「月光蝶……起動!」
その言葉と共に、大地の駆るターンXの背部から虹色に発光するナノマシンが放出されBETA本体部の爆光へ襲い掛かる。
ナノマシンの虹色に輝く奔流は迫りくる紫色とも黒色ともいえる禍々しい光とぶつかり、衝撃で真空であるこの場所に強風が吹き荒れる。
ー月光蝶システム正常可動、ナノマシンによる本体部暴走反応の分解を確認。ー
「流石月光蝶……でも流石にマブラヴ世界での最強兵器だね。抑え込むのがやっとだ……」
<計測完了、異常重力波の上昇率停止、現在機体Iフィールドビームドライブ及び私のPIC制御最大!機体負荷10G……ここまで打ち消しているのに、こんなにGがかかるなんて凄いね。>
ルナとターンXが状況を観測して十数秒経つと、本体部の爆発が収まりハイヴ内を月光蝶の虹色の光だけが光源になり、大地は月光蝶を停止させた。
その後ゆっくりと爆心地へ向かうと、ぽっかりとその空間だけを切り取ったかのような直径1㎞ほどの球状で何もない空間が形成されており、ターンXのセンサーでスキャンを開始する。
「これはやっぱり厄介だね~」
ー肯定、わずかに異常重力波の影響と思われる重力異常が観測さています。ー
<この爆心地を中心に0.1G……微々たるものだけど月光蝶で防がなかったらどうなってたか……>
スキャン結果を見て大地とルナ、ターンXは今後のBETA対策の方針を考えつつ地表で待機していたMS部隊と合流し、月面基地へ帰投するのであった。
ここでG元素による爆発、マブラヴ世界で言う『G弾』について軽く説明をする。
この爆弾はBETAが使う未発見元素であるG元素を使用し作られた『5次元効果爆弾』と呼ばれている。
これは、G元素内から11番目に発見された『グレイ11』の反応消失に至るまで乱数指向重力効果域を拡大させ続ける特性を利用している。
核兵器と違い、放射線物質をまき散らさないため原作でもこの爆弾を使いBETAの殲滅を考える勢力は存在したが、デメリットとして今回の爆心地のような重力異常を半永久的に引き起こし、地球で使用された場合は被爆地の植生が回復しないと言う特徴もあった。
なお、このG元素の臨界反応を制御して動力とした『ムアコック・レヒテ機関』なるものが存在し、それを使用した特殊フィールドと大型荷電粒子砲を搭載した機体が原作にて登場。
それも作れないかと考えていた大地は今回の機会消失で泣く泣く断念したのであった。
~数日後~
戦闘終了後にBETAの死骸等の回収して月面基地に帰投した大地は、MSハンガー内で12時間程かけてターンXを1人で手洗いし、明らかにテンションの高くなったターンXと、ついでに私もと言ったルナもピカピカになるまで洗い磨いた。
その後、月面基地で今回発覚したLLRユニットの砲身限界がネックだと考え、砲身の材質や冷却システム、砲弾サイズの縮小化などの対策を行い、その他にMS生産数増加と束に頼まれていたIS装甲材製作のため月面生産工場の更なる増設を決定して各工作部隊へ建設計画を通達した。
そして今回の戦闘でターンXのスキャンと、しれっとグリムエッジ隊が回収していた騎士級BETAの死骸を調査して発覚したことではあったが、騎士級の前腕盾部以外の甲殻は対ビーム性能が高いのに比べて甲殻厚が薄いせいか実弾耐性が低く、ビームライフルで4発ほどで装甲が完全融解するが、90㎜クラスの実弾だと2発で大体部が砕けて本体へダメージを与えれることが分かった。
そのため、今後のBETA戦闘の対策としてMS携行実弾兵器の作成を開始した。
始めにジオン系実弾兵装のMMP-80マシンガンを製作し、メッサー達に装備させてテストをしたが、対MS戦闘用に作られたこのマシンガンでは90㎜の装弾数が32発と大群で押し寄せるBETAに対して有効ではないと判断。
スティック状のマガジンから大型のボックスマガジンへ変更し、装弾数を240発まで増加させた。
そのため重量が増加したことにより、大地はビームライフルの砲身の下に接続して運用したいなと考えていたが腕部への負担を考えて取りやめ、単体で運用することにした。
また、弾薬の口径数を60㎜下げつつ貫通力を維持させたモデルも試作したがそれは、総重量はほぼ変わらないが装弾数が400発まで増加し、今後試験を行って別武装なども試してみようと決めた。
そして、毎日MR社から来る通信から大地はそろそろ束と千冬の元へ戻らないと拙いなと思い、まだ月面でやりたい事があるけど今度と言い聞かせ、後ろ髪を引かれる気持ちの中月面から地球へ向かうのであった。
~MR社~
大地が地球へ戻り午前の時間帯にMR社へ外聞を考えて自社製無人運転車で戻ると、会社の正門ゲートにはたくさんのマスコミが押しかけており、こちらの車を見付けるやいなやどこぞの環境活動家よろしく車の進路を妨害するように押しかけて大地の乗る後部座席へ必要以上に人が群がった。
「月乃代表!ミスブリュンヒルデの記者会見の日程についてお話を!」
「代表!ミスブリュンヒルデの取材をさせてください!」
「代表は織斑選手と一緒に帰国したはずですがなぜ今まで声明が発表されていないのでしょうか!お話を!」
群がるマスコミ達の窓越しにも聞こえる大きな声に大地は表情を崩さず内心で溜息をこぼす。
月でのBETA戦と今後の対策で大方の予定は作っていたが公表を忘れていたなんて言えるはずがないだろう。
どう答えたらよいかと考えていたら正門ゲートへガシャンガシャンと足音を響かせてフラットが2機歩いてきた。
その光景を見て大地は安堵しつつ、窓を少し開けてマスコミ達へ発言を行う。
「本日中に我が社のHPの広報欄にて日程と場所を公開いたします。本日はお引き取り願いたい。」
大地の発言と、顔を見せたことにより一斉にマスコミ人が持つカメラのシャッターが切られていると、徐々に接近してきたフラットが正門から出て来て大地の乗る車をゆっくりと掴み上げてそのままMR社内へ戻って行った。
そんな中、車内では……
「これ、マスコミから見たらMSに捕まって持っていかれるシュールな光景だよね?」
<あはは!いいんじゃないかな?地球では最新型のMSを大地は足で使うと世間に知られるだけだよ。>
「……外聞はよろしくない気がするけどね…」
<気にしたら負けだよ。それにフラットのマニュピレーターは繊細な作業も可能って宣伝になるからね!>
「そう言う事にしておこう。」
こんな会話がされていたのであった。
少しして、大地が社内へ入るとエントランスのソファーに座っていた愛しの2人が気づいて走ってくる。
目の前で止まるものだと思っていたが、そのまま2人は大地に胸へ飛び込み、流石に受け止めきれなかった大地はそのまま3人で地面へ倒れる。
だが、ここは機転を利かせた大地、自身の身体を補助しているIフィールドビームドライブを利用して、背中に回された彼女らの手を守るように展開し彼女らの手は床と大地の身体に挟まれ痛みを感じることはなかった。
そして大地は2人の背中に両腕を回して抱きしめる。
「束さん、千冬さん……た、ただいま!」
「だー君!」
「大地……」
「「おかえり!」」
大地の胸に飛びついた二人は満面の笑みで大地を見上げて大地の背中に回した腕の力が強くなる。
それを満足げな表情で見ていると、カツカツとエントランスへ向かってくる足音が響く。
「相変わらずお熱いですわね、ミスター?」
「スコールさん、MR社の事ありがとうございます。」
「いえ、私は責務を全うしているだけですわ。」
大地の視線の先には、赤いのタイトスーツを身に纏ったスコールとその後ろに黒のタイトスーツを身に纏ったオータムの姿があった。
「オータムさんもありがとうね、一夏君の看病も…」
「…っへ!さっさと帰って自分でやれってんだ……」
「ははは、今日はオフモードなのか。」
「それにしてもお二方、アクセサリー変えたんですね?」
大地は、束と千冬を抱きかかえたまま器用に立ち上がると、スコールとオータムのアクセサリーに目を向けて聞く。
スコールの首にはゴールドを基調とした少し大きめなチョーカー、そしてオータムの右腕には黄色・黒・赤紫の三色であしらわれたブレスレッドを付けていた。
大地の指摘に対して、スコールはチョーカーを愛おしそうに触れ、オータムは不機嫌な表情を隠さなかった。
「あら?気に入って買ったのですが、お気に召しませんでしたか?」
「スコール、こんな奴の趣味に合わせなくてもいいんだぜ、似合ってるよ。」
「あはは、そう言う事で言ったわけじゃないんだ。2人ともにあっていますよ。」
「あらあら、気に入ってもらえて何よりでございますわ。」
「……はん、言ってろ。」
そうして会話していると、大地の両腕に抱き着いている2人の愛しい彼女たちの力が強くなる。
大地が視線をとして二人を見やると、明らかに二人の機嫌が悪くなっていた。
それに対して、大地は今度デートで埋め合わせさせてとお願いし、束と千冬はなくなく了承し、大地の執務室へと移動していった。
移動している最中に、ルナから思考通信が入る。
<(大地)>
(あぁ、わかっているよ……オータムとスコールの警戒レベルを上げておいて。このタイミングでもう受領されているのは驚いたよ。)
<(本当、帰ってきたらISコアの反応が増えてて始めは束が新造したのかなと思ったけど、大地の指摘したアクセサリーから反応があってびっくりしたよ。警戒の件わかったよ!)>
(束さんも気づいているっぽいけど、多分俺の反応待ちかな……後で話すよ。よろしくねルナ。)
<(うん!任せて!)>
そして、ルナとの思考通信を切った大地は執務室へ戻り、愛する二人と談笑しながら今回の記者会見の予定などを公表する文章などの作製を始めた。
数日後、MR社は千冬の優勝に伴う記者会見の場を設けて千冬の優勝に対する心情や今後のIS界隈の発展へ尽力することを語り、世間では一大的なISブームが到来した。
千冬は、正式に倉持技研への出向期間が終了し、ブリュンヒルデとしても国家代表としても一躍有名人になったため日々MR社の広報官としていろんなイベントや取材の対応で忙しく動き回って、MR社に泊まる機会が増えていた。
そして、日本IS戦技訓練校もこれに合わせて国際IS委員会の要請と複数の企業からの支援により洋上に新たに敷設した人工島に2年を目途に移転させ『国際IS操縦者育成高等学校』通称IS学園に命名も変更される運びとなった。
なお、現学園長であり先の大戦で英雄と称された轡木十蔵が大地への助力を求めMR社まで足を運び頭を下げてきたため、大地は快く快諾した。
そして、施設に関する支援金に建築用MSの手配、そして防衛用のMS配備を約束した。
今回の一件のせいか、大地が懸念していたISによる女尊男卑的な思考の者がより一層増え、それは政治にもさらに響き始めていた。
転生前の大地の世界にも存在したが、女性を優遇しようとする政治運動が更に過激的な方向へ向かい、女性権利団体の勢力が拡大し男性に対するぞんざいな扱いとそれに対する法的機関の杜撰な対応がモンドグロッソ後から少しずつではあるが目立ち始める。
そのため、男性側のMSに対する信仰のようなものが発生し、軍事企業連はIS派とMS派にわかれる事が多くなり、中にはMR社のような両方への参入をし始める企業も目立ち始めた。
そんな中、ドイツとアメリカが同時期に純国産試作MSを発表、燻っていた反IS派閥の者たちを震撼させた。。
その日の夜、大地はそのドイツとアメリカの試作MSを見て驚いていた。
「これは……」
大地が自室の椅子に座り、コーヒーを飲みながら目の前に表示される空中投影ディスプレイに映し出された2つの機体に見覚えがありすぎたからだ。
まず、ドイツの機体だが全体的に青と緑で塗装され、全高は約18m程の標準的なMSサイズで特徴的な単眼のモノアイを採用し、左肩に丸みを帯びた肩部追加装甲が装着され、前進の装甲部も少し丸みを帯びた装甲でおおわれた純戦闘用試作MS『ザクⅠ』であった。
そして、アメリカの機体は全体的なカーキとオレンジ色の角ばった装甲が目立ち、ザクⅠとは違うバイザー型のメインカメラを採用した米純軍用試作MS『ジム』が立っていた。
大地は、これ陸戦型ジムじゃないかと思ったが、この世界ではこんな知識を持っているのは俺だけだから知る余地もないかと思い見ていた。
そしてあることを思い出し呟く。
「これって、俺が前作ってオータムたちに抜き取られた情報の架空MS世界分布図の機体と酷似するな……」
そう、少し前の話で起きていたオータムとスコールが大地の居ない間にデータを抜き取り亡国企業へと流していたデータ通りの機体がそこにはあった。
これは、大地がMR社を起業して間もない頃に今後いろんな国が自国でMSを生産したらこんな感じの機体達が登場したら面白そうだよなと気分が乗って細かく作った分布図で、ドイツはザク系列を作り、アメリカはジム系列を作って、いずれ日本、ロシアや中国もこんな機体作るんじゃないかな~と書き込んだものである。
ここで大地は深夜テンション的なもので製作したおかげか忘れていることだが、Gジェネのような開発図のようにこの機体からこの機体へ派生してこのような進化を遂げてなども事細かに記してしまっている。
そして大地がルナを呼び出す。
「ルナ、この機体達は宇宙世紀の物との性能差どのくらいあると思う?」
<ん~そうだね~、見た感じウァッドの動力を流用して作ってるみたいだし、宇宙世紀自体の物とはスペックは⅔位じゃないかな~?詳しいことは束に調べてもらった方が早いかもよ?>
「そうか……こうなると、グリムエッジ隊を地球に降ろすのを早めた方がいいかもね。火星の方はどう?」
<そっちはターンXが詳しいよ。ターンX!>
ー肯定、現在の観測情報を整理しますと、火星戦況は膠着状態を維持しています。ですが、両陣営とも月面防衛戦後から消極的な動きになっています。膠着状態を機に戦力の再調整をしているのか、あるいは何かしらの干渉によるものか現在不明です。ー
ターンXの報告に少し苦々しい顔になる。
「まさかとは思うけど、また神の使いが絡んでいるのではなかろうね?」
<あぁ~、あり得るかも……>
ー肯定、あの方はそう言う事をしますから。ー
「そうか……そう言えば前から聞こうと思ってて忘れてたけどターンXって……」
大地がターンXにとあることを聞こうとすると、自室の扉がノックされ会話を打ち切った。
ノックの音で大地はすぐさま誰が来たかが予想でき、鍵は開いていると伝えるとノックをした者は部屋へ入ってきた。
「どうしたの?2人とも……って!?」
「やっほーだー君!」
「すまんが、今良いだろうか?」
自室に入ってきたのは大地の愛する束と千冬だった。
だが、大地はそんな事より2人の装いに一気に座っていた椅子から立ち上がり思考停止してしまう。
そして、2人はそんな大地の反応もお構いなしに部屋に入るなり扉のコンソールで扉をロックし、そのまま大地の方へ近づいてくる。
「な、なな……なんでそんな服装なんだ!?……///」
大地が取り乱すのも無理はない、束と千冬の来ている服は、所々透けて地肌やパンツがはっきりと見えるほど薄い生地のベビードールだったのだ。
束は何時も着用している不思議の国のアリスの様な服装に合わせてなのか水色を基調に所々に白いフリルがあしらわれており、強調される谷間のある胸部に大地の視線は束のふっくらとした双丘へ向かってしまう。
対して千冬は、いつも纏っている黒のスーツの用に黒い生地を基調に所々に束同様白いフリルがあしらわれており、極めつけは千冬の両足を際立たせるガーターストッキングにベルトの組み合わせで大地の視線が千冬の下半身へと集中してしまう。
「だ、大地がいけないのだぞ……私達はいつでも用意はしていたと言うのに……///」
「そうだよだー君、ここまでちーちゃんとさせたんだから、後は分かるよね?…///」
顔を真っ赤にしながら束と千冬は大地へ歩み寄り、大地の両手を掴むと寝室へと引き込む。
その後について大地の寝室で何が起きたかなど、皆まで言わなくても良いだろう。
だが、ここで覚悟を決めていた2人は1つ誤算があった。
相手がナノマシンの影響で無尽蔵な体力を持っていたこと、そして何も溜め込んでいたのは2人だけではなかったという事に。
翌朝、大地の寝室のベットには疲れ果て幸せそうな顔で眠っている2人と、その隣の椅子に頭を抱えて座る原因が居たそうだ。
次回へ続く
~火星地下~
「第35~38惑星調査部隊より通信途絶。」
「通信途絶前、不明勢力との交戦を確認。」
「危険と判断、調査を中止……『だめだよ。』」
『君達には少しだけ休んでいてもらおうか~、もう少ししたら地球がちょっと面白いことになりそうだし!』
「上位存在様?」
『そう、似たような存在さ。君にはこれから戦力を蓄えて、来るべき日に地球へ再侵攻してもらおう。その間はゆっくりとモビルアーマー達と遊んでいてね。』
「……理解不能。」
『わかれよ。あまり力は使いたくないんだけど……主神のお小言が増えちゃうな~』キーン
「………理解。来るべき時に備え、戦線を膠着させ、戦力を蓄えます。」
『うんうん!物分かりのいい子は好きだよ!』
『さて、大地君には少しだけ試練の猶予を与えることにしよう。まぁ、君を取り巻く環境が猶予を与えてくれるかは知らないけどね!…あ、主神様……!?何をって?……いやいや!ちょっとお手伝いをね!と思いましてね……ギャハハハ!え?そのキャラはもういるって?そんなー!』
「……理解不能…戦力備蓄開始。」
お読みいただきありがとうございます。
ここ最近カフェ巡りにハマっておりまして、サイフォンとネルドリップのコーヒーを初めて飲みましたが普段飲んでいるハンドドリップとは違った味わいで美味しかった。
美味しいコーヒーを飲むと気分が良いですね。
執筆時間以外にも話の別構成が色々と脳内で浮かび上がり、書きまとめてどれを採用するか最近悩んでます。
そして、最近思ったのがスポコン書ける人すごない?でした。
私は本編ストーリーに沿った話を書き上げれるのだろうか……