前話より数日たち、大地は地球と月の引力が釣り合うポイントであるラグランジュポイント1でサイクロプス隊と模擬戦を行おうとしていた。
地球の軌道上でと最初は考えていたが、シュタイナー達のお願いもあって今回は実弾・ビーム兵器を使用したほぼ実戦的な環境で行われることになったからである。
現在、静止衛星上はウドガルドや現在建造中の軌道拠点、他国の観測衛星が増加したため、実弾・ビーム兵器を使用した戦闘を行うと予期せぬ事故が起こる恐れもあった。
現在ラグランジュポイント1付近の宙域で不羈遭遇戦でのシチュエーションで戦闘することになっていて、サイクロプス隊と相対する大地は、予定宙域へ向かいつつターンXのコックピット内で僅かに緊張していた。
(MS同士での1対4の戦闘……しかも相手はサイクロプス隊に乗る機体はメッサーのカスタム機、宇宙世紀でもこんなシチュエーションは絶望的だろうに……シミュレーションでは1対多の戦闘はしていたけど現実でどのくらい動けることか……いや、ルナとターンXがいるんだ。俺も気張っていかないとな……)
コックピットの中で思考していた大地は、そのまま一息ついてモニター越しに映る宇宙空間を眺めているとここまで大地とサイクロプス隊を運んでくれたアスピーテから映像通信が入る。
『だー君!そろそろ開始時間だけど大丈夫そう?』
「束さん、少し緊張しているけど大丈夫だよ。2人とも、アスピーテの中でもISは起動しておいてね。」
『わかってるってー!存分にMS同士の戦闘を観測させてもらうよ!ゴー君たちの勉強にもなりそうだし!』
「あれ?地上でサイクロプス隊が地上任務中にMS部隊との交戦記録は参考にならなかったかい?」
『それも参考になったけど、やっぱり経験と機体の差が大きいね~。凡人達の割に頑張ったとは思うけど、今の束さんとゴー君達には少し足りないかな~』
「そうか……宇宙戦闘で全然勝手が違うと思うけど、参考になれば俺もうれしいよ。」
『うん!でも∀との1対1しか宇宙での戦闘って束さん自体が観測していないからね~!今回の1対多で完全な実戦形式!決闘とかではない本当の戦闘記録は楽しみなんだ!』
「期待に応えられるかわからないけど、頑張ってみるよ。そう言えば山田さんは大丈夫かい?」
『あぁ、それなら~!これをご覧あれ~!』
大地の質問に対して、束はカメラを自分からアスピーテブリッジ内へ向ける。
すると、無重力のせいで未だに宙をフワフワと舞いながらあたふたしているタイトスカートのスーツを着た山田真耶の姿が映し出され、四肢をばたつかせているためたまにスカートの中が見えてしまい、大地は思わず視線を逸らす。
『わわ……!と、とまって~!って社長!た、束さんも助けてください~!』
『ねぇねぇ!あれ可愛くない~?可愛いよねー!実は束さんのマスター権限でまーちゃんのISのPIC制御をオフにしているのです!さぁ、だー君!今こそ無防備なまーちゃんを抱く時なのだ!』
『だ……抱く!?え、えっと……その私はそんな、社内恋愛からの行けない関係なんて……でも社長にはもう相手がいて……でもそんな禁断にも近い関係なんて…….////』
「ははは、山田さんは可愛らしいですね。後束さん、戦闘終わったら説教ね。」
『わ、わわわわ!?え?今、か、か、可愛いって……え?』
『なんでさー!』
以前とあたふたとし続ける真耶に対して、大地は微笑んでいた。
なぜ、アスピーテ艦内に真耶がいるかと言うと、いつも通りの束の思い付きである。
模擬戦に出発しようとしていた大地を発見した束が、真耶を引き連れて来て「宇宙をまーちゃんに見せたい!」と言ったので、大地は少し間を置いたが承諾、真耶も束から専用ISを渡されており、新型のシールド発生装置の宇宙での実地運用もあったために承諾し、現在アスピーテ内で宇宙遊泳を楽しんでいる。
なお、束は真耶の専用機を作るにあたって真耶が代表候補生時に搭乗していたISコアとデュノア社から貸与されているISコアを入れ替え、コアナンバーも修正しており、現在真耶の手元には長年連れ添った相棒が戻ってきた状態になっている。
だが、大地にも千冬にも真耶にも相談せずにある日突然、真耶にラファール・リヴァイブの束カスタムを施した機体が完成したと言って渡し、MR社地下試験場での試運転中に大地と千冬がいる中暴露した結果、大地の軽めな、千冬の激しいお説教を受けて真耶に泣きついて助けを求める姿があったとかいないとか。
そして、大地と束に真耶が話していると通信に少しだけノイズが走り始める。
『だー…君!……き……こえ……て……る?』
『しゃ……ちょ………つう……し……ん………が……』
「聞こえているよ。こっちの声が聞こえるかわからないけど、行ってくるよ。」
『うん……!だー君がn……ば……t……n……ザザザザザーーーーー!』
「……」
大地の意識は戦闘モードへと切り替わる。
それと同時に、ターンXのコックピット内にアラートが鳴り響くと同時に管制を担当しているルナが話し始める。
<大地、ミノフスキー粒子戦闘濃度を確認!以降短距離通信のみ可能!>
「わかった!ターンX、出力はまだ上げないで!周囲に光学迷彩ナノマシンを散布する!ルナ、ミノフスキー粒子散布方位分かる?」
ー肯定、光学迷彩ナノマシンを一定値散布。低出力モード及び慣性航行維持。ー
<散布方位確認!本機直上宙域!>
「真上か……陽動…いや……ターンXのセンサーとルナのハイパーセンサーを同期!」
大地は、ターンXをAMBAC(手足を振って行う姿勢制御)で方向を変え直上宙域を見渡せるようにして有視界でMSを探す。
すると、ハイパーセンサーの方で宇宙空間では近距離と言えるくらいの距離に太陽の光をわずかに反射する物体を確認した。
「ミノフスキー粒子の広範囲散布能力にあの大きさ、MSじゃない……ギャルセゾンか?」
<大地、ハイパーセンサーの取得情報だとギャルセゾンに間違いないけど、MS特有の熱反応確認出来ないよ!>
「ならMSはどこに……?」
ー大地様、捕捉したギャルセゾンの後方30㎞にギャルセゾンと思われる飛翔体を捕捉しました。スキャン完了、MS反応2機を確認。ー
ギャルセゾンの発見から状況は瞬く間に変わっていき、大地はハイパーセンサーの高速思考で考える。
(一つ目のギャルセゾンは囮?でももう1機のギャルセゾンにはMSの反応が2機……なら2機はどこに?……この感覚…千冬と戦った時の…そっちか!)
そして大地が思考を開始したと同時に、何かを感じ取った大地はターンXのANBACとIフィールドビームドライブの斥力を利用し横方向へスライド移動を行って数瞬の間をおいて先程まで大地がいた場所に黄色い閃光が走り抜けた。
「ビーム…!すでに捕捉されていたか!」
それを確認した大地は声を出しつつ、即座にターンXのジェネレーター出力を上げ、キャラパスに装着されている三連装ロケットランチャーを取り出し、ビームの飛来した宙域へばら撒くように発射した。
すると、発射器から放たれたロケットは数㎞進んだ後に自爆し周辺へ煙とキラキラとした粒子であるビーム攪乱幕を散布した。
(実戦で使うのは初めてだ……MS携行火器サイズの散布量でどこまで行けるか……)
大地がそう思考した瞬間、ロケットを射出した方向から再度黄色い閃光が飛来し、キラキラと光を反射するビーム攪乱幕粒子の散布エリアへ接した瞬間、ビームが粒子に阻まれ霧散し減衰、ターンXのビームバリアに火花程度の被弾が確認されたがターンX自体は無傷だった。
大地は大きなため息をついた後直ぐ、キャラパスへ三連装ロケットランチャーを格納しターンXのスラスターベーンへ光学迷彩用のナノマシンを集中散布させ推進光をほぼ見せない状態で一気にギャルセゾンに対して後方から回り込む軌道へ移行しながら周囲を索敵する。
「攪乱幕は正常に動作、防げたか……さて、この正確な狙撃したのはミーシャさんか、ガルシアさんか……」
ー大地様、極短時間ですが当機へFCSレーダーの照射を確認、完全に捕捉されていると推測。ー
<大地!ミノフスキー粒子を散布していたギャルセゾンが進路反転!こちらに向かってくるよ!MS反応のあるギャルセゾンも進路変更、回り込む形で移動してる!>
「……やはりシュタイナーさんのエイワックスか……!捕捉の仕方が上手い!」
大地はルナとターンXとの会話をしつつ、宇宙空間を高速で飛行するが推進剤の消費を一切気にしない推力で接近してくる無人のギャルセゾンに完全に捕捉されてしまう。
そして、大地はルナのハイパーセンサーで捕捉された直径20m程の小惑星へ接近し、ギャルセゾンに対して身を隠すように停止する。
「ターンX、脚部をパージして光学ステルス状態で待機、そして光学迷彩のナノマシンを脚部へ集中散布、Iフィールドビームドライブで固定して。」
ー肯定、脚部をパージし光学ステルス状態で待機、脚部光学迷彩ナノマシンを脚部へ圧縮散布。脚部を偽装します。ー
大地の指示で、ターンXは両脚部を分離して光学迷彩で透明化し小惑星に貼り付ける形で待機させ、光学迷彩ナノマシンを分離した脚部へ集中させ、相手からは脚部を分離させていないように見える状態にした。
それと同時に、頭部を分離し小惑星から少しだけギャルセゾンの接近する方向を見るとルナから報告が入る。
<大地!ギャルセゾンが更に増速!小惑星に激突するコースだよ!>
「っち!完全に落とす気で来てるな……!ルナ、MSの熱反応計測できる?」
<今回り込んでいるギャルセゾンに2機、狙撃が来た宙域に1機……ごめん今ロストした、後は1機は不明!>
「奇襲に注意しないとな……ターンX、脚部のない状態での推力低下率は?」
ー肯定、推力の低下率は15%程ですがキャラパスをパージしていませんので戦闘機動に問題はありません。ー
「わかった!行ってみるか!」
分離した頭部を胴体へ再接続させながら大地はキャラパスからバズーカを取り出して、上半身だけを小惑星から乗り出し、突貫してくるギャルセゾンへ特殊弾頭のロケット弾を発射する。
それは、大地が宇宙空間でターンXが地球側の偵察衛星などに見つかった際に使う予定だった目くらまし用の弾頭であった。
バズーカから撃ちだされたロケットは数秒直進した後に弾頭が分離し、小さなグレネード上の物を散布する。
そして数瞬の間をおいて、ギャルセゾンの周囲が激しい閃光で包まれた。
空気の無い真空空間で、激しい燃焼反応による閃光を間近でくらったギャルセゾンは急旋回で回避機動を取るのと同時に、大地の乗るターンXへ向けられていたFCSレーダーが途切れる。
その隙を逃さず、大地は一気にキャラパスのスラスターベーンを吹かして小惑星から飛び出す。
それと同時に、小惑星へ複数のビーム兵器が飛来し小惑星がビームの熱量で融解と共に大きく砕ける。
それを見つつ、大地は回避起動中のギャルセゾンへ一気に接近し溶断破砕マニュピレーターをビームサーベル状に展開、ギャルセゾン後方の空間を一線する。
すると、何か細いワイヤーのようなものが切断され宇宙空間を漂うのを確認した大地はそのままギャルセゾンへターンXによるショルダータックルを当てて付き飛ばす。
「通りで、ギャルセゾンの補足情報が的確に相手に伝わっていると思った……やはり上手い!」
<大地!もう1機のギャルセゾンからMSが2機散開し接近!シルエット特定!ハイスタブとレイダーと推測!>
「何!?じゃぁさっきの遠距離狙撃はエイワックスかトラッパーの……っ!?またこの感覚!……そこか!」
ルナの報告に反応した大地は、また何とも言えない感覚に襲われてターンXを反転させギャルセゾンの細いワイヤーの繋がっていた方向へ向けると、目の前の宇宙空間が急に歪み、周辺の宇宙空間を投影したマントを羽織ったような姿のトラッパーが突如出現して両手で持たないといけない程の大型ヒートホークを振り下ろしてきた。
ビジュゥ!ジジジジジジジジ!
大地は姿勢の制御が間に合わず、咄嗟に左手腕部内蔵型のビームサーベルを展開し赤熱化する大型ヒートホークと切り結び、機体を通じてビームサーベルの高熱量とヒートホークのプラズマ化した刀身が互いの熱量で弾き合っている音が機内に響く。
それと同時に、メッサー・トラッパーとの接触回線が繋がる。
「光学迷彩マントとステルスナノマシンでジェネレーター反応まで欺瞞とは……やりますね!」
『しゃ、社長こそ……!左腕は取れたと思ったんですが…!反応できるなんて!』
「偶然ですよ……にしても、バーニィさんが突っ込んでくるのは予想外でしたよ!」
『はは、こういう奇襲であのガンダムを大破させたのは伊達ではないんです……よ!』
「おっと!」
切り結びながらバーニィは言い切ると、そのままスラスターを一気に吹かして大地の駆るターンXを付き飛ばす。
それと同時にトラッパーの各ラックに取り付けられたマインレイヤーユニットから一気にグレネード状の物が散布されてターンXを囲うように散布される。
そして、ターンXからはハイスタブとレイダーが有効射程圏内に入った事が告げられ、ルナからはグレネード状の物体は全て宇宙空間でも燃焼すりナパームグレネードと説明を受けて大地はこの状態からの脱出方法をターンXとルナとのリンクを強めて情報処理を開始し模索し始める。
(現状は周囲をトラッパーの機雷だらけ、ハイスタブとレイダーは挟み込む位置取り……エイワックスの位置が以前として不明……おそらくバーニィさんと同様の光学迷彩マントとステルスナノマシンによる潜伏中と見るべきか……バーニィさんが狙撃兵装を持っていないことも考えれば、初撃はエイワックス……なら周辺の宙域データとさっきの狙撃予測地点から割り出すとエイワックスはこの宙域を太陽の光の影響が少なく見渡せる位置にいると推定……ポイント割り出し……2ポイントまでの絞り込み……分離した脚部を1機ずつ各ポイントへ向かわせて様子を見てみるか……ターンXのIフィールドビームドライブの前方保護範囲を拡張、機雷を跳ねのけながらまずはトラッパーを叩く!その次はハイスタブとレイダーだ!はは!楽しい!)
大地が思考を終えると同時に、ターンXの頭部バイザー内のツインアイが一瞬赤く明滅すると、ターンXは自機周辺に目視できるほどのIフィールドビームバリアを形成してバチバチと紫電が走るのと同時に一気にスラスターベーンの推力を最大にして爆発をもろともせずに機雷群を突き抜ける。
それに対して、トラッパーも反応し大型ヒートホークからビームライフルへ持ち替えて応戦するも自機前方へ厚く展開されたIフィールドビームバリアによって容易く弾かれてしまい、唖然とする中ターンXはトラッパーの眼前へ接近し溶断破砕マニュピレーターによって頭部を掴まれてしまう。
そして、模擬専用の低出力ビーム破砕フィールドが展開され、トラッパーから白旗の信号が出力されるとモノアイが消灯し、ぐったりと機体が停止した。
「まずは1機!………ハハハ!次はこっちか!」
大地が白旗を上げたトラッパーから離れると、すぐさまターンX目掛けてビームの連射が襲い掛かるが、ANBACやスラスターベーンの精密な使用によりターンXはまるで舞っているかのような機動でビームの連射を躱す。
「次はガルシアさんだ!」
そう叫びながら、大地はキャラパスからロングレンジビームライフルを引き抜き回り込みつつあるハイスタブへ牽制射撃を加えつつレイダーの方へ一気に距離を詰め始める。
すると、レイダーは両手ショートバレルビームライフルから片手をMMPマシンガンへと持ち替え、ビームと実弾の混合弾幕を展開する。
それに対して溶断破砕マニュピレーターをレイダーの方へ向けてビーム破砕フィールドを形成し、飛来する実弾を防ぎつつ距離を詰める。
ある程度の距離を詰めた大地は、そのまま溶断破砕マニュピレーター内に格納されたワイヤーアンカーを射出し、回避機動を取ろうとするレイダーの脚部にワイヤーを絡みつかせる。
絡みついたワイヤーをターンXの推進力に物を言わせて引っ張り、レイダーはハンマー投げのような感覚でハイスタブの方向へ投げ飛ばされてしまい、何とか近くまで接近してきたハイスタブと激突しターンXから離れてしまう。
それを見つつ、大地がターンXのロングレンジビームライフルからハンドビームガンへと持ち替えていると、ターンXから報告が入る。
ー大地様、指定ポイントへ向わせていた分離脚部のセンサーから僅かにMSのジェネレーター反応を検知、予測ポイント2です。また大地様の興奮度が上昇、数分後抑制剤の投与を開始します。ー
「ありがとう!今すごく調子が良くて楽しいんだ!抑制剤は大丈夫じゃないかな?」
<大地、偏桃体の活性化率が上がってるの……ターンXの判断は正しいよ。>
「……そうか、ルナとターンXが言うなら間違いないね。それとターンX、ポイント2にいるMSの詳細な位置分かるかい?」
ー肯定、現時点の大地様の感応波受信能力であれば感じることができるかと、戦闘のサポート率を上げます。抑制剤投与前に少し気を静めて感じ取ってみてください。ー
「……わかった!試してみるよ。」
そう言うと、大地はターンXに機体制御を肩代わりしてもらいつつ、深呼吸を行い意識を静かに集中させ始める。
何度か深呼吸を進めるうちに、思考操作で操っていたターンXとのリンクがさらに深まり、予測ポイントへ向かわせていた脚部パーツの俯瞰視点のようなものが大地の脳内に映し出される。
すると、宇宙空間の1点に靄のようなものを感じてゆっくりと脚部を接近させると極わずかに星の光を湾曲させる輪郭を見つける。
(これか……?)
大地がそう思考した瞬間、光を湾曲させる輪郭が少しだけ割れ目のようなものを作るとそこから長砲身の狙撃ライフルが姿を現し、ターンXの方へ向けられる。
それを俯瞰視点ともいえるような視点から見ていた大地は、すぐさま意識を自分の身体へ戻し、レイダーとハイスタブと交戦中のターンXから操作権を戻すとキャラパスを分離し狙撃方向へ展開する。
それと同時にレイダーとハイスタブも急速反転し距離を取るのと同時に極太のビームの奔流がキャラパスへ直撃、キャラパスのビームバリアが相殺するもぶつかり合ったエネルギーの奔流が爆発を起こしキャラパスは吹き飛ばされてしまい、大地の駆るターンXと衝突、ターンXも大きく体制を崩した。
それと同時に煙を突き抜けて、突撃能力の高いハイスタブが最大推力で突撃を敢行し腰部ラックに取り付けていたコンテナを手に持ちながら外殻をパージし、それを視界に収めた大地は目を見開く。
(……!?まずい!)
大地の視界の先にあったコンテナの中身は、ポケットの中の戦争を視聴したことのある方々なら間違いなく知っているケンプファーのオプション武装の1つ、『チェーン・マイン』だった。
展開され、鞭のようにしなりながらチェーン・マインが迫りくる光景を大地はスローモーションのように引き延ばされた時間の中見つめていると、チェーン・マインを持つハイスタブの頭部コックピットから思念のようなものを感じた。
『これでしまいだぁーーーーー!!!』
(これは……ミーシャさんか……それに……)
ミーシャの思念のようなものを受け取りつつ、大地はミーシャの駆るハイスタブの後方で腰部ラックから取り出したミンチドリルを両手に構えて突撃態勢に入っているガルシアのレイダーを感じ取る。
そして大地は、脚部偽装のために展開していた光学迷彩ナノマシンを瞬時に解除し、機体周辺のIフィールドビームバリアの強度を上げて周囲を防御する。
ビームバリアの展開が間に合ったのと同時にスローモーションのような視界はすぐさま現実の時間へと戻り、ターンXは回避する間もなくチェーン・マインが機体へ巻き付き、ハイスタブが離脱したのと同時に大きな爆発に包まれた。
宇宙世紀の戦艦装甲をも破壊できる威力の爆発に飲まれた大地は激しい衝撃にターンXのコックピット内で揺さぶられる。
そして大地は、揺さぶられる意識の中、意思の籠った幻聴のようなものが脳内に響き渡る。
『MSなんてあるから俺の家族は!』
『こんな所にMSが……なんでこっちに来るんだ?と、止まれ!止まれよ!』
『俺は武器を捨てたじゃないか!な、なんで仲間を踏み潰すんだ!』
『ISが強力な兵器?馬鹿言え、凶悪なのはMSさ……誰にでも簡単に乗れて簡単に殺せる。』
『MSさえ……MR社さえなければ俺の母さんは!』
『弟がMSに踏み潰されたんだ!仇を取ってやる!』
『MSを世に出したMR社のツキノって奴は死の商人だ。』
『ははは!MSは最高だ!こんなに簡単に人を殺せる!殺しの道具にしないのがもったいないぜ!』
『今の戦場でMSは最高の味方足り得るが会いたくない敵にもなる……厄介なものだな。』
『MR社の月乃ってやつの殺しの才能が恐ろしいね。』
『『『この人殺し!』』』
突如脳内に響いた声達と共に、怨嗟と憎悪の感情が自分の中に流れ込んできた大地は自分の不可解な状況に頭を抱える。
「な…なんだ……これは…!あ、頭が……!」
<大地!それを受け入れちゃダメ!>
「俺が……俺が……悪いの……か?」
<大地!強制介入!感応波強制遮断!ターンX!>
ー肯定、抑制剤強制投与。ー
大地の反応に、ルナとターンXが処置を開始しようとするが状況が良しとはしなかった。
ターンXの周囲に巻き起こっていた爆炎を切り裂いて、レイダーがミンチドリルを回転させながら突撃をしてきたのだ。
即座に、ターンXが自立稼働で回避をしようとすると大地からの強制介入でターンXの機体が行動を開始した。
「俺を……傷つけるのは……オマエタチカ!」
大地は言葉を発するとともに、一瞬でターンXのツインアイが赤く点灯すると四肢をバラバラにパージすると各部位のビーム発射器から演習用の低出力状態のビームサーベルを展開し、迫りくるレイダーの四肢を串刺しにした。
低出力もあり、機体装甲表面が焦げる程度の跡を残してレイダーは機能停止状態になり、そのままの勢いで、大地は分離した四肢を元に戻しレイダーから奪い取ったミンチドリルをハイスタブへと投げつけつつ接近。
なんとか飛来するミンチドリルを回避したハイスタブへターンXは肉薄し、溶断破砕マニュピレーターをビームサーベル状にビームを形成し、横なぎに一閃し、ハイスタブも撃墜判定になる。
「アト…ハ……ソコ!」
ハイスタブを撃墜判定にした大地は、そのまま意識を集中させてエイワックスを捜索していた両脚部パーツを操作し、エイワックスの位置へ向けて両脚部で挟み込むような状況を作り一気にIフィールドビームドライブのビームバリアによるプラズマフィールドを形成。
隠密のため動かなかったエイワックスは見事にプラズマフィールドへ囚われてしまい、プラズマによるダメージで機体表面がこんがりと焦がされて撃墜判定になり、模擬戦は終了した。
この間、大地に抑制剤投与が強制投与され効果が出る34秒の間に起きた出来事であった。
「あれ……なんか思考が……クリアになった?」
<大地!大丈夫!?>
「え?ルナ?……なんか…さっきまで凄い怖い感じがしてたけど……今は大丈夫だよ?」
ー抑制剤の効果確認。感応波遮断機能継続。大地様、状況を説明しますので一度アスピーテへとお戻りください。ー
「え?うん、わかったよ。なんか凄く怖い感じがしてたけど、途中で凄く楽しくなったんだ……もしかして……?『だー君!』おっと!?」
大地がルナとターンXと会話をしつつ、遠距離へ飛ばしていた両脚部を再接続したのと同時に、広域に散布していたミノフスキー粒子が薄くなったのか通信が回復したのか束から通信が入る。
「束さん、どうだったかな?お眼鏡にかなったかな?」
『そりゃぁもう!だー君急にスイッチが切り替わったかのように高速でシュババババ!ってサイクロプス隊を蹴散らしちゃうんだもん!∀と戦った時以上に早い反応速度!ターンXとの同調が進んでいるのかな?』
「そうかも……凄く調子が良いんだ。それで動きがよく見えたのかも。」
『うんうん!いいね!これはとても良いデータが取れたよ!これで束さんのゴー君達強化計画も進むってもんだし!MIS計画も進めれる!後は……』
「後は?」
束が急に通信越しに黙ったのを聞いた大地は、ターンXコックピット内で首をかしげると、ルナを通したIS同士のコアネットワークの秘匿回線モードが束のISである群咲と繋がったことをルナから報告される。
『だー君の頭の中についてしっかり聞かないとね?』
「……っ!?」
『返事はしなくても良いよ。まーちゃんにも聞こえちゃうからね。でも、今回のがらりと変わった戦闘スタイルにここ最近のだー君がこそこそと何かしているのも含めて、束さん話してくれないと~、ちーちゃんにも話して3人でお話ししないといけないかもよ?』
「……」
『図星を突かれるとだー君黙っちゃうの、わかりやすいよ?束さんだって愛しのだー君の状態、少しは見当がついてるんだよ?とりあえず、今は大丈夫なんでしょ?気を付けて戻ってきてね!』
「……うん」
大地が小声で返事を返すと、束からの通信が切れてそのまま束はオープンチャンネルで何事もなかったかのように話を続け、話が終わったタイミングで模擬戦モードを終了し再起動したサイクロプス隊の機体達がターンXの元へ集まり、少しの雑談をした後にアスピーテへと帰投した。
次回へ続く
~織斑邸~
「久々だな、千冬姉!」
「あぁ、まとまった休養期間に入ったからな。たまには自宅で羽を伸ばしたいのだ。」
「俺も千冬姉が帰ってきて嬉しいぜ!大地兄のとこには行くのか?」
「あぁ、明日はMR社で少し大地と打ち合わせがあるんだ。」
「ふーん。」
「……なんだ?」
「なぁ、千冬姉って大地兄の事好きだろ?もう付き合ったりしているのか?」
「……なっ!?」
「図星か……やっぱ大地兄の事になると、千冬姉もわかりやすいな。俺は良いと思うぜ!大地兄も俺に良くしてくれるし、千冬姉にはめっちゃ甘いしな!」
「……そ、そういう、一夏はどうなのだ?もう中学生だろう。彼女の一人や二人でもできていないのか?」
「え?俺にそんなの出来るわけないじゃないか!」
「は?」
「だって、俺だぜ?弾とかと遊んでるのが性に合ってるし、女の子に告白とかされたことないぜ?」
「……そ、そうなのか?身近に長い付き合いの異性とかいないのか?」
「異性か……箒や鈴がいるけど、二人は幼馴染って奴だろうし……シャルは明らかに俺じゃない好きな人がいる感じがするからな……いないんじゃないか?」
「……」
「千冬姉?」
「大地に何か言われたりしていないのか?異性についてのアドバイスとか。」
「おう!結構聞いてるぜ!」
「……やはり…大地でもこの弟の教育は難しいか…はぁ……」
「なんで溜息つくんだよ!俺が何したってんだ!?」
ブチッ!
「ち、千冬姉?なんで手に持ってるおしぼりが引きちぎれているんだ?」
「……から……だろう…」
「へ?」
「お前が!何もしないから!こんな状況になっておるのだ!」(スパーン!)
「いってぇぇぇぇぇぇぇ!千冬姉!濡れたタオルで叩くのは流石に!ってかなんで数センチしか手から出てないおしぼりがそんな音立てれるんだよ!」
「問答無用!」(スパーン!スパパーン!)
「いってぇぇぇぇぇぇぇ!!やめ、やめろー!!俺が何したってんだーーー!!!」
「えぇい!この愚弟!大地に何を教わったのだ!(ピローン!)ん?束からか?」
『ちーちゃんへ!だー君の事で重要な話があるので急いでMR社まで来てちょうだい!束さんより!PS、いっ君虐めもほどほどにね?Mに目覚めちゃうかもよ?』
「……」
「ち、千冬姉?」
「すまんな一夏、少し熱くなり過ぎた……悪いが急用が入った。今からMR社へ行く。」
「お、おう……気を付けてな。」
「あぁ、いってくる。」
お読みいただきありがとうございます。
まずは、お久しぶりでございます。
率直に現状報告いたしますと、会社と揉めに揉めた結果退職する運びとなり、引き続きや退職につき業務量の増加などを受けておりました。
思いの外精神的ダメージが大きかったのか、毎日数行ずつというペースで書き続けていました。
精神的なダメージって負いすぎると、妄想力が低下するものなのだと思い至りました。
とりあえず、現在休み期間に入りましたが、プライベートの予定が意外と入っているため、思いの外執筆できる環境に居ることのほうがまだ少ない状況のため、前の投稿ペースに戻せるかはまだ未定です。
こんな妄想力全開のお話と今後もお付き合いいただけると幸いです。
千冬と束とのイチャラブ回を書きたい。
【御礼】
前話にて誤字のご指摘本当にありがとうございます。
1ヶ月以上遅くなりました事、お詫び申しあげます。
今後も見つけてくださった際はご指摘いただけると幸いです。