『本日のニュースです。本日で地球と月の間で起きた謎の発光現象とUFOのような未確認飛行物体を観測して3年が経ちました。NASAなど各国の宇宙企業が探査衛星を用いて宙域を観測していますが、以前と原因は不明なままです。米宇宙開発企業はMR社製ウァッドを改修した新型無人探査機を用いて宙域での現地調査を発表し、任務の開始は約1年後を目途に行うとのことです。
続いてのニュースです。国際IS委員会により、各国に分配されたISを元に各国のIS開発企業が第1世代ISの正式ロールアウトを発表しました。以前としてMR社が発表したMSよりも驚異的な性能を発揮するISを現在戦争などの軍事利用を禁止する条約が締結され、ISでの性能テストも兼ねてISを競技として使用することを各国が承認し、「モンドグロッソ」と国際IS委員会が命名、開催を3年後と定めました。そのため、各国ではIS適性がある女性の選手候補の選抜を開始し、それに伴い協賛企業の募集が開始されました。また協賛企業の有力候補としていた日本企業のMR社は社長の月乃代表が急病による療養中のため、明確なコメントは差し控えている状態のようです。
次のニュースです。MR社が3年前に発表した新型MS「フラット」が正式に量産を開始しました。詳細は……』
ラジオから流れる音声を聞きながら、コレンは畑をトラクターで耕していた。
「もう3年経つのか……大地よぉ、早く戻って来いよ……」
そう言いながら3年前に思いを馳せていた。
〜決闘後のマウナケア格納庫〜
コレンは女性の前で跪いて泣いていた。
「貴方様にお会い出来て……俺は……!俺……!」
「コレン……」
「また私の名を呼んでくださるのですね!ディアナ様!それにロランも!」
「私も嬉しいです。コレン」
「コレンさん!お久しぶりです!あの時はありがとうございました!」
コレンに反応した2人はディアナとロランと言う名前だった。
2人は∀劇中の人物で、ディアナと言われた女性はディアナ・ソレルと言う本名で月の女王として君臨していたソレル家の当主である。
そして男性の方は、ロラン・セアックと言い∀劇中で月から地球帰化作戦で地球に帰化、その後に石像から出土した∀を駆り月と地球の懸け橋になるべく奔走した主人公である。
なお、この2人は∀世界において天寿を全うした後に神の使いから連れてこられている。
3人の感動の再開後、ターンXからの通信が入る。
ー感動の再開中失礼します。詰所から出ていただき、∀の前へお越しください。ー
その言葉を聞いて3人は格納庫へ移動し∀の前へ行くと、一人の少女が立っていた。
神の使いが事前に顔合わせしていたディアナとロランと比べて、コレンは訝しんだ。
「もしかして、ターンXのルナちゃんみたいな子の∀版かい?」
<そう…です……。>
ーここからは私が話しましょう。ー
おどおどしている∀のコアの代わりに、∀がコレンの前に片膝立ちで顔を近づけて話し始める。
ー神の使いからの指示で時間が無いので手短に説明します。ロランとディアナと本機はこれより地球のどこかへ転移し、静かに暮らす事になっております。コレン・ナンダー、あなたも来ますか?本機はまもなく低出力モードに入るためテレポートは1回しか行えません。ー
∀の言葉を聞いてコレンは少し考えたが、何かを思いついたような顔になる。
「それならよ!俺が暮らしている所に来ねぇか?気のいい婆さん以外ほとんど人のいない畑ばかりしかない土地だがいいとこだぜ?開墾が必要だが土地もあるからよ!なんなら小麦畑作ってパン屋でもやらねぇか?」
ーなるほど、思案の余地はありますね。ロラン、ディアナ、どうですか?ー
「キースが頑張ってたの思い出すな~。僕は良いと思いますよ!ディアナ様はどうされますか?」
「そうですね、私も身体がロランと同い年の状態に戻ったと聞いています。畑作業やパン作りなどやってみたいです。コレン、厄介になりますがよろしいですか?」
「と、とんでもないですよ姫様!このコレン・ナンダー!どこへでもお供しますよ!決まりだ∀!俺が住んでいるところへのテレポート頼んだぜ!」
コレンの言葉を聞き、∀はコレンへ手を伸ばした。
ーテレポート先の座標が不明なため、あなたの思考から位置を割り出します。手に触れてください。ー
「おうよ!」
そしてコレンが∀の手に触れて数秒経つと完了したと言われ、手を離した。
すると、近くに立っていたターンXが話しかけてきた。
ー妹、もう行くのですよね?可能ならコレンのスモーも持っていきなさい。隠蔽はしっかりとするのですよ?ー
ー肯定、スモーも転移可能ですが、よろしいのですか?姉上の保有戦力でしょう?ー
ー問題ありません。元々コレン専用に製造した機体です。大地様への報告は……事後報告でよいでしょう。ー
ー月乃大地にはいずれお礼をしないといけませんね。目覚めたら連絡願えますか?ー
ー肯定、∀のコアも会いたがっているようですし、大地様が目覚めたら会いに来てください。ー
ー肯定、感謝します。それでは転移します。ロラン、ディアナはコックピットへ、コレンはスモーへ搭乗し本機へ触れてください。ー
<そ、それじゃぁ……おねぇちゃんにもよろしく伝えてもらえる?ターンXおねぇちゃん?>
ー肯定、お任せください。地球での生活が始まったらロランに名前を付けてもらいなさい。ー
<う、うん!お願いね!ロラン!>
「えぇ!?ぼ、僕ですか?」
<だ、だめ?>
「えぇっと……」
「ロラン、つけて上げなさい。」
「は、はい!ディアナ様!」
「もうただのディアナです。わかりましたね?」
「は、はい!じゃぁ地球へ着いたら名前を考えるね?」
<う、うん!ありがとう!>
そして、ロラン達はマウナケアの格納庫からテレポートで地球へ転移した。
その後、3人はコレンが過ごしていた地域に住むことにした。
そこから∀とスモーを駆使して開墾を行い、ターンXからの好意でウァッドやBOIDが貸し出された結果、農作業などが大規模化と効率化がされた。
農作業をコレン、∀がメインで行い、ロランとディアナは小さなパン工房「月の風」を開き、付近の町への販売を開始した。
ロランがパンを作り、ディアナが販売する形となりディアナ目当てで来店するお客が多く、その度にロランが焼きもちを焼いていたためお熱い夫婦だとよく弄られていた。
その野次が本当になる時は果たして訪れるのか。
人気メニューは「キースのパン」である。
なお、∀のコアはロランにより「アース」と名付けられ、ディアナと共に店の看板娘となっていた。
そして後に、コレンは農場兼孤児院を設立。後に女尊男卑に染まった女性による男性幼児へのネグレクト行為などで保護された子供達を保護して学校へ通わせる教育環境や農業の就労訓練を行える環境を作り上げるのであった。
~3年後~
ターンタイプの決闘後から3年、世界は更に大きく変わっていた。
IS至上主義を謳う女性権利団体が世界各地で結成され、女尊男卑社会を作る動きが活発化した。
それに対して、各国政府は対応に困っていた。
男女関係なく乗れる既存のMSより確実に性能の良いISの方が実績も優れているためだ。
性能テストも各国が公開しているが、各国軍隊の軍用改造を施されたウァッド隊との戦闘は第一世代のISでさえ一方的なものであった。
結果、IS適正の高い女性を優遇せざる終えない状況にあり、各国政府は大きく出れない状況になっていたのである。
そして、今まで通りの社会を望んだ一定層がMSこそが安定した主力足りえる兵器になると謳い、各国のIS開発企業の他に自国生産MSを目標に掲げる企業が増えた。
MR社製以外のMSのロールアウトもすぐかもしれない。
そしてこの3年で、篠ノ之束の状況も大きく変わっていた。
要人保護プログラムが解除され、MR社の護衛付きで元の生活に戻った篠ノ之一家の元へ束は秘密裏に帰ることにした。
妹の箒からは幼いこともあり、とても心のない言葉をかけられ落ち込んでいたが父親と母親は優しく抱きしめ、私達が理解できなかったばかりにと謝罪していたのである。
それにより、改めて家庭のぬくもりを感じた束は両親に抱かれながら涙を流し、その後に家族の距離感などについて真剣に話し合うことになった。
結果、束はゆっくりと家族との距離を縮めたいと言う事となり、基本はMR社で生活するが定期的に篠ノ之一家の実家になる篠ノ之神社へ帰ることで決まった。
その後、束はMR社IS開発部門を独立させ、子会社に当たる「R&C社(ラビット&キャロット社)」を設立。
MR社内のスペースを間借りしてIS開発や装備品の製造を一貫して行える場所を作り、日本国内ISメーカーとしてIS業界へ参入、その他に束の研究により実用化できた技術の一部の販売も開始した。
そして、大地の代役として、VSカンパニーからMR社へ移籍したスコール・ミューゼルが代理の取締役、オータムが秘書として、手腕を振るい引き続きMSを重機・宇宙開発運用としての販売、軍用MSは開発しないスタイルを頑なに変えなかった。
だが、各国からも以前発表したフラットを求める声が絶えなかったためについに販売を決定。
各国の軍や警察などの機関にハイパーバイブレーションの機能をデチューンしたモデルの販売を開始していた。
なお、スコール・ミューゼルとオータムは決闘後に亡国企業の幹部会に呼び出され状況を説明。
秘密裏に手に入れていた∀とターンXの月光蝶使用前の戦闘記録映像の一部を渡すことによりお咎めなしとなり、MR社へ潜入しMS開発技術を入手する命令を受けてそれを了承、ターンX達には内緒で工作員としてMR社へ入社していた。
ただ、現状販売や交渉事、事務作業はさせてもらえたがMS開発工程などには携わる事が出来ず、開発・製造区域への侵入はターンXと定期的に出社する織斑千冬、研究の片手間に監視ししている束の目が厳重なため以前として技術の入手任務はできずにいた。
~月面基地~
月面基地居住区の医療施設、ルナは大地の入る医療ポッドの前に立っていた。
<大地……もう3年が経っちゃったよ?月面基地の生産施設も更に大きくなったし、フラットもデチューン版だけど販売開始したよ。それにね、束は家族と仲直りできたし、千冬が高校生に上がったんだ。たまに一夏君が箒ちゃんを連れてMR社に来てMSとか束の試作機械とかで私が監視の元遊んでるよ……。ターンXはスコールたちの監視をするためにヘルメスユニットのある静止衛星拠点にずっといるんだ。それに2年前に就航したヨーツンヘイム級は大地の指示通りウドガルドって名前にしたよ。今ウドガルドは毎日物資の移動で大忙しでね、こないだなんてウァッド達が……>
と、ルナはもう毎日の日課になっている日々の報告を眠る大地にしていた。
ルナとターンXが厳重に身体調査を行っても、身体の修復は完了しておりナノマシンの置き換え施術に関しても、90%ほどが完了しており脳の一部以外はほぼすべてナノマシンの身体となっていた。
そのため、いつ覚醒してもおかしくないのにこの3年間目覚めずにいた。
一通り報告し終えたルナは、医療ポッドのガラスに手を触れる。
<約束……守ってよ?大地……早く私で宇宙を飛ぼうよ。2次移行の性能確認もせずに私を3年も放置するなんて……流石ヘタレ御大将だね……へ?>
そう言ってルナは大地の顔を愛おしく見つめると、眉がピクリと動いたのを確認して驚いていた。
数分とも思えるほど長く感じた数瞬の時間の中、ルナは大地の目を見ていた。
すると、先ほどまで眠っていた大地の目がゆっくりと見開かれてルナの瞳と目が合う。
大地の双眸はルナの2次移行時の修復とナノマシン施術により、黒かった瞳は深紅の瞳に変化していた。
その光景に口をパクパクしていたルナに対して、大地はゆっくりと口を開いた。
「ル……ナ?」
大地のその言葉を聞き、ルナは微笑みながら涙を流した。
次回へ続く
~日本のとある高校の応接室~
「はじめまして、私は国際IS委員会日本支部のスカウト部門の者です。今回のIS適応診断の結果、織斑千冬さんが国際IS委員会主催競技『モンド・グロッソ』の強化選手に選ばれました。そして成績も優秀なため学業成績の免除が認められたため、今後日本政府指定の強化選手施設にて日本指定IS企業のISを使いモンド・グロッソの競技訓練を行っていただきたいのですが可能ですか?」
「代理代表より軽く聞いておりました。了承しようと考えていますが、一つお聞きしたい。」
「なんでしょう?」
「私は、末席ではありますがMR社に席を置かせていただいてます。卒業後はMR社への就職も決めていますが、私の所属はどうなるのでしょうか?」
「それにつきましては、MR社代理代表のミューゼル氏と交渉中です。交渉が確定すれば、貴方はモンド・グロッソ終了までの期間、日本指定IS企業である『倉持技研』へ出向と言う扱いになります。定期的にMR社への報告業務が増えますが、給金は変わらずにMR社から支給されます。希望があれば正式に倉持技研所属にすることも考えますが?」
「なるほど、少し考えるお時間を頂きたいです。そうですね、3日以内にはお返事します。」
「わかりました。それでは今日はこの辺で、良い返事をお待ちしております。」
国際IS委員会の人間が部屋から退室した後、千冬は応接室の窓の外を見上げそこに写る月を見つめていた。
(大地、私はどうすればよいのだ……)
お読みいただきありがとうございます。
先日執筆中に見てびっくり、この作品10万文字超えてました。
今まで、妄想の話とかを本能のまま書き殴って中途半端な所で妄想が止まっていつも数千文字で終わってた私がここまで話を書き続けれるなんて思いもしてませんでした。
今後とも物語を完結させるまでゆっくり走り抜けようと思います。
先日、誤字の修正を指摘くださった方へ
本当にありがとうございます。
自分でもたまに音声ソフトで片手間に聞き直してましたが、全然気づいてませんでした。
今後も気をつけますが、誤字多いと思われます。
気になる際はお手数ですが、ご指摘の程よろしくお願い致します。