前回の総評、ターンXを怒らせると怖い
格納庫内で大地は、自分が纏うルナの2次移行形態であるムーンブロッサムを確認していた。
まず両手、左腕と右腕で形状が違うはずなのだが両手ともに人の手と同じマニュピレーターになっており、手首内に収納式ビームサーベルが格納、両手腕部外側に溶断破砕マニュピレーターが1基ずつの計2基装着されていた。
なお、腕部は外側装備の溶断破砕マニュピレーターと状況に応じて交換が可能になっている。
工作・採掘などの作業時は両手での道具保持が可能となり、細かな作業もできるようになった。
戦闘時も、武器を保持しつつ腕部外側装備の溶断破砕マニュピレーターを使えるので戦術の幅がさらに広くなった。
そして、背部のキャラパスはわずかにサイズが小型化、背部中央部に牽制用16連装小型ミサイルポッドが搭載されスラスターベーンの噴射口は大型化されており、ウェポンプラットホームよりスラスター性能メインになっていた。
また、背部のキャラパスの左右のラックに、溶断破砕マニュピレーターユニットが1基ずつの計2基が装着されており、合計4基の溶断破砕マニュピレーターユニットの同時展開が可能となった。
全体的な機体のシルエットなどはターンXからあまり変わっていなかったが腰部左右にホルスターが追加されており、ターンXのロングレンジビームライフルが2丁装備されていたが少し形が変わっていた。
調べるために空中投影ディスプレイから装備欄を調べると、砲身伸縮式ビームライフルと表示された。
使用用途をさらに調べると、砲身の長さを伸縮することにより出力と連射速度が変更出来て近~長距離への対応が臨機応変に出来る仕様と言う記載が表示された。
その他、性能のパラメーターや拡張領域内にある武装類を見ていく。
「ルナ……凄い重武装と高出力化されとるじゃないか……?一体2次移行するときに何したんだい?」
大地はこの言葉しか出てこなかった。
それに対してルナは、頬をかきながら目を合わせずに返答する。
<えぇっと……2次移行時に、ターンXと∀、∀のISコアからエネルギーを供給してもらって、大地の身体修復した後の余剰エネルギーと搭載ナノマシンの全部を使って機体再構築したの……>
「ルナ……おバカ!なんて最高な事してくれてるの!愛してる!」
<えへへぇ~>
ー大地様は平常運転ですね……嬉しい限りですが。ー
2次移行の性能を見て喜ぶ大地と照れるルナに対して、ちょっとのけ者感が拭えないターンXであった。
「そういえば、ターンXは御大将閣下殿ってのはやめたの?」
ー……あ。ー
「あ、これ聞いちゃまずかった?」
ー否定、問題ありません。なんといいますか……前までは……雰囲気といいますか。ー
「なぁ、ルナさんや」
<はいはい大地さん>
「ターンXってもしかして今までノリで俺の事を御大将閣下殿って呼んでた?」
<実はそうなんだよね……私と話す時とかは普通に大地って呼んでたんだけど、初めて会った時に大地がターンXの事好きすぎるの知ってたから舞い上がっちゃって戻し時がわからなかったんだよ~>
「なるほど~」
ーまた本機の頭突きを味わいますか?ー
<「ごめんなさい……!」>
ターンXの冷たい一言で、ルナと大地は綺麗な土下座を決めるのであった。
~1時間後~
大地達は月面に立っていた。
3年間も大規模な開拓ができていなかったため、今後訪れる世界難易度上昇による神の使いからの試練とやらに対応するためにまずはムーンブロッサムの性能テストをしようとターンXに提案され、MS部隊との模擬戦を行うことにした。
「ねぇ……ルナ、ターンX?IS単機でMS部隊の相手って正直きつくない?」
<スペック上だと問題ないから大丈夫だよ~>
ー肯定、現状のスペックですとウォドム2個小隊と正面から平気で殴り合えます。ウォドムを6機とマヒロー3機を招集しました。本機は後方で観測しておりますので、存分に戦ってください。ー
「ま、まじかぁ……本当にISなのかい?だがまぁ、ムーンブロッサムを信じて戦うか!ルナ!サポート頼むよ!」
<任せて大地!全システムオールグリーン!ムーンブロッサムいつでも行けるよ!>
ーそれでは、模擬戦を開始してください。ー
こうして、大地の纏うルナのムーンブロッサムVSウォドム6機&マヒロー3機混成部隊との模擬戦が開始された。
結果は、圧倒的の一言だった。
戦術データリンク最大強度でのMS部隊によるビーム兵器の統制射撃をことごとく回避しつつ、腰部ホルスターに装備したビームライフルを両手に装備。
それと同時に、腕部と背部の溶断破砕マニュピレーター4基を散開させマヒロー2機の上下に展開し各マニュピレーターの爪が開いたと思うとビーム破砕フィールドを形成、自機の数倍以上に巨体のマヒロー2機は高温高振動の空間に閉じ込められ、ビーム兵器で反撃するもマニュピレーターのビームバリアに阻まれ、物の数秒で撃墜判定をもらい月面へ落下していった。
その間も大地は残りのマヒロー1機へ接近しつつ、ウォドム6機の砲撃も躱した。
マヒローはウォドムの方へ引きながら盾型のメガ粒子砲を撃ちつつ、手持ちのマシンガンを連射する。
それを大地は何を思ったのか一切躱さず、全てビームバリアで受け止めて進み続ける。
その光景を見て、マヒローは驚愕した。
対艦・対MS戦闘用で使われるビーム・実弾兵器の混成攻撃を、自機の半分以下の大きさであるISが全てビームバリアで受け止め、無傷だったのだ。
マヒローの弾幕を突き抜けて大地の纏うムーンブロッサムは、さらに加速を行い、機体前方に展開したビームバリアを円錐状に分厚く展開し、そのまま突撃した。
そしてマヒローと接触した瞬間、マヒローのコックピット部の真横にIS1機分の風穴が開き、そのまま撃墜判定になる。
大地はそのままの勢いでウォドム隊へ突撃をするが、ウォドム隊は1点集中でメガ粒子砲を発射を確認し回避機動を取り、先程まで展開していた溶断破砕マニュピレーター達を自機近くまで呼び戻し、自分の前方へ、菱形の形に展開しマニュピレーターの爪が開きバチバチと閃光が迸る。
そして菱形に展開した溶断破砕マニュピレーターの真ん中へ両手のビームライフルを構えて射撃を行うと、展開したマニュピレーターを通過したビームがマニュピレーターの出力と合わさり、ムーンブロッサムの本体と同じくらいの大きさのビームとなりウォドムを1機ずつ焦がしていく。
数分後、全ての敵役MS部隊が撃墜判定になりムーンブロッサムは無傷のまま模擬戦は終了した。
「嘘だろ……こんなに簡単にISでMS撃破できるなんて……」
<これは私も予想外……ビームバリアの出力が段違いだね。>
ー肯定、観測情報とルナからのデータリンクで情報を収集しましたが。本機と模擬戦をした方が良かったかもしれませんね。大地様の反応速度、及び並列思考速度がナノマシン施術で予想される数値を大幅に上回りました。ー
MS部隊と周辺の片付けをして、月面基地に帰る途中に大地とルナ達は会話していた。
「反応速度……確かに2次移行前のルナと飛んでいた時よりなんかもっとしっくり来た感じと言うか……なんだろう、思考と機体の動きのラグがほぼ無いって感じには思えてたな。そうか、詳しく聞いてなかったけど今俺のナノマシン施術ってどの位なんだい?」
<えっと、脳の一部以外全部。>
「……へ?」
ー肯定、∀の修復妨害機能のあるナノマシンが大地様の身体を侵食した際のデータをお見せします。その後ルナの2次移行による身体の修復及びナノマシンの再構築が行われました。結果、脳以外の身体は全てナノマシンで再構築、脳は約20%がナノマシンで構築されています。これより先は大地様の意思次第で全てをナノマシンで構築することが可能です。ー
「俺、眠っている間に人間やめちゃってた件について……」
<ごめんね大地、大地を生かすにはこの方法しか思いつけなくて……>
「大丈夫だよルナ。ちょっと驚いてしまったけど、そのおかげで俺はここにいるんだ。謝る必要なんてないよ。」
ー本機もルナの思いついた方法以外で大地様を早急に助ける方法が思いつきませんでした。ー
「ターンXも気にすることはないさ。ちょっと重い空気になっちゃったし、ターンX乗せてよ!MS部隊、悪いんだけど後の片付けは任せていいかな?」
「こちらウォドム1、承りました。」
「よろしく!じゃぁターンX!コックピット乗せて!」
ーこ、肯定。コックピットハッチ開きます。ー
そして、大地はターンXに乗り込んで満足するまで月面付近を飛行して回った。
終わるころにはルナとターンXの機嫌は元に戻っていたのだった。
「さて!少し月面基地の状況を確認して、新たなMSを製造したらまた地球に行くよ!」
<わかったよ大地!>
ー肯定、地球のMR社での仕事もたまっておりますよ……あ。ー
「どうした?ターンX?」
ー大地様申し訳ございません。本機がこちらへ向かっている際に監視が緩んだようです。オータムがデータ室へ侵入、大地様が以前作っていた架空MS世界分布図をコピーしどこかへ転送した模様です。ー
「あれま……でも大丈夫じゃない?あれって、俺がもし各国がMSを開発するなら主力はこういう機体になるんじゃないかな~って世界地図に簡単な性能説明イラスト付きの画像データだけだし。」
ー大地様がよろしければいいのですが……オータムはどうなさいますか?ー
「いや、まだ泳がせておこう。何か実害の出るアクションをしてきたら改めて対応するよ。」
ー肯定、では引き続き監視は続けます。ー
「お願いね。じゃぁパパっと月面基地の事をやろう!」
そう言って、大地達は月面基地へ帰投した。
次回へ続く
~織斑家~
「千冬姉、どうしたんだ?悩んだ顔して?」
「一夏か、いやなんでもない。」
「本当か?なんか帰ってきてからずっと難しい顔してるぜ?」
「……そうか、心配させたな。少し困ったことになっているが問題はない。」
「それならいいんだけど……そうだ!飯作ったんだ食べよう千冬姉!」
「そうか、何時もすまないな。いただこう。」
「気にすんなよ!いつも学校の後のMR社の仕事で疲れてるだろ?これくらいやるって!それに……」
「それに?」
「千冬姉……もうちょっと料理をレシピ通り作れるようにしようぜ。この前の卵焼きはちょっと……」
「うっ……すまんな、こんな不出来な姉で。」
「怒んなって!これじゃぁ、好きな人ができたら大変じゃないか?」
「……なに?」
「ほら、なんだっけ?学校の先生が女子に言ってたんだよ。好きな人は美味しい手作り料理で胃袋をつかめ?だったか言ってたんだ!」
「ふむ……一夏。」
「なに?」
「すまんが、暇な時でいいから料理の練習に付き合ってくれないか?」
「いいけど……もしかして好きな人でもいるのか?」
「……そんな者などまだいない!」
「まだ?」(ニヤニヤ)
「……さっさと飯を食って風呂へ入れ!」(スパーーン!)
「いっっってぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
一夏が風呂へ行った後
(全く、一夏め……私にはまだそんな相手などいない。決して、一瞬、ちょっとだけ大地の顔が出てきたが、そんなことはないのだ。将来を考えて今からそう言う……女の子らしいことを学ぼうとだな……ん?メールか?宛名はルナか、珍しいな。)
食後に麦茶を飲みながら、携帯端末の画面を見ながら千冬は訝しんだ。
文面はこう書かれていた。
『千冬へ
大地について大事な報告がある。
明日、MR社に出社したらMR社地下の倉庫に来て欲しい。
束にも伝えているから、可能なら一緒に来て。
ルナより 』
そして、千冬は束に連絡を取るのであった。
お読みいただきありがとうございます。
戦闘シーンの文章描写がとても難しいですね。
頭の中で苛烈に動いているシーンを妄想しながらそれを文章に落とし込むのにどうしても時間がかかってしまいます。
頑張って自給自足するぞ……
本当、長文でわかりやすい表現で書いている他の執筆者様方本当に凄いと日々思いながら書いてます。