IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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13話ー遭遇ー

 

「何が……起きてるの?」

 

 現在、篠ノ之束は困惑していた。

 白騎士のお披露目の為に用意した2341発のミサイルの半数以上が真上から降り注いだ黄色の閃光により迎撃されたのだ。

 束の前に映し出されているドローンの記録映像は、SFの世界を見ているのではないかと見紛う程の物だった。

 

「私の開発した荷電粒子砲じゃこんな出力出なかったし、何より予測射点が衛星軌道上って……一体どこの国がこんな衛星兵器を開発したの?……って!ちーちゃんの逃走海域に高エネルギー反応!?何この数値、さっきの光学兵器みたいな出力……って考えてる時間ない!ちーちゃんに合流しなきゃ!IS展開!」

 

 と束は青いドレスのようなISを身に纏い、白騎士の逃走した太平洋上へ飛び立った。

 

 

〜米海軍太平洋艦隊サイド〜

 

「一体どうなっている!?」

「わかりません!操作権を奪われ発射された各国のミサイル群が上空から降り注いだレーザーのようなもので半数以上が迎撃されました!その後日本領海上空に現れた所属不明の人型物体が残りのミサイルを迎撃!衛星情報とレーダー情報で当艦隊の展開する太平洋上へマッハ1.2で逃走を開始したと思われます!」

 

 空母のCICにて、艦長とレーダー管制官がやり取りを行っていた。

 

「なんとしても逃走した機体を追跡するんだ!戦闘機隊は甲板で発艦待機していたな?すぐに上げろ!」

「イエス、サー!こちら管制、スクランブル発艦待機中のホーネット1、2へ、直ちに発艦し高度2000、方位270へ進路を取れ。詳細は追って知らせる!発艦後速やかに待機中のホーネット3と4も同進路で上がれ!これは演習ではない!繰り返すこれは演習ではない!レインボーギャングども!所属不明機がマッハ1.2でこっちに向かってきている!安心して夕飯が食いたい奴は給料分以上に仕事をしろ!」

 

 管制官からの怒号とも言える指示にレインボーギャングもとい甲板のフライトデッキクルー達は洗礼された動きで作業を始めた。

 そして数分もかからずにホーネット戦闘機隊は空へ上がっていった。

 

「各艦へ通達!こちら旗艦ジョージ・ワシントン!現在当艦隊管轄海域に先程日本へ飛来したミサイルを単機で迎撃した所属不明機が1機マッハ1.2で接近中である。ハワイ司令部も先程起こったハッキングにより混乱状態で当てに出来ない!故に当艦隊は独自に防衛行動を行う!現在ホーネット隊を随時発艦させ、600秒後接触予定だ!敵対行為を見せた場合、即戦闘状況に入ることを宣言する!各艦!対空戦闘用意!対空警戒を厳とせよ!」

 

 旗艦艦長からの通信で艦隊各艦が了解の返答があり、各艦も戦闘態勢に入り始める。

 すると先程から射点を特定していたレーダー員から報告が入る。

 

「艦長!先程上空から降り注いだレーザー兵器の射点計算終わりました!詳細な高度は不明ですが成層圏より高い高度からの射撃です!」

「何かの間違いではないのか?本当だとするとどこかの国の衛星兵器か!?我が軍の物ではないのだな?」

「はい!何度も計算しましたが間違いありません!ハワイ司令部に問い合わせましたがまだ混乱中のため詳細不明です!ですが、現在日本上空を通過している米所属の衛星はありません!」

 

 レーダー管制官の言葉に艦長がデスクに拳を叩きつける。

 

「クソ!司令部め!わからんことばかりだ!一体何が起きてる!?先ほどの通達通り本艦も対空警戒を厳にせよ!ホーネット隊は接触したか!?」

「はい!60秒後接敵予定!」

「よし!ホーネット隊!聞こえるか?目標は視認したか?」

『こちらホーネット1、目標をレーダーで探知!高度1400を飛行する目標を視認!……今すれ違った!旋回してインターセプトする!白い人型ロボットが凄い速さで飛んでやがる!映画の撮影かなんかか?』

「オープン回線での呼びかけは?」

『ホーネット2が何度も呼びかけているが返事がない!進路も変える様子がないがずっと北の方角に顔を向けている!指示をこう!』

「北を向いている?少し待て、レーダー管制官!ホーネット1の北方向に何かいるか?」

 

 艦長はレーダー管制官へ近づき、広域索敵レーダー画面を見ながら問いかける。

 

「いえ、ホーネット1から北方向の空域を飛行中の航空機はいません!」

「なら海上はどうだ?航行中の艦船は?」

「確認します!現在航行中の貨物船2隻確認!」

「どちらも異常はないのか?」

「レーダー上ではなんとも!1隻が停船しているくらいしかわかりません!」

「そうか……異常が起こり次第連絡しろ!」

「了解!」

「ホーネット隊!再度状況を知らせろ!」

『こちらホーネット1、インターセプトした!状況は変わらず目標は依然進路変更をしない!どうすれば良い?』

「ホーネット1、威嚇射撃を行い再度呼びかけをするんだ!応じない場合撃墜を許可する!」

『……ホーネット1了解!』

『こちらホーネット3からマザーへ!1、2に合流中に所属不明機をもう1機視認した!レーダーに映ってないがおそらく同型だ!』

「なんだと!?詳細を伝えろ!ホーネット1威嚇射撃中止!3からの報告を待つ!」

『こちらホーネット1了解!』

『こちらホーネット3!所属不明機との交信に成功!「逃げろ!」と言っている!繰り返す!「逃げろ!」と言っている!』

 

 この言葉を聞いて艦長は思案する。

 なぜ所属不明機はこちらを無視して北を向いているのか?

 そしてなぜ外洋にも関わらず救難信号も出してない貨物船が停船しているのか?

 そして新たに現れた所属不明機が退避勧告を言うのは……と思案中に管制官が叫んだ。

 

「停船中の貨物船から高エネルギー反応!」

 

 そこからの艦長の判断は早かった。

 

「ホーネット隊!速やかに空域から離脱せよ!即時離脱だ!所属不明機から少しでもいいから距離を取れ!」

 

 だが艦長の判断は正しく、一拍遅かった。

 

『ホーネット1!即時離……ザーー』

『こちらホーネット2!1が落とされた!クソ!コックピットが吹っ飛んでやがる!即死だ!ベイルアウト確認できず!3!4!ブレイク!ブレイ……ザーーー』

『こちらホーネット3!2も落とされた!ベイルアウト確認できず!ピンク色のレーザーのような物が飛んできている!……なんだ!?所属不明機体が盾を使って守ってくれた!4と共に撤退する!』

 

 この通信を聞いて艦長は驚愕を隠せなかった。

 数十秒だ、たったそれだけの時間でジョージ・ワシントン所属の精鋭が2機落とされたのだ。

 所属不明機が守ってなければ3、4も落とされていただろう。

 艦長は大きなため息をついて副官へ指示を飛ばそうとするとレーダー管制官から更なる報告が入る。

 

「艦長!直上より高速で接近する物体を確認!所属不明機の方へ向かっています!」

「……本当に、何が起こっているのだ……」

 

 そう言って艦長は暗いCIC室内で天を仰いだ。

 

 

〜白騎士サイド〜

 

 白騎士の搭乗者こと織斑千冬は焦っていた。

 予定の数の半分以下だったミサイルを迎撃し、太平洋上へ逃走したが、そこからハイパーセンサーが常にロックオン警報を鳴らしていた。

 ちなみに、米海軍の戦闘機が近づいているのは分かっていたが、束に攻撃されない限り無視するように言われていたので無線も全て無視していた。

 

(ハイパーセンサーの故障か?だが、常に警告が北方向と指している。一体その先に何がある?)

 

 そう思考した千冬は、ハイパーセンサーの超望遠視点で北の方向を見ると停船している大型の貨物船が目にとまった。

 訝しんだ千冬は更に拡大して表情が固まった。

 貨物船の艦上に約20m程の白い人型のロボットが立ってこちらを見ていたのだ。

 その手には長いライフルのような物を持っていて銃口をこちらに向けており、銃口からわずかなピンク色の閃光が見えていた。

 それを確認したタイミングで、束から通信が入る。

 

「ちーちゃん!今すぐ上昇して逃げて!」

 

 束の言葉に返事もせずに千冬は上昇した。

 すると先程千冬がいた場所にピンク色の閃光が走った。

 そして、ドゴーン!と言う音と共に先程まで千冬に並走飛行していた米海軍戦闘機が爆発しながら海へ落ちていった。

 

「一体、何が……?」

「ちーちゃん!次が来る!下降して!」

「うわっ……!?」

 

 束の指示に何とか2発目もかわしたが、付近を飛んでいたもう1機の戦闘機の真上を閃光が通り過ぎた。

 直撃はしなかったが、真上を通過した閃光の熱量によりコックピット部が融解、操舵を失った戦闘機はひらひらと海面へ向かい飛行しそのまま大きな水柱を上げた。

 

「死んだ……のか?」

 

 千冬は只々落ちた戦闘機を呆然と眺めてしまっていた。

 

「ちーちゃん!……ちーちゃん!」

「束……一体どういう状況なんだ!?」

「そんなのは良いから逃げるよ!白騎士からのデータリンクで確認しているけどあの貨物船にいるロボットは異常だよ!光学兵器は直進しかしない!水平線の裏に隠れれば逃げ切れる!南逃げるよ!」

「わ、わかった!……!?あぶない!」

 

 束の指示に従おうとした千冬は、飛来するピンク色の閃光が近くを飛んでいた米海軍機に迫っていたのに気づきら拡張領域に格納していた盾を呼び出して閃光と戦闘機の間に入り込む。

 

「……なに!?」

 

 閃光を受け止めた千冬は唖然とした。

 物理盾→シールドエネルギー→物理装甲→絶対防御の順で展開されていた防御機構のうち絶対防御を覗いてすべて貫通していた。

 白騎士の盾はドロドロに融解し、構えていた左手の装甲も半分が融解していた。

 

(絶対防御が無ければ私は……)

 

 背後の戦争機が離脱するのをハイパーセンサーで確認しつつ、視線の先にある左手を見ながら千冬は必死に回避行動に入る。

 

「ちーちゃん!大丈夫!?」

「あ、あぁ……左手が使い物にならなくなったが、生身に問題はない、シールドエネルギーはさっきの一撃で半分になったが大丈夫だ。」

「よかった……!白騎士の被弾でデータが取れたけど、あの閃光?の威力は桁違いだよ!盾無で直撃したら絶対防御も貫通しちゃう!急いで海面すれすれを飛行して逃げるよ!」

「わかった!」

 

 そういって二人は以前飛んでくるピンク色の閃光を回避しつつ南へ進路を取り、直進ではなく左右に蛇行する形で飛行を開始した。

 

「あれは何なのだ!?MR社のMSとも違うようだが?」

「全然わかんないんだよ!MSっぽい気もするけど、あそこまで大型のモデルがロールアウトしてるなんて情報無かったもん!」

「では、先ほどの空から降り注いだ黄色い閃光は?あいつと関りがないわけじゃないのだろうな?」

「多分、関係あると思う!世界中の凡人どもが束さんより高出力な光学兵器を作れるわけないもん!」

「そうか……本当あいつは何なんだ……!」

「ちーちゃん!上!」

 

 もうすぐ水平線の影に隠れれるといううタイミングで束の声とハイパーセンサーの警告音が同時に響く。

 ハイパーセンサーに表示されたのは直上に高速移動体接近との警報で、千冬が視線を上にあげると大気圏突入中なのか、赤熱した物体がこちらに落下しているところだった。そして、先ほどまでの射撃とは比べ物にならないぐらいの極太のピンク色の閃光がその落下体へ向かっていくが、その閃光は当たる直前に目に見えないバリアのような物で反らされた。

 先ほどまであんなに警戒していた閃光の更に高い出力の閃光を容易く弾いた光景を見て、千冬と束は啞然としかできなかった。

 

 

~大地サイド~

 

 大地は一瞬何を言われたのか理解できずにもう一度ターンXに聞き返していた。 

 

ー再度報告、偵察衛星よりSystemー∀99の反応を捕捉、太平洋上で停船中の貨物船からです。ー

 

 そうしてディスプレイに表示された∀の位置を見て固まる。

 

「これ、∀のビームライフル射程内に白騎士入ってないか?」

ー肯定、すでに∀の射程内に入っております。ー

<大地!∀が射撃開始!白騎士の近くを飛行していた米太平洋艦隊所属の戦闘機が落とされた!私は白騎士のコアネットワークにバレないように潜ってくる!>

「わかった!ルナ頼んだよ!」

 

 ルナの報告を聞いて大地は奥歯を噛みしめた。

 

「クソ!∀が出てきた以上仕方がない!白騎士を救出する!」

 

 そう言った大地はターンXの推力を駆使して即座にアスピーテへ帰投。

 救出用の小型生体ユニット対応輸送コンテナを背部キャラパスのラックへ装備し、甲板から地球へダイブし始めた。

 

「ターンXでの大気圏突入は初めてだけど、フェイカーパッケージで行けるよね?」

ー肯定、ビームバリアの展開でナノスキン包帯も破損せず、問題なく突入できます。ー

「よし!白騎士の予測進路上に降下できるように進路変更する!∀の迎撃も考えられるからビームバリアは厚めにしておいて!」

ー肯定、出力をさらに上げます。ー

 

 ターンXの言葉と共に先ほどから可視化したビームバリアが更に厚く形成され、大気との摩擦熱で赤熱化を開始する。

 すると先ほどからコアネットワークに潜り、白騎士たちの行動を探っていたルナから報告が入る。

 

<大地!白騎士に束博士のISが合流したよ!!>

「わかった!白騎士達の様子は?」

<白騎士が戦闘機を庇って被弾してる!生身に問題は無いけど、左手が使い物にならなくなってる!SEは2機とも半分くらい!>

「わかった!ありがとう!もうどちらからも補足されたかな?」

ー肯定、∀からのロックオンを検知。射撃来ます。ー

 

 ターンXの言葉と共にコックピット内に響くアラート、その後一拍おいて北方向からピンク色のビームが見えたと思うと的確にターンXの胸部装甲付近のビームバリアがビームを弾いた。

 

「うわぁ!やっぱりビーム兵器の直撃はシミュレーションより圧がすごくて怖いな!」

<大丈夫だよ!この距離なら全然弾けるから!>

ー肯定、∀も最大出力での射撃はできないようです。この距離でも最大出力でしたらビームバリアを多少貫通しますがしませんでした。おそらく現在は20%しか出力を出せないと推測。この調子ですと、ナノスキン保護機能も不完全でしょう。おそらく今の高出力モードの射撃でビームライフル砲身が限界かと、撃ててあと1~2発と推測。ー

「わかった!とりあえず大気層に入ったらレーザー通信で白騎士と∀へ連絡を取るからルナ準備お願いできる?」

<任せて!目標補足!追尾開始!レーザー通信機能オンライン!15秒後に照射開始!>

 

 そして大地は白騎士と∀へ2本のレーザー通信を照射、千冬達と∀へ通信を繋ぐ。

 

「そこのISへ告げる!死にたくなければこちらまで高度を上げろ!指示に従わない場合の生死は保証しない!そしてギンガナム!聞こえているだろう!ここで引いてくれ!俺に向けての一発は見逃してやる!楽しみは10か月後まで取っておいて欲しい!そろそろビームライフルの砲身も限界だろう?」

 

 すると∀から返答が来た。

 

「フハハハハ!貴公もなかなかの機体を用意したではないか!我が方の∀が反応しないところを見るに兄弟もどきと言ったところか!フン!先ほどの射撃は許してくれ、貴公だと知らなかったのだ!だが、その人形は好かんな!ちょこまかと!小生も上からそれを取ってくるように言われているのだが……まぁ、いいだろう。では連絡を待っているぞ!」

 

 そう言って∀のパイロットであるギンガナムは通信を切り、出力を下げたのか反応が消えた。

 すると直ぐに白騎士達からも返答が来る。

 

「お前は一体誰だ!?なぜISを知っているの!」

「束落ち着け、お前は敵なのか?味方なのか?」

 

 この反応に対して、大地は機械的に答えた。

 

「繰り返す。高度を上げてこちらに合流せよ。これは最後通告だ。指示に従わない場合、脅威は去ったが無事に帰れる保証はない。現在、各国の衛星が先程の戦闘を観測、数カ国のデフコンレベルが1に上がった。先遣として航空戦力がこちらへ向かって来ているが、対処不能と判断されれば最悪核攻撃が実施される。当機体はこれ以上高度を下げられない。……退避を手助けする、速やかに指定高度まで上昇せよ。」

 

 その言葉を聞いて少し間を置いてから返答が来る。

 

「わかった……指示に従う。」

「ちーちゃん!」

「うだうだしていても状況は悪くなる一方だ!デフコンがどうとか詳しいことは分からんが、後はあいつが上手くやってくれるのだろう?私はそれに賭けようと思う。」

「ちーちゃん……わかったよ。おいお前!束さんとちーちゃんに何かしたらただじゃおかないからな!」

「賢明な判断に感謝する。指定高度まで上昇を確認後こちらで回収する。後は任せてくれ。」

 

 そうして千冬と束は得体の知れない相手を信じて大地達がいる高高度へ上昇を開始した。

 

次回へ続く

 




 お読みいただきありがとうございます。
 
 秋らしく少し肌寒くなってきましたね。スーパーの焼き芋にかぶりつきながら、「これ美味!話に組み込みたいな〜」とかしょうもないこと考えております。
 妄想が……止まらねぇ

 
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