IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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35話ー篠ノ之邸襲撃・中編ー

 

 大地は現在、所属不明IS2機と山間部に潜伏している数人の人の警戒のため篠ノ之邸へ訪れて、束の父親である柳韻と妻の紬(つむぎ)に状況を説明していた。

 

「そう言う事で、現在我々が対応中です。深夜のため外出することはないと思われますが、子供たちを部屋から出さぬようお願いします。」

 

 心身と頭を下げる大地に、柳韻と紬は互いに目を合わせた後大地へ向き直る。

 

「頭をお上げください大地殿、むしろこうして連絡しに来ていただき感謝しかありません。どうかよろしくお願いします。」

「えぇ、主人の言う通りです。よろしくお願いいたします。そして、束。しかと大地様のいう事を聞くのですよ。それに千冬ちゃんも、よろしくお願いしますね。」

 

 篠ノ之夫妻の言葉に、大地は少し安どの表情となり、束と千冬は頷いて応えた。

 

「任せてよ!お父さんお母さん!だー君とちーちゃんと束さんが組めばこの世に怖い物なんてないんだから!」

「お任せください。私も一夏をよく預かってもらっている身、全力を尽くします。」

 

 2人の言葉を聞いて、紬は大地に微笑みかける。

 

「随分と2人に信頼されているのですね、大地様は……」

「はい……私には勿体ないくらい良い人たちです。」

「ふふふ、次正式にいらっしゃる時は是非、挨拶であることを願っていますわ。」

「……!?」

「ちょ!?お母さん!何言っちゃってくれるの!」

「あら?私達はあなたたちが告白した時から知っているのですよ?」

「ふぇ!?」

「つ、紬さん!私達は……!」

「ふふふ、青春ですね。それにそろそろ成人を迎えるのです。私は柳韻さんと一緒に良い結果になることを応援していますよ。」

 

 柳韻と共に笑顔で見てくるのに対し、しどろもどろになっている束と千冬を見つつ、少し赤面した大地にルナが間もなくフラット隊の有視界エリアにISが来る報告を受けて表情を硬くし咳払いをする。

 

「話がそれましたが、私はこれから防衛戦へ参加します。束さん、千冬さん、ここの最終防衛は任せたよ。」

 

 そう言いながら、大地は篠ノ之夫妻に礼をするとそのまま篠ノ之邸から出てルナを展開し、世闇の空へ飛び立った。

 その背に、『この状況でいなくなるの!?』『待て!大地!』『それじゃぁ、馴れ初めとかから聞かせてもらいましょうか~』などと言った会話が聞こえた気がしたが気にしないことにした大地であった。

 

 

~篠ノ之邸付近山間部~

 

 

 現在、フラット2は先日から運用テストとして配備されたMMP-80改と命名された240発ボックスマガジン装備のマシンガンを装備し、フラット1はフラット用の装備である折り畳み型のボックスビームライフルを装備していた。

 そして、数分後フラットの対空センサーが飛翔体2を確認、それと同時に別方向からIFFで航空自衛隊所属を明らかにしているF-15が2機と同所属のIS1機が飛来し所属不明ISへ向かいF-15がミサイルを発射した。

 当然だろう、いきなり現れた国籍も所属不明なISが領空侵犯を行っているのだから。

 

 だが、F-15の発射したミサイルはことごとく2機のISの持つ携行火器で迎撃され、1機のISが反撃に複数の誘導ミサイルを発射、それを確認したF-15は速やかに対ミサイル妨害装置を起動させつつ回避起動に入り、夜空を複数の閃光が花火のように照らす。

 そして、F-15達の被弾が目立ち始め、IS2機を分断した辺り自衛隊と行動を共にしていたISが所属不明機へ接近戦を仕掛け始める。

 それを見つつ、フラット1は防衛戦へ加わった大地へと通信を入れる。

 

「大地様、航空自衛隊による介入を確認しました。もって数分かと思われますが、退避勧告を行いますか?」

「思ったより自衛隊の動きが早いな……ISも導入している以上、ビーム兵器を見られるのはまずい……こちらからうまく退かせるから、フラット隊は引き続き防衛ラインで待機、自衛隊機が退避して安全圏内まで行ったら攻撃開始。」

「了解しました。待機します。」

「こちらフラット3、敵歩兵部隊の進行を確認、対象を捕捉、現在BOIDに追跡させています。画像データを送信、指示を乞います。」

 

 こうして、フラット達は自衛隊の戦闘を観測しつつ、待機をしている中、フラット3から送られてきた画像データを見て大地は言葉を失った。。

 

「嘘だろ……この人達は……フラット3、今送ったMAPデータの座標にその歩兵部隊を誘導できる?誘導後俺が対処するよ。」

「対象の予測侵攻ルート上なので可能です。BOIDに指示、対象の誘導を開始します。」

「お願いね、フラット1と2は指示通りに動いて。多分もう少ししたら束さんの無人IS部隊がが来るから共同でISを捕縛して。」

「了解しました。」

(まさかな……本物だったら是非こちらの陣営にほしいな……)

 

 こうして、大地は歩兵部隊と接触するために飛び立ち、フラット隊は防衛準備に入った。

 

 

~航空自衛隊サイド~

 

 

 少し時間が遡って、航空自衛隊のF-15と先日から正式配備が始まった第2世代IS『打鉄』のパイロットがスクランブルにより指定空域へ急行していた。

 

「こちら、イーグル1からフェアリー1へ。貴官は初出撃と聞く。間違いないか?」

「は、はい!こ、こちら山田真耶!あ、フェアリー1から…い、イーグル1へ!その通りです!」

「ははは、落ち着けルーキー、貴官は代表候補生であり正規の軍人と言うわけではないんだ。気楽に応えてくれて構わない。だが、一度飛立ったのなら我々は同じ空の守人。日本を守る国防の要であることを忘れないでくれ。それに、ハイパーセンサーは俺たちの機体より目がいいんだろ?期待しているぞ。」

「は、はい!イーグル1!最善を尽くします!」

「イーグル2よりイーグル1へ!何1人だけナンパしてるんですか?俺も混ぜてくださいよ!それにしても、IS相手のスクランブルは初めてですね。モンド・グロッソ、俺も見てましたがあんなマニューバされたらF-15には相手できませんよ。その時はフェアリー1が頼りだ。頼みますよ!」

「えぇっと……が、頑張ります!」

「あまり、気負わせるなイーグル2。だが、交戦が開始されれば我々にできることは少ない。今回の指令は初めてだな……警告せずに捕捉次第先制攻撃なんてな…予想目標が目標だからか。」

「ですね、IS開発者の身内の家なんて……だがイーグル1、あそこはMR社が護衛しているって話ですが?」

「イーグル2、流石に空中戦を主眼に置いているISに対して、空中戦ができないMSにできることは限られているからな、そこは我々の出番と言うわけだ。それに少しでもMR社に恩を作っておきたいのが上の狙いだろうな。さて、まもなく予定空域だ。フェアリー1、何か見えるか?」

「は、はい!えーっと……今のところは何も…!?ハイパーセンサーに感あり!高速飛翔体個数2捕捉!IS反応!方位角315!距離150㎞!高度…800m!」

「お手柄だ!嬢ちゃん!CP!CP!こちらイーグル1!フェアリー1がバンデットを捕捉、急行する!最終確認だが射程に入り次第攻撃していいんだな?」

<こちらCP、了解、作戦内容に変更なし。各機の判断で攻撃を開始せよ。>

「イーグル1よりCPへ、了解!」

 

 こうして、航空自衛隊は所属不明機ISの元へ急行した。

 しばらく飛行すると、F-15もISをレーダーに捕捉し、ミサイルのセンサーをオンラインにさせる。

 

「こちら、イーグル1よりイーグル2へ!相手はこちらの何倍もの機動性を持っているが、最大推力勝負なら少しは分がある。一撃離脱を徹底せよ。」

「こちらイーグル2了解!フェアリー1はどうするんだ?」

「わかっている、フェアリー1!今から洒落た会話はできないから許してくれよ。俺たちが先鋒で突っ込み足を止めた後に分断を試みる!フェアリー1は距離を置いて観測し、分断された片割れを叩いてくれ!流石に突っ込んだ後は俺はバディにしか注意が避けない!助けが必要な場合は叫んでくれ!」

「わ、わかり……!フェアリー1了解しました!」

「ははは、後で基地で会おう!行くぞイーグル2!イーグル1エンゲージ!FOX3!FOX3!」

「了解!イーグル2エンゲージ!FOX3!FOX3!」

 

 イーグル1と2が宣言後、2機のF-15から白煙の筋を引きながらミサイルが放たれた。

 放たれたミサイル達は飛行している所属不明IS達へ吸い込まれるように向かっていくも、すぐにIS達はひらりと躱すように軌道を変えてミサイルへマシンガンを掃射し、放たれたミサイルは夜空を飾る花火として散った。

 

「……ッチ!やはり目も良ければ足もいいな……!イーグル2このまま突っ込んでバルカンを喰らわせて一度突っ切るぞ!その後、反転し回避反応が遅かった方へ火力を集中!分断させるぞ!」

「了解だイーグル1!天使ならぬ、妖精とダンスだぜぇ!!」

「イーグル2!油断して落とされるなよ!」

 

 こうして、F-15達は所属不明ISに機銃を食らわせるために距離を詰め始めた。

 

 

〜山田真耶サイド〜

 

 

「す、凄い……!」

 

 彼女はその言葉を漏らすことしかできなかった。

 今日たまたま山間部夜間飛行訓練で訪れていた航空自衛隊の基地で、国籍所属不明なISが領海内より出現し指定特別警戒地域へ向かっていると言う報を受け、その後日本IS委員会から付近にいるISパイロットへの非常呼集があり、唯一即応可能だった彼女が招集され、同時に飛び立った航空自衛隊の戦闘機とここまで来たが、未だに戦闘経験はあるが、実戦経験のない彼女にとって目の前の光景はそう言いたらしめる程に凄かった。

 それもそうだろう、ISが世に出てから数年経ち、女性権利団体の動きも相まって、段々と軍備はISとMSを主力とする動きが強くなり、過去の遺産だと言われて通常兵器群の軍縮が行われている中、彼らは自分達の機体よりも高性能なISと2対1と言う状態を何とか作り出し、1機のISが発射した複数のミサイルを回避しつつ奮戦しているのだから。

 

「これが……実戦………」

 

 そんな光景を見つつ呟いた真耶に対して、怒声にも近い通信が入る。

 

「何やってる嬢ちゃん!もう1機の相手をしろ!……ック!…フゥ!嬢ちゃんが…乗ってるのは!機動兵器なんだろ!?…ック…フゥ!動け!機動戦をしないと…ただの的だぞ!イーグル1!FOX2!FOX2!」

「そうだぜ!…ック……フゥ!こっちは1機を抑え込むのに手一杯だ!…フゥ!もう1機に突破されちゃ……ック……フゥ!意味がねぇ!イーグル2!ガンズ!ガンズ!……クソ!イーグル1!6オクロック!ブレイク!ブレイク!」

「クソ!(ガンガンガン!)くぅぅぅぅぅ!(ビービービー!)」

「イーグル1!」

「エンジンは問題ない!だが左翼のフラップとラダーが死んだ!イーグル2、一度距離を取るぞ!」

「イーグル2了解!嬢ちゃん!早く動いてくれ!あぁ!クソ!山田真耶代表候補生!」

 

 僅かな時間で目まぐるしく変わる状況の中、イーグル達はマニューバによる高G負荷で息も絶え絶えながらに、混乱して動けずにいた真耶にフルネームで呼び、思考を現実に戻らせる。

 

「は、はい!フェアリー1!エ、エンゲージします!」

 

 何とか正気を取り戻した真耶は交戦宣言を行うと、使い慣れている正式採用型打鉄用突撃銃、焔備(ホムラビ)を両手に展開し、分断されたもう1機のISへ銃口を向けて突撃した。

 

 

~地上侵攻部隊サイド~

 

 

 夜空を、戦闘の光が飾る中でその下の山岳部の暗い森の中では暗視ゴーグルを装備した4人の男たちが空を見上げていた。

 

「……始まったようですね。」

「だな……よし、作戦通りだ。やはりMSが居たな、各員、警戒態勢を維持しつつルートBで進むぞ。」

「「「了解」」」

 

 手持ちの小火器の装填を確認した男たちは、勝手知ったるように山道を走り抜ける。

 そして、夜空を照らす戦闘光を横目に走り続けて数分、目標施設を視界に入れたタイミングで1人の隊員が違和感を覚える。

 

「た、隊長!何か変です!」

「どうした?何が変だというのだ伍長?」

「い、いえ……でも、先程から何かに見られているような……!」

「……全員一度止まれ!」

 

 隊長の判断で全員が同時に動きを止めた。

 だが、ここにいた隊員たちはその音を逃さなかった。

 

ガサァ……

 

「……聞こえたな?」

「えぇ、2か…3ってとこでしょうか?」

「厄介ですね隊長……」

「や、やっぱり……」

 

 自分たちが動きを止めてから、わずかにずれたタイミングで木の葉が何かによって擦れる音複数聞こえたことにより隊員たちは警戒する。

 だが、音の発生源は以前として動きを起こさずに止まっているようでその不気味な感覚に隊員たちの不安を強める。

 

「どうします隊長?」

「……退路は今上で戦っているIS達頼りの作戦だ……進むしかあるまい。ルートCに変更だ。」

「……ですね、了解!」

「ミーシャ!先陣を切れ!俺も続く!ガルシア!お前はワイズ……バーニィとバディで後衛!」

「了解!これでこそうちの隊らしくなったってもんだ。」

「あまり調子に乗ってやられるなよ!」

「わかっていますよ!バーニィと後衛につきます!」

「よし!行くぞ!目標を人質に取れれば後はどうとでもなる!」

 

 そして、男達が走り出し、少し木々のない開けた場所を走り抜けようとした瞬間。

 

「お待ち下さい。」

「「「「!?」」」」

 

 正面の木々の隙間から機械的な女性の声で制止され、全員が正面の声の元へ躊躇なく銃を向け発砲する。

 携行小火器のマシンガンの連射音がしばらく響くが、それと同時に弾丸が弾かれるような金属同士の衝突音も周囲へ響く。

 それに気づいたのか、男達は射撃を中断して

 

「とりあえず、銃は下げなくて結構ですのでお話を聞いていただけますか?」

 

 その言葉と同時に、茂みの中から出てきた存在に男達の背筋は凍り付いた。

 なぜなら、成人男性よりも2回りも3回りも大きな全身を装甲に覆われたパワードスーツのような存在が歩いて出てきたからである。

 

「MS…いや、IS……なのか?」

「……」

「おい!なんとか言ったらどうなんだ!?」

 

 質問に答えることなく、見つめるその存在にしびれを切らしたのか黒髪の男が発砲する。

 だが、弾丸は命中する直前に何かに阻まれたように弾かれ明後日の方向へ飛んでいく。

 

「!?この…!(待て!)で、ですが隊長!」

 

 黒髪の男が再度発砲しようとするも、隊長と思われる壮年の男性に止められ、そのまま銃を降ろした。

 隊長と呼ばれた男はそのままこちらに向き直り、銃を降ろした。

 それを確認した全身装甲は一度考える素振りをして、頭部バイザーを一度光らせて隊長と言われた人へと目を合わせる。

 

「……潔いですね?」

「ふ……ISの性能は知っているのでね、手持ちの武器で倒せない相手がわかりきったように正面から出てくる。どうせもう囲まれているのだろう?勝ち目などないからな。俺の命1つで隊の仲間は生かしてやってくれないか?」

「……仲間思いなのですね?」

「ふん、私とてこのような仕事をしているが、ある程度の思いやりと言うのは持ち合わせてはいるつもりだ。ましてや戦友を差し出してまで生き残るつもりは毛頭ない。若い世代に託すまでの事。」

「あぁ……やはり武人なのですね、貴方達は……御見それしました。」

「は?」

「あぁ、失礼しました。では、ここからは商談と行きませんか?ジオン軍所属…たしかキシリア様の麾下でしたね、特殊工作部隊…サイクロプス隊のシュタイナー隊長?今では元になりますか……悪い話ではないと思いますよ?」

「貴様!何故その名を!?」

 

 動揺する隊長を見つつ、頭部装甲の内側の存在は不敵に笑っていた。

 

 

次回へ続く

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます。
 
 今回束さんの母上の名前はオリジナルで考えました。
 
 ここ数日の気温の乱高下で完全に体調を崩してしまいました。
 ビタミンサプリと栄養ドリンクはかけがえのないお友達……私も主人公のような身体になりたい……
 思考力が低下しているため、あらかた治ってから次話の執筆をしますので、次話の投稿は少し遅くなるかもしれません。

 気長にお待ちいただけると幸いです。
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