって」

「全然気がつかなかった…………」

 

 思い思いに感想を言うが当の本人はケロッとしている。というか何に驚かれているのかよく分かっていないので反応もできない。とりあえず厨房に顔を向けるが店主は料理に忙しい。

 

「あ、あのあの、新しいバイトさんですか⁉」

 

 混乱した状況で女性が手を挙げて質問する。混乱していた状況で一番聞きたいことだった。聞かれた本人はまた厨房に顔を向けると、

 

「バイト代出んの?」

「お小遣いあげるわよ」

 

 見向きもしないまま返事が返ってきた。雑な答え方に珍しいと目を見開く客、というかバイトでもないのならなんなのだろうか。疑問が増えた。

 

「で、あるならお手伝いさんとか、ですか? 親戚の方とか?」

「え、呼ばれたから来ただけ。別に親戚でもないけど」

 

 謎が増えた。お前一体何者なんだ。

 

「そういや注文は?」

「あ、じゃあ唐揚げ定食で」

「はいよー」

 

 空いている席に案内された。

 

 よく分からないまま話が終わってしまった。それから何事もなく日は経った。なにせ聞いたことには答えてくれるが以前のこともあって聞きにくかったのだ。とりあえず何かやらかそうものならとっちめてやるという契約が客同士の間で交わされた。

 

「へっくしょん」

「あんたさっさと服着なさいよ」

「どうせ脱ぐしいいだろ」

 

 当の本人は気にしてなかった。

 

 

 

 そして謎の助っ人? 手伝い? がきてから数か月後、衝撃の看板が店の前に掲げられた。

 

「しばらくの間、半日営業になります?」

 

 店の休日に前を通りかかった常連客が見つけ、その日のうちに情報はまわった。翌日になると開店と同時に大勢の客が店に入ってきた。何があったのか、怪我でもしたのか、大丈夫なのか、いろいろとあれど心配という気持ちが大きく、焦りながらも落ち着いて扉を開くとそこには、

 

「いらっしゃーい、って大勢来たわね」

 

 ゆったりとした服を着た鈴音がカウンター席の一つに座っていた。厨房ではいつもの男がエプロンに三角巾を頭につけている。

 

「リンちゃん! 半日営業ってどうしたんだい! ケガでもしたのかい⁉」

 

 先頭にいた客がいの一番に聞いた。

 

「え、いや子どもができたからだけど」

 

 頭が真っ白になった。一部は謎の頭痛が始まった。かろうじて生き残った者が聞けば厨房を指さす鈴音。錆びた金属を無理やり動かすように鈍い動きで見ればいつもの男。分かっているのかいないのか、手をあげている。とたんにカウンターへと詰め寄る客たち。

 

 その横で密かにいつかの女性客が鈴音の近くに寄って話しかけた。

 

「あのーもしかしてなんですが、以前言ってた相手って」

「そいつよ」

「……………事故にあったって」

「正確には違うけど事故みたいなもんね。そのあとアメリカに行ってそれっきりだから会ってなかったの、もしかして誤解させてた? ならごめんね」

「それは! それとしていいんですけど、あのちょっと聞きづらいんですけど」

 

 隣がうるさいので問題ないのだが、それでも声を潜めて聞く。思い出すのはバカと呼んだ時の顔。呆れたような笑ったような、頼りになる姉御肌な人物が見せた気を許した柔らかい笑顔。

 

「……………………あの、再会したのってあの方が来た前日くらいですか?」

「……………そうよ」

 

 声を出さない悲鳴をあげた。さすがに恥ずかしいのか顔をそむけた鈴音の耳も赤くなっている。それを見てまたテンションが上がった。

 

 カウンターではリンちゃんの変わりが務まるのかと叫んでいた男性客たちが料理の注文をしている。噂が広まったのか店に入りきらないくらいの客が増えていった。ベイビーグッズについてのアレコレを教えるおばちゃんや遠慮がなくなったのか、どこに惚れたのかなどを聞き出す若い女性客に囲まれる鈴音。泣きながらラーメンを啜る学生や泣かしたら許さないからな! と料理を食べる男性客に囲まれる春明。

 

 中華料理店「春音」は今日もにぎわっている。




はい、ということで鈴音エンドでした。なんか何にもしてない気がする。


いつもの遅くなった原因
結構書くのムズカシイ(
【挿絵表示】
)

活動報告にて案募集です! ヒロイン登場順で√書くけど書き終えた後でも案頂いたら書くのでお好きにどうぞ!→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333722&uid=235477

お次はフランス少女です(コピペして中華のままだったぜ)
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