模擬戦と、ターンX達との飛行を終えて帰投した大地はというと……
凄い速さで月面基地の開拓に必要な設計図制作作業を行っていた。
以前までなら半日はかかっていた内容が半分の時間で完了していたのだ。
「すごいな、以前と比べ物にならないぐらい進みが早いな。」
<まぁ、大地が眠っている間に脳の神経回路とか全部高速処理できるようにしたしタスク負荷が高い部分の思考はほとんどナノマシン化した部分の脳で一気に処理しているからね~>
「なんか本当、俺強い系の領域に入ってきたな……はは、転生系の話で一本書けそうだ。」
<ははは!久々に若干メタいの言ったね。>
「まぁ、3年寝てた間に全身がナノマシンで構築されて人間ほぼ辞めましたってのは流石にSFの世界よ?」
<でもターンXのいた世界だと技術としてはあったみたいだけどね?>
「確かにそうなんだよな~、地球に行ったら俺もロランさんやディアナさんと話してみたいな。コレンさんにもお礼言わないと。」
<そうだね!あと少し作業が残ってるから早く終わらせよう。>
「そうだな。」
こうして、残っている作業を済ませながら一つの報告書に目を通していた。
『定時報告
報告者アスピーテ級4番艦キラウエア
本日、月面基地直撃コースと断定した飛来物を3つ、ウォドム砲にて迎撃。
飛来物を撃破後、周辺宙域に閃光及び正体不明の重力波を数秒間検出。
データに記録あり、2年前に該当飛来物2件の迎撃報告あり。
現状脅威対象とは断定できず。
今後も調査の必要はあるが優先度は低いものとみられる。
なお、飛来物軌道計算の結果火星付近から飛来している物と推定。
その他、周辺宙域の警備に問題なし。
以上』
読み終えて、大地は思案した。
(火星方面からの飛来物か……過去のデータを参照しても、2年前か。火星方面から何かがそれを飛ばしてきている?個数が増えているということはこちらを調査したい意図があるのか?仮に次の試練が火星から来る存在として、なにが来るんだ…?まさか鉄血のオルフェンズに登場するモビルアーマー群とかじゃないよな?それ来たらターンXに鈍器装備して殴り掛からんと行けないし……火星はいろんな勢力がいるから見当がつかない。)
こうして、高速化した思考をもっても答えが出ずに一度保留にして別の仕事を片付けるのであった。
~1時間後~
大地はあらかたの事務処理を終えて、現在データ室で新たなMSの開発選定を行っていた。
<大地、今度はどのMSを作るの?>
「うん。ちょっと火星方面が怪しいから新たに生産するMSは、探査できそうな機体をと考えてるんだ。距離もあるから機体各所の構造が簡易化されてトラブルの少ない高推力な機体をと考えててね。」
<ならムットゥーとかどう?>
「それだ!あの機体は木星の重力圏内での運用が考えられてた機体でシンプルな構造の可変機だ。大型ブースターを装備させたギャルセゾンでキャリーしてバリュートを使って降下、推進剤をプロペラントタンク増設でカバーすれば2.5Gの木星で運用するムットゥーにとって火星の0.3Gだったら余裕で衛星軌道まで自力で上昇できるしIフィールドで防御力もある!ルナ!それでいこう!」
<役に立ててよかったよ!>
こうして、新たに生産するMSはムットゥーに決定された。
ムットゥーとは、∀劇中にてロストマウンテンと言う場所で発掘された可変MSである。
Zガンダムに登場するバウンド・ドッグに似た上半身と足を腰部装甲内に収納し飛行形態に可変する機構を持っており、公式設定にて木星大気圏内での重力に捕われない程の推力を駆使し運用する事が考えられていたと説明されている機体である。
可変時は腰部のメガ粒子砲および、腕部半固定式のヒートナタ兼ビームライフルを前方に構える形となるため、突撃による一撃離脱戦法を得意としていたようだ。
最初はアスピーテを1隻と艦載MSを向かわせることも考えたが、現状戦艦を単艦で火星に向かわせた場合、相手にこちらの主力艦船のデータを入手させてしまうリスクを避けたいと考えてムットゥーとギャルセゾン、両機ともターンX程の速度は出ないが単機で惑星間航行ができると考え斥候部隊に適していると判断した。
なお、ここで大地はメッサーラとかもいいなと考えたが、せっかくルナが自発的に勧めてくれたのでそこはルナの意見を通すことにしていた。
正直∀世代の機体の性能はどれもお化けじゃ。
こうして大地は新たなMSの生産と、月哨戒部隊の増設のために色々と追加で開発リストに登録していくのであった。
〜次の日〜
大地はターンXに乗って、地球静止衛星軌道上の新たな拠点になったヨーツンヘイム級3番艦ウドガルド・ヘルメスユニット装備の甲板にいた。
そこでは、3年前と比べて驚くほど沢山の物資輸送コンテナを運ぶウォドムやマヒローにウァッド達が行き交っていた。
「凄い物量だ……」
<稼働初期と比べて流通量が3倍になったからね~>
ー肯定、後程MS部隊の増援を手配予定です。ー
流石にここまで流通量が多くなるとは思っていなかった大地はただただ驚いていたが、その後数分思案してあることに気づいた。
(この物量、そろそろ各国の衛星監視網にバレるんじゃなかろうか……?)
そして大地が偵察衛星経由でデータを調べると、数回ではあるが降下中と空中輸送中に米国の軍事衛星に補足されている記録が出てきた。
ステルスと、ルナ達が新たにギャルセゾンに装備させていたジャミング装置で切り抜けているようだが今後輸送ルートへの監視網が厳しくなる可能性を考慮してターンXにあることを聞くことにした。
「なぁ、ターンX。」
ーなんでしょうか?ー
「∀に接触した時にテレポートのデータって入手してない?」
ー肯定、戦闘時の接触により48%のデータ入手は完了しておりますがデータ収集不足でまだ使用することはできません。まさかあれをお使いになるのですか?ー
「そう!そのデータがあれば『転送ゲート』が作れそうだと思ってね。」
<なるほど!ウドガルドと地球の会社を繋げることができれば流通の効率化ができるね!>
「あぁ、地球に降りて∀がOK出したらデータコピーさせてもらおうか。静止衛星軌道までの接続距離だったら問題ないと思うし。」
<問題?>
ー肯定、大地様の懸念事項は考慮すべきでしょう。仮に外宇宙にある文明と繋がってしまった際の影響が不明ですから短距離で済ませるべきです。ー
大地の提案した『転送ゲート』とは、∀ー月の風ーにて登場した物で、外宇宙へ旅立った人類が他星系間での人の往来などを容易とするテレポートやワープの類の技術で銀河ネットワークの様なとても広い交通網として機能していた描写があるものである。
なお、作中では銀河文明との繋がりをムーン・レィス達は自ら絶ったため、再びそのゲートを開くことは禁忌とされていたが、ある組織が修復し開通させた。
その際、どこかの銀河とゲートが繋がり、人のパーツがありながら人ならざる形をしたモノがゲートを潜ってこちらに来てしまいゲートを開通させた者が食われ、そのタイミングでロラン達の働きによりゲートへのエネルギー注入が切断され、ゲートは再び閉ざされたという描写がある。
これを知っている大地は、転送ゲートの仕組みをまだ理解していないが、転送ゲートを作るにしても銀河などの遥か彼方にまで繋がるものではなく、あくまで地球の地上から静止衛星軌道までの銀河単位で見れば極短距離の距離に限定して使おうと考えていたのだ。
月の生産施設と繋げても良いと考えはしたが、MR社が襲撃などを受けて技術が漏洩してしまった時のことを考慮し、月面基地の秘匿性を保つため繋げないことを考えていた。
後は∀と接触してから考えようと決めて、大地はターンXから降りてルナと地球に降下した。
~数時間後~
日本時間12時頃、大地は無事地球に降下し、MR社前まで飛行した後にルナを解除して中に入った。
一応連絡していこうかと思ったけど、サプライズも大事だなと考えて連絡なしで来たのだが……
「あれ?誰もいないのか?ルナ、スコール達の今日の予定は?」
<あれ?今日の朝に確認した時には出かける予定はなかったんだけど……急な商談が入ってオータムと出かけて帰りは夜になるみたい、VSカンパニーの日本支社に行く予定になってるよ。束は実家の方に行っているみたい。>
「束さんは親と居るとして、スコール達は前日に抜き取って転送したデータの報告かな?」
<多分そうだと思う。>
「ふむ……なら再会するのは千冬が来てからでいいか、ルナちょっとステルスモードでVSカンパニーの日本支社を偵察しに行こうか。」
<いいね!そうしよう!>
こうして、大地とルナはステルス性能を持つナノマシンを機体周辺に散布して姿を消した状態でVSカンパニー日本支社へと向かった。
少し時間は経ち、ルナと共にVSカンパニー日本支社の屋上へ降り立ち見下ろすと、丁度よくスコールたちが車から降りて支社へ入るところだった。
(あら、もう何かしら話していると思っていたけどこれからとは都合がいいね。ルナ頼める?)
<わかったよ~、ブロッサムユニット展開~>
大地に頼まれ、ルナは溶断破砕マニュピレーターユニット、通称ブロッサムユニットを展開してビルに接触させて内部の音声を収集し始めた。
数分すると、スコールとオータムの声を検知したのでその音声元にブロッサムユニットを集中展開し会話音声を拾う。
どうやら、少し高齢な男性と会話しているようだった。
「……入手できた情報は以上です。」
「ご苦労だったスコール。引き続き、MR社の情報を入手次第報告するように。だが、約3年間潜入して入手できた情報がこれだけとはな……この画像にある機体のイラストと性能説明は情報部に回しておこう。私見を聞きたいが、この画像にある機体達は実戦に耐えるレベルだと思うかね?」
「はい、以前に報告していた宇宙でのMS戦闘データはご覧になったと思いますが、あれに敵うかと言われれば不安はあります。ですが、現時点の各国のISを除く軍事レベルを考えれば圧倒的かと。」
「……そうか、情報部にはそのように伝えておこう。だが、あの月に拠点があるとはな……いまだに信じれないことだが、それを我々のものにするのは厳しいのかね?」
「現状は厳しいでしょう。私たちが見た限りですと、月面基地の規模は拡大を続けており、現在の工業力は小国の重工業を余裕で賄える規模に匹敵すると推測できます。複数の数百m級の宇宙用艦船の製造に防衛用のMS群を確認しました。先日の調べでわかったのですが、月面基地防衛用のMS群にも光学兵器が搭載されておりました。おそらく3年前の『ヘヴンリージャッジメント』も彼の仕業と推測できます。」
「……あのヘヴンリージャッジメントを……我々が標的になる未来は避けたいな。奴が戻ってくるまでに、MR社のMS及び、光学兵器技術を可能な限り入手しろ。現在各国はISの研究開発にお熱のようだが、軍用MSは今後女性しか乗れないISと比べて安定した主力兵器になる。そのシェアをMR社ではなく我々が手にするのだ。近い内に息のかかった企業からお前達にISを送る、それで少しは調査が捗るだろう。頼んだぞ。」
「わかりました。では、この後予定がありますので失礼します。」
「久々に会ったのだ。時間も丁度良いし食事でもどうだ?」
「お申し出は大変嬉しいのですが、恋人がそろそろ限界のようなので構ってあげないといけません。」
「それでは仕方がない。オータムもMR社の調査頼んだぞ。」
「……わかってるよ。」
「相変わらずの忠犬のようだ。」
大地は、スコール達への盗聴をここで切り上げてブロッサムユニットを格納した。
<思っていたより普通な感じの会話だったね。>
「あぁ、もっと過激な指示を出されたりするんじゃないかと思ってたけど……てか、ヘヴンリージャッジメントってなんだかわかる?」
<あぁ~、白騎士事件の時に大地とウォドム達が静止衛星から撃った迎撃ビームの事を米軍がヘヴンリージャッジメントって呼称してるんだよ。>
「なんとまぁ……まぁとにかく、スコールたちはまだ亡国企業の指揮下に入るみたいだね。とりあえず今後も対応は変えずに監視は継続、ISが支給されたらより厳重にね。」
<わかったよ大地。>
そして、先程ブロッサムユニットで音声を拾いつつ社内ネットワークをハッキングして監視カメラの映像記録データからスコールが話していたと思われる人物を見つけてターンXへ通信を入れる。
「ターンX」
ーどうされました?ー
「今から送るデータの男性を可能な限り偵察衛星を使って監視して欲しいんだけど可能かな?」
ーデータ受信、現在位置が分かっておりますので可能です。お任せください。ー
「頼んだよ!」
ー肯定ー
ターンXとの通信を終えて、大地はそのままMR社へ飛び立つのであった。
~数時間後~
千冬は、束と共にMR社へ徒歩で向かっていた。
「束、今回のルナの呼び出しについて何か聞いているか?」
「いんや~、束さんにも内容が知らされていないんだよね~」
「そうか……ところで、お前は平然と歩いているが大丈夫なのか?まだ失踪中の身だろう?」
「ふっふっふ~!これをご覧あれ~!束さん特製の認識阻害装置!私のISに組み込んだ機能の一つでこれを起動させている間は私の指定した人物以外には別人に見えているのだよ!凄いでしょ?」
「そうか、問題ないのならいいんだ。」
「むむむ~?ちーちゃん元気ないね~?どったの~?」
「なんでもない……」
「あっやし~!もしかしてあれかな?IS委員会の人から日本企業に出向してモンド・グロッソ?とか言うよくわかんない競技に誘われた件で悩んでいるのかな~?確か返答期日は明日だったっけ~~~?」
「……見ていたのか。」
「だってちーちゃんに変なことしないか監視しようと思って学校の監視システムハッキングして見ていただけだよ~!ってあだだだだだだだ!黙ってアイアンクローはなしだよ~!!」
「黙れ、のぞき見をしていたお前が悪い。」
「んも~~~、酷いな~。だー君が見てたらきっと笑ってたね~!」
「……大地はいつ戻ってくるんだろうな。」
「ん~、意外とすぐかもよ?最近ルナちゃんとターンXが変に動き回っているし~」
「だといいんだがな……」
こうして二人はMR社へ到着し、ルナが指定した地下倉庫へと向かっていた。
地下の倉庫に着いて大きなドアが開かれるとそこにはルナが立って手を振っていた。
そして二人はルナの後ろにいた人物を見て言葉を失って目を見開いて呆然としていた。
ルナの後ろにはスーツ姿でフルフェイスのヘルメットで頭部が隠された男が後ろを向いて立っていた。
誰とは思わない、二人にはそれで十分だった。
そのフルフェイスは過去に二人とも見たことのあるデザインで、その男はゆっくりとこちらを向いて首を少しかしげていた。
数分とも思える沈黙の中、束が先に口を開いた。
「だ、だー君?」
「そうだ……本当に大地……なのか?」
二人の問いに男は少し黙ったままであったが、数秒後にはルナと共に笑い始めた。
<あはははは!流石にここで笑うのは無いよ~>
「はははは!ご、ごめんごめん!俺にとっては少しぶりって感覚だけど皆からすると3年ぶりって考えたらどう反応したらいいかわかんなくなっちゃって…ははは…ごめん二人とも、久しぶりだね。」
<まったく、大地は変わらないな~。ってなわけで二人にサプライズゲストを連れてきたよ!>
ルナと男もとい大地との会話を聞いて、千冬は少し涙ぐみ、束は数m離れていたのにも関わらずに一跳びで大地へ飛びついてワンワンと泣き始めてしまった。
それを大地は、またこの展開、この後の後始末どうしようかな~と考えていた。
次回へ続く
お読みいただきありがとうございます。
先日、りんご農家さんから規格外リンゴのお裾分けをいただきアップルパイを作りました。
やっぱり焼き立てのアップルパイは美味しい!
なお、私はシナモンが少し苦手なのでシナモン抜きで作りました。