IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 あけおめ! 活動報告にてリクエスト来たりして筆がのりました!

 前回の鈴音√好評で良かったです。湿度高いの書きやすいかもしれん



 そんなわけでフランス少女編です


√シャルロット

 少女は走っていた。

 

 ちょうど子どもから大人へと成長していき少女ではなく淑女と扱われる年齢となった彼女。大人としての凛々しさが現れながらもあどけなさを少し残した容姿は人の目を引き付ける。そんな美貌を化粧とドレスで装飾されておりそこらかしこの男性が声をかけようと、近づいていた。

 

 にもかかわらず彼女はわき目も降らずに走っている。

 

 ずっとこの日を待ち望んでいたのだ。最愛の、いや恥ずかしい言葉を使えるのなら運命の人だと言っても良い。そんな相手からの連絡が来たのだ。最後にあってから数年経つ、そんな相手が自分に会いたいと、外国の地にいるのだと知って最大限のオシャレをして来たのだ。

 

 最速で運転してきた車でたどり着いたのは小さなレストラン、あらゆる感情が混在したままドアを開けると、

 

「お、シャル。久しぶり」

 

 なんか昇天しそうだった。

 

 久しぶりにあった相手、成長して大人っぽくなって自分のこと覚えてて声かけてくれてもうこれだけでいいのではないだろうか。と、ここまで考えて正気を保つ。にやけそうな顔を無理やり抑えながらあくまで大人っぽく、クールな女性として返事を返す。

 

「ひ、ひしゃしぶり」

 

 やっぱダメかもしれない。

 

「なんか大人っぽくなったな」

「おふ………………」

 

 ダメだった。

 

 久しぶりに会った同級生(当時から現在進行形で片思い中)に褒められて有頂天にならないやつはいない。なんか大抵の人では経験することの無い経験を積んできたけどそれはそれとしてダメだった。

 

「あーちょっと悪いんだけどさ」

「ふぁい」

「金なくてちょっと立て替えてもらっても良い」

「………………はい?」

 

 ダメすぎる再開ランキング最下位が獲れそうな再会だった。

 

 

 

 

 

「ねぇ聞いてる!?」

「聞いてますよー」

 

 大体三か月程度経ち、ところ変わってここはデュノア社。いち早く宇宙開発への舵を切ったことから今やIS企業のトップとなった大企業の一室にデュノア令嬢はいた。学生の頃から愛用しているジャージに、わざわざ日本から取り寄せた畳を敷き詰めて作った和室。シャルロットの私室でありながら職員の休憩室となっているこの部屋で、彼女は枕を胸に抱えてたまたま休憩しにきた職員に愚痴をこぼしていた。

 

「春明ってばさ! 久しぶりに会った理由がお金ないから貸してなんてさ! 酷いと思わない!」

「酷いっすねー男の趣味」

 

 湯気の立つ緑茶を啜りながら応える職員。

 

 あの後、差し出された伝票にクレカで支払い。そのまま店を出た二人、予想だにしていない展開に頭が空っぽになったシャル、春明の「金返したいけど何か仕事ある?」のひと言にそのまま会社へ連れて帰った。

 

 流石世界トップレベルの操縦者というべきか、テスト操縦者として大歓迎を受けた。喜ぶ職員や研究者、その中に混ざって良かったーと喜ぶシャル。気が付けば同じ会社で働いているのに会えないという謎のすれ違いが起きていた。

 

「なんでかな!?」

「そりゃー技術系と管理系だと仕事違いますし」

 

 せんべいをかじりながら応える職員。

 

 シャルロットは社長令嬢、主な仕事は会合や許可の判子を押すのが主な仕事で職場は世界最高のIS企業、休む暇などない。いや全くないわけでもないが、春明と被ることは少ない。とうの春明も実験室などで寝泊まりすることが多く、休憩室に来ることも少ない。

 

「前たまたま会えた時もさぁー!」

「アレは酷かったっすねー」

 

 

 

 なにがあったのか会社で偶然出会った時、固まるシャルを見て春明がひと言、

 

「シャル、付き合ってくれ」

「…………ひゃい」

 

 返事をしたと思ったらそのまま手を握られてツカツカ歩き出す春明、顔が真っ赤のまま引っ張られて行くシャル。なんだなんだと見てくる職員たちの間を通り、たどり着いたのは広めの会議室。あ、ここで初めての場になるのかと湯だった脳みそで考えるシャルだが、室内はぎっしりと人が埋まっていた。

 

 部屋中の注目を浴びて冷静になったシャルをさておき、そのまままっすぐ空いた席に座る春明。誰も何も言えない中、中心にいた試験監督が、

 

「ハルアキ………………なぜデュノア令嬢を連れて来たんだい?」

「機械類を除き持ち込み可って言われたから」

「これからするのはドイツ語の試験だが?」

 

 あれ? っと首をひねる春明、机に置いてある問題用紙を見れば確かにドイツ語。隣を見れば真顔でこちらを見ているシャルロット。

 

「………………ドイツ語分かる?」

「バカー!」

 

 グーでいった。

 

 

 

「まーあの時徹夜とかで寝ぼけてたらしいっすけどねー」

 

 強い衝撃を受けた春明は目をパチパチと見開くと急に起き上がり周りを見渡してこう言った。

 

『あれ、今日って月曜だよな』

 

 当日は水曜である。試験監督が確認するとどうやら二轍して記憶が怪しい。とりあえず医務室に連れて行かれて寝かされた。IS実験に他の試験勉強などが積み重なって寝ていなかったらしい。慌ててベッドに放り込まれ、一週間の休暇が与えられた。にも関わらず目を離せば仕事をしているので警備付きの部屋に隔離されることになった。

 

「今でも抜け出すみたいですけど、日本人ってあんなに仕事熱心なんですかねー」

「昔はもっといい加減……………でもなかったかな」

 

 そういえばIS学園ではだらけている様で普通によく働いていた。自分たちの特訓相手、生徒会の業務、イベント関係、アレもしかして結構な働き者? 思い返せば頼まれた仕事は大抵文句を言いながらもこなしていた。やはり自分の見る目は正しかったのだと腕を組んでうんうんと頷く。

 

 それをしらけた目で見る職員。

 

「でももっと会いたいよー!」

「そっすねー」

 

 枕に顔を埋めるシャル、ちなみにこの話はすでに十回を超えた。休憩室に来た職員がランダムで掴まって似たような話を聞かされている。最初はちゃんと腰を据えて聞いていたが、同じ話をなんどもしてくるので今では休憩中のBGM代わりに流されている。

 

「じゃあ自分で時間作って会いに行けばいいんじゃないですか? 社長令嬢だしそれくらいできるでしょうに」

「え……………あ……………ほら、さ。…………………………自分から会いに来てほしい、し」

 

 聞けばこの反応、見た目で許されているがめんどくさいと切り捨てられてもおかしくない。というか会いに行く行動力があるくせにそのヘタレ具合はどうなのか。社長夫人もたまに相談に乗っているらしいが、肝心な相手がこれなので何もできない。職員もはよ付き合って押し倒せばいいものをと思っているが口には出さない。出しても好転しないことは分かり切っているから。

 

 ほほを染めてうつぶせるシャル、見た目はいいし社長令嬢として仕事は充分、最近は乗ることも少ないがIS技術もある。ただ男の趣味が悪すぎる。

 

 それが職員での共通認識であった。

 

「シャル、これやるよ」

「え、あ、うん」

 

 ガラリと開けられた扉には噂の男、手のひら大の箱を投げ渡されて受け取るとシャルはそっとポケットにしまい込んだ。

 

「じゃ」

「うん、じゃあね」

 

 そして軽く手を振るとそのまま出ていく。何事もなかったかのように去っていくのに何も言わないシャル。どんな関係なんだとドン引きする職員。今までに出会ったことのない不良に出会って惚れるお嬢様かよ、それはそれでアリだが進展はしてくれ。そんな思いは口には出さない。だって一応雇い主だし。

 

「それでね、春明が学園で」

「いやおかしいでしょ」

 

 出しちゃった。だっておかしいでしょうに。社内で公然の秘密、というか誰もが知ってる惚れた相手からのプレゼントを受け取ってなぜポケットに入れる。なぜ開けない。というか捕まえて話したりしないのか、いろいろツッコミたいことが多すぎる。

 

「後で開けようかなって」

「なんでそこだけ悠長なんです?」

 

 おかしい。明らかにおかしすぎる。こじらせすぎて変な暴走をすることが多いのになぜそこだけ余裕があるのだ。というかジャージ姿を見られて何も言わないのか、年頃の娘なら見られたくないはずではないだろうか。

 

「えー春明だし変なものは選ばないよ、びっくり箱とかそういうのもらったことないし」

「その惚気が出るのは付き合った後のカップルなんですよ」

 

 前から薄々気が付いていたがこの二人関係がおかしくないか? 付き合う前がグダグダすぎるのになんで付き合った後のやり取りができているんだ。カップルと言われてまだそんなんじゃ、って照れているがなんでだ。

 

 だいぶ前に社内で共有された学生時代のデート、デートらしいことは悉く失敗していたくせに最後連れ帰られていたのは全員が頭を抱えた。社長と社長夫人でさえ頭を抱えていた。なぜそこまで行けて最後までいけない、というか肝心なところを逃してしまうのだと。

 

「とりあえず開けてください」

「えーでもでもカップルになったら一緒に手を繋いでデートとか「はよあけろ」あ、はい。開けます」

 

 いったん立場を横に避けて口を挟む。こうでもしないと話が進まないのは分かり切っている。包装紙を剥がし、中を見るとパカリと開くタイプの箱。

 

 え、これってと職員が考える中シャルはなんの戸惑いもなく開く。

 

「わぁーきれー」

 

 そこにあったのは丁寧な装飾のされた指輪、派手過ぎずきめ細かなデザインはかなりのものだ。ひょいと摘まむとそのまま左手の薬指につける。いろいろな角度で眺めて光の反射を楽しむシャル、そして笑顔で職員にも見せた。

 

「ねー春明って変なもの選ばないんだよ、きれいでしょ」

「…………………………あの」

「どうしたの?」

 

 口に出していいものかと悩みながら、言わないと一生気が付かないと確信した職員はのんきに指輪を見ているシャルに恐る恐る口を開く。

 

「ハルアキが来てから、どれくらいたちました?」

「んー三か月くらい? 結構早いもんだねー」

「それ、指輪ですよね」

「そうだよ、もーちゃんと渡してくれたらいいのに」

「……………何のためらいもなく薬指に嵌めましたね?」

「そりゃ春明から指輪貰ったらこの指、に……………」

 

 ここまで話して固まるシャル。ようやく気が付いたため固まったが、ちゃんと言わなければいけない使命感を持って職員は続ける。

 

「日本では、指輪を送るとき三か月分の給料を使うらしいです」

「…………………………」

「あの、真面目に働いてた理由はそのためだったのでは?」

「……………………………………………………きゅう「気絶する前に追いかけてちゃんと確認してください」! は、はるあきまってー‼」

 

 ジャージのまま飛び出していくシャル、その後姿を見て職員はため息をついた。

 

 給料三か月分は本人から聞いた。仕事中、なぜそんなに頑張っているのかと聞いたら指輪を買うためだと返されたのだ。

 

 ダメもとで連絡したらおしゃれをして来たシャルを見てこれで何もしないわけにはいかない、そう考えた春明は少しでもいいものを買おうとがんばっていた。その結果変な事件が起きたりしたが。昔デュノア社に立ち寄った時にいたテストパイロット、彼女もともに仕事をするうちにアピールをかけていたのだが一切なびくことなく断る姿も見た。

 

 もっとちゃんとしたシチュエーションで渡すものだと思っていたのだが、整えると失敗するという本人の予測により偶然を装った投げ渡しだったが。

 

 そこまで分かっていながらなぜこうもすれ違ったのか、

 

「…………………………IS学園でなんか変な常識覚えさせたかも」

 

 と元凶が自白した。

 

 聞き出せばボロボロと出てくる悪行というなのすり込みに近いナニカ。そこまで行ったのなら責任取れと周りから攻められたが聞き流していた胆力は強い。自分で困らせて助けるというマッチポンプに近いことを天然でしてしまった男なのだ、それに惚れてしまうとは趣味が悪い。

 

 休憩室に置いてある冷蔵庫からわらび餅を取り出すとこれでようやく終わると職員は安堵の息を漏らした。

 

 なお社内ではジャージを着た社長令嬢が、目の下に隈を作った白衣の男に抱き着いて逆プロポーズをする様子が目撃された。そのままキスをするところを写真に撮られ、社内広報と同時に国内のニュースに広まった。

 

 なお新婚旅行先で事件に巻き込まれたり、ハジメテが危うく放送されそうになったりと世間を騒がす夫婦になるのはもう少し先のことである。




 なんかこれまでにないくらいイチャイチャしてない。というかシャルロットギャグ枠すぎて期待してた人ゴメン。

 時間かかる原因一旦なしでどんどん書いていく精神にしました。

 活動報告にて案募集です! ヒロイン登場順で√書くけど書き終えた後でも案頂いたら書くのでお好きにどうぞ!→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333722&uid=235477

 お次は、ドイツかのほほんか。どーしよっかなー悩み中だけどリクエストによっては割り込みあります
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