IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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10話ー接触失敗ー

 アメリカで亡国企業との接触を終えた大地は現在東京で行われる技術発表会の会場にいた。

 そこで今発表している研究者の技術についての発表を聞き流しながら思考は別の事を考えていた。

 

(さて、これから1年……ギンガナムとの決闘に備えて準備をしないといけないが……決闘にターンXを持ち出してもいいんかね?眠りにつく前の状態でも性能は30%ほどしか出てないと言う設定だったが、ターンXとまた接触して∀が反応してまた性能のリミッターが解放されないだろうか?それだったら新規でスモーでも……いや、宇宙を舞台にして戦うことができればウォドムのカスタム機でも……)

 

 ルナとターンXが本格的にナノマシン施術を行ってくれたおかげで思考速度も上がり、いつもより物事を高速マルチタスクで考えれるようになったものの、結局思考が纏まらず、近々月基地に戻る予定だったのでデータ室で睨めっこするかと考えているとお目当ての人物の発表になったので思考を一旦止めて聞きに徹する。

 

「次に発表する方は、なんと本日最年少のお嬢さん。篠ノ之 束さんです。発表よろしくお願いします。」

「はい!よろしくお願いします!」

 

 司会の紹介の後、まだ中学生くらいの背丈で不思議の国のアリスのような服とうさ耳のカチューシャで着飾った少女が壇上へと上がり中央でぺこりとお辞儀する。

 それに対して俺は拍手をするが、対照的に先ほどまでの発表で熱く議論をしていた自称評論家のような顔ぶれ達からの拍手は散発的だった。

 そのような状況でも篠ノ之束は気にもせずに発表を開始した。

 彼女が手持ちのリモコンスイッチを押すと後ろのスクリーンにいろんな図面と共に、独特なパワースーツの設計図のようなものが映し出される。

 

「今日私が発表するのは!宇宙での活動を前提に考えたマルチフォームスーツ!通称『インフィニット・ストラトス』!略して『IS』です!お手元の資料を見てください!これは……」

 

 そこからは篠ノ之束がISに搭載されている技術を事細かに説明をしていった。

 俺はルナやターンXと共にMSの開発や、ISの操作などを行っていたからある程度理解できた。だが大地は思う。

 

(これは拙いかもな。俺は何とか理解できてるが専門用語と実際どう動くのか知ってないと理解できない部分が特に分かりにくい説明になってる。あそこで嘲笑しながら資料を斜め読みしている自称評論家達にはさっぱり理解されていないのではないのか?)

 

 大地が篠ノ之束から視線を落として最前列付近にいる自称評論家達を見ると、この娘は何を言っているんだ?と言わんばかりの表情を隠しもせずに配布された資料をペラペラめくったり見もせずに隣の人と話す人もいた。

 そうこうしていると、概要を大体説明し終わった束が観客席側へ視線を落とした。

 

「以上で大まかな説明を終わります!聞いて下さりありがとうございました!」

「篠ノ之 束さんありがとうございました。では質疑応答に移ります。」

 

 と束が言い終え司会が告げると、待ってましたと言わんばかりに自称評論家達の集団が手を上げる。

 それを司会の人が順番に当てていく。

 初めは当たり障りのない質問が多く主にPICの技術や拡張領域についての詳細を聞く質問が多かった。そろそろ大地も加わろうかと手を上げた所、大地の前の席で手を上げたものが指名された。それは先ほど資料を読みもしなかった小太りで仏頂面な者で彼の発言で場の空気ががらりと変わった。

 

「素人質問で恐縮ですが、この技術はそもそも実用化が可能なのですか?私には子供の想像の域を超えないSFチックなものにしか聞こえなかった。PIC?拡張領域?そんな荒唐無稽な技術、作れるものだったら国の研究機関がすでに研究や論理構築を行っていたでしょう?どうやってこの技術を実用化させるのですか?」

 

 明らかに不満を隠していない口調の発言に、まだ中学生の篠ノ之束は肩をびくりとさせてたどたどしく応える。

 

「は、はい。先ほどお渡しした資料の10pに記載している通りの技術を応用して……「そういうことを聞いているのではありませんよ?」……!?」

「私は、この資料を読むに値しないと思っている。聞くだけでも我々の知らない技術体系ばかりを使用して明確なエビデンスもない。そんな妄想のような技術を我々に理解しろというのはお門違いと言う話なのですよ?篠ノ之束さん?」

 

 あまりにも横暴な態度を示されて、篠ノ之束は自分のスカートの裾をぎゅっと握って下を向いてしまう。

 

「○○さん、もう少し抑えていただけますか?」

 

 と司会が質問者を落ち着かせようとする。

 

「ここは最新の技術を発表し議論する場だ、こんなSF作品に出てきそうな私の考えたパワードスーツなどと言う妄想を発表する場ではないのだよ。それにこういうことを言われる覚悟があってここに来たのだろう?私は一人の少女ではなく、一人の技術者として相手にしているのだ。まぁ私の意見はもういいでしょう。私は彼の意見を是非聞きたいものだ。MR社CEO月乃大地さん?」

 

 司会の制止も聞かずに彼は後ろを振り返り俺の事を見てくる。

 その彼の行動に周りで静観していた観客達も一斉に大地の方へ視線を向ける。

 

(余計なことしやがって、俺がお前の味方するとでも思っているのか?)

 

 そう大地は煮えくり返るはらわたを抑えながら、一息つくと挙手をした。

 

「MR社CEOの月乃大地です。発言よろしいでしょうか?」

 

 大地の言葉に、司会はどうぞと促してきたので立ち上がると先ほどの彼は席についてにやりと笑って大地を見ていた。

 やはり味方になってくれているという確信があるようだ。だが残念だったね。

 

「今回の篠ノ之 束さん、いや篠ノ之 束博士と呼ばせていただきましょう。インフィニット・ストラトスの発表は素晴らしいものだと思います。既存のものとは違う技術体系による慣性制御、そして拡張領域という量子変換技術。私もすべて理解仕切れたわけではありませんがこの技術が普及すれば人類の宇宙進出に必要な宇宙開発が飛躍的に進むでしょう。それに、MS開発過程において一度は考えた技術だったのですが、篠ノ之束博士の提唱する技術は実現可能だと判断しました。個人的に言わせてもらえればインフィニット・ストラトスが資料通りの稼働可能時間で、大気圏内飛行や搭乗者の保護が可能なのであれば用途がいになりますが災害・人命救助現場で我が社のMSより目覚ましい活躍を示してくれるでしょう。とても素晴らしい発表でした。可能なら後日、場所を設けるのでぜひもっといろんなことを教えていただきたい。そしてインフィニット・ストラトスの実用化にMR社は支援を惜しまないと約束しましょう!」

 

 と大地は熱弁を行った。

 それに対して篠ノ之束は、ぱぁっと笑顔になり若干涙目であった顔を何度も縦に振ってうなずいていた。

 それを見て先ほどの彼は面白くなさそうな顔をしていたが、何かを思いついたような顔で挙手もせずに話し始める。

 

「なるほど!素敵なご意見ですな、月乃社長?彼女の技術を実用化させてMSに組み込み、次世代のMSを開発成されるのでしょう?それで各国の軍備の増強に協力などするご予定と見ました。まったくMR社は死の商人にでもなるおつもりかね?」

 

 不敵に笑う彼を見て、大地は不満な顔で彼を見る。

 

「そのようなことは考えておりません。そもそもMR社はMSの作業用としての販売を行っている。販売先が軍事転用することに関しては一切携わっておりません。それにインフィニット・ストラトス、ISと呼ばせていただきますが、ISはあくまで篠ノ之束博士の発明品であります。それを支援することはあれ、無理な技術強要や軍事転用などはしないと誓いましょう。」

「本当でしょうか?先日渡米の際、兵器開発コンペティションへ参加成されていたのでしょ?確かVSカンパニーでしたか、そこの女性職員と仲睦まじい関係だとか?軍事転用に関わらないと言っておきながら陰ではいろいろやっているのではありませんか?」

「断じてそのようなことはない!」

 

 その発言で言葉が詰まる。

 そしてとても拙い状況になったと大地は思った。

 この状況、まずあの場の事を知っている事については後で彼とお話しする必要があるが、少し考えれば彼の発言が俺を貶めるための発言だとわかる。だが、先ほどから下げて上げてと情緒を揺さぶられている篠ノ之束にはどう映る?こんなドロドロの大人の会話を中学で思春期真っただ中の少女の情緒でこれを処理するのは難しいと思っていた。

 

「……つき!」

 

 それは壇上の上からかすかに聞こえた。

 大地含めて何人かが壇上へ視線を向ける。

 視線の先には下を向き肩を震わせている篠ノ之束の姿があった。

 

「嘘つき!折角ISをお披露目しようと論文を持ってきたのに!みんな信じてくれない!宇宙作業用って言ってるのに!MR社のMSは私と同じ考えで作ってるって信じてたのに!!!結局お前らは都合のいい兵器が欲しいだけなんだ!もう知らない!!!」

「待ってくれ!篠ノ之束博士!私は……!」

<(大地!ダメ!)>

「うるさい!お前なんて嫌いだ!」

「うぉ!?!?」

 

 泣き叫び会場から飛び出す束を大地が走り寄り止めようとするが、ルナの制止も間に合わずにその体躯に合わない膂力で投げ飛ばされてしまう。

 どさりと地面へ投げ飛ばされた大地は、数回頭を振り束の走り去った方を向くが、彼女の姿はもうなかった。

 まだ揺らぐ視界に耐えながら立ち上がった大地へ先ほどの男が近づいてくる。

 

「まぁ、子供の癇癪です。気にすることもないでしょう。ところで月乃社長?よろしければ我々の企業と共同で新たなMSの開発をしませんか?あの小娘よりは堅実で利益の出る話だと思いますが?」

「……」

 

 大地はその男を冷酷ともいえるほど冷めた目で見つめる。

 

「○○さん。私は今非常に機嫌が悪い。そして篠ノ之束博士へのこれ以上の侮辱は許さないぞ。博士の発明には今後の未来を良くする技術が詰まっていたのだ。そんな貴重な場所を己の欲望で台無しにした罪、どう贖ってくれる?何もできんのなら今すぐ私の視界から消えていただけると何もしなくて済む。」

 

 大地の言葉を聞き、男は一瞬びくりと肩をはねさせ冷や汗をかくがめげない。

 

「ま、まぁそれはそれとして共同開発の件は後日アポイントメントを取らせていただきますよ。」

 

 大地はさらに視線を鋭い物に変えた。

 すると男は、こちらに近づいてきて耳元でささやく。

 

「アメリカの支部だけおいしい思いはさせませんよ。MR社は日本の会社だ、アメリカの支部だけでなくこちらとも手を組んでいただかなくては……ね?」

「……貴様、亡国の者か」

「えぇ、より良い返事をお待ちしておりますよ。」

 

 そういって男はそそくさと会場へ戻っていった。

 そして大地は深呼吸をした後に会場から出て、MR社製の無人運転車へ乗り込み帰路へ着いた。

 

「ルナ、ターンX」

<大変だったね、どうしたの?>

ー肯定、お疲れ様でした。ー

「衛星通信をハッキングしてスコール・ミューゼルとの秘匿通信を開いてほしいんだけどできる?」

ー肯定、通信を開くことは可能です。ー

<でも今あっちは深夜だよ?繋がるかな?>

「出させるさ、支部が違うとはいえ早速約束を反故にしたんだ。しかも絶好の機会を邪魔するという看過できないことをね。」

<わかった!コアネットワークの秘匿回線を嚙ませるね~>

ー肯定、現在衛星通信へのハッキングを開始……回線繋がりました。呼び出しを開始。ー

 

 こうしてミューゼルは、ギンガナムが勝手にした約束の件で亡国企業幹部会から説明を求められ夜遅くまで説明、やっと寝れると帰宅した時に携帯端末から『MR社』からとコール音が鳴り響く。

 それを見たミューゼルは嫌な予感しかしなくて出たくなかったが、溜息一つ着いた後に通話に出るのであった。

 

次回へ続く

 

 

~篠ノ之束研究所~

 

「束、大丈夫か?」

「ぐすっ……!うるさい!放っておいてよ!」

「友達なのだ、放っておけるか!」

「うぅ……ちーちゃん!」(ガシッ!)

「急に抱き着くな……はぁ、何があったんだ?」

「う、うぅ~~~~~!皆束さんのISの事理解してくれないんだ!理解してくれそうな人は一人いたけど結局兵器としての利用しか考えてなかった!もうあんな凡人度も信用できないよ!」

「そうか……」

「……そうか!わかったよちーちゃん!」

「?」

「あんな人形みたいなロボットより、私のISの方が有能だって世界に示せばいいんだ!」

「束、お前は何を言って……」

「そうと決まればすぐに準備しなくっちゃ!ちーちゃん専用のIS白騎士の再セッティングをすればすぐできるね!というわけでちーちゃん!今度ISを使うから1日開けれる日を後で教えてね!それじゃアデュー!」

 束はそういううと研究室の奥に仕舞われている白騎士の方へ駆けて行った。

 その後姿を千冬はただただ見つめることしかできなかった。

 




 お読みいただきありがとうございます。
 そろそろターンXの溶断破砕マニピュレータやウォドムの対艦メガ粒子砲とか登場させたいな〜
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