IS学園でホモから逃げるために婚活する   作:アオノクロ

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 はいお久しぶりです。忘れてないです。

 下手をすれば1番原作乖離が激しいかもしれないオタク少女編です。


√簪

「へへっ、これが新発売のドライバーであ、笑い方気持ち悪いとか酷いこというならバンしますよ? あ、ウソですチャンネル登録解除しないでください」

 

 珍しく明かりのついた部屋でモニターへ向けて文句を言う少女。手元には開封されたばかりのマスクドライバーのベルトがある。

 

「これをね、こうして」

 

 手元を映すように設置されたカメラつきのテーブル、置かれたベルトを操作しボタンを押すと小気味いいテンポのBGMとやかましい電子音が鳴り響く。

 

「ほぉぉぉぉぉぉ! これが最新のあ、音うるさい? ごめんね直ぐ直します」

 

 カチカチとパソコンを操作して音を小さくする。

 

 その後もボタンを押したり別売りアイテムと組み合わせたり、コメント欄と知識量でマウントをとりあったりと楽しい? 時間を過ごす。

 

「はい、じゃあ今日はこの辺で」

 

 お疲れ、や次はいつ? などというコメントの中に埋もれていく中で見つけたコメントを拾った。

 

「へへっ、わたしはね、これから素敵な彼氏の作ってくれるご飯をね」

 

 美少女でもギリギリアウトな表情だが配信に乗らないのは不幸中の幸いだろうか、カメラは机の上だけを映しているし画面上にはスタイルの良いメガネっ娘がかわいらしい笑顔である。

 

「あ、え、イマジナリー彼氏? 妄想も大概にしろ? 言った言った! いっちゃいけないこと言った!」

 

 荒れ狂うモニターの美少女。

 

 現実ではスライムのごとくウネウネと変形し怒りを露にする謎の生物がものすごい勢いでタイピングを始めた。

 

『私の彼氏は本当にいるしそもそも人の恋人がいるかいないか指摘する前に恋人がいる人だけコメントしてもらっても』

『出たw 口よりもはやいハーピンのタイピングコメw』

『なんでVやってんの? もっと稼げる仕事あるだろ』

『またタイピング検定やってほしいなぁ』

『恋人いるって影も形もないってのにどう信じろと』

 

 配信を終わると言いつつタイピング音が鳴り響く謎の配信は日が明けるまで続いた。

 

 

 

「……………………おはようございます」

「はよーってもう昼過ぎだぞ、何か食べる?」

「しょ、食パンをいただけたら」

「もっとちゃんとしたもん食え」

 

 目を覚ました簪がリビングに降りると、掃除をかけていた春明が声をかける。

 

 食パンでいいのに、というつぶやきは聞こえずしっかりと焼かれたトーストにサラダとハムエッグが添えられて出される。

 

 もしゃもしゃと食べていると玄関のインターフォンがなり、向かった春明が荷物を抱えて戻ってきた。

 

「おい…………これはなんだ」

「ヒィ!」

 

 何故か目が吊り上がっている春明から逃げるように素早く椅子の陰に隠れる簪。

 

 べリベリと開けられた段ボール箱から取り出されたものは、

 

「…………おい」

「………………」

「座って説明」

 

 スムーズに椅子へと戻り、手と額を添えた簪。とてもきれいな土下座の上半身がそこにあった。

 

「デュアルのベルト、大人版です」

「値段は」

 

 ゴニョゴニョと呟かれた金額に頭を悩ます春明。本来は子供向けのおもちゃなのだが、企業がそれを大人向けに頑丈に、より精密に作られたそれは文字通り桁が違う。

 

「…………まぁ最近は配信がんばってるし」

「……………………!」

 

 死刑を目前にしていた簪の瞳に光が戻った。あげられた顔には希望が浮かび、神を見るかの如くキラキラとしている。

 

 お許しも出たことで遅すぎる朝食、昼食を食べ続けるとまたもやインターフォンが鳴る。

 

 全く同じ荷物を受け取った春明の怒鳴り声から逃げるように簪は自室へ引きこもった。

 

 

 

 今夜も同じく配信をする簪、2人主人公で! 2つを1つで! きらいじゃないわ! という作中の名言を駆使してどうにか許されたベルトを2つ並べてご満悦である。札束の暴力というコメントには無視する。

 

 いつものように作品知識のマウントをリスナーと取り合っていた時、あるコメントが目に入った。

 

『彼氏さんとはどういう出会いなんですか?』

 

 そういえば話していなかったかと、春明と同棲するきっかけを簪は思い出した。

 

 

 

 IS学園を卒業し、家の事業からも逃げ出した簪は一生分の労力を使いどうにか家を購入した。資金の出所は実家の独り立ち祝いである。

 

 カップ麺やお菓子で暮らし昼過ぎまで寝て、好きなだけ夜更かしをしていた簪だが、どうせならと配信を始めた。オタク特有の謎の行動力である。

 

 知識はひと通りある、というかそこいらの配信者より詳しいまである。無駄に性能の良い機材を用意し、立ち絵も推しのイラストレーターに依頼して追加で貢ごうとして止められ、SNSアカウントも作成して宣伝も行った。

 

 そしたらバズった、というか正式には炎上した。

 

 コメントで詳しいと言われて調子に乗ったせいだろうか、荒らしの売り言葉に買い言葉でめっちゃ燃えた。

 

 無事鎮静したものの、慣れていたと思っていたはずの簪ですらやつれて、どうにか配信で小銭を稼いでいたある日、インターフォンが鳴った。

 

 置き配にしておいたのに、と呟きながらも怖いという感情がマヒしかけていた簪の前に、

 

「……………………ちゃんと寝てる?」

 

 見覚えのある顔が立っていた。

 

 

 

「それで私が旅の旅費に困っていたカレを家に泊めてあげて同棲してるの」

 

 自慢げに語る簪だが、炎上を偶然見つけた春明が心配になって家に訪れたのが真相である。住所はISを使えば簡単に分かった。

 

 そして現れたのが髪もぼさぼさで言わなかったが少し匂っていた簪を風呂に投げ込み、ゴミ屋敷一歩手前の家を片付け始めてなし崩し的に家政婦のように住み着いたのが真相である。

 

 家の床ってこんな色だったんだ、という呟きは聞こえなかったふりをした。

 

 所持金が少なく、悩んでいた春明の足元に縋り付き、泣きついて家にいてもらうことになった。

 

 ちゃんと嘘はついていない。脚色9.5割なだけで。

 

『嘘乙』

『ワイも家事出来るで』

『それ見捨てられないようにしないとダメじゃない?』

 

「えっ見捨てられるとかそんなことあるわけないじゃんカレはかっこよくて優しくて私にべたぼれで今日もデュアルのベルト2つ買ったの許してくれたし強化パッチもコッソリ買ったけど許してくれる『それは知らなかったな』え?」

 

 謎のコメントが流れていく。

 

 固まった簪を心配するコメントもあるが、目に映ることはない。

 

 音もなく開かれた扉に振り返れば、配信画面が映し出されたスマホを構えるカレの姿、この時普段はレスバ以外で活動することのない簪の脳がフル稼働し、ある答えを思いついた。

 

 

 

「り、理想の恋人バレ」

「遺言はそれだけか?」

 

 

 

 配信を切る余裕は与えられたものの、意地として切らない簪を前に春明との抵抗が配信に乗せられ、切り抜きも込みで再生回数はかなりのものとなった。

 

「ふ、ふへへ再生数うなぎ上り」

「お湯かけるから目閉じろよ」

 

 普段の日常もバレるようになったマスクドライバー系ヴァーチャル配信の神留ハーピンだが、普段のイチャイチャを聞かれて身体を洗ってもらっていると言えば、入浴介護じゃね? と返されて頭がはじけた。

 

 ムリを言って配信に参加してもらえば、自分より人気が出た。配信NTRなどとの賜った挙句、再生数に屈してしまい、たまに配信に出てもらうことになった。

 

 

 

 因みにだが、春明が居座ることを決めたのは別の理由である。

 

 簪は自分のスタイルをみすぼらしいと思っている。だが同時に需要があるとも分かってる。居座ってもらうお礼としてSNSに乗っていた格好で迫った時、

 

 あぁ、こいつ眼を離したらダメだなという憐れみ、よく言えば庇護欲である。

 

 

 

 籍を入れた記念配信で暴露された簪は見事にはじけ飛んだ。




 これを簪だと言い張る勇気‼︎

 たぶん書類がめんどくさくて籍入れるパターン。結婚報告した後も前も本人より人気になるやつですね、某ウサギの母みたいなやつ。


 イチャイチャは、してるかな? おかんと引きこもり息子みたいな関係でした。 お次は姉の方かな。何気に1番どうするのか悩むんだよなぁ。
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