50話ー露呈ー
前話に引き続き、アスピーテへ帰還した大地とサイクロプス隊は格納庫へ機体を駐機させてブリーフィングルームでデブリーフィングを行った。
規格外とも言えるターンXの性能で後半はあまり参考に出来る部分が少ないこともあったが、サイクロプス隊は新たに機体のチューンを行う事を決定し大地へ要望書を後日提出する運びとなった。
デブリーフィング終了後、大地はアスピーテのブリッジへと向かい束と真耶と対面した。
「あ!お帰りだー君!」
「しゃ、社長……お、おかえりなさい///」
「ただいま……って真耶さんどうしたの?」
ブリッジで待っていた二人と対面した大地は、真耶が赤面して目線を合わせないようにもじもじしているのを見て少し疑問に思うと、束が真耶へ抱き着いて説明しだす。
「実はね!あまりにもまーちゃんがだー君とのあれやこれや妄想したのが口から駄々洩れだったから束さん達がだー君とどう夜を過ごしているのかを見せてあげていたのだよ!ね〜まーちゃん!最高だったでしょ?」
「…………ふぁ?」
「そ、その……えっと……社長って……凄い獣さんなんです……ね……///」
「……………」
束と真耶の言葉に大地は模擬戦終了時に束から来た秘匿通信の内容について話すものだと考えていた思考が一気に真っ白になる。
(……は?ちょ、ちょっとまてや……一旦落ち着いて……て!落ち着いてられるか!見られた?見られたの?千冬と束としてる夜のあれこれが真耶さんに!?なんで、なんでやー!まーちゃん関係ないやろ!ってか束もなんで見せたの!確かに原作でも妄想が口から駄々洩れになるシーンがあるのは知っているけど……じゃぁあれか?俺とサイクロプス隊が模擬戦している最中、真耶さんは俺が理性を失いかけた獣になっているのを見たってことで……そもそも束なんで映像記録残して……ISの機能か…それ俺も欲しいな……って違う今はどうにか言い訳を……)
一瞬にしてろくでもない思考をしている大地に対して、束は大地の前で抱き着いた真耶の身体をまさぐり始める。
ボディラインがはっきりと出るスーツを着た真耶が束に弄られるたびに無重力の中身をよじらせようとするもうまくいかずに少し甘い声が口からこぼれ出る。
「ちょっ!?束……さんっ!あん!……そこ…はっ!いやん!」
「ほれほれ~!良いではないかー!ふーん、以外にちーちゃんより感度高めかな?」
「まっ!……それ……い、いじょうはっ!しゃ、社長!み、みない……でっ///」
大地を置いて二人でいちゃつき始めたのを確認した大地は一気に思考を戻し、接触していた地面を僅かに蹴り、束に近づく。
「おんやー?だー君もスイッチ入って混ざりたくn(ゴチン!)……」
「あまりやりたくなかったけど……束さん流石に今回は見過ごせなかったかな。ごめん。」
近づいた大地にテンションが上がった束に大地は千冬より何倍も軽い拳骨を束に喰らわせて沈黙させ、真耶を束から引きはがす。
「あ、あわわ……あのっ」
「大丈夫真耶さん?」
引きはがした際に無重力であたふたする真耶を固定するために軽めのハグをしているような体制になった大地はゆっくりとルナのPIC制御を用いてブリッジの床へと着地する。
そして、ゆっくりと真耶から離れようとすると「あっ…」と小さな声が漏れたのを聞いた大地は少しだけ離れずに体制を維持する。
「あ、あの……」
「真耶さん、貴方の気持ちに俺は少しですが気付いています。」
「……!?」
「ですが、真耶さんと俺はそこまで長い付き合いというわけでもない。」
「……」
「でも、少しずつ互いを理解することはできると考えています。だから、今度二人で出掛けませんか?実は千冬と束からも真耶さんを受け入れてほしいと言われています。」
「……ふぇ…ふぇ?///」
「真耶さんが俺のような複数の女性と関係を持つ男でも良いなら……ですけどね?」
「……えっと…その…///まず、は…お、お友達……からで……///」
「ありがとう。今度の真耶さんの休日にでもしましょう。予定は空いていますか?」
「は、はいぃ……だ、だいじょう…ぶ……ですっ……」
「よかった。では当日楽しみにしていますね。」
「……プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~」
「……あ、やべっ」
軽くハグした状態で耳元で会話した大地に対して、限界を迎えた真耶は赤面した顔から煙を吐くように気絶して無重力空間に漂い始めて大地はハッとする。
急いで大地は真耶を抱きかかえ、BOIDを呼び出して医療室へ移送をお願いする。
「だー君もやり手よの~」
「束さん……」
「にしても、まーちゃんを口説き落として気絶させて退場させるなんてー!束さんの事もそのくらい口説き落としてくれると嬉しいんだけどな~!」
「そんなつもりはなかったんだけどね……ところで…頭の方は大丈夫?ごめんね、叩いたりして……」
「問題なっしーんぐ!ちーちゃんの謎貫通攻撃に比べたらだー君の打撃は全然気にならないし!それに!愛の鞭だと思うと束さんゾクゾクムラムラしちゃうな!」
「……もう一発行くべきかな?」
「ごめんって~!さて、世間話はこの辺にして~」
2人きりになったブリッジで束は少し話をした後、にへらとしていた表情を真剣なものにして、大地に相対する。
「ずっと気になっていたんだよね~。だー君の身体がルナちゃんの二次移行でナノマシンの構成体として再構築されてから今まで何かしらの弊害が出ていないことに。束さん的には脳の一部を機械化していることになるから、何かしらの思考ルーチンの変化や性格などの豹変ってのを考えていたんだけど、そんな兆候も今まで一切見られなかったもん。束さんだってだー君と同じ存在になるために日々研究してるんだけど、脳の構造だけどうしてもナノマシンに置き換えた際の思考ルーチンや性格等の人格変化の可能性が潰せなくて躓いているんだから!」
「もうそこまで……わかっているんだね。」
「当然だよ!この天才発明家の束さんなんだから!そこで束さんも確証を持てていないことになるんだけど……だー君、今どの位変質…いや、違うね…急な挙動の変化、明らかに攻撃的な感じ……浸食されているって感じかな?細胞の代謝に合わせてゆっくりと……おそらく偏桃体あたりだと束さんは推測しているんだけどあたっているかな?」
「……流石だよ。束さん。」
束の推理を聞いていた大地は、肩をすくめて渇いた笑みをこぼしながら束を見つめる。
すると、束はブリッジ内の壁を蹴り大地へと抱きつき、受け止めた大地は飛び込んできた束の勢いそのままに後方へ動き始め、ブリッジの壁面へ背中がぶつかりそのままブリッジ内を漂う。
大地の胸の中に収まった束は、そのまま大地を見上げて少し不安げな顔になる。
「だー君、今まで隠していたの?」
「……ずっとじゃないよ、少し前から急にそういう衝動が出始めてね…ルナとターンXに調べてもらっている最中だったんだ。」
「じゃぁ、さっきの急に動きが変わったのは?」
「俺自体はテンションが上がってきただけだと思っていたんだけど、どうやらルナとターンXとの接続が深いものになってしまったせいで俺のナノマシンに置き換わっている偏桃体が活性化していたみたい。」
「……今は?」
「ターンXの作った抑制剤で問題ない状態。今もルナとターンXがリアルタイムで俺の脳波を計測してるよ。」
「抑制剤……」
大地の抑制剤という言葉で、束は大地の胸の中でぶつぶつと仮説を立てはじめる。
こうなると長くなることが分かっている大地は、抑制剤でも抑えきれていない戦闘での高揚感を抑えるために束へのハグを強めて束の温もりと香りを堪能する。
数分束が思考の海から戻ってくると、束は静かに語りかけた。
「だー君。束さんがわかる範囲で推測して仮説を立ててみたけど……いや、これはちーちゃんも交えて話さないといけないね。後で話すよ!」
「ま、まじか……」
「それと!」
「…?」
「だー君の反応的に束さんの仮説が正しいものだと思われたので!あまりやりたくないけど、束さん激おこぷんぷん丸なので今からだー君にお仕置きします!」
「……へ?」
ドゴン!
「ぐふぅっ…………!!!」
束がお仕置きと言った瞬間、束を抱きしめていた大地の腹部へとてつもない衝撃が走り、そのまま大地はブリッジ内の壁へ激突した。
衝撃により壁面は歪み、大地は反動を殺しきれずにそのままブリッジ内を漂いながら束の方へ向くが、大地は自身の身体に違和感があるのに気付いた。
「こ、これは……」
「今は、束さんもこれ以上は言わないでおくよ。でも、だー君。覚えておいて……束さんが好きなのはだー君で、だー君の身体を支配する存在でも…だー君の代わりになる存在でもないんだよ。痛覚もオートで許容量以上の痛みを感知できないだー君のボディには効果覿面と見たからね!」
「……!?ぐっ……うぅっ!?」
「さて!真剣なお話は終了!束さんも久々に人を殴ってすっきりしたから!まーちゃんを起こしてISの宇宙空間試験してくるね!だー君はしばらくここで反省するように!それも小一時間位で解けるはずだから~!」
「……くっ!ま、まって……たば……」
急に苦しみだした大地に対して、束はあっけらかんとした雰囲気に戻ると、そのまま元気よく手を振りながらアスピーテのブリッジを後にした。
~数分後~
アスピーテのブリッジ内にて、大地は1人悶え苦しんでいた。
「ふぅ……ふぅ……っ!ぐぅっ……!ル、ルナ……ターンえ、X……これ、は一体?」
大地は、ルナの2次移行で身体が作り替わってから味わったことのない不快感と激しい動機に襲われていた。
そして、束に何かされたであろう強い衝撃を受けであろう腹部を見つめると、そこにはとても強固な作りになっている注射器のようなものが突き刺さっており、中に入っているであろう薬剤はすべて大地の体内に注入されていることが目視でもわかる状態であった。
<現在投与された薬剤の分析中、束が巧妙に偽装しているせいでなかなか成分がつかめない……大地の脳波不安定状態!>
ー解析完了、投与されたのはナノマシン。作用は痛覚を刺激する作用以外の感覚器官への干渉、変異し続けているため大地様の脳へ送られる感覚情報が定まっておらず脳波の乱れを生んでいます。ですが、感覚情報だけが変質しているため人体に対するダメージはゼロ。大地様の身体を構成するナノマシンがそれに対して処理が追い付いていません。現在ナノマシンの中和を開始します。ー
「ふぅ……ふぅ……ぐぅ、こ、これは……キツ…イね……感情のジェットコースターで…酔っている気分だ……うっ……でも身体自体は正常なのは…感覚でわか…る……中和までの……時間は?」
ー肯定、おおよそ30分程です。変異し続けるナノマシンへの適応に少し時間がかかります。ー
「そう……か……うぅ……これも…俺……の、せい……だもん……な。」
<大地!もう少しの辛抱だから!>
「う……うん。」
こうして、悶え苦しむ大地にルナとターンXは迅速に束の投与したナノマシンを中和すべく奔走していた。
~アスピーテ船外~
一方その頃、ブリッジを後にした束は医務室で目を覚ました真耶を連れてアスピーテの船外にISを纏った状態でいた。
「さぁ!まーちゃん!宇宙空間での実地訓練だよ!」
「は、はい……あ、あの~…社長は……」
「だー君は今束さんのお仕置き中なので気にしないことにします!さぁさぁ!新型のシールドエネルギー発生装置を起動するのだ!安心して良いよ!現状束さんのISが展開しているエネルギーフィールドの中だからね!徐々に効果を薄めて行ってまーちゃんの機体がどの位まーちゃんを保護できているかを検証するから!」
「え、えぇ……は、はいぃ……」
大地の心配をする真耶に対して、束のマシンガントークで強引に押し切られ少し涙目になりつつ、真耶は自身のISに装備された新型のシールドエネルギー装置の出力を最大に上げ、少し真耶の駆るISの周囲の光が僅かに湾曲する。
ここで、簡単な説明だが真耶の現在搭乗している機体は、束がラファールをベースにカスタムを行ったラファール・リヴァイブの原型機体となったモデルである。
現状、一般的にはR&C社製『ラファール・リヴァイブ・プロトパッケージ』と称されているが実際は『ラファール・リテイク・カスタム・Verマヤ』と束が命名している。
デュノア社が女性権利団体や亡国企業の横やりを受けつつ開発したラファールの、各部位パーツやシステム面での低コスト化による宇宙での活動を目的として作られたISが完全に宇宙空間での運用がそぎ落とされてしまった性能に束がブチ切れてしまい改造に熱中、千冬のげんこつを喰い途中でリテイクは終了、満足度は50%程らしいが、既存の部品で極力再構成し、システム面は束が直々にOSから書き直しエネルギー効率まで最適化されたモデルとなっており、宇宙での活動も可能としつつラファールの1.5倍にも届くレベルの機体に束が仕上げなおした機体である。
結果、完成時の改良型OSや束直々(匿名)のラファール開発者への苦情などで大地とデュノア社の開発陣の頭を悩ませることになっていたのであった。
「じゃぁまーちゃん!こっちで張っているシールドを減衰させていくよ!勿論バイタル等は全部モニタリングしているから!」
「は、はい!新型シールドエネルギー、フィールド展開出力最大!搭乗者保護機能も同様!各ステータス、も、問題なし!いつでもどうぞ!」
「じゃぁ!いってみよー!」
「よろしくお願いしますね、リテイクさん!」
< >
「…?」
束の合図で真耶の機体であるリテイクから真耶へ、周囲を覆っていた保護フィールドの密度が減衰を初めた事が報告され、徐々に重力以外は地球の地上部と変わらない大気状態が徐々に真空になっていき、宇宙線が機体に当たり始めた事が検知されていく。
「どう?数値的に問題ないみたいだけど、まーちゃんの方はどうかな?」
「は、はい……新型シールドエネルギーの動作正常、機体装甲の耐久も問題ありません。搭乗者保護機能の保護率も束博士の言っていた消費エネルギー数値を下回っています!成功です!」
「リテイク用のOSでの使用だからエネルギー効率がリヴァイブより良いみたいだね!稼働データは問題なくとれたし!さてさて!まーちゃん!後は好きに飛び回って良いよ!」
「え?こ、これだけですか?」
「そうだよ?メインは新型シールドエネルギー発生装置の実地試験と人体への影響だったからね!後は、そのコアとの約束でしょ?束さんは稼働データを継続的に取り続けているから後は好きにコアに話しかけながら飛ぶといいのだ!」
「わ、わかりました!」
稼働テストがあっけなく終わり、束の言う通り真耶はリテイクを駆り宇宙空間をゆっくり飛行し始める。
それを見つつ、束は付近を地球へ向けて航行し続けるアスピーテのブリッジへハイパーセンサーを向けて望遠を行う。
そこでは、もがいている大地と寄り添うルナ、そしてハンガーから出てブリッジ部へ左手を添えて接触しているターンXが束の視界へ入る。
その光景を見つつ、束はリテイクの稼働データ観測画面から手を放してアスピーテへ手を伸ばす。
(だー君、束さんの推測があっていれば、だー君の考えは束さんにちーちゃん、そしてだー君の自体も幸せにしないよ……ちーちゃんにもメッセージは送ったし、3人でしっかり話し合わないとね。正直、束さんが今できる範囲で本気を出したとしても、月と軌道に駐留しているだー君達同様別世界からの技術で本来の性能を持つMS達は何とか出来るかもしれないけど、だー君の駆るルナちゃんとターンXは止めることはできないよ……アースちゃんと∀なら……でもそうなったら前の決闘の二の前になっちゃう……今はだー君と話し合って、だー君の正確な状況を手に入れないと……)
伸ばし広げた手のひらをゆっくりと握りしめながら、束は少し憂いた目線を大地へ向けながら目をつぶり一息つくと、視線を真耶の駆るリテイクへと戻した。
すると、リテイクの観測コンソールからコアジェネレーター反応に異常数値が検知された。
(この数値、設定したリミッター数値をすでに上回ってマキシマイズしてる?これってもしかして!)
「まーちゃん!聞こえる!?」
「……うん……そうだね…私は、あなたともっと自由に……そして守る側に、あの人のためにも……」
「まーちゃん!?」
束の通信に反応することなく、真耶の駆るリテイクは急に輝き始め、その光で見えなくなってしまった。
~真耶サイド~
少し時間を遡ること、束が大地達に思いを馳せ始める数分の出来事である。
真耶は、束からの好きにして良いという言葉に従い、飛び始めるのと同時に束との通信を切り自分の駆る機体であるリテイクに話しかけ始めた。
「あ、あの……聞こえてれば良いんですけど…あの時は私を守ってくれてありがとうございます。あの時守ってくれなかったら今の私はここにいませんでした。でもこうしてまた私の所に来てくれてすごく嬉しいんです。来てくれた経緯に関してはちょっと束博士が頑張りすぎちゃっていますが……」
< >
「あ、れ?また何か聞こえたような……?」
< !>
「!?」
真耶がリテイクに話しかけていると、聞き取れないような声量で話しかけられたような感覚を覚え、その声に集中しようとした瞬間に真耶は意識が急に飛ばされる感覚を覚えた。
「い、一体何が?」
真耶が意識が浮上する感覚を覚えると、周囲の景色が変わっていた。
そこは、どこまでも続く鏡面のような地面と青空に瞬く無数の星が煌めく空に彩られた世界で、明らかに現実ではない世界と認識できる場所で真耶はISスーツを身に纏った状態で立ち竦んでいた。
「えっと……あれ?宇宙空間にいたのに……束博士?」
周囲を見渡していると、ふと真耶の視界に先程までなかった場所にティーテーブルとチェアが置かれていた。
そして、こちらに背を向けてティーカップに口をつけている小さな腰まで伸ばした緑髪の少女が存在しており、真耶は導かれるようにティーテーブルへ向かった。
回り込むように歩いていると、少女がティーカップを置いて真耶に微笑みかけると無言で対面の椅子へ促し、真耶は促されるまま席に着いた。
「えっと……あなたは?」
席についた真耶は対面の少女へ声をかけると、少女はそのまま立ち上がり真耶の前まで歩いてから真耶の両手を手に取った。
<貴方とこうしてお話ししたかった。この前はごめんなさい……貴方に傷を負わせてしまった……>
「え、えぇっと……も、もしかして、夢に出てきてお話ししてくれた子……です…か?」
<そうです。私はラファール・リテイクのコアです。ルナ姉様のような個体名はありません。>
「……ふぇ?」
<えっと……コアです。>
「えぇぇーーーー!!!」
<これはしばらくかかりそうですね……ルナ姉様から聞いててよかった。>
少女は自分がラファール・リテイクのコアだという事を打ち明けた事に対して、理解が追い付かずに驚愕して固まってしまった真耶の前で溜息を一つ着くと、何もない空間から突如ティーカートが現れ、少女は慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。
数分経ち、真耶の意識が戻ってくるのに合わせて紅茶が出来上がったのか真耶の前に淹れたての紅茶が少女によって差し出された。
そしてそれを受け取って一息ついた真耶は、やっと落ち着いて少女を視界に入れた。
「ふぅ~、美味しいですね~。」
<ルナ姉様から頂いたデータでしたが、お口に合って良かったです。>
「ところで、そのルナ姉様ってのは?」
<ルナ姉様はルナ姉様です。私同様ISコアであり、私より前に製造されたISコアのため姉様と呼んでいます。搭乗者もコアとの対話ができており、コアネットワーク経由でいろんなことを教えていただいています。それはそうと、打鉄以来の搭乗で身体チェックを行いましたが、傷は完治していたようですね……よかった。>
「なるほど……貴方にとってのお姉さんなんですね。怪我のことは気にしないでください!むしろ貴方に守ってもらったおかげで生きて帰れましたから!ありがとうございますね!」
<……そう言っていただけて嬉しいです。それに、こうして自由に宇宙を飛ぶこともできて私は嬉しく思っています。さて、そろそろ時間です。>
そう言うと少女はゆっくりとまた真耶の手を取る。
<貴方は私に何を望みますか?>
「……えっ?」
<通過儀礼の様なものです。これから私は貴方の為だけに羽ばたく翼となります。その為に、真耶は何を望みますか?>
「私の……望み……」
少女に問いかけられた真耶は、下を向いて考え込む。
数秒考え込んだ真耶は、顔を上げて少女を見つめ直す。
「私は、色んな方々に助けられてきました。大好きな両親、訓練校の先輩や同期、そして束博士……そして何より、今の環境をくれた大地さん。」
<……>
「もし、貴方も私を助けてくれるのなら……私は助けられる側じゃなく、助ける側になりたいです!」
<先生って夢はいいの?>
「それも諦めません!先生は生徒を教え導き守る者です!それに大地さんがそこは上手くやってくれるそうですから……///」
<本当……あの人は人に好かれますね。>
「で、ですから!」
<わかりました。貴方の願いを聞き入れました。私はもう貴方のものです。気軽に話しかけてください。>
「は、はい……うん!」
<では、真耶……貴方の守りたい物を守る為に、そして自由に飛び立つ為に……>
「うん……そうだね、私も貴方ともっと自由に飛びたい。そして、守る側になりたい。大好きなあの人のためにも!」
<行こう真耶!戻っても私は話せるから、その時名前を付けてくださいね!>
「うん!」
真耶とコアがそう会話を終えた瞬間、真耶とコアの少女は光りに包まれた。
次回へ続く
お読みいただきありがとうございます。
リアルで色んな事を経験した為、少しリセットする為に原付二種で一人旅してました。
これからまた、書き進めていきます。
にしても、そろそろ本編に突入したいのにその間に挟めたいストーリーがありすぎて逆に書き進めれない感じになってますね……月光蝶でなんとかならんものか…無理か。
しばらくゆっくりとした更新になると思いますが、お付き合い願えると幸いです。