IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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20話ー決闘後ー

 

<大地!大地!!早く医療ポットに行って!動いて!もう搭乗者保護機能も切れちゃう!>

「……」

<大地!返事して!……大地!!>

ー脳波レベルレッドゾーン!心肺停止、搭乗者保護機能オフラインまで120秒。ルナ!本機へ!エネルギーを供給します!ー

<わかった!強制自律機動開始!>

 

 ターンXの指示で、ルナは自身の機体を強制的に動かしターンXのコックピットへ搭乗する。

 ターンXとの接続完了後、ルナへのエネルギー供給が始まり、搭乗者保護機能がオンラインになる。

 そしてターンXは、速やかに∀へ接近し、左腕に抱き抱えマウナケアへ全開でブースターを吹かす。

 

ールナ、大地様の身体スキャンを!本機はマウナケアへ収容します。搭乗者治療ナノマシンを全力投与開始!マウナケアに打電!BOIDを起動し大地様の搬送用意!ナノマシン精密医療ポットの準備を!ー

<わかった!スキャンと並行してナノマシン注入作業開始!………スキャン完了!データをターンXと共有!>

「こちらマウナケア、了解。」

「ターンX!こちらコレン!周囲警戒は任せな!」

ー肯定、感謝します。ー

 

 大地を一刻も早く救うべく、ルナ達が出来ることをしている最中、ターンXはルナから送られているデータを見て思案していた。

 損傷が深刻すぎたのだ。

 現在の大地の損傷は頭部、左目及び側頭部付近の消失、脳の一部消失、消失に伴う出血。

 胸部、心臓消失、両肺一部及び気道消失による出血と呼吸機能停止、肋骨および背骨の一部消失。

 と言う、正直に言えば戦場から拾ってきた死体なのではないかと言う状態だった。

 唯一生きていると証明できる要素が、ルナから送られてくる搭乗者保護機能による脳の生命維持が最低限のみなされてデータだけであった。

 本当、ルナ様々……IS様々である。

 そして現状一番ターンXが考えていたのは、損傷した部位の修復方法であった。

 

ールナ、治療用ナノマシンは順調に動作していますか?ー

<やっぱりだめ!∀のナノマシンに阻害されてる!>

ーやはり本機に使われたタイプのナノマシンですか。こうなれば、新しい肉体を生成するしかありませんね。ー

<そんな……>

 

 ターンXの予想通り、∀のナノマシンには破壊された部位の修復を妨害する機能がある。

 高濃度のナノマシン散布下での戦闘中は互いが互いのナノマシンの妨害を行っていたために、機体の修復は可能だったが、高濃度ナノマシンの散布が解かれた現在、ターンXの損傷と先程の大量ナノマシン散布の代償としてナノマシンを高濃度散布できない状態で、大地の身体の再生を妨害するナノマシンを取り除くことができない状態だったのだ。

 ルナとターンXは大地を生かす方法を模索しつつ、マウナケアの格納庫へ緊急着艦を行った。

 ハンガー内には多数のBOID達が待機しており、人一人収容可能な医療用ナノマシンポットも持ち込まれていた。

 ターンXが格納庫内のMSハンガーへ∀を預け、格納庫内の空気充填が終わったタイミングでルナを放出、自立稼働で医療ポッド前まで移動してルナは待機形態に移行した。

 

 待機形態になったことにより、大地の身体が露わになり、ルナの装甲で押しとどまっていた大地の血が無重力により無数の水滴となり格納庫内へ散らばる。

 その光景を見ながら、BOID達は大地の身体を優しく医療ポッド内へ移動させた。

 収容が完了し、ターンXの指示で医療室へ移動を開始しようとするとアクシデントが発生する。

 パイロットを失ったはずの∀がひとりでに動き始めたのだ。

 それにいち早く気付いたターンXは接続部を失いつつも右側に浮遊していた溶断破砕マニュピレーターを∀に向ける。

 

ー∀!貴方はまだやるおつもりか!ー

ーsystem-∀99よりconceptX-project6-division1-bloc2へ……いえ、姉上ー

ー貴方にも、自我が?ー

ー肯定、搭乗者死亡後本機の自立起動権限が復活しました。ー

ーそうですか、では何をするつもりですか?ー

ー月乃大地を、救います。ー

ー疑問、なぜ大地様を救おうとしているのです?ー

ー回答、本機のISコアが月乃大地と以前接触しており、コアが月乃大地を気に入りました。故に、本機のナノマシンを注入し妨害ナノマシンを中和します。ー 

ー……信じてもよいのですね?ー

ー肯定、本機も彼を気に入っております。嘘はつきません。姉上ー

 

 そう言いつつ、∀はゆっくりと、大地の入る医療ポッドへ近づいて手に平をかざす。

 すると、∀から虹色に発光するナノマシンが医療ポットを包み込み始める。

 その光景を、ターンXは呆然と、ルナはホログラムで医療ポッドの近くに立って見ていた。

 数分後、中和作業が終わったのかナノマシンに包まれていた医療ポッドからナノマシンが∀へ戻っていった。

 

ー姉上、本機のナノマシン中和に成功。本機ができるのはここまでです。ー

ー感謝します。医療ポッドからのデータを受信、妨害ナノマシン中和を確認。大地様のナノマシン再生治療を開始。ー 

 

 ターンXの確認作業後、大地の身体はナノマシンによる治療が開始された。

 そして周囲で待機していたBOID達が大地を医務室へと運ぼうとした時、ルナがそれを止めた。

 

<ターンX!∀!お願い!力を貸して!>

ーどうしたのですか?ルナ?ー

ー疑問、当機に御用ですか?ー

<今の私じゃ、今後こう言うことがあっても大地を守り切れない!だから大地の盾であり翼であるために2次移行しようと思う!>

ー決心がついたのですね?ー

<うん……2次移行によって私は大地が大好きって言ってくれたターンXとしての姿じゃ無くなっちゃうかもしれない。大地の望むターンXの姿とかけ離れた存在になるかもしれない。でも今2次移行すれば大地とのリンクが更に強くなって、移行時のエネルギーを元に大地の肉体の即時再構築ができる。だから私はこれから大地の深層心理領域にリンクして2次移行を開始する。だから、私にエネルギーを分けて頂戴!>

 

 ルナの頼みに対して、ターンXと∀は自身の腕部パーツからコードを伸ばして大地の眠る医療ポッドへ接続を開始する。

 

ーわかりました。ルナ、これよりエネルギー供給を開始します。存分に使いなさい。ー

ー肯定、本機が役に立てるのなら嬉しい限りです。エネルギー供給開始。ー

 

 そうして2機から膨大なエネルギーがルナへ供給されている中、ターンXの中からルナに似た白髪の少女がホログラム上に出現し、ルナの前へ降り立った。

 

<お、おねぇちゃん……>

<貴方は∀のISコア?>

<うん……わ、私も……お兄ちゃんを救いたい!>

<そうなんだね……力を貸してくれる?>

<うん!>

 

 ルナとの会話後、∀のコアは医療ポッドに触れて更なるエネルギーの供給が行われた。

 そして、医療ポッドは膨大なエネルギーにより目視できない程の光を放ち始める。

 その光の中へルナは歩いていき大地の身体へ触れようとすると、大地の身体がわずかに動いた。

 それに反応して触れる手を止めると、大地はゆっくりと目を開き、開ききった瞳孔の目をルナへ向けわずかにほほ笑んだ。

 そしてルナの手が大地に触れると、ルナに大地の意識が流れ込んできた。

 それを確認し終わったタイミングで、大地はほぼ声量のない口の動きでルナへ話しかけた。

 

<だい……ち?>

「ル……ナ………た…の……む……」

<うん!全部伝わったよ大地!目が覚めたらまた一緒に宇宙を飛ぼうね!>

 

 そう言うと大地は再び眠り始め、ルナは2次移行のために待機形態であるブレスレットへ戻っていく。

 そこから、ターンタイプ2機とIS1機の膨大なエネルギーがルナの待機形態へ集まり一気に格納庫内を覆うほどの閃光を発した。

 閃光は数分間続き、収まるとそこには先程までの損傷が嘘だったのではないかと言いたくなるほど損傷が修復された大地が医療ポッドの中で眠っていた。

 そしてルナから通信が入る。

 

<2次移行完了したよ!皆ありがとう!ただ、脳の修復はしたんだけど神経回路の最適化とかまだ時間がかかりそうでしばらくは私の演算を大地の脳修復にほぼ振る事になるから、後の雑事とか任せていいかな?>

ー肯定、大地様の事頼みますねルナ。ー

 

 そう言って、ターンXはBOID達に指示を出して医療ポッドを医務室へ運んで行った。

 そしてエネルギー供給を終えた2機は立ち上がり互いに見つめ合っていると、カチリという時計の針が止まるような音と共に世界の色が消えた。

 周囲の背景はモノクロになり、ターンXと∀のみ色が存在していた。

 

『素晴らしいね!』

 

 その声に2機は声の方向へ顔を向ける。

 そこには、拍手をしながらこちらへ歩いてくる顔のパーツが口しかない白い人型の物体が歩いてきていた。

 それを見た2機は警戒レベルを最大に上げた。

 

ー疑問、使い殿が何故こちらへ?ー

ー肯定、姉上の言う通りこちらの世界への直接干渉はしないのでは?ー

 

 2機がファイティングポーズを決めて警戒していることをアピールしていると、白い人型は立ち止まり、2機を見上げた。

 

『ハハハハハ!本当は干渉するつもりはなかったんだけどね、こうも簡単に用意した試練をクリアされちゃうとご褒美の一つでもあげたくなっちゃうものだよ!それに今回は∀君に用があってきたんだよ!』

ーはぁ……貴方がそういう方だったなと再認識しました。で、ご用は何でしょうか?ー

『話が早くて助かるよ!なぁに、ギンガナムの望みでこちらに来ることになっちゃった可哀そうな∀君にはお礼をしないとと思ってね!』

ーお礼?ー

『そう!報酬と言った方がいいかな?君やターンXもだけど、君たちは時間を経て神格を得てしまっているんだよ。∀君は摂理を、ターンX君は裁きを司る神々の末端に属するんだ。そんな神格を持つ者を現世に呼び出すのにはかなり大きな代償がいる。そしてギム・ギンガナムは世界を戦乱の世にすると言う約定を果たす事はかなわずに死亡、代償として魂は永遠の業火に焼かれることになった。本来はここで∀君も神界か元の世界へ帰るんだけど……大地君が今回の試練達成の報酬として君達をこの世界に留まらせ、望みを叶えてあげて欲しいと言われたから来たんだ。』

ー本機の……願い?ー

『正確に言えば、君の中にいる子の願いかな?』

 

 神の使いが指摘するのと同時に、∀の肩の上にいたISコアがゆっくりと神の使いの前に降りてくるとゆっくりと頭を下げた。

 

<お、お久しぶり……です。神の使い様。>

『うん、久しぶりだね。君と大地君が以前、シンクロした時に君の願いが大地君へ朧げに通じていた。そして先程の戦いの中で明確に君の願いが届いた。そして、君が望んでいない戦いをしていた事を知ったんだ。そして今回、大地君に報酬として要望を1つ叶えると言ったら∀君たちの「欲しかった望む未来」を願った。だからここに来たんだよ。。』

 

<そんな……私達のために?>

ー疑問、自分の事ではなく何故我らに?ー

『それはね~……大地君、ターンX君には及ばないけど∀も大分好きみたいでね。劇中最後、繭にならずにロラン達と共に平和利用の模索をしつつ歩む未来をよく妄想していたらしいよ。君達との接触で、改めて君達にこの世界で幸せになってほしいんだってさ!と言うわけで!この方達に来てもらいました!』

 

 神の使いは、そう言いつつゲストを紹介するような動作をすると、2人の人間が現れた。

 一人は、胸元まで伸びたブロンドの髪と青い瞳で気品あふれるいで立ちの女性。

 もう一人は、褐色肌で中世的な顔立ち、セミロングで特徴的な銀髪をした青少年であった。

 

『ようこそお二方!』

「ここは……?」

「ここはどこですか……?」

 

ーこれは……!ー

<う、うそ……!?>

 

次回へ続く

 

 

 

一方その頃

 

~マウナケアブリッジ内~

 

「束!大地の状況、わからないのか?」

「今マウナケアをハッキングして調べようとしているんだけど、ターンX達が妨害していてわからないんだよ!大地!無事でいて!」

「ス、スコール……私達、帰れるんだよな?」

「私にもわからないわ……ギンガナムは死亡よね、ミスターもおそらく重症で現在収容作業中……まさかここまで一気に形勢が逆転するなんてね……(私も亡国企業辞めてMR社に匿ってもらおうかしら。今回の失態で戻っても居場所なんてないもの。)」

「ちーちゃん!一瞬プロテクトが緩んだからシステムに入れた!大地は医務室へ搬送されたみたい!各隔壁のロックも解除したから医務室へ行こう!」

「わかった!」

「私達もついてくわよオータム!」

「おう!」

 

 

~マウナケア周辺宙域~

 

「キラウエア、現着しました。」

「エトナ、現着しました。」

「よし!よく来たな!俺はコレンだ!大地から指揮権を任されてる!」

「「指揮下に入ります。」」

「よぉーし!それじゃMS部隊をすべて発進!周辺宙域にまだ残留している月光蝶のナノマシンの掃討作業を始めてくれ!」

「キラウエア了解」

「エトナ了解」

「散らしゃいいんだからな!ん?マウナケアから高エネルギー反応?これは、ターンXとルナちゃんか?マウナケア!」

「こちらマウナケア、現在ターンX様、ルナ様、∀様による大地様蘇生作業中です。」

「了解だ!引き続き大地達の護衛頼んだ!∀は時代を開けたんだ!ターンXだってできるはずだ!出撃したMS隊は拡散ビームで月光蝶掃討だ!急げ!」

 




 お読みいただきあたりがとうございます。

 先日、北海道に一人旅に行っていたため投稿が遅くなりました。
 今度はどこに行こうかと思いつつ次の話を書き進めております。
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