IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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19話ー決闘・後編ー

 

「月・光・蝶!である!」

 

 その言葉の後、∀の周囲に虹色に光を反射するナノマシンが散布され始める。

 そして大地はターンXに迫り始める月光蝶から距離を取りつつマウナケアに通信を入れる。

 

「マウナケア!即時月面基地へ後退!艦載ウォドム隊及びマヒロー隊緊急発進!月光蝶が接近したらビームで薙ぎ払え!後、広域通信で哨戒任務中の3番艦キラウエアと4番艦エトナに打電!至急この宙域に展開!月光蝶に対しての防衛ラインを構築!コレンさん!後は頼みます!各機!以降はコレンさんの指揮下に入れ!」

「おうよ!嬢ちゃん達に傷一つ着けさせねぇぜ!各機!ビーム射撃タイプを拡散にしな!月光蝶は面で来るぞ!宇宙空間なら弾きさえすれば問題ねぇ!」

「ウォドム隊承った!」

「マヒロー隊ラージャ!」

「マウナケアより報告、キラウエア到着まで2700秒。エトナ到着まで3480秒。」

 

 大地の指示でマウナケアの方は動き始めたが、千冬達から通信が入る。

 

「大地!大丈夫なのか?!」

「だー君!」

「大丈夫だよ!後はコレンさんの指示で月へ避難して!何かあったらISでミューゼルさんとオータムさんを守ってあげて!」

「大地はどうなるのだ!?」

「俺は∀とギンガナムを止める!この命に代えてもね!」

「だー君!死んじゃヤダよ!」

「このままだとギンガナムによって戦乱の世が来てしまう!人が安心して眠れるために、これを止める!」

「だー君!」

 

 束の返答には答えずに、大地は通信を完全に切りターンXの出力を上げつつ∀の周りを飛行し始めた。

 そして誰にも言っていなかったがターンX自体に問題が発生していた。

 

「くそ!ターンX!ルナ!止めれないのか!?」

<む、無理!こんなに共鳴が強いなんて!>

ー肯定、system-∀99との共鳴反応限界値を突破、月光蝶システム強制起動、起動シーケンス止まりません。ー

 

 ターンXと∀の共鳴が起こっており、ターンX側の月光蝶システムが強制的に起動しようとしていた。

 必死にシステムを止める手立てを探そうとするも、∀はそれを許さなかった。

 放出したナノマシンを背面で蝶の羽のような形に形成しなおした∀が先ほどとは比べ物にならない程の高速で接近してビームサーベルを振り下ろしてきた。

 咄嗟に、溶断破砕マニュピレーターをビームサーベルモードで展開し、∀と切り結ぶ。

 

「ギンガナム!月光蝶を止めろ!」

「ふははは!やはりこの全能感!堪らんな!こんな素晴らしいシステムを止めるわけねぇだろぉ!!」

「闘争本能に飲まれやがって!」

「それがどうしたというのだ?私は人間なんだぞ!」

「人間であるからこそ!争いが不要だとなぜわからん!∀はロランによって平和利用が可能だと証明されたではないか!人間同士、時間はかかっても話し合い手を取り合えば争わずしてもよい方向へ行けるはずだ!」

「はん!貴様のような甘ったれた思想で人類がより良い進化なんて遂げるわきゃねぇだろ!闘争あってこその人類史なのだ!黒歴史時代の人々はその事をよく理解していた!そして究極系である∀を作り上げたんだよぉ!貴様のターンXを見つけてしまったことによってなぁ!さぁ貴様も蝶になれ!」

「黒歴史を知った風に言う!」

 

 そこで一旦鍔迫り合い状態は解除されて向き合うが、ついにターンXの限界が訪れる。

 

ー御大将閣下殿!月光蝶システム起動シーケンス完了。ー

「クソ!ターンX!せめて散布ナノマシンの設定変更!広域フィールドを生成させて∀のナノマシン散布を妨害するんだ!」

ー肯定、システム設定変更完了。月光蝶システム起動。ー

 

 まるで苦しむような動作をしつつ、ターンXの背部装甲から虹色に光を反射するナノマシンの散布が始まる。

 そしてそのナノマシンは、薄く広く散布されてターンXと∀を囲む空間を形成するかのようにボール状の形になり、余剰分のナノマシンは背部に蝶のような羽状に束ねられ形成された。

 

「ほう?考えるではないか!」

「これでここは俺とギンガナム、二人だけの空間だ!」

「これはしっかりと礼をせねばならんなぁ!」

 

 ギンガナムは、∀の手に持ったビームサーベルの切っ先をこちらに向けてくる。

 すると先ほどまでピンク色だったビームサーベルの刀身が虹色に発光し始める。

 それを見た大地は、ついに機体の本来の性能が出始めたかと思っていた。

 

「これで貴様を神の国へ誘ってやろう!このギンガナムと戦って死ぬのだ。いい冥途の土産となるだろう!」

「ははは!口ばかり達者のようだなギンガナム!」

 

 そう言いながら大地は溶断破砕マニュピレーターのサーベルで切りかかる。

 それに合わせて∀も切り結ぼうとしたが、大地はサーベル同士が触れ合う寸前に身体を捻り返してサーベルを避けて∀の胴体へタックルをし、∀を弾き飛ばした。

 

「なぜ切り結ばなかった?」

「その刀身に嫌な予感がしたのでね!」

「ほう?なら攻めないわけには行かないなぁ!」

「……っちぃ!」

 

 そこからは互いに背部に展開した月光蝶の追加推力による高速戦闘が繰り広げられた。

 ∀の本来の性能の一つにI・Fメガビームサーベルと言うものがある。これはIフィールドと月光蝶によるナノマシン制御の技術応用でIフィールドをも容易に切り裂く出力のビームサーベルになる。

 なお、ライフルも同じI・Fメガビームを使用することができる。

 そして大地もターンXのビーム兵器に自身のナノマシンを纏わせて、I・Fメガビームサーベルと切り結んでいた。

 

 何分経っただろうか、ターンタイプ2機による戦闘は苛烈だった。

 互いに装甲を切り裂くも、高濃度とも言える程のナノマシンが散布されているフィールド内のため互いに切られるそばから修復が始まっていた。

 

「クソ!劇中ではこんなに修復速度は速くなかったぞ!」

「凄いよこの∀!傷ついたそばから治っていくこの修復速度!永遠に戦えるではないか!……ほう?これは……」

 

 ギンガナムの不審な言葉に大地の眉が吊り上がる。

 ここで戦闘支援を行っていたルナから声をかけられる。

 

<大地!∀付近の空間湾曲率が上昇!これって!>

「空間湾曲……?……!?まさか!」

ー御大将閣下殿、system-∀99の出力更に上昇、来ます。ー

 

 再度切り結ぼうとした大地が見たのは、瞬きをする程の時間で目の前から∀が消えた光景だった。

 即座に拙いと判断した大地は、ターンXの四肢を分離し広域に広げた。

 すると先程まで大地がいた場所の背後からビームサーベルが振り下ろされていた。

 

「その機能まで解放されたか……」

 

 大地のその言葉に、ギンガナムは高らかに笑っていた。

 

「ふはははははははははは!これがテレポートと言うものか!素晴らしいな!それに貴様もターンXを使いこなしているようだが?これは対応できるかな!?」

 

 分離した四肢をもとに戻しながら、大地はさらにテレポートでいつ何処から切りかかってくるか分からない∀に焦りつつ、四肢の分離と各所のビーム発射器による射撃や近接攻撃で対応していた。

 

「予想以上に強い!これでは押し負ける!」

「どうした兄弟!やはり∀には勝てないかぁ!?」

「クソ…!まだまだ!……?」

 

 言葉と機体の応酬の中、大地はあることに気づいた。

 

(オールレンジ攻撃の左手ユニットにだけ接近してもそこまで脅威に見てない?)

 

 そう、∀はターンXのオールレンジ攻撃時に他のユニットが接近した際にビーム発射器によるサーベル攻撃があるのを知っていて、距離を取ったりサーベルで破壊しようとしてくるが、左手ユニットが接近してもそこまで破壊しようとしてこないのだ。

 そこで、大地は戦いに集中し過ぎて左手の装甲内にビームサーベルを仕込ませていた事を思い出した。

 

(これなら……いける!ターンX!左手ビームライフルに供給しているエネルギーカット!固定ビームサーベルにエネルギー充填開始!一撃で決める!)

ー肯定、ロングレンジビームライフルへのエネルギー供給を停止、左腕固定ビームサーベルへのエネルギー充填を開始。大地様ならできます。ー

 

 大地はオールレンジ攻撃を止めて、元のMS状態になり∀と対等した。

 

「ギンガナム!次で決める!」

「ほう?武人らしくてよいな!なら、小生も次で決めるとしよう!」

 

 そしてギンガナムは両手に持っていたビームサーベルを一つにまとめて、∀の全高以上の伸びた巨大な刀身にして構える。

 それに対して大地は、右腕の溶断破砕マニュピレーターの装甲を展開し、バチバチと紫電を展開して構えた。

 数瞬の沈黙後、両者は示し合わせたかのように同時に動く。

 

「「勝負!!」」

 

 2機の距離が縮まり、先に動いたのは∀の方だった。

 自機の全高以上に伸びたメガビームサーベルをターンXのコックピットである頭部へ振り下ろす。

 それを紙一重で頭部に当たらないように躱すがビームサーベルは右肩に食い込み、右腕部と胴体の連結部を切り裂く。

 切り裂かれながらもターンXは前進し、左手のビームライフルを投げ捨て拳を作り、∀コックピットめがけて殴りかかる。

 

「はん!拳程度で∀の装甲は砕けんぞ!」

「甘い!!」

「なにぃ!?」

 

 ターンXの拳と大地のセリフにギンガナムは驚愕の顔となる。

 迫る拳より少ししたの手首装甲内に、ギンガナムが搭乗していた時にはなかった装備がつけられていたのだ。

 動こうとするも、時すでに遅し、先程から充填され続けたビームサーベルのエネルギーが一気に解放される。

 手首から放出されたビームは∀のビームバリアと月光蝶のナノマシンバリアを貫通するまでにしか至らなかったが、質量を持ったターンXの拳が∀のコックピット部に突き刺さる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「オノーーーーレーーーーー!!!」

 

 ターンXの渾身の一撃により、∀コックピットのガラス部を押し潰したが右腕部の破損による軌道のズレか、ギンガナムの下半身のみ押し潰した状態になっていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

「ぐぅ……!ごぼぉ!……はぁ……はぁ……」

 

 大地は∀から左腕を引き抜き距離をおいた。

 

「もう終わりだ。ギンガナム……医療ポットの手配をする。大人しく投降しろ。」

「はぁ……はぁ……ふ、ふふふ!小生……は!ま、まだ……負けていない……ぞ!」

「そんな事言ってる場合か!その状態だと長くないぞ!」

「……小生…は!武人なのだ!……はぁ……はぁ……こんな、情けで……救われるなど…ぐぅ……恥でしか……ないわ!」

 

 ギンガナムの発現後、∀がグググと鈍く動き始める。

 そして∀が右手を大地の方へ向けると、∀の周囲と背部にある月光蝶システムのナノマシン達が右腕に集約し始めた。

 

「貴様が……小生との…戦い……武人としての……教示を…汚したのだ!……ただで死んで……やる気はない!……報いは受けてもらう!」

「まさか……!?ギンガナム!貴様ぁ!」

 

 そこで、大地はギンガナムが何をしようとしているのかに気づいた。

 ギンガナムは∀のナノマシンを右腕に集約させ、ビームのように放つつもりなのだと。

 接近して撃つ前にとどめを刺そうにも、収束するナノマシンの奔流で近づくことがかなわない状況だった。

 躱せば問題ないのだろうが、一番の問題は現在の射線である。

 

「ターンX!射線上にいるマウナケアに当たる可能性は!?」

ー肯定、94%の確率でマウナケア直撃コースです。射程は不明ですが恐らく簡単に届くでしょう。ー

「クソ!ルナ!通信回線を開いてマウナケアに繋いで!ターンXは出力を防御に全部振り分けて!」

<わかった!>

ー肯定、全出力をビームバリアへー

<大地!繋がったよ!>

「コレンさん!マウナケアの即時シールド最大出力展開!ターンXと軸線を合わせて!束!千冬!スコールとオータムを抱えてシールド最大出力展開!」

「おうよ!任せな!!」

「大地!」「だー君!」

「ミスター!」

「必ず守り抜く!」

 

 そう言って大地はマウナケアを守るようにターンXの位置を調整して大の字になる。

 そのタイミングでターンXから報告が上がる。

 

ー威力計算終了、大地様!当機の出力でも防御不能!右腕切断による損傷により防御可能出力まで上がりません!ー

「なんだと!?………こうなったら!ルナ!」

<わかったよ大地!>

ー大地様!お止めください!ー

 

 ターンXの静止を振り切り、大地はルナを纏ってターンXから飛び出す。

 そしてターンXに立ちはだかり、ルナの背部キャラパスを前面に展開した。

 

ー大地様!当機の後ろへ!危険です!ー

「ターンX!皆を守れ!」

ーですが!ー

「命令!」

ー肯定、system-∀99へのナノマシン収約率上昇停止!射撃、来ます!ー

「ルナ!頼むぞ!」

<わかった!>

 

 大地達の会話後、大地と纏うルナ、ターンXは虹色の光に飲まれた。

 一瞬で大地の目の前に展開したキャラパスは灰燼に帰し、その奔流は大地とルナへ襲い掛かる。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

<こ、これは……!拙い……かも……!>

 

 ルナの最大出力で展開されているビームバリアがなんとか防ぎきっているものの、ナノマシンに触れている部分からどんどんとエネルギーがナノマシンにより食い散らかされ、ルナのエネルギーが瞬く間に減っていく。

 何とか耐えようとするも、一部のバリアがナノマシンにより食い破られてナノマシンの奔流がルナの胸部装甲を貫いた。

 

ー大地様!ー

「まだ……!大丈夫!ルナ!ごめんもう少し耐えれる?」

<うん!搭乗者量子化機能はまだ健在!でも長くはもたないよ!>

 

 大地の纏うルナは、ターンXのオールレンジ攻撃を可能とするために、頭部以外の大地の身体を量子変換しているおかげで、基本ルナの装甲が破壊されても頭部以外の身体への損傷がほぼ無いのである。

 だが、便利そうに見える機能にも弱点はある。

 それは簡単なことで、ルナのSEが尽きれば簡単に解除されてしまうのだ。

 ルナを貫通してなおマウナケアに向かい続けるナノマシンの奔流をターンXが防ぎつつ大地へ叫ぶ。

 

ー大地様!早くお逃げください!その状態では長くありません!ー

「大丈夫だよターンX!手がないわけじゃない!ルナ!」

<うん!最後まで着いていくよ!>

 

 大地の言葉の後、大地の纏うルナの溶断破砕マニュピレーターに虹色の光が集まる。

 それは∀と同じ様に自機のナノマシンを集約させていた。

 

「ターンX、君は俺が焦がれに焦がれた大好きな機体なんだ。」

ー大地様ー

「俺がもし、ルナと消えたら……人類を見守ってくれ……ホワイトドールのように。」

ー肯定、ご命令のままに……我が最高の乗り手様ー

「ありがとう!行くよルナ!」

<うん!>

 

 ターンXとの会話後、ルナの右腕に集約しきったナノマシンを大地は解放した。

 解放したナノマシンの奔流は迫りくる∀のナノマシンを相殺する事は叶わなかったが拡散させる事に成功、ナノマシンは宇宙の彼方へ拡散しマウナケアへの直撃は免れた。

 だが、軌道を反らす事が出来なかったナノマシンの奔流の一部が、ルナの頭部とマウナケアを防衛していたマヒロー1機に直撃した。

 マヒローは拡散ビームで防衛するも出力の圧倒的な差により、数秒も保たずにナノマシンに喰い尽くされ灰燼となる。

 そして、ルナの頭部へ直撃したナノマシンの奔流はルナのシールドとバリアが防ぐも右腕に回したエネルギーと、胸部を貫通し侵食を続けるナノマシン達によりSEが枯渇し、ついに左目付近の頭部装甲を貫いた。

 

「………!?ぐぅ………!!」

<大地!!>

「まだ……だぁ……!!」

<侵食でSEが!ダメ!ダメェェェェェ!!!>

「がぁぁぁぁぁぁ!!!」

ー大地様!!ー

 

 頭部を貫通したナノマシンが決定打となり、ルナのSEが完全に枯渇。

 機体の保持はできていたが大地の量子変換機能がオフラインになり、機体内に大地の身体が具現化し、大地の身体を頭部と胸部の両方から∀ナノマシンの侵食を受け始める。

 それと同時に∀からのナノマシンの奔流が収まった。

 

「ほう……ごほっ!よくぞ……耐えた……はぁ……満身…創痍……のようだが……男を…見せたな……」

「ギ、ギンガ…ギンガ……ナム!」

「勝負は……大地……貴公の……勝ちだ…はぁ……また……敗れる…とは…な……はぁ……」

 

 そう言い残し、大地の視界にわずかに映るモニターからギンガナムの生命反応消失の表記が出る。

 それを見届けると大地の意識は深淵へと沈んでいった。

 

次回へ続く

 




 お読みいただきありがとうございます。

 書けば書くほど、妄想が分岐して色んな結末が浮かんでしますね。
 もっと情報処理能力が欲しいです。

 沢山の方にご覧頂けて嬉しい限りです。
 本当にありがとうございます。
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