IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 遅くなりました。まだ待ってる人います? まぁ忘れてたら読み直してください、この小説はホモISものです。ホモでないけど。

 では食堂の後輩少女編です。



√蘭

 泣き声が響く。

 

 普段なら注目を浴びるものだが、幸いというか今現在IS学園はお祝いの騒ぎ中。少し離れた場所から聞こえる喧騒に埋もれ、聞こえた者もこの状況ならあるだろうなと気にすることはなかった。

 

 音の発信源はひとりの少女。赤毛にバンダナを巻き『卒業お祝いパーティ』とかかれた横断幕の主役のひとりである。今の今まで友達と話し、これまでの学生生活を振り返ったりこれからの進路について話し合って笑っていた。

 

 様々な食べ物が並ぶ食堂で誰もが今を楽しみ、別れを惜しんでいた。

 

 もちろん五反田蘭も例にもれず笑いながら感傷に浸り、花を摘みにいった帰り道だ。エプロンを着ている人影、おそらく食堂の調理人だろう。普段の食事だけでなく、今夜のパーティーも用意してくれた人だ。実家が飲食店をしているのもあって料理をする労力は知っている。

 

 お礼を言おうとして近寄るとまさかの男性、このIS学園で男性がいるとは思わず失礼だったが顔を眺めてしまった。通りすがりにお礼を言う程度のつもりだったのだが、もしそうなら気が付くことはなかっただろう。

 

 いつも美味しいごはんをありがとうございます、といった感謝の言葉それだけを言うつもりだったのに、

 

「……………………はる…………あき、さん?」

 

 なぜか行方不明になっているはずの、自分がずっと思っていた相手が、そこにいた。

 

「あ……………………えーっと」

 

 向こうも気が付いたのか、こっちを見て戸惑っている。たぶんこれが兄ならいい加減なあいさつで終わってたただろうに、嘘をついたりもせず困った様子を隠さない。器用そうに見えて変なとこで不器用という、おそらく自分のような年下にしか見せず、自分くらい近い存在でないと見ることはできなかった態度。

 

 間違いなく本物だ。

 

「……………………卒業おめでとう、蘭ちゃん」

 

 もし再会したらどうしようか、大人になった自分のことを見て欲しい。褒めて欲しい、いろいろと妄想していた。しかしそんな妄想も現実の前には何もできず、子どものように抱き着いて泣くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

「あのー放してもらっても」

「いやです゛!」

 

 IS学園にコアラがいた。

 

 というかコアラになった蘭がいた。

 

 泣きながら抱き着かれた春明は逃げることもできず、聞かれたことに大人しく答えるしかできなかった。

 

 いろいろあってIS学園に戻り、こっそりと食堂で働いていたこと。なんか人気があったゆで卵を作っていたこと、ドヤ顔がムカついたので思いっきり抱きしめたら悲鳴をあげた。

 

 今日も料理をしていて、たまたま出会ったこと。

 

「じゃあ出会わなかったら」

「そろそろ出ようと思ってたし会わなかったかな?」

 

 この一言で腕だけだったのが足も含めて抱き着き、春明に捕まるコアラが出来上がった。無理に放すこともできず、パーティーも終わってない、またあとで、いろいろ言うも何もできず。どうしようもないのでこのまま自室へと戻っていった。

 

 たどり着いたのは春明の自室、整備室から少し離れた休憩室だったはずだが誰も使っているところをみたことがない。それもそのはず春明が住み着くようになってからカギをつけたりといろいろ改造してあるのだ。

 

「…………そろそろ離さない?」

「いやです」

 

 頑なにしがみついて離れない蘭、春明もどうしたものかとベッドに座る。以前使っていた部屋よりも狭いが、人が住むには妥当な大きさになっている。

 

 ただ静かに時間が過ぎる。

 

 やっと出会えた自分の好きな人、死んだかもしれなかった人、そんな相手との再会は思っていたよりも自分を素直にした。きっとこれまでならできなかった行動も、

 

「……………これからどうするんです」

「んー、どうだろ当てもなく旅にでも出るかな」

「行くとこはないんですね」

「そうなるかな」

「じゃあ家に来てください」

「…………えーっと」

 

 ずっと埋めていた顔をあげた。好きな人が困惑しながらすぐそこにいる。今離したらきっとどこかに行って、この先もう会うことはない気がする。だから、

 

「わたしの家で! ご飯作って暮らしてください‼」

 

 

 

 勢いでもなんでも、一度受け入れたことをこの人は曲げないのだ。そんな人の首を縦に振らせたのならわたしの勝ちだ。

 

「えー…………はい」

 

 喜びのあまり両手をあげて後ろにひっくり返りそうになったがちゃんと支えられた。部屋に戻されそうだったがそこもごり押しで部屋に泊まった。さてはこの人押しに弱いな? と学んだ後輩がいたらしい。

 

 

 

「忙しぃよぉ…………」

 

 IS学園を卒業した後、蘭は日本の代表候補生として忙しい日々を送っていた。用意された社宅、そこから研究施設などに通うのだが、思ってた以上に業務が多く泊まり込みになる日が多い。これから二人暮らし! と鼻息荒く舞い上がっていた蘭の気持ちはとっくに萎んでいた。

 

 平日は泊まり込み、休日は昼まで寝て買い物などをして施設に戻る。あれ、家に帰った記憶がないな? 先輩方は慣れているのか社宅なぞ解約したわ! と胸を張っていた。その分家賃が残るので得だと笑っていた。使い道はないらしい。地獄か。

 

 IS操縦者という貴重な枠で適正もAランクという蘭。仕事も好調だったし憧れの先輩を養うために奮闘していたが、肝心の相手と出会えなくなっていた。これは俗にいうあれか、「わたしと仕事どっちが大事なのよ!」と聞かれるサラリーマンだ。

 

 休憩スペースのベンチで、泣きながらカロリーバーを頬張る蘭、その後ろから声がかけられた。

 

「蘭ちゃん」

「へっ、春明さん⁉」

 

 いないはずの春明がいた。何やら両手に荷物を持って隣に座る。

 

「大丈夫? なんか一度も帰ってこないし、連絡するたびに元気なくなったよ?」

「いやぁ~アハハ」

 

 こういうとこがズルいと思う。食べていたカロリーバーを飲み込んでひどい泣き顔になった自分を隠しながら、これまでのことを話す。

 

「あー思ってたよりも忙しいのはまぁ、どうしようもないな」

 

 相槌を打ちながら話を聞く春明、元気なら愚痴をこぼすことなく元気と言えたのだろうが久しぶりに見れた顔に思わず甘えてしまった。

 

「はは、ダメですよね。せっかく代表候補生になって学生でもないんだから、もっとがんばらないと」

 

 春明の学生時代の話は何度も聞いたし調べた。

 

 各国の代表候補生を相手に鍛錬を積ませ、自分は事件が起きるたびに前線で活躍する。そんなすごい相手と釣り合うためにも、頑張ろうと決意したというのに。

 

「わたし……なんか、じゃ…………」

 

 強いところを見せようと、成長したところを見せようと、頑張ってきたがダメだった。こんな自分では釣り合わないと、好きにしてもらった方がいい。自分ごときがいるべきではないと思ってしまった。

 

「だから……春明さんも、好きにしてください」

 

 零れそうなものをこらえ、どうにか伝える。笑えているだろうか、この人なら見抜かれているかもしれない。それを踏まえたうえできっと自分の気持ちを汲んでくれるだろう、これが最後の甘えだと割り切って難しい顔をしている春明を見つめる。

 

「…………じゃあ好きにさせてもらうけど」

「はい」

 

 立ち上がる影を見送る覚悟を決める。いい恋愛ができたと胸を張って生きようとして、目の前の影が自分に覆いかぶさった。

 

 自分よりも高い体温、硬い身体、どこか安心する匂い、全てが自分を包み込む。

 

「‼⁉⁉?⁉」

 

 あまりの情報量にショートした。

 

「えーっとちょっと自信なくて困ってたんだけど、一緒に暮らそうって、告白と受けとって良かったの?」

「⁉」

 

 また情報が増えた。あれ自分って告白したっけ? してないな? 一緒に住もうとしか言ってないな?

 

「了承したし恋人なのかと思ってたけど、それっぽい事とか言われてないし。ただ一緒に暮らそうと誘われただけなのか分からなくて。申し訳ないけど今もどっちなのか分からなくて」

 

 確かに、言われてみればそうだ。一緒に暮らそうと誘ったが家に帰れず、それっぽいことも連絡もしていない。これでほかの女と出会ってても浮気と言えないし、謝るのはこっちだ。

 

「スイマセンナニモカンガエズニイッテマシタ」

 

 自分のやらかしに気が付いてさっきとは別の意味で泣きたくなってきた。盛大な告白をするチャンスを自ら棒に振り、あまつさえ相手に気を使わせてた。腹を切って詫びるしかない。

 

「自分としては告白だと思ってたんだけど」

「???」

 

 確変きた。見逃して止まったはずが、また動き出した。

 

「それならここにも堂々と会いに来たんだけど、そうじゃないなら迷惑だと思ってて」

 

 動き出したと同時にまた重い一撃が入った。何度やらかせばいいのだわたしは、蘭のメンタルはもうボロボロである。

 

「どっち?」

「あうあうあう」

 

 空気を求めて口をパクパクさせる鯉である。恋だけども、鯉にしかなれなかった間抜け物は自分である。

 

「…………俺としては」

 

 耳元で呟かれていた言葉がはなれ、距離が空き真っすぐと顔が見れた。いつもの優しい顔ではなく、表情を引き締めてまっすぐに自分を見ている。おそらく髪と同じくらい真っ赤になっているだろう。

 

「恋人だと思っていた」

 

 あ、今日で自分死ぬかもしれない。

 

 唐突な死期を悟ってしまった。それならもうどうでもいいか。

 

「わたしも、恋人…………が……いいです」

 

 そっと優しく、くっ付いた顔が離れた。

 

 偶然再会して、勢いのまま抱え込んで、自分のミスがたくさんあったのに離れずにいてくれて、最後には相手から。こんな幸運を迎えて死ぬのではないだろうか、いや死ぬには惜しすぎる時間だ。

 

 幸せいっぱいに笑顔で抱き着くと、またくっつけた。

 

「……また迷惑かけるかもしれません」

「いいよ」

「わがまま言うかもしれません」

「たくさん言いなよ」

「ちょ、ちょっと言いづらいお願いもしたいです」

「待ってる」

「だからああああの」

 

 

 

「好きです、春明さん」

 

 

 

 

 

 休憩スペースで元気たっぷりに膝の上で話していたところ、同僚に発見された。そして光のごとく広がる情報、お祝いと言わんばかりに仕事が増えた。相手を紹介してくれれば減らしてやろうという立派なパワハラを土下座でしてきた先輩方。あいにく恋人と恋人がいる兄しかいないと伝えれば泣かれた。

 

 たまに春明が差し入れをすることで許されたが、差し入れが目的なのか怪しい目つきのモノが多い。先手を打とうと実家に連れて帰れば、何故かいる職場の方々。兄も含めて泣かれながら祝われた。

 

 家に帰ることは少ないが、家に帰れば、たまに職場に料理上手な恋人が来る。そんな日常迎えて五反田蘭は幸せだった。




 ちゃんと幸せにしてあげて、という声があった蘭です。幸せ、にはなったと思います。イチャイチャしたのかは個人差ってことで。

 活動報告にて案募集です! ヒロイン登場順で√書くけど書き終えた後でも案頂いたら書くのでお好きにどうぞ!→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333722&uid=235477

 お次はドイツかな? エンドを書くのとイチャイチャを書くのは別物だと四苦八苦してます。ラブコメの勉強に「やめろ好きになってしまう」を読んでます。おもしろいですよ、カーッ!
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