束と千冬がMR社所属になってから3ヶ月程経過した。
その3か月で世界は大きく変わっていた。
日本に飛来したミサイルを単機で迎撃し、太平洋上での謎の光学兵器により戦闘映像で米軍航空機が蚊トンボのように落とされる中それを回避し離脱したISは篠ノ之束の発明品という事を本人が公表し、圧倒的な能力により各国からISの製造要請が絶えない状態になった。
篠ノ之束は、一定数の供給を受諾するも軍事利用については頑なに断りそれを受諾できない場合は供給をしないと発表。
それに対して日本政府は各国の圧力もあり軍事利用の取り下げはできず、要人保護プログラムを適応し篠ノ之束の家族の保護を開始、家族一人一人がバラバラに日本各地へと散ることなり、束は国営の研究施設で保護しISの生産要請をする形となった。
そこで、大地もMR社として束の自由と家族をいち早く元の家へ戻すこと、ISの軍事以外での利用を要請する圧力をかけた。
だが、所詮起業から2年ほどの会社に年功序列意識が深く根付いた日本社会では発言権などほぼ無いに等しく、要請は簡単に突っぱねられた。
これが白騎士事件から1か月のうちに起こった出来事である。
その後、1か月ほどの時間を費やし交渉をし続けた結果、MR社のMS部隊が24時間体制で護衛及び監視する事を条件に1年後、要人保護プログラムが解除される事となった。
MR社は、護衛用MSとしてウァッドの導入と新規に対暴徒鎮圧用MSであるフラットを発表した。
フラットは大地の月面開拓の鉱物資源採掘などで大きな貢献をしてくれていたが、本来は対暴徒鎮圧用、すなわちライオットモビルスーツに該当する。
フェイカーパッケージの盾にも使用されているフラットの装甲のハイパーバイブレーション機能は、装甲表層部に張り巡らされたマイクロマシンの振動粒子を共振させることにより高周波を発生させる機能で、本来の使用用途は暴徒に対して吐き気などを催させて無力化する音響兵器なのである。
また、フラットの装甲表面のマイクロマシンは機体表面のテクスチャーを変化させることができる、機体各所についているカメラから取り込んだ周囲の環境に合わせた光学迷彩機能を展開でき、篠ノ之一家への不安感を与えずに護衛が可能だと判断した。
無論、フラット発表に世界各国から購入したいと要請が来たがMR社はそれを拒否。
現状テスト段階の新型のためと言う理由と共に、生産コストが高すぎてまだ量産化のめどが立っていないと発表した。
結果、各国は量産のめどが立つのを待つしかなくなり、要請のほとんどが取り下げられた。
現在は月面基地でフラットを新規で2個小隊分生産を開始し、完成し次第ヨーツンヘイム級定期輸送便でアスピーテヘルメスユニット装備の場所まで運ばれる手はずになっている。
そして、3か月経とうとした時に日本で事件が起こる。
篠ノ之束の失踪である。
日本や各国は、467個のISコアと「このコア達が宇宙へ羽ばたく翼として使われる事を望む」のメッセージを残して失踪した篠ノ之束の行方を捜すために捜索が始まるが、以前見つけることができずにいた。
その失踪した本人はと言うと……
~アスピーテ・ヘルメスユニット装備、艦内~
「やっぱりすごーーーーい!!!」
ここ、アスピーテの艦内MSハンガーにてフラットの装甲板を見て目を輝かせていた。
「どうかな?∀の世界では実弾からビーム兵器まで幅広く防御して、近接戦闘でも無類の強さを誇ったその装甲は?」
「正直に言えば、バイブレーションの機能の究極系に位置するよね。装甲を触ってわかったけどキモイって言いたくなるほどマイクロマシンが敷き詰めてあるし、それでいて精巧に作られている。本当現代の技術じゃ考えられないよ!この機能を展開した状態でISが捕まったら数分でSEが削りきられちゃうよ……これほんとにライオットMSなの?」
「そうだよ~、唯一の弱点があるとすれば、その装甲を全身で使用できるようにしたため推進機関が搭載されていないんだ。だから無重力化だとサブフライトシステムのような外部推進に頼るしかないし、それに乗ってる間は乗って接地している部分のバイブレーションが使えないところかな?」
「確かにそのくらいのデメリットがないとおかしいよね~、でもこのハイパーバイブレーションの展開する場所を弄ったら大気中だったら飛行できない?」
「いい点に気づいたね束さん!∀劇中だとレット隊で運用されたフラットがハイパーバイブレーションを弄って大気圏内を飛行して、海面を割ってバイブレーションで押し出した波を相手にぶつけてたよ。」
「え!?そうなの!?このフラットもしかして空中戦以外の地上戦闘じゃ現状IS以外の兵器に無敵じゃない?」
「あぁ……確かに言われてみればそうかも。」
「これ、下手にハイパーバイブレーション機能搭載機は販売しない方がいいよ!絶対!」
「ま、まぁいずれデチューン版を警察などの機関には売ろうかなとは考えてたんだけどね。」
「搭載するにしてもハイパーバイブレーションの機能を大幅に落とさないといけないよ!」
<大地!私も賛成だよ!色々見てきたけどまだフラットクラスの技術でも今の人類には早いよ!>
ー肯定、御大将閣下殿の宇宙進出への夢を加速させたいのもわかりますが、もう少し人類の成長を待つべきと具申。ー
3人から言われてしまい、ちょっと小さくなる大地。
「わかったよ。デチューン版の構想はあとでみんなで考えよう……ってもうこんな時間だ。束さん、地球に戻ろう。」
「あれ?なんかあったっけ?」
「今日この後千冬さんが初出社でMR社の日本支部に来るんだよ。忘れてた?」
「……あ、あーーーーーー!そうだったーーーー!!今すぐちーちゃんのところ行こうだー君!」
叫ぶや否や束は無重力に適応したのか慣れた手つきで新たに束が作ったIS用外付けバリュートのところへ急いだ。
それを見ていた大地はやれやれとぼやきながら後を追った。
束がMR社に合流した後、束は身を隠すためにアスピーテに設けられた束専用の研究室に身を置いていた。
まさか人参型ロケットでアスピーテまで直で逃げてくるとは思わなかったよ。
その際、束が勝手にアスピーテ内のデータをハッキングで情報を手に入れて、月面基地のおおよその現状や、IS用装備がいくつかあることを知られてしまう。
それを問い詰められた大地は、ルナがターンXのISコアであることを白状した。
現在は束と二人で、ISを纏い大気圏突入をしていた。
束はバリュートを使用して、大地はいつも通りビームバリアの集中展開で突入中に束からコアネットワークで通信が入る。
「にしても、ルナちゃんがISコアの人格だなんて思わなかったよ!今度そのIS版ターンXであるルナちゃんを解析させてもらってもいいかな?」
「ん~~、実際ISサイズになったターンXで実際機能も全て搭載しているから正直解析させたくないかな。ルナが了承すればいいよ。」
「そうなの!?十分オーパーツじゃん……ルナちゃん!解析していい?」
<えぇ~、正直嫌だな~解析される感覚好きじゃないし……>
「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」
<いや!装甲の技術だけなら後で装甲の予備渡すからそれで許して!>
「むむむ……ならそれで手を打つよ……あ!ギャルセゾンが見えてきた!」
大気圏内に入るとあらかじめ迎えとして呼んでいたギャルセゾンが待機しており、大地と束はギャルセゾンで日本のMR社へ向かって行った。
〜数時間後〜
「改めて、今日から世話になる織斑千冬です。よろしくお願いします。」
MR社の社長室で千冬が大地に対してペコリとお辞儀していた。
「そんなに畏まらなくてもいいよ。こちらそよろしくお願いします。」
と大地も軽くお辞儀をする。
すると社長室奥の扉がバンと思い立って開いたと思うと一つの人影が千冬へ向かって飛んでいった。
「ちぃーーーーーーちゃーーーーん!グエッ!?」
飛びかかった人影である束は千冬の回し蹴りをモロに喰らい、くの字に曲がった態勢で先程入ってきた開いたままの扉の方へ吹っ飛んでいき、奥の部屋でドンガラガシャンと音を立てていた。
「……まったく束、久々に会えて嬉しいのはわかるが場所を……あ!!すまん大地、これは…」
条件反射でやってしまった事を理解した千冬は、ぽかんと口を開けて見ていた大地を見て顔を青ざめさせていた。
「……ぷっ!あははははは!やっぱり君達は仲良しだね!問題ないよ!」
その表情を見た大地は腹を抱えて笑い、ルナもホログラムで現れて社長室の机の上で笑い転げていた。
「もう、酷いじゃないかちーちゃん!束さんじゃなかったら大怪我だったよ!せっかく数カ月ぶりに会えたっていうのに!罰として一分間のハグの刑だよ!」
奥の部屋から木片や埃のついた髪をはらいながら束が現れ、あらためて千冬とハグをしていた。
「すまなかった」と言って束をハグしかえす千冬を大地は(これ、俺普通にお邪魔じゃね?)と思いながら静かに奥の部屋へ行き、片付けを行うのであった。
<(大地も混ざればいいのに)>
「(流石にあれは無理だよ……)」
<(ヘタレ〜、ここで男らしさを見せたら大地の事二人が気にし始めるかもしれないのに~)>
「(そんなこと……どうなんだろう……)」
<(ヘタレ大地~)>
「(うっさいわ!)」
こうしてMR社に新たに2人が加わったのであった。
~1か月後~
大地はMR社格納庫内の一角にある戦闘シミュレーターで∀を想定した戦闘シミュレーションを行っていた。
ターンXに残っていた∀とギンガナムの戦闘データを使い、何度も戦ったのだがギンガナムの戦闘センスを高さを実感して歯噛みしていた。
「もっと、実戦的な動きができないとギンガナムに押し負けちゃう……MSの実戦経験のある人が近くにいればいいんだけどな~」
<それは難しくない?>
ー肯定、現状MSの実戦経験があるのはギム・ギンガナムのみと推測。ー
「だよな~」
そう言いながらシミュレーターから出ると束と千冬が立っていた。
「どうしたんだい?」
「大地はいつもこんな訓練をしていたのか?」
「そうだよだー君!もう3時間も籠りっきりで訓練してたけど大丈夫なの?」
「問題ないよ、ナノマシン施術のおかげで日を追うごとに体力が増えて行ってるんだ。」
「それならいいけど、こっちからモニターしてる限り凄い戦闘機動してたけど、だー君的にまだ足りない感じ?」
「そうだね、ギム・ギンガナムの戦闘センスの凄さを実感しているよ。」
「私もISであんな動きができるかと聞かれれば少し厳しいかもしれないと思ってしまったぞ。」
「それでも少しなんだ……俺この機動できるようになったの最近なんだけどな……すごいね、ははは」
シミュレーター後の束と千冬の会話をしているとターンXから連絡が入る。
ー御大将閣下殿、MR社敷地内バイクが侵入。アポイントメントはありません。BOIDを向かわせます。ー
「わかった、俺が対応しよう。BOIDは周囲に待機させておいて。」
<大地は私が守るよ!>
「よろしくねルナ、束さんと千冬さんは事務所に戻っておいてくれる?もし来客だった時のためにお茶を用意しておいてくれると助かるよ。」
「わかった、お茶を用意しておこう。」
「前みたいに分量間違えないようにしないとだめだよちーちゃん?」
「うるさい、わかっている!」
「じゃぁ二人ともよろしくね。」
そう言って大地はルナの拡張領域からバイオスーツを取り出し着用、MR社の正面入口へ行った。
数分後一台の3輪バイクが入口の前に止まる。
そこから大きな人影が降りてこちらに向かってきた。
一見僧侶のような恰好をしているが、体は鍛え抜かれたものだと一目でわかるほど筋骨隆々で顔に特徴的な青いあざが見られる男だった。
その顔を見た瞬間、大地は冷や汗が出て瞼をぴくぴくさせていた。
「ま、まさかあの人って……!?」
<……大地、あれ拙いんじゃない?>
ー肯定、人災を検知ー
どうしようか考えている大地をよそに、その男は入口から入ってきてエントランスに立っている大地を見つけるとすたすたと歩いてきた。
大地の目の前まで来ると、見定めるように足元から順に顔まで視線を上げ、鼻をスンスンと鳴らすと
「MR社ってのはここかい?」
と気の抜けた感じで話してきて拍子抜けした。
大地は仕事モードで何とかするしかないと思い対応を始める。
「はい、ここがMR社です。私は社長の月乃大地と申します。」
深々と大地が一礼するも、男は視線は見定めるような状態で一切返事をしなかった。
何か間違えたかと、思案を始めると男から声をかけられる。
「イオンが匂うな……おめぇ、ナノマシンで姿偽ってんだろ?ちゃんと本当の姿見せてくれよぉ?それに多分だが、俺のこと知ってんだろう?」
男の一言で大地は無意識に息をのんでしまっていた。
もう隠すことはできないかなと判断し、大地はバイオスーツを脱いで元の姿を男にさらす。
「これでいかがですか?」
「なんだ、やっぱり偽ってたか……ってかガキンチョじゃねぇか!?」
「お恥ずかしながらまだ年は16です。でも、まさかあなたにお会いできるとは思いませんでしたよ?コレン・ナンダー軍曹?」
「やっぱり知っていたのか!そうよ!ディアナカウンター所属のコレン・ナンダー軍曹とは俺の事よ!」
大地の指摘に本人も肯定をして男の正体が発覚する。
コレン・ナンダー、∀劇中にて仕えていたディアナ・ソレルを暗殺しようとした兵士を殺害した罪により冷凍刑を言い渡さて、後の地球帰還作戦時に別派閥の陰謀で地球に送られ色々と暴れまわった男で、とある整備主任から『補給物資の火薬総量より危険な奴』と称されるほどである。
劇中での最終局面で∀を駆る主人公を守るためにターンXとの戦闘に割り込み、月光蝶の刃を浴びて上記と共に戦死したはずであった。
その男が目の前にいる事を改めて実感した大地は、内心冷や冷やしながらもどうしてここに来たかを確認することにした。
「それで、軍曹はどうしてこちらへ?」
「おう!よくぞ聞いてくれたぁ!お前んとこでな!MS作ってほしいんだよ!ウァッドがあるんだから他のもあるんだろ!?」
「実はウァッド以外はフラットくらいしかまだ作ってなくて……」
「なんだよぉ!まだねぇのかよ!戦力がなきゃ∀は止められねぇぞ!」
「……今なんと?」
「だから∀だよ!あいつが動き出したのがわかったからここに来たんだよ!」
その言葉を聞いて、大地は思案した。
(コレン・ナンダーはもしかして∀に誰が乗ってるのか知らないのか?と言うか止めるって言ってるってことは味方にできるかも?)
そう考えた大地はコレン・ナンダーの顔を真剣に見つめた。
「な、なんでぇい?」
「軍曹、折り入って頼みがある!∀を止めるために力を貸してほしい!」
大地はそのまま深々とお辞儀をする。
それを見てコレン・ナンダーは少し思案顔になった。
「……穏やかじゃなさそうだな、詳しく聞かせな!」
「ありがとう!とりあえずお茶でも飲みながら話しましょう。私の知っている∀の現在の状況も教えますので、どうぞこちらへ」
「おう!俺も∀の事は聞きたかったんだ!案内頼んだぜ!」
そう言ってコレンにバシンと大地の背中を叩かれた後、二人は応接室へ向かったのであった。
次回へ続く
お読みいただきありがとうございます。
登場させたいな〜と思うキャラ大体濃すぎて問題児ばっかり。