IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

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39話ー仕置きー

 

 スコールは大地から指定されたMR社地下試験場へと足を運んでいた。

 発表前のMSなどの動作試験を行うために作られたという、動作試験上にしては広すぎるのでは?と言いたくなるほどの大きな地下空間で、度々スコールも訪れている場所ではあったがISの試験というのは初めてであった。

 指定通り、管制室ではなく試験場のゲートを潜ると突如、スコールの背後にあったゲートが閉じて試験中の安全策として設置されている防護隔壁が下りた。

 

「……な!?」

 

 急いで戻ろうとするも隔壁は直ぐに下りきってしまい、試験場内にスコールは閉じ込められる形となる。

 そしてスコールは、辺りを見回して状況を確認するとスコールの入ったゲートとは逆サイドのゲートがゆっくりと開き、ローブを纏って全身を隠したISより一回り大きな存在がガシャンガシャンと機械的な足音を立てて入ってきた。

 それを見つつ、警戒態勢をとるスコールに対して管制室からの通信が入る。

 

「あれ?スコールさん、こちらに来るよう言ったのですがどうしてそちらに?」

「社長!試験場の方にと伺っておりましたのでこちらに来ましたが……出してはいただけませんか?隔壁が閉まってしまい困っていたのです。」

 

 慌てた様子でスコールが試験場内を監視できる管制室の方へ目をやると、管制室のガラスが光学兵器試験用のスクリーンが展開されているために中の様子を見ることができなかった。

 嵌められたと瞬時に思ったスコールはこの状況を打開するために思考を開始するが直ぐに大地の方から返答が来る。

 

「あら、困りましたね……そうだ、丁度よいので繰り上げでこちらの試験をしましょう。」

「試験……ですか?」

「はい、内容は……そうですね……亡国企業製ISの性能把握試験とか……?」

「……!?」

 

 その瞬間、スコールのISがけたたましい警告音と共に強制的に緊急展開される。

 

<警告、不明ISよりFCSレーダー照射と当時に発砲を確認。搭乗者保護のため緊急展開。>

「な!?勝手に!?」

 

 スコールが驚愕の表情のまま、身体が金色の光に包まれ、光が収まるとスコールは黄金の装甲に輝くISを身に纏って防御態勢になっていた。

 それと同時にスコールの機体の正面で大きな爆発が起こる。

 わずかにシールドエネルギーが減ったスコールの機体は爆炎の中から飛び出して発射元へハイパーセンサーで詳細を観測しようとすると再度射撃警報が鳴り響く。

 

「……こ、これは!?」

 

 スコールの目の前には3発のロケット弾が迫りつつある光景だった。

 

「……ッチ!」

 

 スコールは拡張領域からライフルのようなものを出して応戦する。

 

ビシュン!ビシュン!ビシュン!

 

 スコールの持つライフルからは線のように細い光学兵器の金色の閃光が放たれて迫りくるロケットを全て迎撃した。

 迎撃し終わり、追撃がないことを確認したスコールは空中で静止し改めて相対するISへ目を配る。

 

『そうか……∀の技術を知っているなら独自に光学兵器を開発していてもおかしくないか……でもあのビームライフルの再現は無理だったろう。荷電粒子系の応用かな?』

 

 女性的な機械音声を発するローブを纏ったISは右手にバズーカと左腕に3連装のロケット発射器を持ちスコールへ向けたまま佇んでいた。

 それを見たスコールは警戒態勢のまま声を発する。

 

「貴方、やるわね……搭乗者はルナちゃんかしら?いきなり撃ってくるんですもの……びっくりしたわ……随分博識…なのねっ!」

 

 スコールはそう言うと間髪入れずにライフルローブのISに向けて連発で発射する。

 放たれた閃光は全て吸い込まれるようにISに向かっていくが、躱す気配もなくローブに触れた。

 その瞬間、閃光の当たったローブはその膨大な熱量により燃え上がるがIS自体に閃光が届くことはなかった。

 ローブが燃え盛っているのに、平然と自信を確認する行動をとる機体にダメージが入ってないことに気づいたスコールは冷汗が出るのを感じた。

 

「そのローブ……なんなのかしら?そんな材質聞いたことないのだけど……」

『ん~、もう少し耐えれると思ったんだけど……その光学兵器、収束率を上げて威力が結構高い仕様なのかな?それともISサイズの厚さだと塗布できる塗料が少ないのも原因か……改良の余地ありだね……これは…特殊な塗料でね。企業秘密ってやつだよ。』

「ふふふ、私もその企業にいるはずなのですが?」

『あははは!我が社と亡国企業の間で何方にも尻尾を振る秘書さんに教える機密があるとでも?』

 

 そう言うとローブを纏ったISのローブが焼け落ちてISの全容が露わになる。

 

「……!?(マズいわね……)」

『ではジャブはこのあたりで……戦いますか。』

 

 スコールの視界に映ったのは、以前見たことのある全身がグレーの包帯を巻いた機体だった。

 

「ははは……まさかミスターの機体のIS版だなんて……まさか性能まで一緒なのですか?」

『それは戦ってみないとわかりませんよ?』

「それは私以外でやってほしい物です。」

『そんな黄金に輝き攻撃的な機体に乗っているのに?それにまだ全てを見せてくれたわけではないのでしょう?性能試験なのです。是非見せてください。一応機体名を伺っても?』

「……ゴールデン・ドーンですわ…そちらの機体名をお聞きしても?」

『黄金の夜明けですか……良い名前ですね。こちらは……ムーン・ブロッサムと名乗りましょう。』

「あら、全部は教えて下さらないのね?」

『フルネームだと長いんですよ。』

「月の花ですか……そちらも素敵な名前ですわね…ですが、そちらも全ては見せてくれない様子。本来の装甲を見せてくれても良いのではなくて?きっと綺麗な装甲なのでしょう?」

 

 互いは会話しながらも、手に持つ武装を再度構えて銃口を向け合う。

 

『そうですね、とても綺麗な装甲ですよ?私が見惚れて、焦がれるほどにね。見たければ相応の攻撃をしてみてくださいね?』

「そうですか、では早速見させていただきましょう!」

 

 そして先に引き金を引いたのはスコールのゴールデン・ドーンだった。

 手に持つライフルから金色の閃光が放たれ、ムーンブロッサムも対応するために即座にスラスターベーンから吹き出す爆発的な推力で回避をする。

 その反撃としてムーンブロッサムは右手に持っていたバズーカから数発のロケット弾を発射する。

 

「ふふふ、ロケット弾の弾速でしたら回避は余裕ですよ?」

『ただの弾頭なら……ね?』

「?………きゃっ!?」

 

 スコールが飛んで来るロケット弾を躱そうとした瞬間、迫ってきていたロケット弾が急に空中で炸裂し中に内包していた無数の鉛玉をばら撒く。

 咄嗟の事に反応できなかったスコールは回避できず無数の鉛玉を機体で受け止める。

 

「さ、散弾!?」

 

 シールドエネルギーで防いだため、物理装甲へのダメージは軽微だったが衝撃と効果範囲でスコールの平常心を揺さぶる。

 ムーンブロッサムは有効打と判断し、さらにバズーカからロケット弾を連続3発で発射する。

 それを見ていたスコールは拡張領域からライフルをさらに追加で呼び出し、2丁持ちで迫りくるロケット弾を迎撃する。

 1発、2発とライフルから放たれる閃光で迎撃され空中で爆発を起こすも、3発目のロケット弾は違う反応を起こした。

 閃光で貫かれたタイミングでそのまま大きな白煙を空中に広げた。

 そう、煙幕弾である。

 

(煙幕!?敵の場所は!?)

 

 咄嗟に煙幕弾だと判断したスコールは直ぐにムーンブロッサムの奇襲を警戒して試験場の外周部まで後退しようとするも、ハイパーセンサーが煙幕の中で動く存在を認識し即座にライフルを構えて射撃する。

 閃光は煙幕の中でうごめく黒い影に命中するが、その物体は放物線を描く軌道で煙幕の中から飛び出した。

 

「……!?」

 

 煙幕から飛び出したのは先程までムーンブロッサムが使っていたバズーカで見るも無残に砲身の真ん中辺りに大きな赤熱化したままの大穴が開いており、スコールは即座にハイパーセンサーで周囲を索敵する。

 すると、ゴールデン・ドーン側から直上からの接近警報が鳴り響く。

 

『まだ、反応が遅いと見た。』

 

 スコールが見上げた瞬間、何もない空間からジワリとムーンブロッサムが現れて踵落しをスコールの顔目掛けて振り下ろされた。

 

ドガーン!

 

 回避する暇もなく、踵落しを喰らったスコールはその勢いのまま試験場の地面へと落下し激突、粉塵が巻き上がった。

 数秒後、粉塵の中から地面を這うように飛行しながら飛び出したゴールデン・ドーンは再度ムーンブロッサムの位置を探すがまた見失ってしまう。

 

(なぜ?ハイパーセンサーで直上に接近するまで感知できなかったの……光学迷彩?でも宇宙空間での僅かな光の歪みすら観測できるハイパーセンサーで観測できないの?いや、∀と同じナノマシン制御技術が搭載されているとしたら……いや、でもそれでもある程度の歪みが……っ!?そう、この試験場全域に既に撒かれている…と言う事ね!それなら奥の手を出すしかないわね……!)

 

 飛行しながら思考したスコールは一度来たい空中で静止させて、ゴールデン・ドーンの装甲各所に設けられているハッチがスライドして僅かに開くと機体自体が僅かに輝き始める。

 

「そっちがその気ならこちらも使わせてもらうわ!」

 

 そのスコールの言葉と共にゴールデン・ドーンから黄金の粒子のようなものが散布され始め、機体周囲の大気が僅かに赤熱化する。

 それはゴールデン・ドーン開発時、∀のナノマシン技術を応用して搭載された思考操作型攻勢ナノマシンの散布である。

 ∀やターンXのナノマシンのように、分解や再生、人体の修復などの万能性を持たせる事は叶わず、攻撃性のみを追求し現在の技術力でなんとか生産に成功できた攻勢ナノマシンである。

 攻撃と言ってもターンシリーズのような分解ではなく、機能は熱量操作であり、散布したナノマシンがIS側から電波供給されるエネルギーで超高振動させることにより大気を瞬間的に過熱させ、熱量と空気膨張による瞬間的な衝撃波を相手にぶつける性能を持っている。

 そして、散布状況や過熱量などがIS側へフィードバックされており、視界外にいる相手の存在も散布ナノマシンの温度差で把握することができる。

 ナノマシンを散布し数秒後、周囲の待機温度が上昇したことを確認したスコールはライフルを後方へ向けて連発する。

 すると、数発放ったライフルの閃光の1発が歪み弾かれる様子を視認する。

 

『驚いた……ナノマシン散布による強制的な索敵なんて……』

 

 機械的な音声が流れた後、閃光をゆがめた地点からじんわりとムーンブロッサムが姿を現した。

 

「まさか、初めから全域にナノマシンを散布して光の湾曲すら欺瞞しきる手法を取る貴方に言われたくありませんわ?それに貴方の動きを見て思いましたの……中に乗っているのがルナちゃんだと思っていましたが違いますね?束博士と一緒にいるから僅かに思っていた可能性でしたが……そろそろ本当の声でお話ししませんか?ミスター?」

 

 スコールの言葉でムーンブロッサムが数秒固まっていたが、両手を僅かに上げて高さんのようなポーズをする。

 そして、ムーンブロッサムからスコールも聞きなれた男性の声が聞こえた。

 

「やっぱり気づいちゃったか。初めて会った時よりかなり思考の切れが良くなったようだ……嬉しく思う反面、未だに亡国企業と繋がっていることが悲しく思うよ。今回の襲撃の件……手引きしたのもスコールさん、貴方なのでしょう?」

「ふふふ、その通りですよ。私だってこの立ち位置は綱渡り状態だと認識しています?なにせ、私にだって守りたい人の一人や二人いますから。」

「なるほど……その人たちもこちらに来れば悪いようにはしないのに……」

「そこも事情というやつです。それで、私のゴールデン・ドーンの奥の手を見せたからには貴方には消えてもらわないと。」

 

 そういうスコールは、大地に向かってライフルを向ける。

 

「それで俺をやるのかい?そうなると、俺もこの姿を見られたからには君を消さなくてはいけなくなってしまうね?」

「ははは、御冗談を……現在の技術でナノマシンの多機能化は不可能。姿を消すだけのナノマシンで攻勢ナノマシンを搭載したゴールデン・ドーンに敵うとお思いで?愛機のターンXでしたかはここにはいない様子ですし。安心してください……ミスター亡き後、愛しの二人は亡国企業でしっかりと管理しますので。」

 

 スコールの言葉で、大地の雰囲気ががらりと変わる。

 周囲に放たれる殺気の様なプレッシャーの様な物を感じ、スコールは背筋が凍り付く感覚に陥った。

 咄嗟に散布ナノマシン管理画面の大気温度計を確認するが、ナノマシンは正常に待機を過熱し続けており、寒さを感じる要因がないことを確認した。

 

「……今、何と言ったのかな?……君は俺の守りたい人達を害すると言ったのかな?」

 

 ムーンブロッサムのヘッドバイザーが赤く光り、静かで確かに怒りがこもっている大地の声がスコールの心へ確かに突き刺さる。

 

「…が、害するなんてそんなこと言っておりませんわ……我々の企業で有効活用すると申しているまでです。悪いようにはしません…ですが2人とも容姿は最高クラスですから……私のように実力を示せば幹部陣の玩具として呼ばれることなど……ぐぅっ!?」

 

 スコールは最後まで発言することはなく、吹き飛び宙を舞っていた。

 スコールは一瞬の出来事をハイパーセンサーで捉えていたが、反応することができなかったのだ。

 一瞬にしてスコールの知る瞬時加速を凌駕する加速でスコールへ接近し、その勢いのまま飛び蹴りをスコールの腹部、ゴールデン・ドーンの非装甲部へ叩き込んでいたのだ。

 あまりの威力に絶対防御が発動するも衝撃を殺しきれなかったのか、腹部に鈍痛を感じ、腹部をおさえながら態勢を立て直すスコールに対して、大地は飛び蹴りの姿勢からゆっくりと戻し、直立していた。

 

「この速度に対応できないと千冬と束に敵いもしないよ……はぁ…女性に手を上げるなんてこと正直したくないんだけどね~。俺もスコールの大切だと思っているオータムとかにも気を使っていたのに……そうか……君のような女性はタイプなんだけど……力で物にしないといけないのかなぁ?ねぇ?スコール。」

「……っ!?」

 

 スコールはゴールデン・ドーンのバイザー内で表情を硬くするが、すぐに口角が不敵に吊り上がる。

 先ほど大地から感じた殺気の様なプレッシャーがさらに強くなり、そしてスコールの中で恐怖とは違う何かゾクリと高ぶる感情が表層に出てくる。

 

「あら、熱烈な申し出嬉しいですわ……ですが、私より強い男じゃないと寝屋を共にしようなどと思いませんわよ?」

「ここでもふざけるのかい?いや、それは本心か……でも俺も怒ってしまった……もう終わらせよう。わからせてやる。」

 

 そう言って大地は、目の前の空間に先ほどまで展開していなかった溶断破砕マニュピレーターユニットであるブロッサムユニットを4基呼び出して一気に散開飛行させスコールへと向かわせる。

 それに対して、スコールは周囲の散布ナノマシンの過熱率を引き上げて防御の姿勢を取る。

 だが、それは悪手だった。

 

「……!?嘘でしょ!?」

 

 ゴールデン・ドーンの過熱防御フィールドにブロッサムユニットがマニュピレータを開きながら接近しフィールドに触れた瞬間、散布したナノマシンの反応が消失しつつブロッサムユニットが自機へ接近している様子だった。

 それもそのはずだろう、ナノマシンによる振動摩擦の高温域に比べて溶断破砕マニュピレーターから繰り出されるビーム破砕フィールドはIフィールドを展開した機体にすらダメージを与える熱量を誇る。

 それはブロッサムユニットにとってはぬるま湯にも等しい空間なのだ

 そのため、破砕フィールドで散布されているナノマシンを文字通り破砕しながらフィールを突き進み、4基のブロッサムユニットはスコールを包囲する形で静止した。

 スコールは急いで手に持つライフルをブロッサムユニットへ向けるも、ブロッサムユニットは4基連携のビーム破砕フィールドを形成の方が早く、2基連携でもマヒローというMSを無力化したブロッサムユニットの破砕フィールドが倍の出力で形成される。

 この状況を認識したゴールデン・ドーンは速やかに搭乗者を保護するため、出力を限界まで上げて機体各所からナノマシンを散布し防御しようとしたが、数十秒で機体搭載ナノマシンを使い切り破砕フィールドの牙がISに襲い掛かる。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」

 

 機体全体をビーム破砕フィールドの熱量と高振動が襲い掛かり、ゴールデン・ドーンのシールドエネルギーが目に見えて消費され、物理装甲が赤熱化したり、一部が振動によりひびが入り始め、各センサー類の警告音を視界に収めつつスコールの顔は恐怖に染まる。

 急いでフィールドから抜けた出すために飛行しようとするも、強力な電磁波と機体許容異常の大気温度によりPICもスラスターも動作不良が発生、シールドエネルギーが危険域になった結果、地面へと落下した。

 そこまで高度を取っていなかったため、落下によるダメージは少なかったが起き上がったタイミングでスコールは首を掴まれて持ち上げられる。

 

「ぐぅ……!な、なにを……!?」

「言っただろう、わからせると。スコール、君だって生易しい世界にしかいなかったわけではないよね?」

「くぅ……!」

 

 ギチギチと音を立てて徐々にスコールの首を絞めていくムーンブロッサムのマニュピレーターに対して、スコールはムーンブロッサムの腕部に掴みかかり振りほどこうとする。

 だが、首を掴まれているせいで極わずかに絶対防御が発動されており、残り僅かなエネルギーがそちらに回されているせいで引きはがせるほどの出力が出せず、ガリガリとマニュピレーターでムーンブロッサムの包帯部をひっかくことしかできずにいた。

 そして数秒と絶たずに、スコールのゴールデン・ドーンはエネルギー切れを起こし首を保護していたシールドが消え去る。

 ついに生命の危機状態に陥ったスコールは、瞳に涙を溜めてこちらを見つめてくる。

 そして、何かを懇願するように口をパクパクと開いているが、ムーンブロッサムによって気道をほぼ塞がれている状態のため、ヒューヒューと口笛のような音のみが聞こえる。

 

「これで、スコール……君は俺のものになってくれるのかな?強い男が好きなんでしょ?」

「ヒュー……ヒュー……」

 

 冷淡に発言する大地に対して、スコールはわずかに動く首を縦に振って返答を示す。

 数秒ムーンブロッサムのバイザーがスコールを見つめた後、首を掴んでいたマニュピレーターを離し、スコールは重力に引かれ地面へ倒れるように落ちる。

 

「ゲホッ!ゴホッ!……はぁ、はぁ、はぁ……ゲホッ!」

 

 解放されたスコールは自身の首を抑えつつ、咳き込みながらも精一杯肺へ酸素を吸い込んでいた。

 そして、なんとか思考ができるほどに回復したスコールはゆっくりと地面に座り、大地を睨みつける。

 

「ゴホッ!……はぁ、はぁ……こ、殺さないのです……か?はぁ、はぁ。」

 

 スコールの発言に対して、大地はムーンブロッサムを解除してスコールへ歩み寄り、視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

 

「そんなことしないよ。でも君にはまだまだやってもらいたいことが沢山あるからね。そうだ、これプレゼントね。」

「はぁ……はぁ……っ!?こ、これは?」

 

 大地は発言すると、スコールの顎を片手で持ち上げてそのままスコールの首へ首輪のような物を巻き付けた。

 それは、ターンXのナノマシンで作り上げた情報送信装置でバイタルデータから会話や周囲の状況がリアルタイムでターンXへ送信されるもので、装着時は黒い首輪のような見た目だったがすぐに肌と色が同化して見えなくなる。

 そして、大地はスコールの耳元へ顔を近づけて囁くように話した。

 

「しばらく俺が安心できるようにした首輪だよ。これからも俺のために頑張ってね。スコール。」

 

 大地の発言を聞き終えたスコールは、ついに限界が来たようで意識を失い大地に抱き留められた。

 

「あらら……流石に今回はやりすぎたかな……ちょっと俺も自分を制御しきれなかった……反省だね。というかスコールさん……いい匂いするな……戦闘で昂っちゃってるせいか……」

 

 スコールを抱きとめた大地は、そのままの姿勢でいるとルナが呼んだのかBOID達が担架を持ってやってきた。

 そしてBOID達にスコールを運ぶようにお願いした大地は、ルナに『彼女また増やすの?』なんて言われ赤面しつつ帰路へ着いたのであった。

 

 

次回へ続く

 

 

~後日MR社医務室~ 

 

「はぁ……あんなに一方的に負けるなんて……亡国企業とはもう下手に連絡取れないし……もう私はおしまいね……」

 

「それにしてもあの時の社長の猛々しい殺気……そして首を絞められる感覚……」

 

ゾクリ

 

「……嫌だわ…こんなに熱くなるなんてオータム以来ね……」

 

「私、試したことなかったけどそっちも行けるのかしら……」

 

ジワリ

 

「……ん…これはいよいよ……考えないといけないわね……『ご主人様』にはちゃんと尻尾を振らないと……ね。」

 

 

 

 

 




 お読みいただきありがとうございます。

 ここまで書き込む予定ではなかったんですがテンション上がって書き込んでしまいました。
 とても楽しかった。

 今後とも、ゆっくり更新していきますので私の妄想自給自足にお付き合いいただけると幸いです。

【御礼】
 前話にて誤字の誠にご指摘ありがとうございます。
 また見つけた際はご報告のほど、よろしくお願い致します。
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