IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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38話ー継ぎし祈りー

 

 山田真耶の引き抜きを成功させた大地は、怒りを鎮めぬ千冬に大人な償いをしてから程なくして、着々と増設作業が行われて大型化しているヘルメスユニット搭載型ヨーツンヘイム級3番艦『ウドガルド』の鎮座する静止衛星軌道上へ来ていた。

 そして、待機していたターンXに乗り込み、ウドガルドから少し離れた宙域へ向かうと、複数のMSが編隊を組んで飛んでいる姿が目に入った。

 

「ターンX、彼らの慣熟訓練はどんな感じ?」

ー肯定、予定訓練項目の78%を完了。基本的な動作訓練及び連携訓練は早々に終了しております。現在対BETA項目を実行中、軌道上防衛戦データを元にしたシミュレーションを行っております。ー

「やっぱりプロだね……操作系統も違うだろうに……」

<大地が言うにはあの人たちって凄いパイロットなんだよね?>

「あぁ、劇中で搭乗している描写は少ないけど小隊規模のMSで防衛MS部隊の駐留する軍事基地を壊滅状態にしているし、特に目立ったのはに2番機のミーシャさんだよ。強襲用MS単機でコロニー内に潜入し、新型MS破壊のために侵攻し、その道中で精鋭MS部隊を全滅させてる。そして、作中のトリを飾った4番機のバーニィさんは捨て身だったけど破壊目標だったアレックスを大破状態にしてる。1番機のシュタイナーさんも3番機のガルシアさんも精鋭だよ。」 

<すごい饒舌だ……これがガノタ。>

「否定できないのが悔しい。」

<でも、なんでそんな人達がこの世界に来たんだろうね?>

「……そこなんだよね。」

ーやはり大地様にも予想できませんか?ー

「うん、正直火星の現状を考えると……考えたくないけど、多分神の使いがBETAかモビルアーマー……どちらかを呼び出そうとしたけど選べずにどっちも呼び出しちゃってそのサービス的な感じで呼んだのかなと……」

ー……案外的を射てそうですね。ー 

<あはは、同感~>

「それだったらなんで鉄血世代の方をここに呼ばないのか……流石にバエル信奉者とか呼ばれても困るし、阿頼耶識とか作りたくないけど……」

 

 こうしてルナとターンXと話していた大地は徐々に演習している宙域へ到達すると、こちらに気づいたのか編隊飛行していた4機のMSがこちらへ近づいてきた。

 そこには全体的にダークグレーに塗装され、機体ごとにカスタマイズされたメッサーが居た。

 そして、先頭にいたバックパックに大きめのレドームが搭載されているメッサーがこちらへ通信を繋げた。

 

「おや、社長自ら来るとは……」

「数日ぶりですね、シュタイナーさん。メッサーはどうですか?」

「操縦系統と搭乗位置によるGに少し難儀しましたが、慣れてしまえば素晴らしい機体です。これほどの機体が戦時中に作られていたら……と、たらればを考えてしまいますな。」

「気に入っていただいてよかった。ですが、それが叶っていたならばさらに酷い戦争になっていたでしょうね……」

「同感ですな。ある程度動かせるようになりましたから現状戦闘行動は可能です。」

「ありがたいことです。これから頼りにすることが増えると思いますがよろしくお願いいたします。」

「やはり、若いですな……こんな好待遇で雇ってもらえたのです。もっと荒く扱ってくれて構いませんよ?」

「あはは、会社の商談や政の場では仮面をかぶりますが、あなた方の前では許してください。常に気を張ってられませんし、あなた方は私の私兵になりますからね……あなた方の前では気楽にやらせてください。」

「ははは!やはり面白いお方だ!もとより従うつもりですので問題ありませんよ。」

「ありがとうございます。ミーシャさんはメッサー、どう感じました?」

 

 ターンXで大地が今度はその隣にいた四肢に増設されたラックに実弾兵装を多数搭載したメッサーへ顔を向ける。

 

「はい社長、素のスペックに追従性、素晴らしいの一言です。なによりコックピット内が広いですからね、私の巨体が軽々と入るのが一番助かります。武装も豊富で装甲も厚い、おまけに突撃性能も申し分ありませんな。唯一思う事があるとすれば、スキットルを縛っておく場所がない事でしょうか。今はノーマルスーツのベルトに付けております。」

「あはは、体を温めるのはほどほどにしてくださいね。」

「隊長にも言われますな、ははは!」

「これからもよろしくお願いしますね、ミーシャさん。」

「こちらこそです社長、初めは警戒しましたがこれほどの待遇をしてくださるクライアントもそう居ません。給料分しっかり働かせていただきます。」

「さて、ガルシアさんはどうですか?」

 

 ミーシャと話を終えた大地は、ミーシャ機の隣にいる両手にビームライフルを持ち、脚部ラックにMMPマシンガンを装備したメッサーに話しかける。

 

「えぇ、逆に俺が機体についていけないと思わせる性能で焦るばかりです。それにゴックタイプで使ったとはいえ、このメッサーのビーム兵器は恐ろしい性能ですな。マガジンタイプのビーム兵器は驚異の一言です。」

「性能については使っていくうちになれると思います。何か不満点とかありますか?」

「……言いにくいんですが一つだけ。全周転モニターってのがどうも……宇宙のど真ん中にポツンと座っているだけの感覚で落ち着かないし、こうも地球のそばで飛んでいると重力の井戸に引き込まれそうで怖いです。」

「あぁ……俺も初めに思った感想ですね…すみませんが、慣れてもらうしかないでしょう。」

「それはそうですね、後自分には敬語はなしでお願いしたい。軍での生活が長いせいでこうも丁寧に話されると落ち着きません。」

「あはは、善処するよ。さて、最後になりますが…どうですか?バーニィさん?」

 

 ガルシアとの会話後、最後に一番離れた位置で止まっている全身のラックにメッサー用マインレイヤーユニットを搭載し両手持ち用長柄ヒートホークを持っているメッサーへ通信を繋いだ。

 

「は、はい!なんと言うか……自分は他の隊の方々よりMSの搭乗時間が短いのでそう言えることは少ないのですが、こんな高性能な機体があるんだと……夢を見ているような感じです。しかも私含めて隊の皆さんに合わせたカスタムまでして……戦時中に居たと言われた専用機みたいですね……」

「あれ?ターンXから聞いてませんでしたか?それは皆さん一人一人に合わせて調整やカスタマイズをした専用機になりますよ?カラーリングに関しては任務の都合上統一させてもらってますが。」

「えぇ!?そ、そうだったんですか?」

「はい、そうなります。ですから、今回の訓練で気になることがあったり追加したい武装や装甲などあったら言ってください。こちらで可能な限り対応しますので。」

「あはは……こりゃぁ凄いや……」

「これからもよろしくお願いしますね。」

「は、はい!全力で頑張らせていただきます!」

 

 こうして4機全員と話した大地は、再度全員を見渡す。

 

 ここで今更ながらサイクロプス隊について説明する。

 サイクロプス隊とは、機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争の作品に登場するジオン軍特殊工作部隊である。

 ガンダム作品にてそこそこの知名度を持ち、連邦の新型MSであるNT-1『アレックス』を奪取または撃破するために地球からコロニーへと奔走する部隊なのだ。

 現在は、ハーディ・シュタイナーを隊長にミハイル・カミンスキー(愛称ミーシャ)、ガブリアエル・ラミレス・ガルシア、バーナード・ワイズマン(愛称バーニィ)の四名で構成されている。

 作中では、もう一人の隊員アンディ・ストロースという人物も登場していたので大地は交渉時に聞いてみたが、どうやらこの世界に来たサイクロプス隊はこの4人だけだったらしい。

 そして、先日の襲撃時に捕獲されて大地の破格な待遇で引き抜きに成功。

 現在はターンX指導の元、メッサーの慣熟訓練を行っていたのである。

 

「それにしても、社長が我々の世界を物語として認識していたとは未だに信じられませんな。」

「そうです。と言っても社長共々この世界に来てしまっているあたり、信じるしかないでしょう。」

「俺はいまだに、信じられませんよ……夢を見てる気分だ。」

「お、俺もです……社長、聞いてみてもいいですか?」

 

 それぞれが未だに実感がわかない様子の中、バーニィがこちらに問いかけてくる。

 

「答えれることなら何なりと。」

「ありがとうございます。その……俺たちの世界の事を物語りとして知っているなら、あの新型のガンダムのパイロットってどんな人だったのかな……なんて……」

「……」

「しゃ、社長?」

 

 バーニィの質問に対して、大地はこの通信がサウンドオンリーだったことに安堵した。

 交渉時に、大地は自分がシュタイナー達とも別の世界から来ていて、大地の世界では物語としてシュタイナー達の世界の事を知っていた事を開示していた。

 劇中で、バーニィが最後に挑み大破させた新型ガンダム、アレックスに搭乗していたのは、バーニィがコロニーでアルと言う少年を介して偶然に出会い、互いに想いあいながら最後まで想いを伝えることのできなかった女性、クリスティーナ・マッケンジーが搭乗していたのだから。

 彼と彼女は最後まで互いに想い人が相対する機体に乗っていることを知らずに戦いあっていたことを知っているのはこの場で大地だけだったからである。

 

「え、えぇ……実はサイクロプス隊にハイライトされた作品でして、連邦側の事はそこまで描写されていなかったのです。パイロットも無名のテストパイロットとしかわかっておりません。」

「そうでしたか……あ、ありがとうございます!」

 

 大地の返答に対して安堵の声色で返答したバーニィに対して、大地は心の中で謝罪した。

 

(……ごめんねバーニィさん。あなたが想い人と殺し合っていたなんて、俺の口からどういえって言うんだよ……まだ、知らないままの方がいいよ。)

 

 大地は心の内での謝罪をした後はすぐに意識を切り替えて、シュタイナーの方へ向き直る。

 

「さて、ここに来たのは近々作戦行動を予定しているからです。詳細は後日ミッションプランを配布しますが、地球降下を行い、都市部での制圧作戦になります。ISによる反撃が予想されますが、現行のISに対してメッサーでしたら脅威にならないと予想されます。武装に一部制限を設けますのでそのつもりで。」

「ほう、制圧作戦ですか?」

 

 大地の発言に若干訝しんだシュタイナーに対して、大地はターンXでシュタイナーの機体に触れて秘匿接触回線で概要を軽く話すことにした。

 

「隊長には軽く説明しますが、あなた方の前の雇い主の総本山です。違法な人体実験で出来た玩具で遊ぶパーティーをすると情報が入りまして、お灸をすえてやろうってことです。」

「なるほど、それは胸糞の悪い話ですな。それで降下による強襲作戦……うちの隊では得意とする戦法です。喜んでお灸を添えさせてもらう。」

「助かります。」

 

 納得してくれたシュタイナーに礼を言って大地は後は予定通りにと言い残して、宙域を離脱し、ターンX VS ムーンブロッサムの模擬戦を行いつつ今後の予定を組むのであった。

 

~後日~

 

 大地はMR社のマドカや真耶のいる病室とは違う地下隔離病棟へ来ていた。

 

「束さん、いるかい?」

「あ!だー君だぁぁぁぁぁぁ!」

「……おっと。」

 

 大地が病室へ入ると、愛しい人の1人である束が気づいていつものごとく跳躍して大地へ飛び込んだ。

 それに合わせて大地も何時ものごとく抱きしめて束を堪能する。

 

「だー君も束さんの扱いがわかってきたみたいだね!」

「束さんこそ、俺の嬉しいことをすぐにやってくれるから嬉しいよ。」

「えへへ~!相思相愛なのだー!」

「そう思ってもらえて嬉しいよ。」

 

 大地は、そう言いながら笑顔のまま飛び込んで胸元から見上げてくる束に軽くキスをすると、 病室奥の大きな医療カプセルへ目をやる。

 

「えへへ~、だー君との触れ合いで束さん元気100000%なのだ~!」

「俺も元気いっぱい貰えてうれしいよ。それで、あの子の様子はどうだい?」

「あぁ!クーちゃんの事ね!」

「クーちゃん?」

 

 束のクーちゃん呼びで大地は訝しむ。

 マドカ同様に調査を行った結果、現状わかっている医療カプセルの中に浮かぶ銀髪の少女、大地がクロエ・クロニクルと呼んだ彼女に実は、明確な名前がなかったのだ。

 ドイツの極秘研究所にて開発、製造された戦闘用個体であるアドバンスドシリーズの試験体であり、失敗作として破棄された所をどうやら亡国企業が拾って使っていたようだ。

 

 この計画は、ドイツが高性能な軍人を容易に揃えるために、織斑計画から多額の費用で買った遺伝子操作とクローニング技術を用いて強化人間を作り上げる物であった。

 その計画中に、ISの登場によりマドカ同様ISパイロットとしての強化処置が行われ、医療用ナノマシンの応用でISのハイパーセンサーと人間の視野を強制的にリンクさせるため、眼球にナノマシン注入処置を行い、知覚能力を大幅に向上させる処置がアドバンスドシリーズに行われた。

 だが、ハイパーセンサーから提供される情報はある程度整理されて搭乗者へ提供されているのだが、ナノマシンを介して直接搭乗者へ提供される情報は膨大なため、適性の無い試験体は一瞬にしてその膨大な情報量に耐えきれず、脳や神経が焼き切れると言う現象が起きてしまう。

 だが、試験体の死亡者が出ることはなかった。

 原因はIS側だった。

 IS側が搭乗者の危険に反応して搭乗者保護機能を作動させる結果、死亡例は0ではあったが、IS解除後の搭乗していた試験体達は一部を除いて廃人となり果て、後に廃人となった試験体達は処分されている。

 その中でもISから送られてくる膨大な情報に耐えきって制御して見せた個体達のデータを元に、新たに1体の製造がおこなわれ、成功体として存在していることが確認されている。

 なお、クロエ・クロニクルはデータを取られた側の個体に当たる。

 そして、成功体の試験運用が始まってからは残りのアドバンスドシリーズは戦闘用から慰安用としての転換が始まり、亡国企業の幹部の一人が買い取った個体がこのクロエだったようだ。

 

 一瞬アドバンスドの事を思考した大地は、束のクーちゃん呼びについて確認することにした。

 

「クーちゃんってこの子の名前かい?」

「そう!クロエ・クロニクルって素敵な名前を束さんが考えたんだけどね!この子が目を覚ましていいよー!って言うならこの子は篠ノ之クロエになるのだ!」

「……へ?」

「いいでしょーいいでしょー!この子の経歴を調べたけど、ちーちゃんのとこの技術が使われてるっぽいけど、私の開発したISの技術も使われている!つまりこれって私達にとっては親戚にあたる子なんじゃないかと思うのだよ!あ!遺伝子上はぜーんぜん繋がってはいないけどね!だからお父さんとお母さんに相談してこの子は責任を持って束さん達が育てることにしたのです!いえーい!」

「え……それは急すぎるのでは……コレンさんの所で預かってもらうって手もあるよ?」

 

 束さんの発言に、大地は困惑したが実際は少し安心しながら話す。

 原作でも、束はクロエを逃亡中に保護して娘のような存在として育てている節があった。

 そう考えると妥当なのかもしれないが、まさか養女として篠ノ之家で保護することは予想外であった。

 大地の困惑する表情に対して、束は笑顔のまま大地から離れると医療カプセルの方へ数歩歩いて振り返る。

 

「だー君……束さんはね、人間嫌いではあるけど非情ではないんだ……こうやって束さん達のせいでこんな事になっちゃった子達が居るのなら少しは助けてあげたいって気持ちにはなるんだ。コレンさんの所ってのも考えたけど、まずは束さん自ら誰かを助けないといけないって思ったんだ。だー君が私たちを救ったように……ね?」

「そうだね……ごめんね、束さんの気持ちに気づけなかったよ。」

「いいんだよだー君!束さん的にもだー君と出会っていなかったらこんなことしていなかっただろうし……ただでさえ可愛い妹の箒ちゃんに更に1人妹ができるなんて素敵な事じゃない?」

「ははは!束さんらしいや、でも俺と出会っていなくても束さんは誰かを救っていたと思うよ?」

「なにそれ~!面白いこと言うね!そうだ、クーちゃんの容体だったね!」

 

 そして、また束が医療カプセルの方へ歩き出し、医療カプセルに触れる。

 カプセルの透明部からはショートカットに切りそろえられて髪型になったクロエが液体に満たされたカプセルの中で眠っている姿が見える。

 

「ちなみに今のクーちゃんの容体は安定しているよ!なんか体内にマドカちゃんより酷い投薬とナノマシン投与跡があったみたいだけど、だー君のナノマシン治療で大方修復できているみたいだから跡は細かいところを随時治療用ナノマシンで治れば生活に支障はないと思うよ!心臓の代替になった生体同期型ISコアの動作も安定しているし……ただ、眼球だけは予想外だったね~~…束さんもびっくりだ~」

「報告書では見ていたけど、やはり難しそう?」

「うん、どうもIS側が上手く最適化しちゃったみたいでね……だー君の方でISコアと話できない?」

「そうか……ちょっと聞いてみようか。」

 

 束の報告で、大地もクロエの眠る医療カプセルへと近づいて触れる。

 襲撃時に損傷したクロエの身体を大地が修復し、心臓の代替として生体同期型ISコアを移植した後、医療カプセルにて検査を行ったのだが原作同様特徴的な黒い眼球に黄色い瞳の目だけはIS側が同期と最適化を行ってしまい、治療用ナノマシンを投与しても白い眼球に戻ることはなかったのだ。

 束も原因を調査し、改善しようとするもIS側が一向にそれを拒否しているかのようにナノマシンを拒絶されてしまって困っているとのことだった。

 そして、大地は意識を鎮めてルナを介してクロエのISコアへ対話を試みた。

 クロエのISとのパスがつながった瞬間、大地は以前に感じた浮遊感と共に位世界へ取り込まれ、目の前には複数の光が見えた。

 それに意識を向けると、複数の光の意識が大地に意思を伝えるために飛ばしたと思われるし思念波を感じた。

 

(こ……これは……!?)

<大地、大丈夫。クロエのISコアはただ意識を伝えているだけだから。>

(そうか……なら君たちが……)

『私達は……なれなかった存在……』

(もしかして、ISコアと君たちの意識が混ざってしまっているのか?……この子、クロエちゃんのお姉さん達だね?)

『クロエ……名前を付けてもらえたのですね。私達は完成することのできなかったモノであり、IS……個体識別名称「黒鍵」』

(これは予想外……では黒鍵と呼ばせてもらうけど、搭乗者であるクロエの眼球を治してあげたいんだ。可能かい?)

『可能ですが、搭乗者……クロエがそれを望んでおりません。』

(クロエちゃんが?)

『あの目は、我らが姉妹の証……クロエも望んでいない…どうかクロエから奪わないで……』

(そう言う事か……君達はクロエちゃんを守っていただけなんだね。了解したよ。)

『ありがとう……私たちの希望……妹達を託します。』

(ISコアの意識からどんどんと反応が離れて……待ってくれ!もう行ってしまうのか!?)

『妹の一人があなた方に救われる刻を見ました。末っ子はまだ苦難が待っているようですが救われる……私達は行かねばなりません。』

(そんな……俺が言えた義理じゃないが……せめて話してあげて……!) 

『クロエとは沢山話しました。私達のこの想いはISコアに残していきます。きっとこの黒鍵が自らクロエの事を守ってくれるでしょう。そして月乃大地。』

(お、俺の名前……そうか、覗いたのか。)

『貴方もまた数奇な運命を辿っている……こちらに来るまでに何を成し遂げるか……楽しみに待っています。』

(ま、まって……!)

 

 大地が徐々に消えていく光たちに手を伸ばすと同時にパスを強制的に切断されたのか、大地の意識は現実へと戻る。

 

「待ってくれ!」

「うぉぁ!?びっくりしたー!」

 

 大地がカプセルに触れてから黙り込んで居たため覗き込んでいた束が大地が驚いて声を上げたのにびっくりして大地の隣で尻もちをついてしまう。

 数秒固まっていた大地はそのまま周囲を見渡して自分の現在地を認識した後、尻もちをついた束に気づいて手を差し伸べる。

 

「ご、ごめん束さん。ちょっと深いところまで連れて行かれてたみたいだ。」

「う、うん大丈夫だけど、深いところ?」

「あ、あぁ……表現が難しいんだけど、意識的な部分で深いところまで言って話をした感じかな……上手く説明できないや。」

「そっか~!興味深いから後でルナちゃん経由でデータが欲しいな!で、どうだった?治療はできそう?」

「その事なんだけど……」

 

 大地は先程、コアを通じてクロエの姉達との会話を束に説明した。

 説明を終えると、束は少し顎に手を当てて人の思念についてなどの考察を数分ぶつぶつ呟いた後に大地の方へ笑顔で向き直る。

 

「うん!その子たちが託してくれた絆なんだもんね!なら無理に治すこともないね!」

「わかってくれて助かるよ。後はクロエちゃんが目を覚ますのを待つだけかな?」

「そうだね!そうだった!破損したラファールのデータを取り終わったから格納庫に戻しておくね!」

「わかったよ。これで後はデュノア社との取引だ……やり手の社長って聞いてるからちょっと不安だけどどうにかなるでしょう。そうだ、前に言っていたメッサー3機の製造が完了してね、次のヨーツンヘイム級の輸送便でウドガルドまで来る予定なんだけど、弄るなら申し訳ないけどウドガルドで行ってくれるかな?場所を取るようなら輸送船を1隻駐留させるけど?」

「それなら問題ないよ!今のところ1機あれば事足りると思うし!」

「わかったよ。ならウドガルドに格納されたら連絡するよ。あとは、クロエちゃんが何時目覚めるかだね……目覚めたら謝らないと。」

「そうだね、その時は束さんも謝るよ!しばらくはここで研究とか作業を遠隔で行うから、目が覚めたらだー君に連絡入れるね!」

「ありがとう束さん。それじゃ、俺はこの後用事があるから行くね。」

「うん!また後でね!そうだ!データは欲しいから取っておいてね!」

「はは、気づいていたんだね。いいよ、詳細は後日送るね。」

「うん!束さん楽しみにしてるね!」

 

 そうして、大地はクロエに数秒視線を向けた後に束へ微笑んでから病室を後にした。

 その後、大地はスコールへ連絡を取り、夜にR&C社の試作大型ISの動作試験の監督役としてMR社地下試験場に来るように呼び出したのであった。

 

 

次回へ続く

 

  

~MR社秘書室~

 

「えぇ、わかっております。2機とも失ったのは痛いですが、今回の威力偵察でMR社の戦闘用MSの脅威をわかっていただけたと思います。」

「はい、やはり取り込むべきかと……社長が首を縦に振る保証はできませんが。」

「えぇ、正直あの社長を消すには厳しいです。なんせブリュンヒルデと天才兎を手懐けています。今の戦力では……」

「……了解しました。携行武装の一つでも手に入ればそちらに送ります。あと、予定通りオータムをそちらに送りました。アラクネのメンテナンスと改修はよろしくお願いします。……この後ですか?社長に試作ISの監督を任されておりますので向かう予定です。勿論です。警戒して望み、データを後程ご報告します。では……」

 

~不明空間~

 

「お姉さま?」

『私達はもう行かねばなりません。』

「そんな……私はもっとお姉さま達と一緒にいたいです!私も連れて行ってください!」

『それはできません。ですが、貴方の身体に宿るISに祈りを託しました。そして貴方を守ってくれる存在にも……』

「お姉……さま」

『だから、私達の送れなかった人生を楽しみなさい。その生涯の果てに、何を見て何を経験してきたかを私達に報告してくださいね。』

「……はい…沢山の事を経験して報告させていただきます。」

『よろしい、そして……完成体と会った時は、あなたがお姉さんです。優しく接してあげてください。』

「……上手くできるかわかりませんが、わかりました。」

『これで安心しました。では行きますね……また会える時を楽しみにしています。』

「はい……お元気で!」

 

・・・・・・・・・・・・

 

搭乗機体説明

 

・メッサー・AWACS(エイワックス)

 シュタイナー搭乗機

 メッサーの背部に大きなレドーム上の電子戦装備を搭載した機体。

 広範囲での索敵や電子戦が行うことが可能で、隊長であるシュタイナーが各機のデータと収集情報を元に各機へ指示でき、強力なジャミング下でもある程度の距離で各機へ通信が送れるようにカスタムされている。

 

・メッサー・High-stab(ハイスタブ) 

 ミハイル・カミンスキー搭乗機

 機体各スラスターの出力及び前面装甲が強化されている強襲用にカスタムされた機体。

 背部に大型のバズーカを2丁、腰部側面装甲にシュツルムファウスト2丁、腰部背部装甲にビームライフルを装備、脚部ラックにMMPマシンガン2丁が装備され、両手でショットガンを持っている、シールドを持たず、ケンプファーのような装備の機体になっている。

 

・メッサー・Raider(レイダー)

 ガブリアエル・ラミレス・ガルシア搭乗機

 突撃を得意とするミーシャ機をサポートするためにカスタムされた機体。

 両手にショートバレル化したメッサーのビームライフルを2丁装備し、脚部に増設したラックにMMPマシンガンを装備している。

 他にも各所の装甲が強化されており、陽動や攪乱を行うことができ、ミーシャ機の突撃する隙を作ったり、ミーシャ機のあけた穴を広げる役目を主目的としている。

 

・メッサー・Trapper(トラッパー)

 バーナード・ワイズマン搭乗機

 機体各所にマインレイヤーユニットを取り付け、長柄の大型ヒートホークを装備している機体。

 マインレイヤーユニットに搭載されている機雷は様々な種類が搭載されており、爆雷・スモーク・ジャミングチャフ・ダミーバルーン・ナパームなど、状況に応じて散布する事が可能であり、主に撤退などの殿や罠敷設を得意としている。

 

 




 お読みいただきありがとうございます。

 メッサーのカスタムは想像で書いてみました。
 ベーシックな武装分カスタムの幅がありそうですよね。

 久々にコーヒーショップへ行ったら好きなコーヒー豆が売られていたので即購入。
 今後飲むのが楽しみでなりませんね。


【御礼】

 前話にて誤字のご指摘ありがとうございます。
 今後とも気づいた際はご指摘の程よろしくお願いします。
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