IS‐ターンXと行く月面開拓‐   作:かげう

43 / 45
43話ー亡国企業襲撃2ー

 

~ナイトファング1サイド~

 

 夜空を下から照らす摩天楼を見下ろしながら、アンネイムド隊長のナイト1は溜息一つ吐いていた。

 戦争で愛する人を結婚する直前で失い、憎悪を国防への信念へと変え、母国のために名を捨て、戸籍を捨て、見えざる刃として存在している私が、何故このような人目に触れる任務へ着いているのかと。

 アメリカという国がどれほど亡国企業との繋がりが密接になってしまったのかをひけらかしているようだと失笑さえ出てくる。

 一緒に飛行している表向きのエリート、イーリス・コーリングとナターシャ・ファイルス、両名はこの任務の本当の意味に気づいていないのだろう……滑稽だ。

 自機のハイパーセンサーで護衛対象のホテルの最上階を望遠し、特殊フィルターを用いてプライバシーフィルターの施されたガラスを透過し観測すれば、複数の男に組み敷かれている少女達と拘束具を用いて少女をいたぶる女性達の姿が写る。

 反吐が出る思いだ、国を陰と表から守る存在がこうして裏の欲にまみれた催し事を守っているのだから。

 だが、任務は任務。こなせなければ次がないのが今の私の立ち位置。

 

ーこんなはずじゃなかったと思うのは自分の想像力不足だ。ー

 

 どこか遠い国の人の言葉だったかと思い出しながら、撤退するファング1と2を見て接近する偽装任務コードで向かってくる2機の飛行物体を見つめる。

 

(あれが……副長官が言っていた……もしもの事態。)

 

 ナイト1のハイパーセンサーで映し出されたケッサリアの類似機体に搭載されたMSの姿はデータベースにインプットされているMR社、ドイツ、アメリカのどの機体とも類似しない機体が4機、そして何度か数種類のレーダーを照射しているのに一切対象を捕捉できない状況に冷や汗が出る。

 そんな状況の中、アンネイムドの若い男性管制官から暗号通信が入る。

 

『ナイト1へ、こちらナイト13。やはり、我々にも告知されていないオペレーションコードです。状況を報告せよ。』

「こちらナイト1、やはりですか。現在防衛目標へ侵攻するIS及びMSを確認。MS部隊の派遣を要請する。」

『了解。待機中のMSユニットへ、速やかにナイト1の展開するポイントへ急行せよ。』

『こちらMSユニット、了解。速やかに急行する。』

『ナイト1へ、到着は約600秒後。』

「ナイト1了解。パーティ会場への連絡は任せても良いか?」

『……了解。』

「すまんな…」

『気にしないでください。これも任務ですので……通信終了。』

 

 ナイト1は管制官との通信が切れたのを確認した後、拡張領域からサプレッサー付きのマシンガンを両手に呼び出し構える。

 そして、増速し高度を上げ始めたケッサリアもどきから勢いよく飛び出したISと思わしきシルエットへマシンガンの銃口を向けた。

 

 

~大地サイド~

 

 

 大地は、ギャルセゾンから飛び立ちキャラパスユニットのスラスターベーンを最大稼働させてナイトファングへと突撃を敢行していた。

 と言っても、最初の加速のみ最大出力で噴射したが音速一歩手前の亜音速領域の速度を維持しつつ接近する。

 音速の壁を突破した衝撃波は容易く付近の建物の窓ガラスを容易に割るほどの衝撃力があるのでそこは大地の配慮というやつである。

 そして、ルナからナイトファングの射程内に入った事が報告されるのを聞きながらナイトファングが両手に装備したバレルが少し長いマシンガン2丁が、大地に指向される。

 銃口と目が合った瞬間、大地はすぐさまフェイカーパッケージに装備されているフラットのハイパーバイブレーションシールドを展開させ周囲へナノマシンを散布し、ハイパーバイブレーションの音響被害を最小限に防ぎつつ来る衝撃へ備える。

 すると数秒のラグがあったが、シールドにいくつもの鉛玉が着弾し、わずかに大地へ衝撃を伝える。

 

「発砲の光が見えなかった……サプレッサー装備か。それにしても位置が悪い……そこだとギャルセゾンの飛行ルートが塞がれてるからどかさないとな。」

 

 連続でシールドを叩き続ける鉛玉の雨に臆することなく、大地はボソッとぼやいてそのまま速度を維持し、ある程度の接近した後は瞬時加速を使用しナイトファングの前で90度の急降下を実行した。

 その行動で、ナイトファングは困惑した様子を見せたが一瞬で状況が変わる。

 ISのPIC制御でも軽減しきれない程のGを感じさせる直角的な動きをして、大地はそのまま90度の直角的な機動を更に2回実行。

 ナイトファングを直下から突き上げる形でシールドバッシュをする。

 轟音と共に上空へ打ち上げられるナイトファングを見ながら大地は更に追撃を仕掛けるが、ナイトファングは体勢を何とか持ち直して銃を構えなおす。

 だが、ナイトファングは大地の乗るムーンブロッサムの背後がニューヨークの市街地な事で射撃ができず、マシンガンを格納しIS用コンバットナイフを呼び出し接近戦を仕掛けてくる。

 大地はそれを確認すると、ムーンブロッサムの近接戦闘用に拡張領域へインストールしていたISサイズのミンチドリルを呼び出して対応する。

 そして、大地の背後でギャルセゾンが目標のホテルへと接触した。

 ナイトファングとの鍔迫り合いをしつつ、大地は背後でギャルセゾン1にエイワックスと一緒に同乗しているバーニィのトラッパーの各マインレイヤーからスモークとチャフが大量に散布しつつホテル上空を通過し、ホテル周辺の区画ごと煙幕の海に沈める光景と同時にホテル最上階にギャルセゾン2がホバリングし、ミーシャの乗るハイスタブとガルシアのレイダーがMMPマシンガンを突きつけて制圧している光景をハイパーセンサーで確認した。

 

『なんだと!?あんな動き……!』

 

 すると、接触回線がつながっていたのかナイトファングの搭乗者の驚愕の声が聞こえてくる。

 それもそうだろう、現状サブフライトシステムが普及して間もない時期にそれを組み込んだ市街地での強襲作戦の実行例はターンXとルナが調べている段階ではまだ無い。

 ギャルセゾン2機による攪乱と強襲、そしてその護衛としてのポジションについているIS、ISとMSによる混成部隊の運用はアンネイムドでも同様だろうが以前として実績は出していないのだろう。

 ナイトファングの搭乗者の反応に対して、大地も機械音声で返答する。

 

「そちらは作戦失敗だ、撤退をし戦力を温存することをお勧めする。」

『な、貴様!』

 

 鍔迫り合いをしつつ少し怒り気味の反応をするナイトファングの搭乗者に対して、大地は稼動させていなかったミンチドリルのドリルを回転させナイトファングのコンバットナイフを弾き飛ばす。

 体勢を崩したナイトファングに対し、大地はミンチドリルを格納、再度フラットシールドを展開と同時に瞬時加速を開始、シールドバッシュがナイトファングに直撃しそのままサイクロプス隊が制圧中のホテルへ向かって加速し続けた。

 

 

~サイクロプス隊サイド~

 

 

 大地がナイトファングとの交戦が開始された頃、サイクロプス隊は予定通りバーニィのトラッパーによる周辺区画へのスモークとチャフの広域散布により周辺一般人への目撃数減少及び、強襲目標をパニック状態にさせる事に成功。

 エイワックス&トラッパーの搭乗するギャルセゾン1は散布しつつ目標ホテルの上空を通り抜け、ハイスタブ&レイダーの搭乗するギャルセゾン2は急減速をかけながらホテル最上階のホテル外壁側面でホバリングし、MMPマシンガンを最上階の窓に向けてメッサーのモノアイを光らせた。

 最上階のガラスには覗き見防止用のプライバシーフィルターが施工されているようだが、メッサーのモノアイセンサーでその機能は透過され、中の様子がミーシャとガルシアのコックピット内モニターに鮮明にパーティーの様子が映し出される。

 

「MR社に鞍替えして正解だったな……レイダー、お前も混ざるか?」

「あまり俺をからかわんでくださいハイスタブ……これは俺の趣味にはあわねぇ…虫唾が走る。」

「ははは、久々の実戦で俺も高ぶってるみたいだ、許せよ。」

「まったく…わかりましたよ。」

「作戦を続行するぞ。」

「了解。」

 

 接触回線で2人はパーティーの様子に顔をしかめつつ、この映像データを各機に共有しハイスタブの左手腕部の指先が手の内側に可動したと思うと関節の間から先端に突起物に様なものがついたワイヤーを射出し、最上階の窓ガラスへ張り付いた。

 それは、骨伝導イヤホンのような仕組みで張り付いたガラスをスピーカーへと変え、中へ音を伝える。

 

『全員そこを動くな!不審な行動をした者は即座に射殺する!MS携行火器の威力を腹いっぱい感じたい奴以外は床に伏せろ!』

 

 室内に響いたミーシャの声に対して、張り付いた突起物はマイクの役割も果たしていたため、室内の音声がミーシャの機体へと届けられる。

 

『MS!?どこの部隊だ?』

『こんな機体知らないぞ!』

『アンネイムドは何をしているんだ!?副長官!』

『……私もこれは予想外だ。こんなMSは我が軍のものではないぞ……』

『おい!警備のやつはなにしてる!』

『ひ、ひぃ!し、死にたくない!』

 

 突然の出来事にミーシャの指示に従わず混乱し、小太りで先程まで見た目も幼い少女に覆いかぶさっていた男が裸のまま部屋の扉へ駆けだしたのを確認した、ミーシャはガルシアへ一度視線を向けて合図する。

 すると、ガルシアの駆るレイダーは右手で構えていたMMPマシンガンではなく、頭部の方向を逃げる男へ向けた。

 周囲の人間達が何をするのかを見守ったその時。

 

『い、いやだ!俺はまだこんな所でピギャ……ッ!』

 

Brrrrr!!

 

 

 頭部モノアイより上の部分に搭載されているメッサーの頭部バルカンがその男目掛けて火を噴き上げた。

 頭部バルカンから放たれた小口径の弾丸達は容易に窓ガラスを貫通し、そのまま逃げ惑う小太りの男向かった。

 そして、バルカンの銃声と共に小太りの男は最後まで言葉を紡ぐことなく、上半身が弾丸の衝撃により血煙と肉片を周囲へばら撒き、太くてだらしのない足と周辺に大量の弾痕だけ残してこの世を後にした。

 その光景を見ていた男と一部の女たちは時が止まったかのように固まり、そこでミーシャが再度警告する。

 

「これは最後通告だ、死にたくない奴はその場で床に伏せろ。次はこっちのでかい銃の弾であいつみたいになるぞ!」

 

 ミーシャの警告で、やっと我に返った者たちはその場で床に伏せて動かなくなったタイミングで周辺へ煙幕とチャフを散布し終えたギャルセゾン1が合流する。

 

「ハイスタブ、状況は?」

「はい、階層の制圧完了です。1名射殺しましたが問題ないかと。」

「わかった、社長へ伝える。」

 

 そして、シュタイナーが制圧完了の報告をしようと通信を開こうとすると……

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~ドガァァァァァン!

 

 2機のISが縺れた状態でホテル最上階層へ激突した。

 

 

~大地サイド~

 

 

 大地は、ナイトファングへシールドバッシュ直撃させた後、ルナのIフィールドビームドライブを利用してナイトファングを磁場で拘束し、そのまま瞬時加速を数回ジグザクに飛行する形で実行。

 ナイトファングのパイロットへPICで軽減できない程の加速と方向転換によるGをご堪能させつつ、ホテルの最上階の人のいない区画へ突撃した。

 轟音と共に、ホテルの最上階へ到達した大地は加速Gとホテルへぶつかった衝撃で意識を失ったナイトファングをIフィールドビームドライブの拘束から解放し、周囲を見渡す。

 

(おや、皆大人しくなっているみたい。制圧成功かな?)

<そうみたい、丁度シュタイナーが大地に連絡入れるところだったみたいだよ。>

(お、それはナイスタイミング。なんか視界の端に汚い花火が見える気がするけど、気にしないでおこう……)

<意外に大地ってその手の耐性あるよね。>

(正直俺もそこは思ってる……ナノマシン化の影響かな?)

<可能性はあるかも、後で診断しようか。>

(頼むよ。)

 

 周囲の人間が皆床へうつ伏せになった状態でこちらを見て口をあんぐり開けている面々を前にして、大地はルナと思考通信で話しつつ気になった男性へと足を進めた。

 その男の前まで行くと、大地は機械音声で話始める。

 

「おやおや、こんなところでお楽しみ中でしたか?副国防長官殿。」

「……」

「だんまりとは……肉体言語でお話しした方がよろしいでしょうか?」

 

 大地が話しつつ更に近づこうとすると、近くで伏せていた豪華な衣装を纏った女性が急に立ち上がり、こちらへ近づいてきた。

 

「ちょっとあなた!ISに乗っているなら私達を助けなさいよ!まずはそれが優先でしょ!私を誰だと思っているの!?」

 

 詰め寄ってくる女性は、先程まで伏せていたのか所々汚れているが片手には鞭のようなものが持たれておりその後方には拘束具で拘束され所々露出した肌に鞭の跡が残された少女がぐったりとうなだれていた。

 メッサー達がその女性に銃口を思考するも大地がハンドサインで静止して女性へ相対する。

 

「なぜ、貴方を助けないといけないのですか?私はあなたを知らない。」

「知らないですって!この私を!女性権利団体米国支部の副代表であるこの私を!」

 

 そう言われた大地は、周辺のインターネット回線をルナに頼んでハッキングしてもらって瞬時に顔情報で照合を行い、女性の言う言葉が本当であることを確認した。

 そして、確認のため少し静止してしまったこと仇となったのだろう。

 周囲で伏せていた女性達も立ち会がり、副代表の元へ集い姦しい光景になっていた。

 その光景を見つつ、大地はバイザー内で溜息一つ着くと女性達を無視して女性たちの立つ後方へ歩みを進めた。

 そして拘束具で拘束された少女の手足に付けられた拘束具をムーンブロッサムの手でパキリと握りつぶして外し、拡張領域に収納されていたBOIDを呼び出して医療用ナノマシンを渡して治療を命じた。

 BOIDが少女の容態を確認しつつ治療を開始したことを確認した大地は喚き散らしている女性達に振り返り、女性権利団体副代表に相対する。

 

「そんな小娘を助けるより先に我々を助けるべきじゃないかしら!ドレスだってこんなに汚れてセットも台無しよ!」

「女性の権利を守る貴方方が……少女をいたぶるのは女性の権利を守る貴方方にとって看過できない事だと思うのだが……それをどう思うのか聞かせていただきたいな。」

「はぁ!?あんな作り物の女なんて人間扱いされる方がおかしいわ!私達の娯楽になっただけでもありがたいと思いなさいよ!それより私達ぐふぅ……!?」

「聞くに堪えん。」

 

 副代表の怒号を聞くに堪えないと思った大地は、そのままムーンブロッサムのマニュピレーターで副代表の口を掴み宙に持ち上げる。

 それを見ていた取り巻きの女達がドレスの内側に隠していたハンドガンをムーンブロッサムへ向けて発砲し始める。

 周囲にパンパンと渇いた銃声が響くが、ムーンブロッサムのIフィールドビームバリアで弾かれ一切ダメージは入らなかった。

 そして大地はそれを気にも留めずに、ギチギチとマニュピレーターの握力を強めていき、持ち上げられる副代表の苦悶な悲鳴を聞き、周囲にいた取り巻きの女達の表情が絶望の物へと変わり、副代表はマニュピレーターを引き剥がそうとマニュピレーターを掴んでもがいている。

 

「私はね、そちらが先に手を出してきたから報復に来たんだ……制圧して軽いお話でもして納得してもらえたならそれでよかった。でもこんな状況になってしまったからには私もそれなりの対応をしないといけないな。女性の権利を守る団体は、ちゃんと平等に女性という存在を守るために活動していればよかったんだ。それを作られてしまった少女をいたぶって愉悦に浸りあまつさえその罪を自覚すらしていない。そんな団体、中の人を全て入れ替えてもおつりがくると思わないか?」

「ムーーーーッ!ムーーーーッ!」

「何を言っているかわからないな、ちゃんと人の言葉で話してくれないか?それに、ここにいる人が指示に従わなかった場合どうなるか見ているはずなんだけど……人なのに人の言語も話せない……理解もできないのなら……その顎はいらないね?」

 

グググググ…ミシミシ……バキッ!

 

「ーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

 大地は、容赦なくマニュピレーターの握力を上げて掴んでいた副代表の顎関節を握り砕く。

 すると、副代表はバタバタと身体を跳ねさせながら必死にムーンブロッサムの腕部をガリガリとひっかき引き剝がそうとするが、強固な装甲に覆われている部分をひっかいた為、指先を真っ赤に染めつつ、目は痛みで白めになり、下半身からは透明な液体が漏れ出ていてもなお暴れ続けた。

 

「普通なら、ここで意識を失ってもおかしくないんだけど……薬でもやってるのかな?」

「ーーーーーーーーっ!!!ーーーーーーーーーーっ!!!」

「はぁ……もういいや。」

 

 大地は、依然として暴れる副代表を狼狽えてみている取り巻きの女性の方へ放り投げて踵を返して、伏せてこちらを見ていた副国防長官へまた近づいた。

 

「では、そろそろ建設的な話をしましょうか副国防長官?」

「……目的はなんだ?」

「先ほど申したでしょう?お話をしに来たんですよ?」

「我々を殺すのか?」

「正直そこまでしようとは思っていません。」

「では、なんとする?」

 

 伏せた状態から、起き上がった副国防長官がこちらを見据えてくる。

 それに対し、大地は拡張領域から無針型注射器を人数分呼び出してそれを副国防長官へ見せる。

 

「それは?」

「我々の技術で作った特殊なナノマシンです。これを皆さんに投与させてもらう。」

「性能を聞いても?」

「そんな複雑な性能ではありませんよ?ただあなた方を無意識に意識誘導したり、会話や思考が全てこちらに筒抜けになるくらいです。」

「……恐ろしいことを言う。もし君達の思い通りに動かなかったらどうなるのかね?」

「そうですね、心臓発作とか脳梗塞とかそのお歳だと何があるかわからないですよね?ご自愛ください。」

「まったく……サラっと恐ろしいことを。従うしか生きる道はないのだろうな……MR社CEO?」

「やはりお気づきで?」

 

 副国防長官の言葉で、周囲へ状況を見守っていた人たちから動揺が起こる。

 それを気にも留めずに副国防長官は会話を続ける。

 

「あの篠ノ之束がMR社にいるのはスコールとオータムの情報で前から知っている。それに、女性しか扱えないISと言っても、開発者が傍にいるし時間もそれなりに経っている。男が乗れるISがあってもおかしくないと思ったまでだ。それにそこで見ているMSだって、現在の世界を探しても同性能なMSはMR社製以外にないだろう。MSの世界シェアを持っている君がISに乗っているのは滑稽だとは思ったがね。」

「ははは、返す言葉もありませんな。さて、時間がありませんのでこれを早く投与してもらえますか?」

「まったく、年寄りの話はもっと聞くべきだろう。ちなみにそれを投与することにより私達は完全に傀儡となるのかな?」

「そういうわけではありません。私や私の部隊の存在の記憶からの抹消や、下手にうちに手を出せないよう思考のロックをかけます。そして亡国企業という組織をスコールをトップとした形に再編させます。あぁ、今まで通りの生活はお約束しますよ。このパーティ以外はね。」

「なに……スコールはすでに……」

「えぇ、ちゃんと首輪をつけました。ですが、基本は今までの方針で動いていただいて構いません。宇宙事業への参入や支援はしていただきますが。」

「まったく……食えん奴だ。私ももう潮時なのかもしれんな。」

 

 自嘲気味に笑う副国防長官は、大地の手から無針型注射器を受け取りそのまま首に押し当てナノマシンを体内に注入した。

 その後は、大地が更にBOIDを呼び出して会場にいる亡国企業幹部連中にナノマシンを投与させた。

 すると、身体をナノマシンが回り切ったのか全員が眠りについた。

 なお、女性権利団体副代表は治療用ナノマシンも同時に投与し顎関節の治療も並行して行った。

 その光景を見ていると、大地へシュタイナーから通信が入る。

 

『社長、MS部隊を有視界にて捕捉。ケッサリアからのMS3機の投下を確認。地上歩行で接近しています!』

「わかりました。ここにいる少女たちをギャルセゾン1へ収容します。その間ハイスタブとレイダーでMS部隊の相手をしてあげてください。少しのサービスです。米MS部隊へ実戦を教えてあげてください。」

『了解!ハイスタブ!レイダー!ギャルセゾン2から降下準備!ギャルセゾン1はホテルへ乗り付けるぞ!BOID展開!少女たちを収容する!トラッパーは引き続き周辺の警戒!』

『『『了解!』』』

 

 シュタイナーからの通信を終えて、サイクロプス隊の機体達が動き始めると、大地は自分がホテルへ激突した際にできた瓦礫の山の真ん中で動かないナイトファングの元へ近づいた。

 

「なぁ……起きてるでしょ?なぜあの人たちを助けなかったの?」

「……私には…何が守るべきものかわからなくなってしまった。」

 

 大地の問いかけに対して、パラパラと瓦礫の破片を落としながらナイトファングがゆっくりと起き上がり、俯いたまま話し始めた。

 

「この件について知っていたんだね。」

「あぁ……イーリス・コーリングとナターシャ・ファイルスは知らされていなかったみたいだがな。国を守るために軍へ入ったのに、国防を担うやつらのこの光景を見ていれば愛国心を疑いたくなったよ。」

「……心中察するよ。そこで君に提案があるんだが、今後亡国企業と国防の中枢はより良いものになっていくはずだ。そこで、俺と協力関係を結ばないか?アンネイムドのISパイロットさん?」

「なぜ私の事を……まぁいい、協力だと?」

「そうだ、MR社が君の部隊を支援しよう。見た目は米軍装備だけど中身をより高性能なものに変えるし今少女たちを運んでいるBOIDと言うユニットもいくつか融通する。報酬もそれなりに出す。だから表では出回らない人体実験の情報を入手したら俺にコアネットワーク経由で教えてほしい。」

「……なぜそこまでの事をする?」

「そうだな……」

 

 ナイトファングのパイロットの問いに大地はBOID達が抱えて居る少女達に視線を向ける。

 

「あんな子たちを増やさないためってのもある、でも一番はそこじゃない。」

「どういう……」

「俺はインフィニットストラトスと言う存在とMSと言う存在で協力し合って、人類を宇宙に導きたいんだ。そのために、今ISを武力として利用しその副産物で出来た女の子達を増やしたくない。『ISは宇宙へ羽ばたくために作られた翼なんだから』。」

「……っ!」

「……?どうかしたかい?」

「い、いや……な、なんでもない。わかった、お前に協力しよう。ただ、1つ条件がある。私の個人的なものだ。」

「随分すんなりだね?条件は?」

「…う、うるさい。私をこのナイトファングと共に宇宙へ連れて行ってくれ……条件はそれだけだ。とりあえず、今向かっているMS部隊は引かせる。撤退するんだな。」

「……君も宇宙に興味があるのかい?嬉しい!それくらいならお安い御用だよ。それに、MSは引かせなくて良いよ。ここは俺からのサービスという事にしとくよ。」

「サービス?」

 

 ナイトファングのパイロットが訝しんだ瞬間、ホテルの下からドゴーンと言う轟音と共に何か大きなものが倒れるような振動が伝わる。

 それに反応して、立ち上がろうとするナイトファングのパイロットに対して大地は手で静止する。

 

「大丈夫、君の部下達を殺しはしない。純粋にこちらの戦闘用MSとの実戦データをプレゼントするよ。それを持ち帰って、君たちの機体のOSをアップデートすると良い。あれはまだ未成熟すぎる。」

「副国防長官の言う通り、食えん奴だ……私にもナノマシンを投与するのか?」

「いや、君はこちら側に来そうな感じがするからね。そんなことはしない、信用しているよ?」

「お前……たらしと言われないか?」

「どうだろうね?言われたことないからわからないよ。」

「はぁ……わかったよボス。これからはあんたが私の本当のボスだ……名前はないから好きに呼ぶと良い。」

「…ありがとう!そうだな……俺はネーミングセンスがないからな…今はナイト1と呼ばせてもらうよ。良い名前が思い浮かんだらまた連絡するよ。」

「了解だボス。」

 

 そう言って大地はナイト1へ手を伸ばし、ナイト1はその手を握り返してそのまま立ち上がり見つめ合った後に別れた。

 そして、今後数年間に渡り世界各国の違法人体実験施設が謎のMS部隊とIS部隊に襲撃を受けて壊滅的な被害を受けつつ、実験体すべてが行方不明になる不可解な事件が発生するようになるのだった。

 

 

次回へ続く

 

 

~ナイトファングの遠い過去の記憶~

 

「なぁ、〇〇〇」

「なぁに?〇〇〇?」

「少し前に発表されたISって凄いよな!」

「急にどうしたのよ?」

「だって、宇宙で宇宙服なしに自由に飛び回れるんだぞ?凄いに決まってるじゃないか!俺は宇宙が好きなんだ。」

「また始まったの?〇〇〇は本当に宇宙が好きねぇ。」

「そう、大好きさ!だからISの論文はしっかり読み込んだ。女性しか扱えないのが本当に残念でならないし、俺ももうすぐ任務で国を離れる……だから残酷な事だろうけど、俺の夢を〇〇〇……君に託すよ。」

「そんなこと言わないで……帰ってきたら式を挙げるんだから。」

「でも、もしもの事はあるから遺書とかで知るんじゃなく俺の言葉で受け取ってほしいんだ。」

「わかったわ、聞いてあげる。」

「ありがとう。〇〇〇、もし俺が死んだら……俺の代わりにISで宇宙を飛んで宇宙がどれほど綺麗な場所だったのか俺に伝えてほしい。」

「〇〇〇……わかったわ。ならISのパイロットになるための勉強をしないといけないわね。でも、どうしてISなの?宇宙飛行士でも良いと思うんだけど?」

「ありがとう。だってミス・タバネが論文に書いてたんだ。」

「書いてた?」

「あぁ、『ISは宇宙へ羽ばたくために作られた翼なんだから』ってね。」

 

 その数か月後、とある士官から折りたたまれた星条旗と共に彼が身に着けていた血まみれのドッグタグを受け取り〇〇〇は名を捨て、軍へ入った。

 




お読みいただきありがとうございます。

 妄想が加速する中、文章化が進まないがそこそこ楽しく過ごしている今日この頃です。
 そろそろ、デュノア社やナンダー孤児院、山田先生にも触れていきたいところ……サイドではメインキャラが登場してますが本編初登場は誰からにしようか悩みどころ……


 次話も気長にお待ちいただけると幸いです。

【御礼】

 前話にて誤字のご指摘ありがとうございます!
 
 今後とも見つけていただいた際はご指摘くださると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。