IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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18話ー決闘・前編ー

 ミューゼル達との会合後、時間は2カ月経過し決闘当日。

 大地は現在ラグランジュポイント1で停船中のアスピーテ級2番艦マウナケアの甲板上にターンXフェイカーパッケージに乗った状態で立っていた。

 現在は、少し前にターンXからの報告で静止衛星軌道に待機していたアスピーテヘルメスユニット装備が∀を搭載したギャルセゾンを射出したと聞き、到着を待っていた。

 大地の表情はとても鋭く、戦士の顔をしてピリピリとして地球を見つめていたが、後方からターンXの肩を赤いスモーが掴んできた。

 

「大地よぉ!そう緊張するな!俺らがしっかり見届けてやるから悔いの残らないように戦ってきな!」

「……コレンさん」

「それによぉ!お前にはルナちゃんとターンXがいるんだろう?」

<そうだよ大地!私たちは最後まで大地に手を貸すよ!>

ー肯定、いかなる結果になっても御大将閣下殿の手足となり最善を尽くしましょう。ー

「皆……ありがとう!」

 

 緊張していた大地はコレンやルナ達の声を聴いて落ち着きを見せていた。

 すると、マウナケアから高速飛翔体数2が接近中と報告が入る。

 

「2つ?ギンガナムはギャルセゾン単機で合流予定だし、ギャルセゾンから降りてるのか?ターンXわかるかい?」

ー索敵中……補足しました。IS反応2機接近中、反応照合……千冬専用機『白騎士』及び束専用機『群咲(むらさき)』と断定ー

「え!?」

ー120秒後接触予定ー

<これは予想外だね大地……>

「あぁ……まさかの展開だよ……地球で待っててと言ったんだけどな~」

「ガハハハハ!大地おめぇ好かれてんなぁ!」

「あははは」

 

 そして120秒後、大地の前には2機のISが静止していた。

 

「2人とも……」

「ごめんね、だー君……ちーちゃんと話し合ったんだけど、この戦い見届けさせてほしいの!」

「迷惑なのはわかっているが、私達も関係者のはずだ。見届けさせてほしい。」

 

 二人が頭を下げるのを見て、大地は溜息一つで返答する。

 

「わかったよ。でも、指示には従ってもらうよ?」

「「もちろん!」」

「とりあえず、マウナケアの艦内ブリッジで見ててね。艦内でも戦闘中ビーム兵器が飛んで来れば貫通する可能性があるからISは展開していて。あとはコレンさんの指示に従ってね!」

「わかったよ、だー君!」

「了解した。コレンさんお願いします。」

「おうよ!嬢ちゃん達は艦内で見学してな!大地、俺はブリッジ付近で防衛してるぜ!」

「お願いします!コレンさん」

 

 急遽観戦に来た二人がマウナケアの艦内に入るのを確認していると、マウナケアからギャルセゾン接近の連絡が入る。

 

(来たか)

 

 そう思いながら、マウナケアの正面付近へ移動してギャルセゾンが来る方角を見ていると、∀を乗せたギャルセゾンが見えてきた。

 ある程度近づくと、ギャルセゾンから∀が離れて大地の前に停止する。

 ∀の姿は、劇中と変わりなく装備は右手にビームライフル、左手にシールドを持っていた。

 

「エスコートに感謝する。お待たせしたかな?」

「いえ、然程待っておりません。久方ぶりの宇宙はどうですか?」

「うむ、懐かしい感覚でいい気分だ。それにしても、アスピーテ級が存在していたとは驚きだ。」

「えぇ、我がMR社の輸送から防衛網の構築まで幅広く役立っていますよ。」

「ふふふ、更にMR社が欲しくなった。貴公、小生に仕える気はないか?飲んでくれれば此度の決闘、加減してやらん事もない。」

「ははは!御冗談を……それでは男同士の決闘に泥を塗る行為ではありませんか!正々堂々、生き残った者が総取りしましょうよ!」

「ふふふふふ、はははははははは!それでこそ貴公だ!いや!月乃大地!さて、すぐにでも始めたいがこちらも見届け人を連れてきている。ギャルセゾン?だったかに搭乗させている。そちらのアスピーテ級に収容願えるかな?」

「えぇ、問題ありませんよ。コレンさん!お願いできますか?」

「おうよ!」

 

 大地の連絡で、コレンのレッドスモーがギャルセゾンを誘導し、格納庫内に収容された。

 その光景を見ながら、ギンガナムは大地へ問いかける。

 

「コレン……と言ったか?」

「えぇ、貴方と同じ用にこちらに来たようです。」

「また面倒な狂人も来ていたものだ。それをスモーに乗せる貴公も貴公だ……」

「ははは、貴方と戦うために協力を願っていたのですよ。」

「そうか……コレン、久しいな。」

 

 ギンガナムはギャルセゾンの収容作業が終わってこちらへ来たコレンに話しかける。

 

「久方ぶりだなぁ~ギンガナム!よくも俺を殺したなぁ~!ここで恨み果たしてぇが……大地が先約だ。今は、見届け人に徹するぜ!良かったなギンガナム~!」

「ははは!死にぞこないが!この決闘が終わり次第神の国への引導を渡してやろう!そこでおとなしく見ているのだな!」

「大きなお世話だ!大地!こんな御大将はコテンパンにしちまえ!」

「わかったよコレンさん!全力を尽くす!それではギンガナム殿、決闘場所はここから約100㎞程地球側で行いたい。着いてきていただけるかな?」

「いいだろう!」

 

 話が終わった大地とギンガナムは、決戦の場所へと移動を始めた。

 数分後、∀とターンXフェイカーパッケージはお互いに対面していた。

 すると、マウナケアにいる千冬から通信が入る。

 

「これより、月乃大地とギム・ギンガナムの決闘を開始する。立会人として、私織斑千冬と篠ノ之束、スコール・ミューゼルとオータムが厳重な監視の元、公正に行われるものとする。なお、コレン・ナンダーに関しては当艦の護衛としている物とし立会人に含まない。双方異論はあるか?」

 

 通信を聞いて、大地とギンガナムはマウナケアの方を向いて返答する。

 

「こちら月乃大地、異論はない!」

「こちらギム・ギンガナム、小生も異論はない!」

 

 二人の返答を聞き、千冬は更に口上を述べる。

 

「では、ここに月乃大地とギム・ギンガナムの決闘を開始する!」

 

 千冬の掛け声で決闘が始まった。

 

「それでは、前口上と行こうか!ギンガナム家当主!ギム・ギンガナム!」

「MR社代表!月乃大地!」

「「推して参る!!」」

 

 二人の掛け声が重なると、2機は円を描くように一定の距離を維持しつつ回り始めた。

 そこからは、激しいビーム兵器同士の応酬が始まる。

 互いに冷酷無比な射撃を繰り広げ、互いのIフィールドが飛来するビームを弾いていた。

 数分の応酬が繰り広げられた後、大地は先程から射撃を続けていたウォドム砲の他に左手に装備したロングレンジビームライフルを構えて射撃、手数を増やし始めた。

 

「(やはり、コレンさんが言ったとおりだ!当たるには当たるがIフィールドの消耗が激しい場所には全然当たらない!こうなったら手数を増やして削る!)」 

<(大地!落ち着いて撃てば大丈夫だよ!射撃精度誤差修正!)> 

「(ありがとうルナ!)」

 

 ルナの協力により、射撃精度がさらに向上したターンXであるが、ターンX自体は現在∀にバレないように最低限の補助以外の機能をカットし対話ができない状態になっていた。

 大地側の手数が増えて数秒後∀側の動きが変わる。

 先程まで胴体をシールドで隠していた∀が胴体部を晒し、大の字になったのである。

 その光景を見て大地は一瞬で∀が何をするかを察し、左腕に装備されているフラットのシールドを前面に展開し、ハイパーバイブレーションを起動させた。

 数秒後、ビームの雨を大地は浴びることになった。

 それは、∀胴体のマルチパーパスサイロに装備されていた特殊な腰部ビームキャノンで、弾速は普通のビーム兵器より遅いのだが厄介な特徴があった。

 ビーム弾着後、フラットシールドが大きく爆発し爆炎の中からはかろうじて形は保っているもののほぼ半壊した状態のフラットシールドが姿を現した。

 

「っち!やはり貫通してきたか!ハイパーバイブレーションも気休めにしかならなかった!」

「ふははは!大地よ!これをどう対応するのかな?」

 

 大地はこれ以上はまずいと思い、更に追撃で飛んできたビームの雨をスラスターを吹かして範囲外へ回避した。

 この∀の腰部ビームキャノンの特徴で、Iフィールドを貫通してダメージを与えるという物である。

 大地は、対策としてハイパーバイブレーションが使えるのではないかと考え使用したが想像以上の威力を発揮されていて内心焦っていた。

 その後、ビームライフルとビームキャノンの射撃に対して回避に専念しつつビームキャノンの雨をなるべくウォドム砲で消し飛ばすことにより対応できるようになっていた。

 やっと大地に余裕ができて、反撃をし始めた瞬間を見計らい、ギンガナムは一気に距離を縮めて近接戦を仕掛けてきた。

 

「ふふふ!1年程度の付け焼刃の腕で数百年もの間月面を守護していた小生に通じると思っているのかぁぁぁぁ!?」

「チィ!!」

 

 ギンガナムは接近しつつビームライフルを投げつけ、大地がそれを躱すうちに右手で引き抜いたビームサーベルで切りかかる。

 それに対して大地は、ウォドム砲のビームをサーベル状にIフィールドで固定した極太即興ビームサーベルで切り結ぶ。

 鍔迫り合いをしつつ大地は左手に持ったロングレンジビームライフルを∀に向けようとするが、長砲身のライフル故に簡単に∀の左手シールドで遮られてしまう。

 何とか距離を取ろうと∀を弾き飛ばそうとするが、ギンガナムの方が上手で引きはがすことができずに切り結びが続く。

 

 

 そんなSF映画顔負けの光景をマウナケアのブリッジで見ていた立会人達は、言葉を失っていた。

 そんな中、千冬がボソッと呟く。

 

「こ、これが戦闘用MS同士の戦い……なのか?」

「ちーちゃん、これがだー君が戦闘用MSを世に出したくない理由なんだね。」

「スコール……これは映画じゃないのか?」

「現実よ、オータム。ギンガナムの∀のデータ上ではある程度知ってたけど、実際に戦闘するとここまで恐ろしいものだとは思わなかったわ……ミスターが戦闘用MSの開発をしなかった理由がわかるわ。これは世界の戦争体系をひっくり返してしまうわ。」

 

 4人の発言に対して、ブリッジ部の外装を触って接触回線を繋いでいたコレンが返答する。

 

「嬢ちゃん達、よく見ておきな。これが俺やギンガナムが元居た世界で発展し過ぎた人類の文明を滅ぼした究極のMS達の戦いだ!すげぇと思うのは当然だぜ、あの2機は元居た世界でも並ぶ性能の機体が居ないやつらなんだからよ!」

 

 その言葉を聞いて、4人は唖然とし食い入るようにマウナケアが望遠表示しているディスプレイを見ていた。

 

 

「貴公!やはり実戦経験が少ないな!」

「それがどうした!こっちはできる限りの事はしたんだ!後はギンガナム!お前にぶつけるだけだ!」

「それでこそ!倒し甲斐があるというものだ!」

 

 大地とギンガナムは、先程と変わらずに近接戦を繰り広げていたがターンXの方で異変が起き始めた。

 

<(大地!ウォドム砲サーベル形成がもう限界!)>

「チィ!このタイミングでか!」

「なんだぁ?サーベルが限界かぁ?」

 

 ギンガナムも気づいたようで、大地の頬に汗が伝う。

 先ほどから右腕部のウォドム砲ビームサーベルが徐々に細くなり始め、外付けジェネレーターから紫電が現れていた。

 それはそうだろう、本来は対艦メガ粒子砲として使われていたウォドムの主砲をIフィールドで無理やりサーベル状に形成していたのだ。

 ウォドムの外付けジェネレーターを使っても、ビームとIフィールドの維持には常にジェネレーター出力を最大にしないと出来ないことだったので戦闘による長い形成時間についにジェネレーターが耐えきれなくなっていた。

 徐々に、ビームサーベルのぶつかり合いに押し負け始めた大地は一か八かでターンXの一部機能を解禁した。

 

「こうなったら、これは避けれるかな!?」

「なにぃ!?」

 

 ギンガナムは大地の行った行動に驚愕を隠せなかった。

 大地は蹴り技を仕掛ける動作をして、それを躱そうとしたギンガナムに足先を向けターンXの脚部ビーム発射部からビームを撃ちだした。

 それに対応できず、∀にビームが直撃。

 Iフィールドバリアである程度は弾いたものの、一部が貫通したようで機体の装甲表面の所々が焦げたり、わずかに穴が開いて煙が出ていた。

 流石にまずいと思ったギンガナムは、明後日の方向に距離を取り始めた。

 それに対して、大地は左腕が自由になったことでロングレンジビームライフルを射撃しようとするがギンガナムはこちらに機体正面を向けて腰部ビームキャノンの雨を降らせる。

 それを回避しようとした大地に不運が訪れる。

 

バチバチバチ!ドゴーーーーーン!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 右腕部のウォドムジェネレーターが爆発したのである。

 その爆発と煙により、大地の視界がほぼ無い状態になる。

 

<(大地!避けて!)>

「くっそ!何も見えない!」

 

 ルナの助言で、回避行動を取ろうとするとビーム以外にも敵機接近の警報音が鳴り響く。

 回避優先と考えた大地は、煙から飛び出したが既に読まれていたのか目の前に∀がビームサーベルを抜き張った状態で目の前に迫っていた。

 振り下ろされるビームサーベルに対して、大地は半壊状態だったが手放していなかったフラットシールドをサーベルと機体の間に滑り込ませ、ハイパーバイブレーションを起動させた。

 すると、ビームサーベルのビームが数秒ハイパーバイブレーションにより相殺されたが出力勝負で負けてしまい盾も切り裂かれてしまい、その後∀に蹴り飛ばされてしまう。

 数秒吹き飛んだ大地は、なんとか態勢を立て直し、先程受けた衝撃で軽い脳震盪を起こしてしまったのかグルグル回る視界の中、∀を見て表情が凍る。 

 

「これで終いだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 とギンガナムの叫びと共に、回避不能な程の近距離で腰部ビームキャノンの雨を大地はもろに喰らってしまう。

 Iフィールドを貫通し、装甲に吸着していくビームの雨は数舜の間をおいて大爆発した。

 それを見たギンガナムは、爆発した方を見続けていた。

 

「まさか、これで終わりなわけあるまい?」

 

 ギンガナムの言葉に、返答はなかったが爆炎が晴れるにしたがってターンXフェイカーパッケージの姿が露わになる。

 

「ほう?先ほどの足からのビーム、ビームキャノン弾着寸前に背部ユニットを切り離して盾にする行為でもしやと思ったが、これは意外も意外で驚いたぞ。まさか貴公はその機体と来ていたのか?」

 

 ギンガナムは大地の乗るフェイカーパッケージの真の姿を見て感嘆の声を上げていた。

 爆炎の中から現れたのは、装甲を覆っていた灰色のナノスキン包帯と背部の大型スラスターベーンユニットがなくなっており、本来の若干緑がかった独特なディテールのある装甲が露わになっていた。

 そう、フェイカーパッケージではなく本来のターンXの姿になっていたのだ。

 

「本当は、見せたくなかったけど仕方がないね。ここからは第2ラウンドだ!」

 

 大地は∀を見つめながら叫んだ。

 だが、ここで大地とギンガナムにとって想定外の出来事が起こる。

 

ウィーン・ウィーン・ウィーン

シャーン・シャーン・シャーン

 

 両機のコックピット内に警報音と鈴の音が鳴り響く。

 

「この音は!」

「ふふふふふ!はははははは!やはり兄弟だったな!ついにリミッターが外れた!本来の力が顕現するぞ!」

「……や、やめるんだ!」

 

 高揚したギンガナムに対して、大地は焦燥に駆られた表情になる。

 すると∀の背部に隠されていたハッチが開き始めるのをターンXが検知した。

 

「やめろ!それを呼び出すんじゃない!」

「この時をどれほど待ちわびたか!謎のリミッターがかかっていて今まで使用することができなかったが!兄弟である元愛機!ターンXとの接触がカギになるとはな!貴殿にも見せてやろう!この∀の本当の姿を!ここからが本当の第2ラウンドだぁ!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 

 

 大地は悲痛な表情で叫ぶが、もう止めることはできなかった。

 そして、この世界に終焉を呼ぶ月の蝶が羽化した。

 

「月・光・蝶!である!」

 

 

次回へ続く

 




 お読みいただきありがとうございます。

 最近、自分で焙煎したりエスプレッソマシン買うほど珈琲好きなのに珈琲の描写を全く入れてないことに気づきました。
 いずれ日常回などで、オタクムーブカマスが大地をルナ達に煽ってもらいたいところですな……

 前話につきまして、誤字のご指摘ありがとうございます。
 投稿前に一度読み返しておりますが、やはり誤字が絶えません。
 今後も誤字があると思われます。
 自分で気づけば修正致しますが、ある程度時間が経っても修正されない場合気づいてない可能性が高いので気になる方はお手数でございますが、ご指摘の程よろしくお願いします。
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