オラリオのチャンイチもどき   作:まほうのこな

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 ふと浮かんだ存在しない記憶を書き殴ったので初投稿です()



失望(がっかり)からはじまる滅却師賛歌(クインシー・ゲサング)

「それでは誠に勝手ながら、わたくし【道化の王冠(クラウン・クラウン)】こと、クロサキ・一矢(イチヤ)が乾杯の音頭を取らせていただきます! トマト野郎改め異母弟ベル・クラネルの世界最速(レコード)樹立を祝しつつ、目ン玉腐ったツンデレ節穴野郎の視力回復を願いましてえぇぇぇぇぇぇ!」

 

 一呼吸溜めると同時に飛廉脚を発動。

 天井から吊るされた狼人(ウェアウルフ)の眼前に飛び、左手のジョッキを大きく振りかぶる。

 

「乾ッ杯!!!!!!!!!!」

 

 小気味良い破砕音とベートの苦鳴が響き渡る。それなりに手加減した一撃は、しかし彼をミノムシから地を這う芋虫に変えた。我ながら惚れ惚れする手際である。いっそ命も刈り取りたいところだが、こんなんでも同じ派閥(ファミリア)の誼だ。今回はこれで勘弁したるわ。それよか床だのなんだの破壊したら後が怖いし。

 

「じゃ、お先に失礼するんであとよろしく☆」

 

 言ってすっかり冷え切った場から脱出を試みる……の前に、しょんぼり剣姫に声だけはかけとこうかね。

 

「アイズ、アイツを助けてくれてありがとうな? 今度改めて紹介するから、そん時はよろしく」

 

 満面の……とまではいかんが出来るだけ柔らかく笑いつつ、彼女の手を取って礼を述べておく。未来の義妹(予定)だ、こまめに好印象を与えておかねばなるまいて。義兄としてな!

 

「ちょい待ちや一矢ァ!? 情報量が多過ぎて渋滞しとるやん!? せめてこう、ある程度は説明してぇな!?」

 

 知 ら ん が な 。

 

「説明も何も、件のトマト野郎が俺の腹違いの弟で、アイツが昨日のアレでランクアップしたのも知らずに笑いのネタにしてたからちょっとキレただけなんだけど? 人死にも出さず極力穏便に済ませたやん? そもそも、駆け出しに手前らの尻拭いさせといて、感謝するどころか酒の肴にするのが俺らの流儀? アイツにゃ俺があれこれ仕込んでんだ、ミノごときタイマンなら余裕に決まってんだろーがアイズがやってくれたんは2匹目だろーよ。あんま舐めてっと全員神殺鎗(コレ)やぞ」

 

 言って人差し指と中指を伸ばして両手を合わせて見せると、被害(経験)者達は椅子ごと後ずさる。

 なーにが冒険者の品位だよまずは人格育てろや人格を。

 

「因みにホーム帰るの明日んなると思う」

 

 じゃーねと手をヒラヒラさせながら店を出る。

 さてちょいと時間食ったから急ぐかねぇ? 飛廉脚で宙を飛んでバベルへと急ぐ。まさか一服つくのに席を外してる間に釣り合わねぇイベントが起きるとか、気ぃ緩んでたかなぁ。

 俺の名はクロサキ・一矢(イチヤ)。ダンまち主人公ベル・クラネルの異母兄に転生した元日本人のヲタクである。こう書くと親父……つまりベルパパがド畜生に思われそうだから一応擁護しておくと、俺のかーちゃんが一服盛って美味しくいただいたのが全て悪いので、そこはご理解いただきたい。

 

 ついでに『で、アンタを授かったってわけ』って言われた時の俺の気持ちも察していただけると、大変ありがたい。

 

 まぁ普段は特筆する事ないっていうか醜態だらけだったけど、救いを求める声にはとても敏感で、その誰かに手を差し伸べて走る背中は、密かに自慢だった。

 惜しむらくは、その数少ない長所は俺に遺伝しなかった事か。お袋の血が濃すぎたんだろう。本業治療師(ヒーラー)なのに刀持たせたら女帝のねーちゃんと張り合えるし、なんなら素手でモンスターの首引きちぎる様な雌ゴリラだったし。 

 因みに俺の父親が誰か知ってるのは、俺とお袋とじーちゃん、それからベルの4人だけである。ヘルメス様(パシリ神)あたりは勘付いてるかも知れんけど、藪をつついて大蛇に喰われる様な事はしないと思う。知らんけど。

 そんなこんなでダンジョンに侵入し、義弟に追いついたのは9階層。おい原作より進んどるがな……まぁ器1つ昇華させてるし、妥当っちゃ妥当か? お薬無しで突撃したのは、兄ちゃん感心しないが。

 

「おうベル久しぶり、かれこれ4年ぐらいか? ランクアップおめでとさん」

一兄(イチにい)!?」

 

 なっつい呼び方してくれるじゃないか。

 

「酒場で何があったかは、まぁ聞いた。で、どーするよ? 帰るか、続けるか。続けんなら付き合ってやんぞ?」

「一兄……」

 

 くしゃりと顔を歪め、顔を俯かせてベルが言う。

 

「僕、強くなりたい……!」

「そっか」

 

 悔しいよな。恥ずかしいよな。でも腹ん中に溜まったモンぶつける先がねーんだよな。

 そういうの、俺にもそんな一度や二度は…………? 

 

 …………ない………………だと?

 

 うん、ないわ。(なにがし)の巨人風に言うなら「何の挫折もありませんでした!」って感じだ。いや別に才能があったからとか、滅却師スタイルでイージーモードだったわけでもないんだが。

 

 もっと早く、もっと強く、もっとオサレに……! しか頭になかっただけで。

 

 さておき、可愛い義弟の願いは叶えてやりたい。

 そう、お兄ちゃんだからね。

 

「なら足踏みしてる場合じゃない、そうだな?」

「……うん」

 

 そういうことなら任せとけ。とベルを小脇に抱える。

 

「えっと、一兄?」

「付き合ってやるって言ったろ? どーせならもっと下行こうぜ、下。なーに、チュール女史に何か言われても俺に同行させられたって言やぁ、お前が詰められる(こた)ぁねーから」

 

 雨竜パパよろしく小さな神聖滅弓(ハイリッヒボーゲン)を片手に、鼻歌交じりでダンジョンを駆け降りて行く。

 

「ちょっとまって兄さん!? 二人とも丸腰だよ!?」

「霊子兵装と血装あんだからへーきへーき。ってあれ? ベルには血装教えてなかったっけ?」

「一応使えるけど……」

 

 マジか。よほど師匠が教え上手だったに違いない。やはり天才か?

 

 まぁ俺が師匠なんですけどね(自画自賛)

 

「この際ギリギリを攻めてみっか? なーにこう見えても兄ちゃん回復魔法の使い手だから。(敵が)多い日も安心ってわけ」

「ヤメテ!!」

「ハハハこやつ照れおってからに」

「そんな事言って、僕に酷い事するんでしょう!? 村にいた時みたいに!!」

 

 谷から蹴落としたりゴブリンの群ん中に放り込んだ時の事か。なっつかしいなぁ。

 

「今夜はデッドリー・ホーネットだな。ブラッディ・ハイヴとセットなら捗るんだけど、見つかるかねぇ?」

「まさかの上級殺し(ハイ・キラービー)!? 流石に僕死んじゃうよ!?」

「半歩手前で助けるからへーきへーき」

「ほぼ死んでるよね!?」

「死ななきゃセーフ。兄ちゃん、ベルを信じてるから」

 

 そのあとピーピー泣いてる白兎を無事24階層……つまりは中層の最終まで連れていき、めちゃくちゃデッドリーホーネットと遊ばせた。控えめに言って楽園か? 俺ん時は半歩手前どころか、そもそも単独攻略しかしてねーから助けなんてなかったしな。鍛えるには十分やろ? ここで限界の10や20は越えてもろて。

 汚い高音を垂れ流しながら必死に射殺すベル君にがんばれ♡がんばれ♡しながら、俺はそっと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは英雄の物語ではない。

 憧憬を追いかけ英雄を目指す少年の背を押し、時には尻を蹴り上げるスパルタな兄の物語。

 オサレに射殺し、神の胃殺す滅却師賛歌(クインシー・ゲサング)だ。

  




 クロサキ・一矢:本作の主人公。ぶっちゃけ冒頭の『乾☆杯』がやりたいが為にロキ・ファミリアに所属させられた悲しき存在。ベルパパとヘラの眷属なママの間に生まれた最恐と最強の系譜にして、オサレに目覚めた転生者。ベル君への当たりが理不尽に見えるが、彼なりの愛情と激励みたいなもんである。最恐と最強の系譜だからね仕方ないね。
 作中開始時点はレベル7で二つ名は【道化の王冠《クラウン・クラウン》】。尚、某エクソシストとは無関係。闇派閥(イヴィルス)界隈では【殲禍(カラミティ)】の忌み名で呼ばれる事も。頭十一番隊ではないがヒロアカのミルコさんみたいな精神性なので大差無いかも知れない。

 ベル・クラネル:ダンまち主人公。一矢の義弟に生まれた以上、艱難辛苦まったなし。

 ロキ:胃と尻が死ぬ。
 ファミリアの仲間たち:アイズ以上のダンジョン狂な一面とベートへの当たりがキツイ以外は概ね良好な人間関係を築いている(はず)


 本当にこれで書き出していいのか? と悩む部分も多いんですが、お前の始めた物語だろうって言われたらそれはまぁ、うん。ってところでしょうか。なんちゃって滅却師が好評だった分、比較されるんじゃろうなぁみたいな謎のプレッシャーも感じたりはしますが、そら仕方あるめぇよと割り切る事にしました。なんならこちらを描いてるうちに、ふとなんちゃっての続きが思い浮かぶかも知れんし、それはそれでラッキーじゃね? とも思ってます。
 
 そんなわけで(どんなわけ?)なんちゃって滅却師並びにチャンイチもどきをよろしくお願いいたします。
 

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