IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

36 / 44

※前略、この作品を読んでくださる皆様へ。
 この36話、個人差はありますが、痛々しい表現などが含まれています。その手の表現が苦手な方はお読みにならない方が良いかもしれません。
 それでもお読みくださる方は、ちょっと気張ってお読みください。
 


36話ー篠ノ之邸襲撃・後編ー

 

~篠ノ之邸付近山岳部上空~

 

 前話より引き続き、夜の空は激しい戦闘が続いていた。

 2機のF-15と打鉄を纏った山田真耶が2機の所属不明ISとの戦闘を行っていたが、

 

「……クッ!上手い!」

 

 真耶は両手に構えた焔備を交互に撃ち、相手の動きを止めようとするも直撃をさせることができずに歯噛みしていた。

 そして交戦しつつ真耶は1つの違和感を覚えた。

 

(この躱し方……どこかで…?)

 

 だが、この思考の隙を相手は見逃さなかった。

 相手のISは一瞬で距離を詰めて、IS用コンバットナイフを突き出してくる。

 それに対して、真耶はこの数年で体得したラビットスイッチを使い、焔備から打鉄用短刀を呼び出して切り結ぶ。

 その際、接触回線を使い真耶は相手に通信を試みた。

 

「こ、こちら日本代表候補生!なんでこんなことをするんですか!?」

「……」

「へ、返事!してください!」

「……ッチ!…うるさい!」

「…(この声…幼い?)!?…きゃぁ!」

 

 真耶が相手の返答に思考しようとした刹那、相手のISは真耶を突き飛ばしてそのまま体勢を立て直そうとする真耶目掛けてコンバットナイフを投擲する。

 それに気づいた真耶は不安定な態勢のまま更に身を翻すような機動を取り、何とか躱すが既に相手の術中であった。

 

「こんな戦い方……まるで!せんp……きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 真耶はこの戦法に心当たりがあったが、そう思考するに至る直前に相手のISはイグニッションブーストを使用したのかそのまま急接近して真耶の打鉄にタックルを喰らわせてそのまま真耶を大きく吹き飛ばした。

 

(も、もし……先輩と似た戦法ならこのまま近接戦でやられる…!)

 

 吹き飛ばされた真耶は今までの経験をフルに生かしてPICのG軽減効果を超える急制動を行い、ギシギシと軋む身体に耐えつつ手持ちの焔備を手放し、不得意ではあるが打鉄用長刀を呼び出し構えるが、その真耶の予測は大きく外れた。

 

「……っな!?」

 

 なぜなら、体勢を立て直し、長刀を構えた真耶の目の前に見えた相手は接近戦を仕掛けることなく少し離れた場所で、担がなければいけない程の大きな6連装誘導ミサイルランチャーを2丁構えてこちらへ射出口を向けていた。

 

「……!?」

 

 そのランチャーが火を噴く直前、バイザーで口元しか見えない所属不明ISの搭乗者の口元はニヤリと笑っていた。

 そして放たれた高速で飛翔する12本の誘導ミサイルを真耶は必死の形相で回避行動に移行しつつハイパーセンサーによる高速思考を行っていた。

 

(マズい!マズい!マズい!ハイパーセンサーで表示されているあのミサイル……あれはデュノア社がラファールを発表した時に同時に発表された対IS戦闘も想定した多目的誘導ミサイルランチャーの『オラージュ』!もし使用弾が対IS用の高ジャミング耐性&高Gミサイルだとしらた第2世代の中でも機動性の低い打鉄だったら回避は不可能……!咄嗟に焔備を手放しちゃったから弾切れのまま拡張領域に戻っちゃった……回避しつつ呼び出し、再装填…出来るの?……先輩なら確実な方法で対処するはず!こうなったら!)

 

 思考の末、迫りくるミサイルへ向けてまだ実弾が装填された状態で格納されている打鉄拳銃『火打(ひうち)』を両手に呼び出し、迫りくるミサイル達へ銃口を向け引き金を引く。

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

 

 セミオートで放たれる弾丸は1つ2つと迫りくるミサイルを真耶は正確に撃ち落していく。

 そんな中、ハイパーセンサーで鮮明に見えるミサイルの一つだけ他のミサイルより一回り大きな物が混じっていることに気づく。

 不審に思った真耶は次はあれを狙おうと思い銃口を向けた瞬間、そのミサイルは自らの外殻をパージして内部に隠された弾頭に赤いカラーリングの施された小型ミサイルを展開し、夜空に解き放たれた。

 

「ーーーーーーっ!?」

 

 真耶は声にならない声しか出なかった。

 その一回り大きなミサイルから放たれた赤い小型ミサイルは、真耶が戦技訓練校の時の授業で確かに習っていた項目だった。

 『対IS用分裂式多弾頭ミサイル』、対通常兵器群との戦闘時にミサイル飽和攻撃に織り交ぜられた際は特に警戒が必要と教育された危険度の高いミサイルである。

 本来、この分裂式多弾頭ミサイルはクラスター爆弾のような、地上目標を広範囲に面攻撃する際に用いられる。だが、対IS戦闘時に用いられるこの兵器は違う。

 人の考えた残酷に、確実にISを落とすために考えられた特殊ミサイルだ。

 

 ここで少し考えてみよう。

 ISを効率よく撃墜する方法は何だと思うだろうか。

 基本的に空中をほぼ制限なく縦横無尽に飛行でき、シールドエネルギーと言う特殊なシールドで機体を覆って生半可な攻撃では傷もつけることができない。そして装甲部以外の被弾で、搭乗者が危険だと判断される攻撃を受けると絶対防御と言う機能が発動する。

 そして、このシールドエネルギーは有限であり、被弾時には少なからず消費し、絶対防御発動時は大きく削られる。そして一定以上減ると機体の機能を維持することができずに強制的に待機形態へ戻ってしまう。

 つまり、効率的にISのシールドエネルギーを一定値以下に削るためには絶対防御を容易に発動できる状態を作り出さなくてはいけない。

 

 そこで考えられたのがこの『対IS用分裂式多弾頭ミサイル』である。

 このミサイルは、通常兵器でも使用可能な場所の制限が多く、この世界でも一部の国から使用禁止を求める声のある燃料気化爆弾の一種で、弾頭に赤、または黄色のカラーリングを施すことが義務付けられているサーモバリック弾頭が使われている。

 小型の弾頭であっても広い加害半径を持ち、高速で縦横無尽に飛行するISに対して大型の母機ミサイルがある程度接近したら、小型の数十発のサーモバリック弾頭のミサイルを分裂射出し分散、そしてある程度分散したタイミングで同時期爆し、空域自体を焼き払う恐ろしい対空兵器として誕生したのがこのミサイルである。

 そして、このサーモバリック弾頭は起爆時に周辺の酸素をすべて奪う勢いの燃焼反応を起こし、加害半径内は一瞬にして約2500度~約3000度と言う鉄すらたやすく融解する熱が襲う。

 加害半径内にいたISはもちろんシールドエネルギーで防御を行うが、被装甲部のISスーツや肌を露出した部位はもちろんその高熱と急加熱で膨張した空気の衝撃波が襲うわけで絶対防御が強制的に発動する。

 本来、宇宙作業時に高速で飛来したデブリなどから搭乗者を守るために開発された絶対防御、主に点での防御に特化している絶対防御に対して、面で発動を促せば自ずとシールドエネルギーの減りがどんなものになるかは想像しやすい事だろう。

 そのため、普段のISパイロット達が通常兵器群と戦闘する際は注意するようにと言われている兵器なのだが。

 

 山田真耶がここまで焦っている理由はもう一つあった。

 

(IS対IS用分裂式多弾頭ミサイルなんて聞いたこともない!ここまでダウンサイズされているなんてわかるわけ……あ……)

 

 そう、通常兵器群で使う兵器故に、この対IS用分裂式多弾頭ミサイルは非常に大型なことが多いのだがデュノア社製のオラージュにこの弾頭があるという情報は知らなかったのだ。

 声にならない声を出しつつ、逃げようとした山田真耶の目の前に迫る赤いカラーリングの小型ミサイルが複数迫った瞬間、夜空を照らす閃光のような爆炎を視界いっぱいに広がり、真耶の意識はプツリと途切れた。

 

 

~航空自衛隊サイド~

 

 

 分断を行って以降、被弾しつつもう1機のISと奮戦していたイーグル達の視界に太陽が目の前に現れたのではないかと思うほどの火球が空中に出現し夜空を照らした。

 それと同時に激しい爆発音と押し寄せた衝撃波に機体が一瞬悲鳴を上げる。

 

「クソ!なんだ!?イーグル2無事か!?」

「大丈夫だイーグル1!だが、すげぇ爆発だ……一体なにが…嬢ちゃん!大変だイーグル1!嬢ちゃんが!」

「なに!?」

 

 イーグル2の叫びにイーグル1が視界に収めた光景は、打鉄の装甲が所々と砕けて一部装甲が燃えているのか煙を引きながら山岳部へ落下していく山田真耶の姿だった。

 

「フェアリー1!応答しろ!フェアリー1!……CP!CP!こちらイーグル1!エマージェンシーコール!フェアリー1が堕とされた!繰り返す!フェアリー1ロストだ!」

<なんだと!?イーグル1!フェアリー1の状態は!?>

「こちらイーグル1!フェアリー1は巨大な爆発が起こった後墜落、確認できるだけでも機体は大破!通信は繋がっているが警報音以外何も応答がない!おそらく意識不明!」

 

<了解!現在出撃準備中のISを急行させ……なに?少し待て!>

 

「待ってられるか!今この瞬間も嬢ちゃんが自由落下しているんだぞ!このまま地面と仲良くしたら嬢ちゃんが!ISにはパラシュートとかねぇのか!?」

 

<待てと言っている!……は、ですが……了解しました。伝えます。イーグル小隊!最優先命令だ。速やかに撤退せよ!救助は不要だ。>

 

「はぁ!?何言ってやがる!ここでISを食い止めなきゃいけないだろ!」

 

<命令だ。現在MR社が上層部を通じてこちらにコンタクトを取ってきた。倉持技研から貸与されていたISコアを使用した試作第2世代ISが空域に3機が80秒後現着予定とのことだ。フェアリー1は彼らの1機が回収し、MR社の医療施設に収容予定だ。あそこは最先端の医療機器が揃っている。それフェアリー1のロックモードの作動を確認したので問題はないだろう。貴様はその壊した自分の機体の始末書の事を考えておけ。>

 

「……そうかい…イーグル1了解。イーグル2、帰投するぞ!」

「いいのかよ……そんなの…イーグル2了解!」

「命令だ……こんなしまりの悪い戦闘なんざ初めてだ……イーグル小隊RTB!」

 

 こうして、煙を引きながら自由落下するフェアリー1こと山田真耶を見ながら悔しさを隠さない形相でイーグル小隊は基地へと進路を取り空域を離脱した。

 

 

~所属不明機サイド~

 

 

「……引いた?」

 

 先ほどから自衛隊機の押収で四苦八苦していた1機のラファールが撤退する戦闘機を見つつ、空中で静止していた。

 数秒待つと、先ほどまでISと交戦していたもう1機のラファールが合流する。

 

「時間が押している……行くぞ……」

「はい、そうですね。行きましょうM。」

 

 互いに言葉を交わし、再度篠ノ之邸へと進路を取り飛行していると今度は山岳部に2機のMSを発見する。

 

「M、あれはMR社製フラット2機です。飛行能力がないため高度を取れば脅威はないでしょう。」

「ふん……ん?…ッチ!回避機動だ!」

「……え?」

 

 そこでMの相方はMの言葉を聞くと同時に自身のISからけたたましく鳴り響く警報音と共にISの自動防御機能が作動し、自身の左手に装備したシールドをフラットの方へ向けていた。

 それと同タイミングで地上からこちらに目掛けて、宇宙世紀で一撃必殺と言わしめた黄色い閃光が亜光速で襲い掛かった。

 

ジュゥ!

 

「……っ!?あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」

「……なっ!?」

 

 そうして、回避を促したMが視界に収めたものは一瞬の黄色い閃光が相方が構えたシールドに直撃した瞬間、シールドが加工中のガラス細工のように一瞬で赤熱化し融解、閃光はそのままシールドを貫通しラファールの腕部装甲も一部融解と同時に絶対防御発動特有のシールドエネルギーの強制発光を起こす相方の姿だった。

 そしてMはすぐさま発射地点にいたフラットをハイパーセンサーの望遠視点で見ると、フラットは若干煙を吐いている射撃兵装の銃口をこちらに向けたままだった。

 

「おい!情報にあった光学兵器だ!次射が来る!お前の状況は……!?」

「アァァァァァァ!アツイアツイ!イタイ!イタイ!イタイ!ソウコウガ!トレ、トレナイー!ウデガ!カイジョ!カイジョーーー!!!ナンデトレナイノ!ウデガァァァァァァ!アツイアツイ!」

 

 Mはその姿を見て絶句した。

 先程まで冷静沈着だった相方が、泣き叫ぶ子供の用に叫びながら、赤熱化が収まっていない左腕部装甲と、更に融解したシールドがべったりとくっ付いた為、鋳つぶした鉄の塊となり果てた左腕を、右手のマニュピレーターでガリガリと引きはがそうとする動作をしつつ苦痛に身体を空中でジタバタと動かしているのだ。

 その光景に数秒固まっていたMは、直ぐ様自分が何をすべきか思い出し、急いで相方を射線から外すために装甲の一部を掴み、山岳部の地上へ急降下した。

 

 急降下し地上直前で急停止し、未だに叫び暴れる相方を地面へと降ろしてハイパーセンサーで状態を確認する。

 相方のラファールは現在IS自体が搭乗者を最大限守るために『エマージェンシーロックモード』が作動していた。

 これは極限環境である宇宙空間で想定外の状況でパイロットの生命の危機に陥った際、又は解除と同時に搭乗者が死亡する状態と判断した際に作動するシステムで、ISコアに初期から搭載されているシステムである。

 作動すれば残りのシールドエネルギーを全て、搭乗者保護機能と最低限のPICへ回し、機体が搭乗者を物理装甲で守る為に待機形態に戻らない様にロックがかかる。

 そして、機体が行動不能な程の損傷の場合は搭乗者を強制的に眠らせ、行動可能な場合は意識を強制的に維持させ、外部から規定の信号を送らないと解除されないようになっている。

 相方が『解除』と音声操作まで行ってもISが解除されなかったのはこの為だろう。

 つまり、光学兵器の直撃でこのシステムが起動して、片腕以外機能するIS側の判断で今も搭乗者保護機能で意識を無理矢理に保たれ、痛みにのたうち回る相方はISの搭乗者保護機能で何とか生きている状態であり、解除した瞬間に即死する程の損傷を負っていることになる。

 

「アーーー!アーーー!コロ、コロシテーー……イヤーーーーーゴロジデーー……」

 

 バイザーのせいで目元は見えないが、見える範囲顔には生気が宿っておらず、顔から出せる全ての部位から透明だったり赤い液体を垂れ流しながら枯れ果てた声で死を懇願している相方を前に、Mは自分の過去の記憶がフラッシュバックする。

 

・・・・・・・・・・

 

 もうやだ……痛いのやだ!死にたくない……!

 大丈夫?ほら、お姉ちゃん達が一緒にいてあげる!

 

 こいつはもう駄目だな……処分だ。

 アーーー、ゴロ…ゴロジデーーー!アーーー

 

 パァン!

 

 また…お姉ちゃんの1人がいなくなったの?

 大丈夫!私達が◯◯◯と一緒にいるから…

 そうだよ、私達にとって貴方は希望なんだから!

 

 現時刻を持って実験を中止する。そいつも含めて全員処分だ。

 

 お願い!何でもするから!◯◯◯を殺さないで!

 

 うるさいぞNo.◯◯◯、どうせ完成品には及ばない失敗作なんだ……ここで処理する。

 

 パァン!

 

 ……え?お姉……ちゃん?

 逃げ……て!◯◯◯!

 ……でもお姉ちゃん……血が……

 いいから!……走って!

 そうだよ◯◯◯!私達の中で一番完成体に近い君なら!きっと!だからここは通さないよ!

 

 実験体風情が……大人しく始末されればいい物を!

 

 パァン!パァン!

 

 私達の……あったかもしれない……未来を……託したよ!

 だか……ら…私達の分……まで……!生きて!マド……

 

・・・・・・・・・・

 

 

「う、うぅ……!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そして、過去のフラッシュバックの結果、Mはその場に膝から崩れ落ちて、のたうち回る気力もなくなってきて動きも鈍くなった相方の前で頭を抱える。

 

「お姉ちゃん……!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!私は……あぁ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……お姉ちゃんの分まで生きるって……私は……あぁ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 そうして数分程の時間が経つと、Mの周りに何かが着陸するような音がした。

 

「……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…えぇ?」

 

 時間が経って少し落ち着きを見せたMが顔を上げて音のした方へ顔を向けるとそこには、武骨で全身装甲のISが2機立っていてこちらを見下ろしており、機械音声が周囲へ響く。

 

「モクヒョウ、ホソク……ホカク……カイシスル。」

 

 そして、その2機が頭部パーツの複眼のようなカメラアイを赤く点灯させながら近づいてくる様子を見て、Mの表情は恐怖に染まる。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!こ、来ないでぇぇぇぇぇ!」

 

 Mは泣き叫びながら、自身がISを纏っていることを再認識しイグニッションブーストを使用しISとは逆方向へ飛び立つ。

 だが、錯乱しているMは周囲の状況を一切確認することなく飛び立ったために、大きな手が待ち構えていたことに気づくことができなかった。

 

 ドガーン!

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!な、なに!?きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 目を瞑ったまま飛び出した結果、急に何かにぶつかり、状況確認のために目を開けるとそこには先ほど相方を一撃で沈黙させたフラットが自分の事をマニュピレーターで掴んでいる姿だった。

 

「いや、いやぁ!いやぁぁぁぁぁぁぁ!は、離してぇぇぇぇぇぇ!」

 

 Mは叫びながら自分の事を掴んでいる腕を解こうとブースターを吹かしたり、手にライフルを呼び出し乱暴に発砲し暴れはじめた。

 その光景を見たフラットは、外部スピーカーをオンラインし声をかける。

 

「所属不明ISへ告げます。直ちに抵抗を止め、投降しなさい。生命の保証はします。」

「いやぁぁぁぁぁ!離してぇぇぇぇぇぇぇ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!」

「対象の精神状態が危険域に達したと判断。無力化します。」

 

 投降通達を行うも、錯乱し会話もできない状態だと判断したフラットはそのまま少しマニュピレーターの力を強めMの纏うラファールを固定する。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!殺さないでぇぇぇぇぇぇ!」

「ハイパーバイブレーション、最小出力、起動。」

「いやぁぁぁrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!ーーーーーーーー」

 

 Mを掴むフラットが言った瞬間に捕まれていたMにハイパーバイブレーションによる高振動が襲う。

 ハイパーバイブレーションの振動により、ISのPIC及び搭乗者保護機能でも軽減できない程の振動によりMの脳が揺さぶられ、回る視界の中でMの意識は途切れた。

 

 

~大地サイド~

 

 

 大地は、現在フラット3に誘導してもらった歩兵部隊の男達とボイスチェンジャーを用いて女性として会話を行っていた。

 

「…以上、こちらがご提供できる条件です。是非、その腕を我が社のためにその力を振るってはいただけませんか?」

 

 そして、条件を提示して相手が思考しているうちに大地の内心ではお祭り騒ぎになっていた。

 

(うひょー!マジかマジか!本物のサイクロプス隊だ!すげぇ!あれ……でも4人?アニメ版の状態か?それとも別動隊があるのか?ん~!是非うちのMS部隊パイロットとして雇用したい!あぁ~交渉上手くいくかな~!)

<凄いテンション高いね大地~>

(そりゃぁそうだよ!アニメ劇中でズゴックEとハイゴックの戦闘から始まってケンプファーとザクⅡ改によるアレックスとの戦闘!あれで脳を焼かれたんだ俺は……あ、でもターンXは存在自体が俺の脳を焼いたからね?)

<わぁ……急に冷静になられるとちょっと反応に困っちゃうよ。>

(ごめんごめん、さて、相手さんはどう出るかな?シュタイナー隊長……)

 

 大地がお得意の高速思考でルナと会話をしていると。

 

ドゴォォォーーーーーーーーーン!

 

 と遠方の空中で巨大な火球を伴う爆発が起きて大地達を照らした。

 そして大地がサイクロプス隊と言った男達はそのまま夜空を見上げ警戒態勢が入るが、大地は何食わぬ口調で呟く。

 

「今のは航空自衛隊のISが撃墜されたものですね。使用された兵器は現在国際IS委員会が使用制限を各国の軍へ要請を行っている対IS分裂式多弾頭ミサイルですか……デュノア社が作ったのか…組織のファクトリーで作られたものなのか……」

「ふ、これでは貴君側の形勢不利に見えるが?」

「そう突かないでくださいよ、シュタイナー隊長。私個人としても貴方達を高く評価しているんです。それにあれは我々の関与しないIS同士の戦い、ここからが本番です。」

「隊長!あれを見てください!」

「…!?」

 

 大地の発言に訝しむシュタイナーに対して、恰幅のよくニット帽をかぶった隊員が逆方向へ指をさしたいの全員が視界をそちらに向けると、全身を黒に塗装し月明かりで僅かに照らされたフラットが2機少し離れた場所から戦闘空域方面へ歩いて移動しているもの確認した。

 

「あれは……フラットか。」

「ですが、隊長!あのフラットの片割れが持っている武装は……」

「我が軍の携行火器か!?」

「もう1機が持っているのって……まさか!」

「おいお前!……まさかあの兵装は……」

 

 頭にバンダナを巻いた黒髪の男が、驚愕の表情でこちらに聞いてくるので大地は淡々と話した。

 

「はい、あなた方なら脅威的な威力は知っているのではないですか?ある粒子を圧縮して照射する兵器ですよ。MSがあるのです……作れるとはお思いになりませんか?」

 

 大地の発言に対して、『そ、そんなぁ……』と金髪の男が膝から崩れ落ちる姿を見つつ、他の隊員たちも苦虫を嚙み潰したような表情になる。

 そしてシュタイナーが何かをしゃべろうとした瞬間。

 

ビシューーン!

 

 一瞬の黄色い閃光が自分たちを照らした後、すぐに夜の闇が戻った。

 

「ビーム……兵器……」

 

 4人のうち、誰が喋ったのかもかわからないほどか細い声が僅かにこだまする。

 そうしていると、大地にフラット隊から通信が入り、わざと機体の外部スピーカーに接続して応答する。

 

「目標に命中を確認。申し訳ありません、低出力で射撃したのですが目標の装甲融解を確認。搭乗者の生命に深刻な被害が出たと思われます。目標の急降下による回避起動を確認。次弾、輻射熱による山林火災の恐れがあるため射撃中止し接近を試みます。」

「了解、やっぱり現行のISの装甲材だと高熱量兵器対策は出来てないか……引き続き、捕獲行動を実施、直撃した方はゴーレム達に速やかにうちの医療設備に運んで治療を、もう1機はビーム兵器を使わずに捕獲して。さっき堕とされた日本のISは?」

「了解しました、ゴーレムと捕獲行動を継続。現在日本のISはゴーレム3が確保、医療施設へ輸送中。データ受信、エマージェンシーロック作動を確認。搭乗者意識強制睡眠状態。非装甲部位に深度1~2の火傷を確認、現在ISへゴーレム3がエネルギー供給を行い搭乗者保護機能を最大稼働中。」

「わかった、医療用ポッドとBOIDを会社前に手配する。早急に作業をしてほしい。」

「了解しました。」

 

 一連の会話が終わり、大地はシュタイナー達に向き直り会話を続ける。

 

「では、お答え願えますか?我々と契約を結ぶかを……」

「……あぁ、それしか生き残る道はあるまい。飛んだ貧乏くじだ。」

「賢明なご判断ありがとうございます。それに、そうとは限りませんよ?先ほどご提示した待遇は最低保証とし、要望には極力答える用意もあります。」

「えらく私達を買っているのだな。」

「当然です。この世界でMSを十全に扱える人材はとても貴重です。それに、ビーム兵器搭載のMSを配備させましょう。」

「……私達に一体何をさせる気だ?」

「世界を裏から守ってもらいます。」

「世界を?」

「えぇ、表向きには罰することのできない世界の闇と……世界を脅かす外からの侵略者を撃滅するための矛として。」

「前者はわからんでもないが……後者は一体……?」

「そこから先は後日にいたしましょう。宿を用意しておりますので、本日はお休みになってください。今迎えを呼びますので。」

 

 そうして、付近に待機させていたギャルセゾンを呼び出し4人を搭乗させた後、大地はそれを見送りつつ、捕獲行動中のフラットに通信を繋ぐ。

 

「フラット1、状況はどうだい?」

「はい、大地様。包囲を狭め、捕獲作業を行おうとゴーレムに接触させたのですが、1機が逃走を図ったため本機が捕獲。恐慌状態と判断したためハイパーバイブレーションで無力化しました。バイタルに異常は見られません。これよりMR社へ移送します。」

「そうか……直撃を受けた方は?」

「現在ゴーレム1、2に見てもらっていますが、重症です。最新データ受信、エマージェンシーロック作動を確認。トリアージカラーブラック、現在ISの搭乗者保護機能により強制覚醒及び生命機能の最大保護状態のため、ゴーレム2によるエネルギー供給が開始されました。これよりMR社へ移送します。」

 

 そして、大地はフラットの報告と共に送られてきたバイタルデータを見て顔を歪ませた。

 

(ビーム兵器の直撃を受けて生きてるなんて幸運だと思ったが……現実は残酷だな。何も感じずに逝った方がまだ幸せかもしれん。低出力ビーム兵器なら耐えれると思ってた俺の想像力不足か……いや、束さんの技術力を基準にしすぎたな……)

 

 そこに表示されていたのは、ISが自身の搭乗者を隅々までスキャンして取得した現在の搭乗者の状況だった。

 

 

■バイタルデータ

 

 ■トリアージカラー・ブラック

  ・本機搭乗者保護機能による現状維持以上の救命困難状態。

  ・機体解除と同時に搭乗者の生命活動停止確率98%

  ・本機残存SE10%(外部よりSE供給中)

 

 ■損傷詳細

  ・左腕部:装甲融解による生体組織との熱融着。肘以遠部の炭化に伴う組織崩壊。

  ・循環器:体内血液約10%が蒸発。残存血液の一部熱変性(熱による凝固反応)に伴う心臓含む主要臓器の多臓器不全。

  ・呼吸器:高温気体吸入による気道及び肺胞70%の熱傷損を確認。自発呼吸機能喪失。

 

 ■対応行動

  ・酸素供給:搭載医療ナノマシンによる肺機能代用。血中酸素濃度維持。

  ・循環器系:心臓への電気介入による強制脈動、血中内気泡及び血栓除去。

  ・神経系:搭載医療ナノマシンによる一部痛覚神経の物理的遮断。

  ・意識維持:強制覚醒システム作動中。再覚醒見込み無し&敵対勢力健在のため、アドレナリン分泌強制誘発。

 

 

 この項目を再度、見つつ大地はテレポートを使いゴーレム達の元へ飛んだ。

 そして、ゴーレムに運ばれようとしているラファールを目視した瞬間、大地は頭部バイザーから垂れている高温でチリジリになっている白銀のような髪の色を見て即座に接近し、バイザーの開閉モード機能を動作させ素顔を確認する。

 そこには、焦点の定まらない状態で目を開けたままの女性が口をわずかにパクパクと動かしていた。

 そしてその女性の特徴的な黒い眼球に黄金の瞳の目を見て大地は呟く。

 

「……まさかこんな所で出会うなんてな……クロエ・クロニクル……」

 

 その呟きが聞こえたのか、彼女はわずかにこちらに顔を向けて声にならない呻きのような声で何かを訴えかけてくる。

 言葉では何を言っているかわからなかったが、彼女と目が合った瞬間にふわりと浮遊感を感じだと同時に彼女の思考が大地に流れ込んできた。

 流れ込んできた思考にバイザー内で軽く顔をしかめ、不思議な感覚を覚えつつ彼女の瞳の奥に何故か別の存在達が居る事にも気づいた。

 そして、大地はそっと彼女に触れて優しく語りかけた。

 

「そうか、名前はまだないんだね。そして君達がこの子の痛みを肩代わりしているのか……だから彼女はまだここに留まれている。」

「ーーーーーー」

「……わかった。今更謝罪ですまないことは分かっている。君達の妹達に対する愛情、ちゃんと伝わった。この月乃大地が責任をもってこの子の生涯をサポートする。だから頼む……彼女を助けるまでの時間、少しでもこの子の負担を和らげてやってくれ……」

「ーーーーーー」

「ありがとう……わかった。末っ子にも会えたらその子も救うよ。」

 

 大地がそう言い放つと、先程まで感じられた思考がスゥっと消えて現実感が戻ってきた。

 

(今のは……まさか感応波による意識共有?俺がニュータイプにでもなったと言うのか?それにあの思念体とも言えるあの子たちは……それより先にやるべきことをやらないと!)

 

 一瞬思考の海に沈みかけた意識を浮上させ、ルナを呼び出す。

 

「ルナ、ラファールから生体情報を取得。ターンXにもバックアップに入ってもらって。完了後、ターンXのナノマシンを使用し損傷臓器の再生をここで行う。」

<わかったよ!私も感じたからわかる。あの子達が今も頑張っているんだもんね!>

ー肯定、ルナに同意です。本機もサポートします。ー

「ありがとう……笑えるよな、自分で攻撃命令しておいて相手の傷を見て、そして感じた結果、頑張って助けようとしている。でも、助けようと決めたのも俺なんだ。あの子たちの思いも託された。せめて不自由のない人生を送らせるくらいのサポートはしてあげたい。」

<ははは、大地らしいっちゃ大地らしいね。……スキャン完了。ただ1つ問題があるよ。>

「何かしたかい?」

<彼女の心臓、もうもたないよ。負担が大きすぎたんだ……新しく心臓を作っても上手く定着できるかわからないんだよね。私みたいに大地の心臓になれるコアがあればいいんだけど……>

「……心臓の代替になるISコアか…それなら心当たりがあるな。」

 

 ルナの報告で1つ思い出した大地はすぐさま束に連絡を入れた。

 

「はいはーい!みんなの~違った!だー君だけのアイドル!束さんだよ~!」

「束さん、緊急なんだけど、今生体同期型のISを試作していたよね?そのコアってある?!」

「あぁ~!あるよ~!なんならだー君に報告していた時よりアップグレードしてて臓器の代替とかも出来ちゃったり!さっすが私ー!」

「すまないが、それを1つ使わせてくれないかい?早急に身体を管理しつつ心臓の代替品が必要なんだ。」

「それってもしかして敵の子に使うなんて言わないよね?それだったら拒否するのだー!」

「……頼む、俺が救うと決めた命なんだ。それに、実証実験の非検体は必要じゃないかい?しかも遺伝子操作で生まれた試験管ベイビーだったこの子のデータとか?」

「……はぁ…わかったよ~。でもそれだけじゃ足りないな~!今考えてる研究があってね!だー君が月に配備してるメッサーだっけ?あれを数機都合してくれるなら良いよ!」

「わかった……!ありがとう束さん!愛してる!」

「も、もうーーーー!///こんな時に言わないでよ!お母さんにちーちゃんも聞こえてるんだからーーーー!(ブチッ!)」 

 

 束の絶叫と共に通信が切れてから大地はまたテレポートを使用し、束からコアを受け取るとそのまま現場へ戻り、人体の復旧作業を始めた。

 そして、ある程度生命活動に必要な処置をルナとターンXのサポートもあり問題なく施し様態を最低限に安定させた大地はクロエをゴーレム達にMR社へ移送する指示を出し、長いようで短かった夜に溜息一つ吐くのであった。

 

 

次回へ続く

 

 

(クロエの思考が流れてきたおかげで大体の場所も掴んだ。随分と吐き気のするような玩具の趣味を幹部陣は持ち合わせているようだ。もうあの組織潰すか……またやられても困るし。)

<妥当かな~、やるんだね?>

ー幹部陣の約7割は見つけ出したと判断。組織維持が困難な程の打撃は与えられるかと推測。ー

(ならやってみようか……)

 

 




 お読みいただきありがとうございます。

 やっと体調が回復したので執筆再開でございます。

 正直、今話の様な表現って何処まで書いて良いのかわからんと思いつつ書きました。
 思いの外、書きすぎた感がありますが、楽しかった!と残しておきます。

 
【御礼】
 前話にて誤字のご指摘ありがとうございます。
 また誤字など見つけた際はご報告してくださると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。