IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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15話ー契約ー

 

 前話より時間は少し経ち、大地は千冬と束に食事をとりながら説明を行っていた。

 大地が月から来たことを、ルナとターンX、MS群と共に月を開拓してきた事を、そして人類の宇宙進出の為にMSを地球に普及させようとバイオスーツで姿を偽ってMR社を作った事を、そしてタブーな存在であるMSとこの世界に居てはいけない存在が現在搭乗している事を。

 

「……ってな感じかな?何か聞きたいことはあるかな?」

 

 大地の問いかけに2人は難しい顔になっていた。

 一呼吸おいて束が大地を見る。

 

「君が凄いことはわかったよ。でも気になったんだ、長い眠りから目覚めて衛星文通で話していたけどこの時代の理解がありすぎる。そしてこの世界に居てはいけない存在を知っているって、君は本当にどこから来たの?そもそも同じ人類なの?」

 

 束の質問に千冬も頷いた。

 大地はその質問に少し考えたが答えることにした。

 

「1つ目の質問に答えよう、簡単な話で俺もルナもターンXも違う世界から来たからだよ。俺は前の世界で死んで、神の使いって存在から代償と引き換えに創作物の世界として認識していたターンX達と一緒にこの世界に来たんだ。MSってのはその創作物の世界で人類が宇宙に進出する際に生まれた技術の1つなんだ。2つ目の質問の答えは……なんて言えばいいかな?一応人間……かな?ルナ、ターンX。今の俺はどういう状態かな?」

<そうだね!今はまだナノマシンの適応と定着工程をゆっくり大地の身体に負担がかからないようにやってるから35%って所かな?>

ー肯定、現在御大将閣下殿の身体35%がナノマシン施術により、体組織がナノマシンで構成されております。身体構造的にはまだ人間でしょう。ー

「ははは、前よりだいぶ進んだね~」

「嘘でしょ!?」

「そんな事があるのか!?」

 

 大地の回答に2人は驚き、それを見た大地は首をかしげていた。

 

「つまり君は別の世界から来て別世界の創作物世界技術をこの世界で再現しているってこと!?異常すぎるよ!」

「お前は自分の身体をナノマシンに置き換えているという事だろ!?本当に大丈夫なのか?」

 

 二人の大声に大地は余計困惑してしまっていた。

 

「なにか変なこと言った?」

「「言った!!」」 

「え!?な、なんかすまん……」

<前々から思ってたけど、大地って凄い順応性高いよね~あはは!>

ー肯定、御大将閣下殿は我々の存在に軽く驚きこそすれ、実際とても楽しんでましたからね。ー 

「え?俺が変なのか!?正直死んで生き返った経験しちゃってるからもう大抵のことに驚いてないだけなんだけど……」

ー<「「あぁ……」」>-

「納得されたぁ!?」

 

 こうして大地達は気づいたら打ち解けていて少々雑談に花を咲かせていた。

 

 

~数十分後~

 

「それで、だー君はその∀ってのを止めたいんだね?」

「だー君?」

「そう!大地だからだー君!」

「すまんな月乃、束は気に入った相手をあだ名で呼ぶ癖があってな。何度言っても変える気はないから諦めろ。」

「そうか、なら織斑さんも俺の事名前でいいよ。俺も名前で呼ばせてもらうから。」

「そうか?なら大地と呼ばせてもらおう。私も千冬で構わない。いや、年上だからさん付けがいいか?」

「いや、いいよ~そこまで畏まられてもちょっと気恥ずかしい。」

「わかった。では大地、束も言っていたがその∀とはどれほどの脅威なのだ?」

 

 千冬と束の質問に少し大地は表情が暗くなる。

 

「型式番号system-∀99、またはWD-M01。ターンエーやホワイトドールと呼ばれた機体だよ。この機体の設定は対地球外敵性勢力兵器としてコスト度外視で設計製造されたワンオフ機体であり、システム∀構想の実証機体。まぁ、簡単に言うと、ナノマシンを使って機体からパイロットまで全ての損傷を修復可能で縮退炉を詰んだ化け物機体で、あるシステムを搭載、使用したことにより文明の歴史を黒歴史として封印した禁忌の機体。」

「あるシステム?」

「そうだよ束さん、その名前は『月光蝶』∀の機体からナノマシンを大量に周囲へ散布するシステムでそのナノマシンが触れた物はすべて砂状に分解され、分解で生じたエネルギーは∀のエネルギーに還元されるかエネルギーの奔流となりハリケーンのような嵐が巻き起こるんだ。散布時に虹色の蝶の羽のような姿になるのが特徴でね。僕が知ってる限りだと、破壊目標は人工物に設定されていて∀が通った後には人の営みの形跡はなくなっていたよ。」

「「!?」」

「そして、厄介なのがその∀の現搭乗者。名前をギム・ギンガナムと言う。彼は∀の劇中でターンXを駆り∀との激闘の末、ナノマシンの繭に閉じ込められて生涯を終えたはずなんだ。なのに何故かこの世界に∀と来てしまっている。僕と同じようにね。」

 

 大地の話を聞いて、千冬はハッとした表情になり問いただす。

 

「待て大地、ターンXと言ったな?ならお前が乗っているそのターンXは何なんだ?」

「そうだよ、そのコスト度外視のワンオフ機体と戦ったターンXって何者なの?」

「さっき、∀は地球外敵性勢力の対抗策で作られた話をしたでしょ?その原因になったのがターンXなんだ。」

「なんだって?」

「ここからは詳しい設定が事細かに書かれていたわけじゃないけど、太陽系外から漂着した破損したMS、それがターンXだったんだ。地球圏に漂着したターンXが発見された後、その機体は大昔に太陽系外へ進出した人類の末裔が作ったものではないかとされた。その機体の技術力の高さに、当時の地球圏の人たちは対抗策を作らなくてはと思い∀を製造したんだ。」

「だー君ってことは、ターンXにも月光蝶が搭載されているってこと?」

「そうだね、搭載されているよ。厳重にロックを掛けているけどね。このシステムの恐ろしさは知っているつもりだ。だからギム・ギンガナムを止めて∀を停止させないといけないんだ。ギンガナムは月光蝶でまた世界を戦乱の世にして武勲を立てたいだけの男なんだ。蝶には絶対させない。」

 

 そう言って大地は飲みかけのティーカップを机へ置いた。

 

「だから、こうしてルナやターンX達と着々と戦力を整えていたんだ。そして地球でMSの販売を開始したのも、MSを戦闘用ではなく作業用として普及してほしいと思ったからなんだ。これから宇宙へ進出するようになればMSのような大型作業用の機体が必要になると思ってね。まぁ、やはりそう上手くは行かなかったけどね……だから事ここで言っておかなくちゃいけないことがある。」

 

 大地は束の顔を見つめた。

 

「?」

「今回の白騎士とミサイル日本飛来、君の仕業だね?」

「……うん。」

「白騎士が1000発のミサイルを単機で迎撃した事実は世界に知られてしまった。」

「それは、ISが優秀だと証明するために……」

「確かに、ISの性能は優秀だと世界中に知れ渡っただろうね。残念ながら兵器として」

「なんで!?」

「それはそうだろう、短時間で単機で複数方向から飛来する1000発のミサイルを迎撃したんだ。現存するどの兵器でも不可能なことだもの。きっと俺の販売するMSより世界は束さんの作ったISを主力兵器にしたいと考えるんじゃないかな?」

「そんな……」

「大地!流石に言い過ぎではないか?」

 

 愕然とした束は、膝から崩れようとするが無重力故に中へ浮いてしまい体を丸めた。

 それを千冬は抱きかかえて大地を睨みつける。

 

「俺も、もっと強く止めるべきだったね……ルナ、見せてやってくれるか?」

<わかったよ!記録映像再生!>

 

 大地に返事をしたルナは二人の前に空中投影ディスプレイを表示させる。

 そこには、真上から撮影された白騎士が標的ドローンを荷電粒子砲で撃ち落す映像が流された。

 

「これは!?」

「もしかして、だー君はずっと見ていたの?」

 

 二人の困惑の表情に無言で大地は頷いた。

 

「本当はあの時接触して、無理にでも止めれればよかったんだけど、接触すれば逆に悪い方向に行きそうだったから見守ることにしたんだ。」

 

 その言葉を聞いて束と千冬は黙ってしまう。

 

「そこで、束さんに提案をしたいんだけどいいかな?」

「……内容による。」

「おそらく、今後、日本政府や各国からISの生産を強く要請されると思う。その時、政府は身内である家族を抑えて、交渉をしてくるはずだ。だから手を打つ。」

「そんな!?人質じゃないか!で、手って?」

「少し時間はかかるけど、君の家族をMR社で保護させてくれないか?ただ、俺が手を回す前に政府の要人保護プログラムが適応されて家族が日本各地にバラバラに移動させられると思う。だから今までに作った政府へのパイプを使って、時間はかかるだろうけどMR社が護衛する条件付きで元の家で暮らせるようにする。」

「できるの!?でも、私はそれに見合う対価なんて……」

「対価はいらないんだけど……納得できないよね。なら、ISを世界がどう使うか見定めてみないかい?」

「どういうこと?」

「ある程度のISコアを生産して失踪するんだ。何かメッセージとか残しておいてもいいかもね。それを世界がどう使うかを見た上で、俺と協力して束さんの技術を人類の宇宙進出へ活かしてほしいんだ。」

 

 そう言いながら大地は束の目を見据える。

 

「それで……人類は本当に宇宙へ進出できるのかな?」

「明確な答えはすまんが言えない。俺のMS同様に軍事転用はされるだろう……だけど、宇宙への翼として認識してくれる人たちが現れないとは限らないだろう?」

「確かにそうだけど、世界の凡人どもは……「それでも!」っ!?」

「それでも、人類の可能性は無限大なんだ。それを信じてみないか?」

 

 そう言って大地は束の前に立って手を差し伸べる。

 束は少し悩んだ後、おずおずと手を握り返してくれた。

 

「わかったよだー君。私も少しはだー君の信じた人類を信じてみるよ。」

 

 そう言いながら束は大地に微笑んだ。

 すると束の後ろから、咳払いが聞こえた。

 

「すまんが、話は終わったか?大地、そろそろ私は帰りたいのだが可能か?」

 

 咳払いの主である千冬が少しだけ不機嫌そうに問いかけてくる。

 

「もうそろそろ行けると思うけど、何か予定でもあったかい?」

「あぁ、今新聞配達のバイトをしていてな。そろそろ帰って明日に備えたいのだ。」

 

 千冬がバイトをしていたことを初めて知った大地は少し考えこんだ。

 首をかしげて大地を見ていた千冬だが、何か思いついたように手をたたいて二人を見た。

 

「二人とも、良ければMR社で働かないかい?」

「へ?」

「な!?」

 

 大地の言葉で二人は驚いていた。

 

「束さんは今後失踪後に非公式で技術開発部に匿う形で、千冬さんは今後MR社が展開予定のIS開発部門のテストパイロットとして雇いたいんだけど、どうかな?束さんは厳しいかもしれないけど、千冬さんは今後も学業がある。だから基本業務は週に1〜2回の放課後や休日の数時間で、業務内容は束さんの補佐やちょっとした事務作業をしてもらう。2人の報酬については月このくらいを最低金額として定額支給、出社できる数などに応じて増やしていく感じでどうかな?」

 

 大地は説明後、二人の前に空中投影ディスプレイでおおよその報酬額を提示した。

 

「だー君!これ中学生のアルバイト代にしては破格すぎるよ!」

「大地よ、これは流石に羽振りがよすぎないか?逆に怖いぞ。」

「えぇ?今後の事業拡大とか生活の事を考えてちょっと多めにしたんだけど……いらない?」

「「欲しい!(研究費として!)(生活費として!)」」

 

 二人が顔を近づけて凄い眼力で言ってきたせいで大地はたじろぐ。

 

「なんて正直なんだ……でもこれで、千冬さんは新聞配達のバイト辞めてさっき雑談の時に言ってた弟の一夏君と一緒に入れる時間が増えるんじゃないかな?」

「……確かにそうだが。本当にいいのか?」

「構わないよ。家族との関係は大切にしないとね。なんなら一夏君をMR社に連れてきてもいいよ男の子はMS達が動いている姿を見るの好きだろうし。」

「迷惑にならないだろうか?」

「だー君それいいね!」

「ならないから気にしなくていいよ。と言うわけで、契約を結んでいただけるかな?」

 

 そう言って大地は二人に両手を伸ばす。

 束と千冬は、迷いなく大地の手を取り強く握ってきた。

 

「だー君!改めてこれからよろしくね!束さんも∀を止めるのに協力するよ!」

「こちらこそよろしく頼む。もちろん私も協力しよう。ただ今のバイトを辞めるのに少し時間がかかるが大丈夫だろうか?」

「こちらこそよろしく!千冬さん、そこは大丈夫だよ。束さんもこちらに合流するまでに時間かかるだろうから自分のペースでこっちに来るといいよ。」

「ありがとう。」

 

 握手を終えた大地は笑顔で二人を見つめた。 

 

「まぁ、雇うとは言ったけど実際君たちはビジネスパートナーみたいなものだ。対等に行こう。後で契約書を用意して書いてもらうけど、君たちが今後作った技術はそのまま君たちの名前で公表し、収益も君たちに100%還元するよ。いずれ社会人の年齢になったら、関係会社として独立して運営してもらうのも良いかもしれないね。まぁ気長に考えて行こう。」

「だー君それでいいの!?それだとだー君にメリット無いじゃないか!?」

「そうだぞ大地、少しくらいそっちがもらっていいのだぞ?」

「あぁ……これでもMSを世界に唯一供給している企業だからね~、お金には困ってないんだよ。ほら、生産に必要な資源も全部月面基地で自前で用意して生産できるし。」

「「確かに……」」

「正直言えば、今後二人がどんなものを世に出してくれるのかを見たくて支援した……ってことにしてくれないかい?」

「だー君が言うならわかったよ!期待していてね!」

「そうだな、私もどこまで役に立てるかわからないが努力しよう。」

「うん!これからよろしくね!よし、そろそろターンXで地球に送るよ。警戒網もだいぶ薄くなったし、大気圏突入後はMR社のギャルセゾンで送るから!」

 

 そう言って大地は、束と千冬との契約を交わし二人を地球へ送るのであった。

 その光景を見ていたルナとターンXはとても暖かい表情になっていた。

 

<(よかったね!ターンX!)>

ー(肯定、この世界に来てから大地様は今まで友人のような関係は我々以外居ませんでしたからね。嬉しい限りです。)ー

<(だね!後は∀だね……)>

ー(肯定、これから10か月……最善を尽くすましょう。)ー

<(そうだね!頑張ろう!)>

 

次回へ続く。

 

 

〜とある農村地帯〜

 

「イオンが匂うな……」

 

「お坊さん、今日はどうされたのですか?」

「はい、ちと昔仕えていた神様の匂いが風に乗って来ましてね。しばらくここを離れようと思っておるのです。」

「あら、さみしくなりますね〜。もう立つのですか?」

「はい、あの神様はせっかちですから。すぐにはせ参じて愚行を止めねばなりません。」

「ならこれ持っていってください!さっき取れた野菜です。瑞々しいですよ!」

「これはありがたい!では、俺はここで!」

「気をつけて行ってきてくださいね!」

 

(シャクシャクシャクシャク)

「やっぱ、婆さんの作る野菜はうめぇな!……まさかこの世界に来てあの匂いがするとはな……MSがありゃぁいいんだが……って!あるじゃねぇか!ウァッド作ってる会社がよ!あそこは違う匂いがするからな、そこ頼るか!MR社はどこでぇい!」

 

 黒歴史の生き残りが1人、MR社へ足取りを進め始めた。

 




 お読みいただきありがとうございます。

 先日、朝起きて炊飯器の蓋開けたら水に浸った米が入ってました。
 私は今日も元気です!
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