IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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29話ー選抜戦と火星状況ー

 

 火星調査部隊が出発してから約9カ月程経ち、大地が目覚めてから約1年が経過した。

 調査部隊とは定期的に通信を取っており、まもなく火星軌道上へ到着予定となっていた。

 そして、この約9ヶ月の間に大地は前話にて∀から供与されたテレポートの技術データを元に転送ゲートを作り、地球の生産工場と静止衛星軌道上のウドガルドを繋いだ。

 そのため、従来とは数倍の効率で物資の運搬が可能となりMR社の販路がさらに広がった。

 そして、各国から要望があり既存のMSより大型化した建設作業用MSの開発要請をMR社は受諾し、現在ウォドムの頭部武装のないデチューンしたモデルを作成し、公開時期を見計らっていた。

 

 そして、大地は現在スコールとオータム、そして認識阻害装置で別人に扮している束を引き連れてIS戦技訓練校の実戦訓練場に簡易的に作られた観客席に座って目の前で行われているIS同士の試合を見ていた。

 

 本日は、IS戦技訓練校にて関係各所を招いてIS搭乗者たちの練度を披露すると共に、日本人のみで行われるモンド・グロッソ出場選手日本代表選定試合(後の国家代表)及び、各国留学生による選手をトーナメント試合が執り行われていた。

 

 何故留学生組がいるのかと言うと、日本IS戦技訓練校と名前はついているものの、全国で現在進行形で実用段階になったばかりで稼働データが著しく不足しているISを実戦投入するわけにも行かない各国の国際IS委員会支部が、日本が訓練校を開講したと情報を聞き、稼働データ取得及び他国のIS技術情報を入手すべく留学の打診が後を絶たなかったため急遽留学生のためのクラスが設けられ、日本代表を決める試合中に暇なこともあり、練度披露を兼ねて大地達のいる実戦訓練場の隣にある第2訓練場で試合が行われていた。

 

 そして現在、大地達の目の前で戦っているのは日本第1世代IS『玉鋼』を改修し、世界各国が目指している第2世代機のコンセプトモデルとして1.5世代とも言える機体に仕上げた全身をグレーの装甲で統一された倉持技研製『試製・打鉄』であり、互いに装備した人の背丈程ある刀を空中でぶつけ合い切り結んでいた。

 

「どうですか?社長の目から見た試製・打鉄の性能は?」

 

 戦闘の様子を眺めていると、左隣に座るスコールが話しかけてきたので大地はいったん先頭から目を話してスコールへ視線を向ける。

 

「現状、コアと白騎士の映像データだけでよくここまで組み上げたと言いたいね。俺が眠っている間に世界の技術レベルはかなり上がったようだ。MSと比べて機敏だが、やはり挙動が重い機体だなとは思ったよ。防御重視の機体だから仕方がないんだろうけどね。」

 

 大地の指摘通り、試製・打鉄は原作に登場する打鉄と比べてかなり堅牢で角ばった装甲が目立ち、搭乗者の胸部や頭部も装甲で一部が覆われていてハーフスキンに近い状態であった。

 視線をスコールから再び戦闘をしている2機のISに戻すと、丁度大地から見て左側のISの振り上げた実体剣が右側の機体の肩口の装甲未装着部に辺り絶対防御が発動、それが止めになったのか決着がついたようで試合終了のブザーが鳴る。

 左側のISが大きく右手を上げて勝利の余韻を味わっている光景を見ながら、右側に座るスーツ姿になっている束へ声をかける。

 

「束さん的にはどうかな?」

 

 大地の質問に、束は数秒そうだな~と顎に指をあてて考えた後にこちらに視線を向けて口を開いた。

 

「ん~、凡人たちにしては随分安全策を取った機体に仕上がったかな~って感じかな~!まぁ、第1世代の宇宙服みたいな子の方がまだ好印象だったよ~。目の前にいる機体達は宇宙での活動が全然考慮されていないのは束さん的にはマイナスポイントだらけだよね~!戦わせることしか考えてないじゃん~そんなつもりで配ったわけじゃないんだけどね~ふざけやがって。」

「束さん、ステイステイ」

 

 発言がだんだんとダークになっていく束さんを大地が鎮めて数十分経過し、ついに決勝戦になると言うタイミングで試合会場に千冬がISを纏って入場した。

 千冬のISも試製・打鉄であったが、千冬の要望と束の運営するR&C社と倉持技研が提携した結果、R&C社が改修パッケージを提供した。

 他の試製・打鉄とは違い、防御重視で角ばった各部装甲が軽量化のため小型化または外されていたり、打鉄には本来搭載されていない背部追加スラスターが装備された改修機に仕上がっており、束曰く『もっと高性能に改修できるけどそれはそれでバレたらめんどいし、やるならフレームから全部一新させたいから今回は適当だよ!適当だけどちーちゃんが乗るから全力で改修しました!』といつも通りの束さんクオリティーで提供され、データを収集しようとした倉持技研の技術スタッフ達が頭を抱えてしまったのはもはやご愛敬であろう。

 会場へ入場し、空中で浮遊する千冬を見て先程までのダークな束はどこへ行ったのやらランランと目を輝かせて千冬へ手を振り始めた。

 それに気づいたのか千冬はこちらへ視線を向けて無言のまま頷いてきたのでこちらも頷いて返すと少し微笑んだ千冬はキリっと表情を正して対面に向いて相手を待った。

 

 ここで千冬の乗る改修された試製・打鉄を紹介するが、R&C社のパッケージ提供により現状の名称が『試製・打鉄改 白兎(はくと)』と言う名前になっている。

 パッケージ名は束の案であるが、スペックとしても機敏に飛び跳ねるような挙動で空中機動を行うことができ、千冬の得意とする近接戦闘において相手の懐に飛び込みやすいという利点もあり千冬も気に入っていた。

 なお、カラーリングはパッケージ名通り白一色で統一されており、試合会場でもかなり目立っていた。

 乗り味的には、千冬曰く『試製・打鉄よりは軽く、白騎士よりは重い』とのこと。

 

 千冬が入場してから数十秒経って相手側の試製・打鉄が会場へ入場し、互いに高度約10mまで上昇し相対すると礼をした。

 そこで大地は、相手側の顔に見覚えがあるなと思ったためルナのハイパーセンサーから提供される望遠映像を網膜投影して見ようとすると、会場にアナウンスが入る。

 

「これより、決勝戦。織斑千冬、山田真耶の試合を開始する。」

 

 そして試合開始のブザーが鳴り響く。

 まさかの原作キャラの名前が出たことにより、大地は一瞬吹き出して周囲の人に不思議がられたのであった。

 ブザーが鳴った瞬間、真耶は拡張領域から試製・打鉄用突撃銃を2丁取り出し照準を付けようとすると千冬はすでに正面にはおらず、真耶の搭乗者は驚愕した。

 

「……っ!?何処!?」

 

 真耶はそのまま、ハイパーセンサーを索敵モードで千冬を探すと真下に反応があり即座に視線を向けると、地面すれすれを飛行し真耶の真下まで来ると地面を両足で蹴り、急上昇する形で強襲してきた。

 

「うそっ……!!」

「遅い!」

 

 驚愕している真耶を他所に千冬は真耶の懐に入りながら片手に持った試製・打鉄用実体剣を振り上げた。

 

「…!?でも!……きゃぁ!」

「……!やるな!」

 

 完全にインファイトゾーンまで接近した千冬に対して真耶も咄嗟の機転を働かせて、バックステップと同時に試製・打鉄用突撃銃の弾倉をパージして千冬の方へ飛ばす。

 それに気づいた千冬は弾倉を避けるように身体を反らしたが、チャンバーに一発ずつ残っていた実弾を真耶が的確にパージした弾倉へ命中させ、千冬の背後で爆発が起こり巻き込まれる。

 だが、千冬は臆せず背後で起きた爆発の勢いも利用し真耶へ接近、振り上げたままの実体剣を振り下ろし、真耶の肩装甲部に食い込ませ強制パージさせ、互いに距離を取った。

 そんな初っ端から白熱したバトルを見せられて大地達の周囲にいた観客達は大いに盛り上がっていた。

 

「凄いな。千冬さんの白兎もだけど、それに負けずに挑んで機転を利かせる山田さんも相当な腕だね…皆IS乗って長いのかな?」

 

 少し高揚した声色で呟く大地に対して、スコールが応える。

 

「この日本IS戦技訓練校にスカウトされた選手は、千冬ちゃんみたいな適性検査で好成績を収めた人が中心になっていますが、実際に教鞭に立っている方々は第1世代のプロトタイプ時代からのテストパイロットや軍関係者ですわ。ある程度の飲み込みの早い生徒達ならあのくらいの戦闘機動は出来ると思われます。」

「確かに、ISと軍事のプロフェッショナル達が集まり効率的に教鞭を行えばこう言う感じになるのか。もしかして指導員は日本以外からも来ている感じなのかな?」

「えぇ、私が聞いている話ですとアメリカ、ドイツ、フランスから指導員が派遣されていると伺っています。それでなければ海外からの留学生も受け入れしていないでしょう。」

「確かにそうだね……試合が動くか。」

 

 大地とスコールが会話している中も、千冬と真耶の試合は続いていた。

 互いに距離を取った後、真耶が突撃銃のマガジンを拡張領域から突撃銃を構えた空間の少し下方に呼び出すとそのまま両手に持った2丁の銃を真下に振り下ろし、2丁同時にリロードを完了させる高等テクニックを披露した後、千冬に鉛玉の雨を降らしつつ上昇し始めた。

 それに対して、千冬は白兎の性能を最大限に生かしたジグザグと鋭角な機動で回避し真耶を翻弄させる。

 その光景が数分間続いたが、先に動きがあったのは真耶の方だった。

 

ババババババババババ!カカカカカチン! 

 

 真耶の両手の持つ突撃銃の玉切れだった。

 その音と共に真耶は再度リロードを試みたが、千冬が咄嗟に右手に持っていた実体剣を槍の様な構えで真耶へ投擲する。

 

「……!?剣をそんな使い方……!?」

 

 驚いた真耶は、叫びながら身体をのけぞらせて回避するが投擲された剣へ視線が固定されてしまい、一瞬千冬を視界から外してしまう。

 その一瞬の隙を、千冬は見逃さずに瞬間的に全ての可動スラスターを後方へ向けて爆発的な加速を行い急上昇し真耶へ接近した。

 

「目の良さが命取りだ!」

「……な!?」

 

 千冬は真耶へ肉薄すると加速した勢いを殺さずに、PIC制御を切ってISの重量を質量兵器として摩耶へショルダータックルを命中させ一気に真耶を実体剣を投擲した方角へ吹き飛ばす。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 叫びながら吹き飛んだ摩耶に対して、千冬は先程投擲した実体剣が真耶の近くで落下しているのを補足して空中でキャッチするとそのまま真耶へ距離を詰める。

 

「終わりだ。真耶。」

「一体何が……って!?」

 

 吹き飛んだ真耶が姿勢制御をして姿勢を立て直し千冬を見ると、千冬は真耶の眼前におり、首元に実体剣が突きつけられていた。

 

「どうする?まだやるか?」

「流石先輩ですね……サ、サレンダーします。」

 

 真耶はそのまま両手に持った突撃銃を拡張領域へ格納し両手を上げた。

 数秒後、ビー!と試合終了の合図が響く。

 

「山田真耶、サレンダーにより勝者!織斑千冬!」

 

 会場にアナウンスが響くと、観客席から大きな拍手が送られた。

 それに対して、千冬は右手を上げて返していた。

 これで、千冬は日本代表モンドグロッソ選手となり今後は千冬をメイン選手に置いたチーム体制を作り、2年後のモンドグロッソに向けて邁進することになる。

 そして、大地は千冬がMR社にまた来るときにお祝いをしないとと考えているとターンXからの通信コールがなり、思考通信で応答した。

 

ー大地様、火星調査隊より緊急通信を受信しました。お忙しい中申し訳ありませんがご確認ください。ー

(問題ないよ。ルナ経由でデータを見せてもらえる?)

ー肯定、現在ルナへデータ送信中。送信完了。ー

<データ受信したよ!……これは、大地の網膜に投影するから確認して。>

(わかった……これは…)

 

 ターンXからのデータをルナ経由で見ると、そこには画像付きのメッセージが映し出された。

 

ー緊急連絡

 

 火星引力圏へ到着し、第1衛星フォボスへ接触。

 簡易拠点として活用し、偵察衛星No2を使用し地上撮影を実施。

 画像確認中に人工物のようなオブジェクトを複数発見。

 同時に火星静止衛星軌道上に配置した偵察衛星No1による動画撮影データ確認後、複数の移動物体を確認。

 なお、移動物体の群れは複数存在しており、交戦の様な閃光を確認。

 複数の勢力が存在している可能性あり。

 そのため、ムットゥーの火星降下任務を実施するか判断を仰ぎます。

 以下画像データを添付。

                        以上ー 

 

 文章を読み終わった大地は、添付された複数の画像データを見て表情が固まる。

 画像は真上から撮影されたために、詳しい全容がわからないがそのオブジェクトと移動物体のシルエット達に大地は遠い過去の記憶が蘇ってくる。

 

(嘘……だろ……)

<大地、これが何かわかるの?>

(この構造物はおそらくハイヴと言われている。そしてこの付近で動く群れのようなシルエットは……おそらくBETAだ。なるほど……小惑星状の飛来物も頷ける。)

<BETA……大地が知っているってことはもしかして……>

(あぁ、ISともガンダムとも違う作品からのお客さんだ。『マヴラブ』と言う作品に登場する人類の敵だよ。そして更に質が悪いのはこの画像だ。)

 

 大地はそう言うと送られてきた複数の画像の内の1枚を拡大表示させた。

 

<この群れ?なんかBETAと形が違う機械的な見た目みたいだけど……同種?>

(この白い塗装が特徴で横長な大型の物体と、その周辺にいるダークグレーの小さな複数の物体……俺の推測が正しければこれはBETAじゃない、ハシュマルとプルーマだ!……ターンX!)

ー肯定ー

(∀に至急連絡を取り、この画像データを送ってデータ照合してもらって!もしかしたら∀のデータベースに該当機体が出てくるかもしれない!)

ー肯定、至急連絡を取ります。ー

<大地、それってもしかしてこれ黒歴史にいる機体ってこと?>

(あぁ、おそらく……こりゃぁ、火星は今大怪獣戦争中って事だな……ははは)

ー大地様、system-∀99より返答。該当機体あり、全体画像と名称以外の記録がありませんでしたが大地様の想像通りと思われます。ー

(ありがとう、ターンX。∀にもお礼を言っておいて欲しい。)

ー肯定、伝えておきます。ー

 

 ここまで思考通信で話していたが、一気に頭に入ってきた情報に大地は頭を抱えてしまう。

 それに束が反応した。

 

「だー君、大丈夫?なんか思考通信してたっぽいけど?」

「あ、あぁ……大丈夫だよ。ただ、この後MR社に戻っていろいろ検討しないといけない事が判明してね。」

「それって、火星の事?」

「うん、火星は今大変なことになっているよ。」

「大変?」

 

 束が首をかしげてこちらを伺ってくるのに対して、大地は言うか迷ったが言う事にした。

 

「火星に異星起源種と呼ばれているBETAと、厄災戦の負の遺産……モビルアーマーがいる。」

 

 

次回へ続く

 

 

~??サイド~

 

「第89資源採掘部隊との交信途絶。第90資源採掘部隊に確認を要請。」

「思考……思考……」

「敵情報の確認、現在収集データを元に解決策を模索開始。」

「思考……思考……」

「ハイヴ、レーザー推進用個体による長距離熱量攻撃を提案。」

「レーザー用個体の最優先生産を開始。」

「第90資源採掘部隊による敵小型個体を回収確認。」

「速やかにハイヴまで移動させよ。」

 

 

~??サイド~

 

「本機より直掩各機へ、有機生命体による侵攻を阻止せよ。」

「ジェネレーター出力最大、各直掩機へマイクロウェーブ送電開始。有機生命体群を殲滅せよ。」

「本機より採掘部隊へ、同胞の救出状況を報告せよ。」 

「報告確認、28時間後に合流。No57を再起動させる。」

 

 




 お読みいただきありがとうございます。

 年始のバタバタが落ち着いて時間が取れるようになりましたが、今年は読書を沢山して文章作成能力を上げようと考えてます。
 と言っても書店で気になった書物を読み漁って気になる語彙や表現の仕方をメモしたりして覚えるだけですが……

【御礼】
 前話にて誤字のご指摘をくださりありがとうございます。
 とても助かっております。
 また、誤字を見つけてくださった際はご指摘の程よろしくお願いします。
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