月乃大地は、液体で満たされた場所で目を覚ました。
寒くも熱くもない適温が何ともなく心地がいい、そして広がる視界に白髪の女性が映った。
どことなく、ルナに似ているな~と思いつつ神の使いに会った後の事を思い出す。
確か決闘の後に朧げに目を覚まして、ルナにまた一緒に飛びたいと願っていたなと思い出してもしやと思った。
「ル……ナ?」
うまく口が動かせない大地のおどおどした言葉に、ルナと思われる女性は涙を流し微笑んでいた。
それに対して、大地は微笑む事で返すのだった。
~10分後~
医療ポッドから出た大地は、ルナの介助をしてもらい月面基地自室ベッドへ移動して横になっていた。
そして大きくなったルナに3年も眠っていたことを聞かされ驚いた。
「え!?って事は今はMR社はスコールが仕切ってるの?」
<そうだね~、ターンXや千冬、束が監視の元って制約がついているけど。>
「そうか……まぁ、それだったら変に亡国企業へ情報が流れることはないかな。」
<でも、匿ってほしいって言ってきたのはあっちだし3年も経ってるからある程度は信用できるんじゃない?>
「そこは何とも言えないかな……亡国企業の実行部隊なんだ。決闘の時のデータとか持って行ってお咎めなしにした可能性もある……それより聞きたいことがあるんだけど?」
<なに?>
「ルナ、お前さんいつからホログラム状態から実体化したんだい?それとその成長した体は……?」
<……>
大地の一言で、先程まで上機嫌だったルナは頬をムスッと膨らませて大地をにらみ始めた。
あ、これ地雷踏んだ~と思った大地はあてずっぽうだが推測を答えてみることにした。
「もしかして、俺が朧げに覚えている記憶は神の使いと話して、その後ルナと一緒に宇宙を飛びたいって願ったってのがあるけど、もしかして2次移行したのか?それの影響で俺の怪我の修復とか実体化、身体の成長がセットになったとか?」
<……>(ムッス~)
「え、え~と……違った?もしそれが正しいなら滅茶苦茶嬉しいんだけど……」
大地がどう発言しても、ルナはムスっとした顔を崩さなかったが次第にぷぷぷと笑い始めて吹き出していた。
<ぷ……ぷぷぷ……あははははは!そんなにオドオドしちゃって~本当に大地はへたれだな~>
「な、何がおかしいんだよ!?俺はルナがあの時俺を守るために機体の損傷よりも生命維持装置を優先して機体が崩れていくのを見てどれほど心配したと…(大地!!)あ、はい。」
<私それに関しては今でも怒っているんだよ!確かに最後までついていくとは言ったけど、あそこまで自分の命を軽んじるなんて!……大地がいなくなったら…私は……怖くて……毎日大地が目覚めるのを待って……っひぐ!……私……うぅ……大地~~~~!!!>
「おっと!?」
吹き出したと思ったら、怒り、そのまま泣きじゃくったと思ったら大地に抱き着いてルナは声を上げて泣き始めてしまった。
大地はまだ上手く動かせない身体では飛び込んできたルナを支えられずに、二人でベットに倒れこみ、抱き着いたルナの頭をなでながら声をかける。
「ごめんね、ルナ。心配させた。でも今こうして触れ合えて本当にうれしいよ。これからもよろしくねルナ。」
<うぅぅぅぅ!だいぢ~~~~~!私もう…ぐすん……だいぢをうじないだくないよ~~~~!>
「うん、そのために2次移行までしてくれたんだろう?これからも期待しているよ。最高の相棒。」
<う、うん………だいぢ~!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!>
「わかった、わかったから今はいっぱい泣きな。本当感情が豊かになっちゃってまぁ~」
<わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!>
こうして、ルナが満足するまで大地はルナをやさしく抱きしめて頭をなで続けるのであった。
なお、実体化したルナはとても暖かく花の匂いがかすかに香って大地は少しだけ、ほんの少しだけドキッとしてしまっていた。
30分程経ってルナが泣き止んで落ち着いてから、ルナがハッとした顔になってちょっと青ざめる。
本当忙しいなルナは……
「どうしたの?」
<あぁ……ターンXに大地が起きたこと言ってない……>
「……え?」
<でもバイタル状態とか、私経由で常にターンXに伝わっているわけで……>
「それじゃぁ……」
<感情が抑えられなくなって泣いてる間、ずっとターンXからコールが来てて……>
「来てて?」
<無視しちゃってた……>
「なぁルナよ、ターンXって怒るとどうなると思う?」
<黙る。>
「へ?」
<口を一切聞かずにただただ実力行使になる。そしてその時に行う破壊行為に躊躇がなくなる。>
「今ターンXどこにいるんだ?」
<最終共有座標は……20分前にL1だね。メッセージも来てるよ……『今行く』だって……>
「L1か……目と鼻の先だね~」
<そうだね……>
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
ビー!ビー!ビー!
非常事態発生。非常事態発生。
月面港ゲート破損。月面港ゲート破損。
月面港内空気流出を確認。各施設間通路緊急閉鎖。
施設管理MS部隊緊急発進せよ。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
月面港内部ゲート破損。月面港内部ゲート破損。
MSハンガー通路の1.2.3隔壁閉鎖。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
バゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
チュドオオオオオオオオオオオオオオオン!
MSハンガー通路隔壁1.2.3破損。
轟音と共に、月面基地内の管理システムから状況が音声で伝えられる。
それを聞いて、大地とルナはお互いに無言で見つめ合い、フフッと笑顔になった後、お互いに抱きしめ合ってガタガタ震えはじめた。
「お、おいルナ!やべぇって!何とかしなさい!我が愛機!」
<こうなるともうターンXは何も聞いてくれないよ!大地が言った方がまだ望みあるよ!>
「冗談じゃねぇ!そもそもルナがターンXに報告しないのが(ドゴオオオオン!)ひぃ!?」
ルナと大地が互いに言い合いを始めていると、隔壁破壊とは別の轟音が鳴り響く。
すると、オープン回線で居住区隔壁前に待機していたウォドム2機からの声が聞こえてくる。
「お、おやめください!ターンX様!これより先は居住区!この隔壁を破壊すれば居住区が真空になります!」
「そうです!ターンX様!大地様が目覚めて早くお会いしたいのは分かりますが限度と言うものがあります!いくらターンX様と言えどもこれより先にお通しするわけには……(黙りなさい!)」
ー本機とて!3年も待ったのです!大地様のお気に入りのMS達といえど!本機を阻むのは許しません!ー
「なりません!」
ーウォドム隊!そんなに!その隔壁を守りたいなら!隔壁ごと!ー
「え、ちょ!?ま!?」
グシャァァァァ!バキバキ!バキン!ゴゴゴゴゴゴゴ!
「ターンX様!流石にウォドムである本機と隔壁をどうやって持ち上げて!?」
ー地球では1機が限界でしたが!ここは月の重力下!不可能ではありません!隔壁がぁ!そんなに好きかあああああああああああああ!ー
「シャ!シャイニングフィンガーは流石に……!?」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
ーコアは残しました。あとで直してもらいなさい。貴方もまだやりますか?ー
「……本機は何も見ておりません!ターンX様!お帰りなさい!大地様は居住区自室にてルナ様とお休みになられております!後の片付けなどはお任せください!」
ーよろしい、後のこと頼みます。ー
「は!お任せください!」
聞こえてきたオープン回線の後、ルナが緊急展開して大地を保護。
数秒後に、部屋の外が真空になったことが報告される。
その後、ガシャン!ガシャン!と足音が近づき、ベキベキと大地の部屋前の通路がこじ開けられるような音が響く。
大地はルナのパワーアシスト機能で無理やり体を動かして、扉から離れて壁に縋りつく。
そうしてターンXが部屋の前まで来て、止まると急に沈黙が訪れる。
(なにも……してこないのか?)
そう大地が思った瞬間。
ガン!
「ひぃ!?」
<ひぃ!?>
部屋の扉にターンXの溶断破砕マニュピレーターの爪が突き刺さり貫通した。
グシャグシャと音を立てて扉が溶断破砕マニュピレーターの爪で引き裂かれ、扉が通路へ引き抜かれて消えていった。
するとまたしても沈黙、無くなった扉の向こうにいるはずのターンXが何もしてこないなと思ったら、通路からターンXが体の一部を切り離す時の音が聞こえる。
怪しんで通路の方を見つめると……
ドガァァァァン!
扉があった場所にターンXの頭が突き刺さってきた。
そのインパクトのせいで、口をパクパクさせて動けないでいるとターンXのバイザー内にある独特なツインアイが赤く光り鈍い音を立てながら大地の方を向く。
ーダァァァァァイィィィチィィィィサァァァァァマァァァァァァァァ!!!!ー
<「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」>
大地とルナは絶叫した。
やべ、ちょっとチビッたかも。
~少し経ってMSハンガー内~
ー謝罪、大地様本当に申し訳ございませんでした。ー
「う、うん。大丈夫だよ……」
ーですが、本機のせいで大地様の月面基地が……ー
「まぁ、そこは仕方がないかな……仕方がないと済ませれない規模の被害は出たけど。」
ーうぅ……ー
「まぁ、ともかくまたターンXに会えてよかったよ!切られた右腕は大丈夫だった?」
ー大地様!こ、肯定、決闘後補修ナノマシンで即時修復しました。ー
「ターンXもなんか感情が少し豊かになった?ルナの影響かな?」
ー肯定、バカルナとの日々のデータ共有で思考プロセスがアップデートされております。そのおかげでしょう。ー
「そ、そうか……後、ルナの事許してやってくれないか?2次移行で大分感情が豊かになっちゃってるんだ。時間をかけて成長しないとこう言うことは覚えて行かないよ。」
ー……肯定、大地様が言うのでしたら従います。ルナ、謝罪します。ー
<いいよ、私こそごめんね。すぐに連絡すべきだったのに。>
ーもう良いですよ。大地様もこうして帰ってきてくださったのです。この話は終わりにしましょう。ー
<うん!ありがとう!>
「2人ともこれでいいかな?」
大地はそう言って、ターンXトップへ抱き着いた。
ー大地様……ー
「こんな俺にはもったいない程いい機体のターンX、そしてルナ。これからもついてきてくれるかい?」
ー…!肯定!これからも大地様の愛機としてお傍においてください。ー
<うん!これからも一緒にいようね!>
「うん!改めてよろしくね!」
ー肯定!こちらこそよろしくお願いします。ー
<よろしくね大地!>
ターンXから離れた後、大地は改めて纏っているルナを見た。
「そういえば、ちゃんとルナの2次移行形態見てなかったな……」
そう言いつつ、空中投影ディスプレイを表示させてルナの状態を見た。
そこにある機体名を見て、自然と呟いてしまった。
「ターンXルナ・ムーンブロッサム……」
次回へ続く
補足情報
・ロランとディアナはコチラに転生時、18歳の設定です。
・ギンガナムは、死亡後に消失。
・∀のコックピットはロラン達搭乗者前に自己修復。
お読みいただきありがとうございます。
前話書いてて、ふと書き忘れてたなと思い補足を書きました。
そう言えば、コレンって子供好きなイメージあるんですよね。
子供と一緒に遊んで食事してる話は地味に好きです。
さて、次はどのMSを登場させようか……