IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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31話ー月面接触ー

 

 モンド・グロッソが終わり、千冬が原作通り『ブリュンヒルデ』の称号を手に入れて日本への帰路についている途中。

 プライベートジェットの中で大地、束、千冬が寛いでいる中で久しく聞いていなかったターンXからの緊急コールが鳴り響いた。

 大地は座席から跳ね上がると空中投影ディスプレイを展開して応答した。

 

「どうしたのターンX!」

ー大地様、現在月軌道哨戒部隊より緊急コールを受信しました。現在情報取得中……取得完了。リアルタイム映像、ディスプレイに映します。ー

 

 ターンXはそう言うと大地眼前に表示されていた空中投影ディスプレイに哨戒部隊からの少しノイズの混じった映像が再生され、近くに座って聞いていた束と千冬もディスプレイを除き込んだ。

 

「これは…」

 

 大地は懸念していた可能性の一つが再生された映像により確信に変わって歯噛みする。

 

「だー君!ビーム兵器が弾かれたの!?」

「あの出力のビームを軽々と弾くのか……」

 

 束と千冬もその映像に驚愕していた。

 映像に表示されていたのはアスピーテ級戦艦「エトナ」から放たれた、デブリや小惑星を一瞬で蒸発させるほどの出力を持つ無砲身型のメガ粒子砲が飛来物に放たれて数秒後に飛来物周囲にビームが弾かれたように拡散していく光景だった。

 その後、エトナは艦載機の強化ジェネレーター装備型のウォドム2機と共に数度メガ粒子砲を発射したが、観測情報は飛来物の一部融解を確認したが致命的なダメージにはなっていない様子だった。

 そして、この映像には続きがあった。

 エトナと付近にいたマウナケアがビーム兵器対策ありと判断し、対艦ミサイルの斉射を行った。

 大型のミサイル数十発が一斉に飛来物へ向かっていくが次の瞬間、飛来物から4本の閃光が走る。

 閃光が走ってすぐに対艦ミサイル群から複数の爆光を観測、半数が迎撃され残りの半数が飛来物へ命中し外殻の一部分離を確認した。

 そして、現在もメガ粒子砲と対艦ミサイルによる混成攻撃で多少のダメージを与えつつも飛来物は月面へと向かい続けていた。

 その光景を見て、束は大地へ視線を向ける。

 

「だー君、今のビームを弾いたのって、ターンXのバリアみたいなもの?」

「いや、観測情報からもIフィールドや通信障害のような物は検出されなかった。おそらくナノラミネートアーマーだと思う。あれは、エイハブ・リアクターって言う特殊なジェネレーターから放出される粒子に反応する金属塗料を蒸着した装甲で、本来はリアクターによる通信障害が起きるはずなんだけど…BETAの連中、似たようなものを作ったみたいだ。」

「大地、その装甲もそうだがあの閃光はなんだ?」

「多分以前からフォボスの部隊からの情報にあった光線級BETAだと思う。飛来物に対してのデブリ除去に配置してた個体達だと思う。」

「そんな奴までいるのか……」

 

 大地の説明に、束と千冬は驚きを隠せずに現在もなお送られてくる戦闘映像を見ていた。

 

「にしてもあそこまで防御面を上げてきたとは……ターンX、迎撃用の艦隊は出せる?」

ー肯定、現在迎撃艦隊へスクランブルを発令、『LRRユニット』を装備艦が順次月面基地より出港中、出港完了まで300秒。ー

「ターンX、月面基地防衛部隊とウドガルドの常駐MS部隊にも対宙警戒を発令。迎撃部隊出港後、アスピーテを出港可能状態にしておいて。後、試作段階のグリムエッジ部隊は出せる?」

ー肯定、各部隊へ対宙警戒を発令します。グリムエッジ部隊は出撃可能ですがビーム兵器を主体にした部隊です。実弾兵装を持たせますか?ー

「いや、おそらく飛翔体外殻と重要施設以外にあの装甲を装備させたハイヴの外に出る個体は少ないと思う。奴らは質より量で攻めてくるはず。装備換装はさせないけど、念とためミンチドリルを腰部ラックに装備させて。投入できる戦力はなるべく投入したい。」

ー肯定、グリムエッジ部隊をアスピーテへ乗艦させ防衛戦力に組み込みます。ー

「お願いね。ちなみに月面到達までに破壊は可能?」

ー現在もエトナ、マウナケア、キラウエアの3隻からの砲撃を継続していますが決定打には至っておりません。落着率は85%です。現在飛来物は増速を開始、現在落着予想座標付近へムットゥー隊を先行させ後続にウォドム隊およびマヒロー隊を向かわせております。ー

「速度を上げたのか……各MS部隊には密集陣形を維持させて。もしMSが撃破された場合、MSの残骸はBETAに回収されないように徹底させて。俺も月に上がる。今からそっちへ行くからターンXも動けるように準備して。ルナ、行くよ!」

ー肯定、急行中のMS部隊へ通達します。大地様の到着をお待ちしております。ー

<わかったよ大地!>

 

 そうして、ターンXとの通信を切ると大地は座席から立ち上がり、狭い機内なこともありルナを頭部だけを部分展開させた。

 すると、束と千冬も立ち上がる。

 

「だー君!私達も連れて行ってよ!」

「そうだ!危険な存在なのだろう?私たちのISも戦力になるはずだ。」

「……それはできないよ2人とも。」

「どうして!」

「何故だ!」

 

 同行を拒否した大地に対して、2人の表情は怒りのものへと変わる。

 それに対して、大地はルナを纏った顔を向けて応える。

 

「まず、俺は2人に危険な事はさせたくないって事が第1だけど。現状火星でモビルアーマーとの戦闘で俺の知っているBETAとは異なる進化を遂げているBETAの戦力が未知数なんだ。だから第1接触である今回は本当に何が起きるかわからない。だから、2人にはMR社にいる君たちの家族を守っていて欲しいんだ。できるね?」

 

 大地の発言に対して、2人は納得のいかない表情でこちらを睨みつける。

 それに対して、大地は一度ルナを解除して2人を抱きしめる。

 

「また束さんと千冬さんを不安にさせてしまって申し訳ないと思っているよ。大丈夫、すぐ戻ってくるから……戻ってきたら千冬さんの優勝祝いのパーティーをやろう。一夏君や箒ちゃん達も誘ってさ。」

「や、約束だからね……だー君また私達を泣かせたらだー君の身体をナノマシン単位で分解するからね!」

「大地……無事に帰ってこい。私はお前がいないと……」

 

 2人の発言に対して、大地は意を決して真剣な表情になる。

 

「束、千冬……」

「ふぇ……?」

「……え?」

 

 束と千冬は今起きたことに思考が停止した。

 なんと、付き合い始めてから初めてとなる大地からのキスをされたのだ。

 困惑する2人に対して、大地は直ぐに2人から距離を取りルナを頭部展開して後ろを向く。

 

「じゃ、じゃぁ行ってくるから。……MR社の事頼んだよ!スコール達には俺だけ所用で帰国が遅れるって言っておいて!ルナ!」

<はいはーい!空間座標設定完了、搭乗者量子変換完了、テレポート開始!>

 

 2人の反応を確認せずに大地は首から下の身体を量子変換しターンXヘッドだけになると一瞬でテレポートしてプライベートジェット内から姿を消した。

 それに対して、顔を茹でだこのように真っ赤にした2人はそのまま数分間放心状態になり、落ち着いたころに口を開いた。

 

「ち、ちーちゃん……///」

「た、束……///」

「初めてだー君からされたね……///」

「あ、あぁ……自分達からするのとはわけが違うな……///」

「そう……だね……///」

「もう、我慢できない。帰ってきたらだー君押し倒さなきゃ……」ハイライトオフ

「束、その時は私もだぞ……あちらから手を出してくれるまで待つつもりだったがもう限界だ……」ハイライトオフ

 

 2人は先程の余韻が残っており、まだ顔の赤面は収まっていなかった。

 実は付き合い始めて度重なるデート中に千冬や束から大地にキスすることはあっても、年齢的なことを考えて大地自体は自分から進んでキスしたことがなかったのである。

 ルナ&ターンX&護衛用BOID曰く、ヘタレなだけだったと思うと言うのは置いておこう。

 もちろん、2人からのアピールがあったものの、軽いスキンシップをする程度で一線を越えることも未だ起きてはいなかった。

 こうして、月へ行った大地が戻ってきたら2人で押し倒そうと決意し、機内窓から見える月を不敵な笑みで見ていた。

 

 

~地球静止衛星軌道~

 

 

 大地はルナの展開により頭部パーツだけの状態でウドガルドの艦上へテレポートしていた。

 狭いプライベートジェットの機内から広い空間に来たため、ルナはそのまま頭部から下の部分も展開し、ムーンブロッサムが姿を見せる。

 そして、大地は久々に展開するルナを確かめるように両手のマニュピレータを握ったり開いたりしていると、ターンXがこちらに飛行してきた。

 

ー大地様、お待ちしておりました。ー

「待たせたねターンX、久々にルナを纏ったからちょっと嬉しくてちょっと遊んじゃってたよ。」

ー許容範囲内のため問題ありません。ルナ、久々の宇宙はどうですか?ー

<んー!やっぱり無重力の方が飛びやすくていいよ!まぁ、この後やることは少し不安だけどね……>

ー肯定、現状は大地様の記憶の情報、火星調査部隊からの間接的な情報と哨戒部隊からの情報しかBETAの情報は在りません。ー 

「……ルナとターンXにはまた無理させると思うけど、よろしくね。」 

<大丈夫だよ!早く終わらせて束と千冬の所に戻ろうね!>

ー肯定、全能力をもってサポートさせていただきます。ー

「ありがとう!じゃぁ行こうか!」

 

 こうして、大地はルナを纏ったままターンXのコックピットへ搭乗し月面基地へテレポートした。

 

 

~月面基地~

 

 

 月面基地の宇宙港へテレポートした大地達は現在、大地が指示したグリムエッジ部隊の艦載作業中のアスピーテの前にいた。

 MSハンガーから列をなしてアスピーテへ乗り込むMS部隊を見て、大地は非常事態になっているはずなのに久方ぶりに目を光らせて興奮していた。

 

<大地……>

ー大地様……ー

「あ、あぁ……ごめん、こういう量産機が列をなしているのを見るとつい量産機スキーが出てしまってね。」

 

 大地が少し頭を掻きながら未だ艦載作業中の機体達を見つめる。

 そこには、ターンXより少し大柄な体躯を持ち、角ばった装甲と丸みを帯びた装甲が織り交じり重装甲ですと言わんばかりの存在感と共に特徴的なモノアイ、右手にビームライフル、左手に防護機銃付シールドを持ち、腰のラックにはミンチドリルが装備されていた。本来はライトブラウンとダークレッドで塗装されている機体はグレーとダークグレーに塗装されており、左肩のみダークレッドで塗装されていた。

 この機体は、ガンダム閃光のハサウェイ劇中にギャルセゾンと共に運用され、重装甲なれど高推力による奇襲戦法を得意とする反政府組織マフティで使われた重MS『メッサー』であった。

 大地は、少し前から地球で起こり始めた一部の武装組織によるMS無差別テロに頭を悩ませていた。

 販売後の軍事転用などで、戦地で使われているのは知っていたが、一部が反政府組織などの鹵獲されたり、フロント企業経由で横流しされた物などでそれなりの数が流れていることが発覚していた。

 そして、各国が秘密裏にMSの製造を行い試作段階の物がいくつかある事をルナやターンXを通じて知り得ていたので、今後更にMSによる戦闘行動が過激化すると考えられた。

 そこで、秘密裏にそう言った組織や非人道的な戦闘行動をする者たちを排除する特殊部隊を作ろうと考え、大地は密かに月面基地でメッサーを選定し生産を開始していた。

 大地がアスピーテへ艦載されていくメッサー隊『グリムエッジ』を見ていると最後の一機が乗り込み、アスピーテから艦載作業完了の連絡を受け取ると、大地はターンXを甲板の船首付近へ飛んで降り立つ。

 

「よし、アスピーテ出港。飛来物落着予想ポイントへ急行して。」

「こちらアスピーテ、ドック固定アーム解除を確認。推力上昇、微速前進。これより本艦は飛来物落着予定ポイントへ急行します。」

 

 こうして、アスピーテは大地とグリムエッジ部隊を乗せて月面港を出港し、落着予想ポイントへ進路を取った。

 

 

~月衛星軌道~

 

 

 現在、月衛星軌道まで接近した飛来物を哨戒部隊は増援として到着したキラウエアも含め3隻で迎撃を試みていた。

 宇宙戦艦であるアスピーテ級3隻による無砲身型メガ粒子砲と対艦ミサイル、そして艦載機である強化ジェネレーター装備型のウォドム隊による砲撃を受けても飛来物は多少の損傷を負いつつも月面へと進路を勧め続けていた。

 そんな中、弾幕を陽動に接近し先行偵察を行っているマヒロー隊からの飛来物の詳細な3Dデータが送られてきた。

 データを解析すると、全福300m、全長500m程の大きな半球状の分厚い外殻の裏側に円筒状のユニットがくっ付いておりそれが本体だと予想された。

 即座にこの情報は各部隊へ通達され、機動力のあるマヒロー隊が陣形を組んで外殻裏側への攻撃を行おうとする。

 

「こちらマヒロー1、先行偵察隊からの情報に基づき飛来物外殻裏本体部への攻撃を行う。展開中の全9機を2つの部隊に分ける。1~4を攻撃部隊、5~9を陽動部隊とする。各機、編隊を組め。」

「「「ラージャ!ラージャ!」」」

 

 マヒロー1の指示により、マヒロー達がそれぞれ編隊を組んで飛来物外殻裏へと飛翔した。

 飛来物への接近中に先行偵察に出ていたマヒロー隊とすれ違う際に更に情報を受け取る。

 

「こちら、先行偵察部隊から攻撃部隊へ、外殻裏への接近は注意されたし。ミサイル迎撃用光学兵器搭載個体より高出力光学兵器を搭載した個体を確認。随伴機が直撃を受け中破、シールドの対ビーム装甲による可能照射耐久時間は10秒と推定。」

「こちら攻撃部隊、情報提供感謝する。」

 

 偵察隊の報告を元に、攻撃部隊は隊列を変更した。

 攻撃部隊と陽動部隊は横並びの陣形から陽動部隊が前にX字状に展開し、その影に隠れる形で攻撃部隊が後方へ配置された。

 そして数分後、飛来物外殻の隙間に潜む光線級BETAからのレーザーを搔い潜り外殻裏へたどり着くとマヒロー隊へ光線級BETAより太く出力の高いレーザーが襲い掛かる。

 マヒローが光学センサーを拡大表示し、照射元を見ると情報にあった光線級BETAの二足歩行で特徴的な緑の肌と2つの目のような照射器官を持つ個体ではなく、その数倍の体躯を持ち大きな1つ目の照射器官を持ち合わせ、尻尾のような物まで持ち合わせている個体、重光線級BETAがそこに居た。

 

「高出力レーザー攻撃を確認、各機散開、先行偵察部隊からの情報と合致。大地様から提供された情報の重光線BETAと判断。散開後、陽動部隊へ攻撃を集中させ攻撃部隊が本体及び重光線級へビーム攻撃をする。」

「「ラージャ!ラージャ!」」

 

 マヒロー隊達はレーザー攻撃を防いだり回避しつつ散開し、陽動部隊がレーザーを誘発させるように動き、攻撃部隊は突撃タイミングを見計らっていた。

 そして、重光線級の照射リチャージタイミングの計算が終わり照射終了タイミングを見計らって攻撃部隊が一気に突貫する。

 

「各機、次の重光線級の照射後、突撃と同時にグレネード弾を装填分全弾発射。その後、接近し全機メガ粒子砲を一斉射、重光線級を優先的に撃破する。」

「「ラージャ!ラージャ!」」

 

 マヒロー1の指示に2~4は一気にグレネード弾を発射、重光線級の近くに出現した光線級がそれを迎撃するが、グレネードの爆発で光線級BETA達はマヒロー隊を数秒見失ってしまう。

 その数秒の隙に、攻撃部隊は更に距離を縮めてグレネードの爆煙から飛び出す。

 そして、光線級達がマヒロー隊を視界に入れた時にはマヒロー達は右肩に装備しているシールド内蔵型メガ粒子砲の砲口を向けていた。

 

ビシューン!ビシューン!ビシューン!ビシューン!

 

 菱形に編隊を組んだ4機のマヒローが一気にメガ粒子砲を発射する。

 その閃光は迷うことなく重光線級達に命中すると、重光線級BETAは命中した上半身部位からビームの高熱により蒸発し煙を上げた脚部だけ残して消え去る。

 数回の攻撃後、対象の撃破を確認した攻撃部隊は更に接近し本体への攻撃を行おうとすると本体の方で変化が起こる。

 本体後方部の外殻が割れ、そこから一気にガスのようなものが噴射され数秒後に付近にいた光線級がガスに向かいレーザーを照射する。

 すると、噴出したガスが点火する形となり飛来物は一気に加速し始めた。

 それを確認したマヒロー1は現在艦隊指揮をとっているエトナへ指示を求めた。

 

「マヒロー1よりエトナへ、飛来物後部より推進機関出現し加速を確認。任務継続で良いか?」

「こちらエトナ、飛来物の加速確認、速度上昇率が不規則なため正確ではないが、およそ300秒後に当艦隊防衛ラインを突破すると推察。急行中の迎撃艦隊へLLRユニットによる支援砲撃を申請。マヒロー隊は重光線級及び光線級BETAの掃討を主目的に変更、迎撃部隊の砲撃開始を合図に撤退し母艦へ帰投せよ。」

「こちらマヒロー1了解。光線級BETA掃討任務へ移行する。各機、編隊を密集陣形へ変更し投射火力を上げる。」

「「ラージャ!ラージャ!」」

 

 こうして、マヒロー隊が光線級及び重光線級のBETAを排除しつつアスピーテ級3隻が継続的に外殻部を破壊して90秒ほど経過したころに迎撃艦隊から通信が入る。

 

「こちら迎撃艦隊、旗艦アスピーテ級5番艦マウナ・ロアである。支援要請を受諾。これよりLLRユニットによる長距離質量砲撃を行う。射線をデータリンクにて共有、30秒後に砲撃開始、付近のMS部隊は退避せよ。」

 

 マウナ・ロアからの通信を受けたマヒロー隊は素早く攻撃を切り上げて防御重視の編隊に変更しつつ素早く飛来物から距離を取ると、迎撃艦隊から通信が入る。

 

「マヒロー隊、射線上からの退避を確認、各艦砲撃態勢へ移行せよ。艦ジェネレーター出力上昇。LLRユニットへ電力を供給、電力規定値を突破、徹甲榴弾装填完了、最終安全装置解除、照準最終調整完了。これより3カウントで砲撃を開始する。3、2、1…射出。」

 

 マヒロー隊が離れ、マウナ・ロアからの通信の直後、飛来物の外殻側面に一瞬閃光が3つ迸ったかと思うとそこを起点に大きな爆発が起こり飛来物外殻が大きく砕けて軌道が変わる。

 それを観測していたエトナは、迎撃部隊へ通信を入れる。

 

「こちらエトナ、観測情報をマウナ・ロアへ送信。LLRユニットによる砲撃は有効と判断。砲撃を続行せよ。」

「こちらマウナ・ロア、了解。観測データ取得、引き続き砲撃を続行する。」

 

 こうして、10秒おきに飛来物外殻が砕け、剥がされ、時々大きな爆発を起こしながら哨戒部隊からの砲撃も受けても、飛来物はなおも加速を続けていた。

 

 ここでLLRユニットについて説明をしておくが、これは大地が考えた対モビルアーマー用の艦外付け大口径レールガンユニットで名称は安直で「ロングレンジレールガン」ある。

 ヘルメスユニットのマスドライバー電磁カタパルトの技術が使われており、40ftコンテナ程のサイズの徹甲榴弾かAPFSDS弾を射出可能でナノラミネートアーマー対策に作られていた。

 

 LLRユニットによる砲撃を継続し、飛来物外殻が5割ほど破壊された時点で加速をつづけていた飛来物の外殻に変化が訪れた。

 本体を覆っていた外殻が内部から爆発したように一気に砕け、付近で砲撃を行っていたエトナ達哨戒艦隊へ飛来する。

 それと同時に、本体部が3つに分離しさらに加速し散開、月面を目指し始めた。

 哨戒艦隊及び、迎撃艦隊が本体とは別に降り注ぐ外殻破片の処理をしていると通信が入る。

 

ーこちらターンX、現在アスピーテにて急行中、現時刻をもって指揮を本機が取ります。迎撃艦隊はLLRユニットを使用し哨戒艦隊への破片接触を阻止せよ、哨戒艦隊は分裂した本体へのビーム攻撃を開始、本体もナノラミネートアーマーで覆われいると予想されるが、先程の戦闘データを元に計算した結果、主砲及びウォドム砲にて約10秒以上の集中照射で融解すると予想、各艦及び各機、戦術データリンクを使用し月面基地に近い順で優先順位を設定、本体部への攻撃を開始。艦内補給及び整備中のマヒロー隊は完了次第月面へ降下、月面防衛部隊へ加わりなさい。ー

「こちら迎撃艦隊了解、哨戒艦隊の防衛を行う。」

「こちら哨戒部隊了解、各艦優先砲撃目標へ統制射撃を開始。」

「こちらマヒロー隊、ラージャ!ラージャ!」

 

 ターンXの指示を聞き、各艦及び各機が動き始め本体部への攻撃が集中化する。

 そして、哨戒艦隊が本体部をビームで溶かし、1つ目を撃破すると以前の観測データで確認されていた異常重力波を発する爆発が起こる。

 そのせいで、2つ目の本体を融解爆発させた時に発生した異常重力波と3つ目の目標がレーダー上で重なってしまい、哨戒艦隊は最後の本体部を見失ってしまう。

 レーダーが回復し、最後の本体を見つけると哨戒艦隊の飛行する高度より既に下に降り、追撃むなしく月面へと落着した。

 

 

~月地表部~

 

 

 大地の乗るアスピーテは哨戒艦隊&迎撃艦隊の努力のおかげでMS部隊と共に落着したポイントまで来ていた。

 離れた場所に落下したのにも関わらず、落下の衝撃で巻き上げられた月の岩石や粉塵が月の低重力によりかなりの高さまで巻きあがっていたため、捜索は容易だった。

 アスピーテの甲板に立つターンXの中から大地は先行したムットゥー隊から提供された詳細な地形データを元にMS部隊の配置をルナと検討した結果、出し惜しみすることなく短期決戦で終わらせることを決定。

 地上に展開しているウォドム隊とアスピーテによるビーム砲撃及び対艦ミサイル攻撃を主軸にマヒロー隊がウォドム隊の護衛、ムットゥー隊は侵攻してくるだろうBETA群の牽制及び遊撃を行う。

 そして、地上展開BETA群を掃討後、マヒロー隊及びグリムエッジ部隊を潜入させ本体を撃破する予定であった。

 ここで大地もターンXで先陣を切ろうと考えたがルナとターンX、MS達に押しとどめられたのでウォドム隊と共にビーム攻撃をすることになっている。

 なお、哨戒艦隊&迎撃艦隊はメガ粒子砲及びLLRユニットの限界稼働により長距離ビーム攻撃及び長距離質量攻撃が現在不能となってしまい、対艦ミサイルと防護機銃による支援を攻撃に徹っさせている。

 

ー大地様、まもなく目視圏内です。ー

「わかった、各部隊……この世界での初めての月面白兵戦だよ。気を引き締めて行こう。ルナ、サポート頼んだよ。」

<任せて!>

 

 大地の言葉の後、各部隊から了解と返答があり配置について徐々に落下ポイントへ接近する。

 すると、ムットゥー隊のセンサーに巻きあがった粉塵の中に多数の移動物体がいることを捕捉しデータが共有されると共に、ウォドム隊の脚部センサーに搭載されているソナーからも多数の足音のような轟音が接近していることが共有される。

 全MS部隊が装備した火器を粉塵の方へ向けた瞬間、そいつらは轟音と共に粉塵の中から現れた。

 

 この世界初の『人類に敵対的な地球外起源種』、BETAとの戦闘が始まった。

 

次回へ続く 

 

 





 お読みいただきありがとうございます。

 おのれ寒波……余暇のほぼ全てを除雪に費やした……

 というわけで、やっと本格的なMS戦闘を書ける!……書けるかな……というか、IS要素が迷子ですね。
 少し不安もありますが、自給自足で書いてるこの作品。
 なんとしても完結まで持っていきます。


【御礼】
 前話の誤字ご指摘ありがとうございます。
 指摘くださる方には感謝しかございません。
 また、誤字を見つけた際はよろしくお願い致します。
 
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